本日中にすべて投稿予定です。ここからどんどん主要人物に絡んでいきます。
爆炎の中から現れた地球連合軍の強襲機動特装艦アークエンジェル。オーブと共同開発された対MS戦を想定した戦艦であり、かつG兵器の運用母艦であり地球軍初のMS搭載可能艦だ。
強力な火器兵装と対空防御、ビーム兵器に対して高い防御力を誇るラミネート装甲を採用した最新鋭艦である。
ザフトの襲撃で破壊されなかったのはその堅牢な装甲ゆえか。
しかし、今は。
「シグーに目をつけられないように車両を停車し、彼らがザフトを追い返してくれるのを祈るしかない!」
リカルドは運転席から戦いを眺めることしかできない。シグーの射撃に対し、ストライクはフェイズシフト装甲で実体弾に対しほぼ無敵と言える装甲なのだが動きが悪い。未完成のOSゆえか。いや、何かを庇っているような動きにも見える。
ストライクを援護するようにアークエンジェルからミサイルが発射される。シグーは先頭の一発を重突撃銃で撃ち落とすと次弾をコロニーのシャフトを盾に躱した。距離に余裕が出来た三発目は再び撃ち落として、最後の一発は直前で加速して背後のシャフトにぶつけることで処理した。シャフトを直撃した二発のミサイルは既にボロボロのコロニー被害を拡大させる。
「おいおい……勘弁してくれ、コロニーを壊す気か!? ――ストライク!? 待て! その装備は!」
ストライクはランチャーパックのアグニでシグーを狙撃した。超高インパルス砲"アグニ"当たりどころによっては戦艦すら一撃で破壊可能な火砲は、シグーを掠めると武装ごとその右腕を飲み込み、その勢いのままコロニーの外壁へ直撃、コロニーに大穴を開けたのだった。
中破したシグーは開いた穴から撤退した。ストライクとアークエンジェル、そしてリカルドの身にひとまずの安全が約束されたのだった。
モルゲンレーテ社の社員IDと土産のデュエル予備パーツ搭載トレーラーのおかげでアークエンジェルへ搭乗許可を得られた。トレーラーを整備班に預け、保安部隊に連れられてMSデッキへ向かう。地球軍の士官に後の判断を仰ぐ為だろう。通信内容を聞く限り、指揮系統がいまいちはっきりしないようだ。ザフトの襲撃により正規クルーを失ったのかもしれない。
「君、コーディネーターだろ?」
アークエンジェルの右舷カタパルトに着くと、待機状態のストライクその前に並ぶ民間人の子どもたち、そして地球軍の士官や兵士たちが立ち並んでいた。パイロットスーツを着た男の発言に辺りが騒然としていた。
「はい」
少年が男の発言に肯定すると、保安部の兵士は咄嗟に身構え銃を向ける。それを見た別の少年がコーディネーターの少年を庇うように前に立った。
「な、なんなんだよ!? それは!」
「トール……」
「コーディネーターでもキラは敵じゃねーよ! さっきの見てなかったのか? どういう頭してんだよ、お前らは!」
一触即発の空気が流れるがラミアス大尉(生きてたのか)の取り成しで事なきを得る。会話から察するにあのコーディネーターの少年がストライクに乗りザフトを撃退した、というところだろう。
しかし、いくらコーディネーターとはいえあのOSであれほどの活躍が可能なのだろうか。G兵器奪取に少なくとも二機のジンがコロニー内へ侵入していた、それに加え先ほど撃退した隊長機と思しきシグー。それらを退けるにはいくら高い機体性能があるといえど、まともに戦闘機動ができない状態だったOSでは不可能と言っていい。
ならばどうやったのか。考えられる理由は一つ、OSを書き換えたのだ。あのコーディネーターの少年が僅かな時間で。俺を始めモルゲンレーテのスタッフが難航していたというのに、だ。
ナチュラルとコーディネーター、その能力格差を見せつけられた気分だ。もっともコーディネーターの彼が操縦する為に書き換えられたものであるため、ナチュラルでも同じように動かせるかと言えば違うのかもしれないが、それでも複雑な気分ではある。
気に食わないまたはやるせない、そんな気持ちが浮かぶ一方で現在のストライクのOSを参考にすればナチュラル用OSも進展するだろう。或いは、彼の手を借りれば完成すら望める……いやそんなうまい話はないか。それどころかそうならないでほしいという気持ちさえある。これまでの努力をほんの僅かな時間で超えられてしまったら我々の立つ瀬がない。
このような嫉妬心や虚栄心が現在のナチュラル・コーディネーター間の対立の誰もが知る理由である。
「やれやれだな」
「大尉! どちらへ?」
リカルドが思考に耽っているうちにどうやら話は済んだようだ。いくらナチュラルとコーディネーターの間で戦争してるとはいえ民間人を、ましてや中立国の人間をどうこうしようとはならないだろう。
「どちらって……俺は被弾して落ちだんだし、外にいるのはクルーゼ隊だぜ? あいつはしつこいぞ~。こんなところでのんびりしている暇はないと思うがね」
パイロットスーツの男、ムウ・ラ・フラガ大尉はそう言ってその場を離れた。束の間の平穏、それもそう長くはなさそうだ。