「リカルド・ヨハンソンです。搭乗許可をいただき、ありがとうございます」
「ヨハンソン主任! ご無事でしたか。改めましてですが、マリュー・ラミアス大尉です」
「ムウ・ラ・フラガ大尉だ。MA乗りさ、よろしく」
「ナタル・バジル―ル少尉です」
様々な出来事に翻弄されたが、ようやくアークエンジェルに搭乗する士官とのコンタクトが取れた。正式に搭乗許可をもらい、絶望的だったコロニーからの脱出にも一筋の希望が見えたと言えよう。
「私からリカルド・ヨハンソン主任をご紹介します。彼はモルゲンレーテのスタッフでMSのOS開発に携わっていました」
「へぇ、オーブのねぇ。――この艦、人手不足だろう? いっそ彼に手伝ってもらうってのはどうだ? 猫の手も借りたいって状況なんだし」
「フラガ大尉! 彼は民間人なのですよ! 先ほどのキラ・ヤマトのことだってそうです。軍の機密を……」
「そうは言っても俺のゼロだってまだ出れないし、敵は必ずまた攻めてくる。死んじゃったら機密も何もないでしょ? MSとの戦闘は少年に任せるしかないし、アークエンジェルはどこもかしこも手が足りてない。規律に準じて沈むわけにも死に殉ずるかい?」
「しかし……!」
フラガ大尉とバジルール少尉の意見がぶつかり合う。予想は出来たが避難民としてタダ乗りさせてもらうというわけにはいかなさそうだ。もっとも仮にその立場に甘んじることが出来たとしても無事に乗り切れるとはとても思えない。アークエンジェルが最新鋭の高性能艦でありストライクという最新兵器があったとしても、敵はザフトの英雄とも名高いクルーゼ隊だ。ここはリカルドも何か彼らに協力して少しでも状況打開に手を貸すべきだろうと考えた。
「恐縮ですが意見を述べさせていただいても?」
「リカルド主任、何か……?」
ラミアス大尉が続きを促す。彼女はリカルドともG開発で縁があり素性もある程度知れている。ここはそれを活かすべき時だ。
「地球連合軍からの正式な協力要請という形を取って私を整備班のOS調整・及びテストパイロットとして使っていただけないでしょうか。勿論、モルゲンレーテ社は中立国であるオーブの国策企業ですから緊急時の例外措置という形でお願い致します。ストライクやMAの調整はこの先必須でしょう? また、G兵器のテストの為にMSに搭乗した経験もあります。まだまだOSの問題が解決していませんが、最悪予備パイロットとして頂いても構いません。私もこのまま死にたくありませんから」
リカルドの意見を聞いてラミアス大尉は悩むそぶりを見せる。バジルール少尉は渋い顔だ。
「……。確かにあなたの能力を野放しにする余裕は私達にはありません。でも……」
「ラミアス大尉!」
「先任大尉は俺だがこの艦やGのことはわからん。ラミアス大尉、君が艦長だ! 判断は君に任せよう」
「私が!? ――わかりました。ヨハンソン主任、あなたにアークエンジェル艦長として協力を要請します。整備班に加わり、MSやMAのソフト面の調整をお願いします。軍の機密に触れるので地球連合軍の基地に辿り着いたらすぐに解放……とはいきませんが、最大限あなたの安全を保障します」
ラミアス大尉が葛藤の末に協力を要請する。リカルドは彼女の人柄を既に知っている。言葉通り最大限便宜を図ってくれるだろう。こちらから出来ることはただ生き残るために力を尽くすこと。
――そして、スカンジナビア王国のスパイであることを隠し通すことだ。
「協力要請を受諾します。早速、ストライクやMAの調整に向かっても? 敵は待ってくれないでしょう」
「ええ、お願いするわ。バジルール少尉、マードック軍曹に通達をお願い。私はキラ君にストライクに再び乗ってもらえないかお願いしに行くわ」
「……分かりました。リカルド主任はMSデッキへ向かってください。現場へは通達しておきます」
「畏まりました」
指示に従い、リカルドはMSデッキへと向かう。戦闘に備えてストライクの調整が必要だろう。それにキラ・ヤマト少年が調整したというストライクのOSも気になるところだし。
状況に流され、アークエンジェルの臨時クルーとなったリカルドであったが、この決断が後の彼の運命を大きく変えることになる。