機動戦士ガンダムSEED 白夜の守護者   作:椎名伊織

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PHASE-04:サイレントラン①

「ヨハンソン主任! キラ・ヤマトがストライクのパイロットになりましたので、主任はメビウス・ゼロの調整を優先し、OSの開発は一時中断してください」

 

 ナタル・バジルール少尉がジンのコクピットの入り口に立ってそう呼び掛けてくる。

 

「承知致しました。しかし、わざわざ副長殿が来られるとは」

「整備班はストライクとメビウス・ゼロに掛かり切りですし、ブリッジクルーも手が離せません。保安部は救助された民間人に付かなければなりません。艦長と交代でブリッジを離れる私が来るのが適任でしょう」

 

 バジルール少尉は生真面目そうにそう言うとこちらに手を差し出してくる。リカルドは手を止めるとバジルール中尉の手を取ってコクピットから出た。

 が、コロニーからずっとシートに座っていたリカルドはアークエンジェルが宇宙へ出たことをすっかり失念していたため、些か強く飛び出してしまい手を取っていたバジルール中尉とともに宙に飛び出してしまう。

 

「これは……! 失礼しました、バジルール少尉。なにぶん、コロニーからずっとシートに張り付いていたので……」

「……! いえ、私も気が抜けていました……」

 

 リカルドは慌てて釈明する。バジルール少尉は急接近したリカルドに驚き半分、意外とがっしりした体格の異性に触れた照れ半分といった様子でリカルドから顔を逸らす。

 

「バジルール少尉もお疲れのようですね。大丈夫ですか?」

「ええ、まぁ……」

 

 二人は壁まで流れ着くと、バジルール少尉はリカルドの手を離した。んんっ! と咳ばらいをすると制帽を被り直した。

 

「とにかくメビウス・ゼロの整備をお願いします。次の出撃には間に合わせたい。素人一人に艦の防衛を任せるわけにはいきません」

 

 そう告げるバジルール少尉の表情に、リカルドは厳しさの中に僅かに罪悪感のようなものを感じ取る。

 

「そうですね。民間人の少年一人に我々大人が責任を負わせるわけにはいきませんからね」

「……! そういうことではっ!」

「分かっていますよ。ラミアス艦長は人情派ですからね。誰かが厳しく皆を引き締めなければなりません。私・・・いや俺は分かっていますから」

 

 ブリッジクルーや数名の士官の雰囲気や関係性は何となく理解している。まだ、顔を突き合わせて話したことは少ないが、アークエンジェルのリーダー的立場にある士官三名の中ではバジルール少尉がもっとも気苦労する性格・立場だろう。

 ヘリオポリス崩壊という重大事件の只中にあって軍の最重要機密を守らんとする彼女の両肩には重い責任が積みあがっている筈だ。メンタルケアは重要だ。悪くなってからケアするよりもそれより以前から対策する方がいい。病気になってから薬を飲むよりも病気にならないための予防のほうがより大事なのは明白だろう。

 リカルドは彼女の立場に理解を示すが、まだそう打ち解けてもいない相手に隙を晒すほどバジルール少尉は甘くない。

 

「余計な気遣いは無用です。それでは」

 

 バジルール少尉は敬礼をすると壁を蹴って居住区のほうへ向かっていく。

 

「……急に詰めすぎたかな?」

 

 まだ関係性が浅い段階で気安かったかなとリカルドは反省しつつ、メビウス・ゼロの調整へ向かう。去っていく彼女が振り返ってこちらを見ていることには気付かなかった。




 ナタル・バジル―ル少尉いいですよね。私がSEEDをリアルタイムで視聴していた時はまだ子供で、この人はいつも厳しいことばかり言う人だなぁと思っていました。
 でも彼女の厳しさは過酷な戦場で生き残るためには必要なことで、人情派のマリューさんや楽観的というか破天荒なムウさんの間にあっては、ああいう立場にならざるを得なかったんですよね。
 彼女の軍人としての在り方や生真面目なところと時折見せるやさしさのギャップが最高に推せますよね。惜しい人だった・・・。
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