転生主人公が非戦闘員なHUNTER×HUNTER   作:ネモ

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大体一年くらい前からポケスリのお世話になってるんですが、
よく寝れた日は良いアイディアが出るので睡眠計測は重宝しております。

ちなみに、本作の執筆中は特に時間が溶けます。
ポケモンぽこあもやりたい、時オカリメイクもやりたい…。
でも、時オカはナビィがどうなるか気になりますねぇ。


合流=約束+道化師+???

「そーいやさ、レアンってなんでハンターライセンス欲しいワケ?」

 

「今更?今まで何度か聞く機会あっただろ…」

 

「…っだぁーもう!色々あって忘れてたんだよ!!ゴンやクラピカ、レオリオのは聞いたけどレアンには聞いてねーなって!仕方ねーだろ!?」

 

 

そう言って、キルアは悔しさやら恥ずかしさが入り混じった複雑そうな表情を浮かべた。まあハンター試験の時は一次試験の時点で俺はクラピカとレオリオの三人行動してたし、二次試験は豚捕まえて丸焼きからの寿司作れって言われた後に崖から飛び降りて卵茹でただけ。

 

三次試験のトリックタワーに関しては、俺が後でキルアからめっちゃ怒られる羽目になった塔からの飛び降り別行動。四次試験でゼビル島のドキドキ!ハラハラ!七日間サバイバル!*1では俺自身がクジ引きの運が悪く、何ならナンバープレート自体も半分がハンゾーから譲られたものだった。

 

そして、最後の最終試験ではキルア兄がキルアと対峙する羽目になった訳で…。別にキルアも俺も意図したことじゃないが、何かと別行動していることが多かった。かろうじて移動中の飛行船内で揃って行動していたくらいだが、その間の話題に上がってくることはなかった。

 

 

「まあ、こんだけ言っといてあれだけど…実は特に決めてねーんだよこれが」

 

「はぁ?」

 

「ごめんて…」

 

 

キルアから聞いた話なんだが…俺とは別でゾルディック家に入ったゴン・クラピカ・レオリオの三人は、どうやらゾルディック家に代々使えている執事などの使用人達が暮らす、専用の屋敷にて時間稼ぎされているんだとか。訳あって本館にはとても招けないとかで…色々事情があるらしい。

 

キルアはキルアで、親父さんと腹割って込み入った話をしていて時間がかかったんだとか。俺としてはキルアの言葉を信じたいのだが、少年姿で一緒にいるフォグからは何かを怪しんでいるような雰囲気を感じる。…俺は、それがちょっとだけ表情豊かになっている気がした。

 

 

「まあその…俺とフォグにはさ、ハンターライセンスがないと困ることがあったんだよ」

 

「…困ること?」

 

「そう、主に外で自由な行動ができないとか…とにかく行動制限系な」

 

「うわ、めんどくせー」

 

 

そう言いながら歩いていると、いつの間にか外廊下的な通路に出ていた。我が家故に迷いなく歩くキルアの隣を維持しつつも、意欲的に歩こうとしないフォグの手を引いて移動する。山一つを私有地としているだけあって、庭の果てしない広さが薄暗くなってきている外に続いていた。

 

だが、いくらゾルディック家がクルルーマウンテン丸々一つを私有地としていても、関係者が歩く道などは流石に全ては舗装されていなかった。半ば外庭と化した中庭もどきの周りがレンガの道で舗装されていたりで、それ以上は流石に手が回り切っていないようだ。

 

 

「てか"試しの門"を見たあたりで分かってたけど、やっぱりキルアの家はデカいし広いな。まさに豪邸!って感じ」

 

「そりゃな。でも、冬は雪だらけで夏はセミだらけだし…慣れると移動距離が長いしでウザいぜ?」

 

「あー…なるほど

 

 

なんだか、俺はその問題に既視感があった。全員が体験するかと言われたら分からないが、今まで通ってきた学校の校庭がバカみたいに広いと似たような現象をちょっとだけ味わう。ちなみに言うがハンター試験でサトツさんが出てきた、一次試験のような果ての分からないものではない。

 

確かに果ては見えているし、休み時間とかで校庭に出て遊んでいる間は全くそれを気にしない。だが、不意に学校のチャイムがなって移動しなくてはというタイミングになって、周囲に誰もいなくなると校庭の果てが見えていても体感的により遠く感じるのだ。

 

まるで、その場に自分だけが取り残されてしまったかのような不思議な孤独感があり、子供の頃の俺はそれが凄く苦手だった。正直、移動距離なんて短ければ短い程になんぼあってもいいのである。まあ、それによって逆に苦労することもあったヤツがいるので限度は必要だろうがな。

 

苦労と言ってもまあ、単に学校から家がめっちゃ近いからこそ友達からそれをひたすら指摘されたり、割とプライバシーがないことだ。それこそズル休みをしてしまった日にはもう、家から出られないくらいには学校が近い。学年関係なく家を知られるのは可哀想でもあった。

 

 

「うおー…ずっと見上げてたら首痛ぇくらいにこっちもデカいな。これが使用人の人達が暮らしてる屋敷なのか?」

 

「当たり前だろ。だって門の外に住んで、一々あの門潜って外から来んのスゲー手間だぜ?」

 

「それは確かに」

 

 

閑話休題。

 

そうこうしている内に、ゴン達が時間稼ぎされているという使用人達用の屋敷に辿り着いた。自ずと上を見上げてその全貌を眺めようとしてみるが、やはり本館とされていたゾルディック家の母屋とはまた違った雰囲気がある。ただ、どっちもデカいことに変わりはない。

 

俺が呑気に目の前の屋敷の大きさに圧倒されていると、フォグが不意にキルアの服をちょっと引っ張ってから目線を感じると主張する。キルアがその言葉に「…どこから?相手は?」と問いかけると、フォグは相手が女性だと告げる。途端、キルアの表情が険しくなった。

 

 

「お待ちしておりました。キルア様、そしてそのご友人を含めた御三方はどうぞこちらへ」

 

「ゴン達は?」

 

「只今、ゴン様・クラピカ様・レオリオ様は応接室にてゴトー達と共に御三方をお待ちです」

 

「サンキュ」

 

 

フォグ曰く目線そのものの距離は遠いらしいが…それでもキルアは急いだ方がいいと感じたようで、俺の手を引いて芋蔓式にフォグも移動させる形で駆け足になっていた。使用人屋敷の裏口的なところで立っていた人に、俺は通りすがりで会釈してその場を去った。フォグもそれを真似する。

 

ダークオークのような暗めの落ち着いた木材がフローリングや壁材として採用されている廊下を駆け足で移動していると、しばらく歩いた先に少し開けた間が広がっていた。どうやらそこが応接室らしく、廊下から見える程に使用人が集まっているのが見えた。

 

 

「ゴーン!!」

 

「キルア!!」

 

 

多分キルアが手を離すのを忘れているんだと思いたいが、俺は目の前でキルアがそう言うとゴンが返事をするのと同時に応接室へ引っ張られた。我先にとばかりの勢いで一目散にゴンのところへキルアが駆け寄り、無論俺とフォグも芋蔓式に連動して引っ張られた。

 

 

「おわぁっ!?」

 

「あ…そうだ、レアンの手引っ張ったままだった」

 

「急に止まるなって!ぶつかっちゃっただろ…!」

 

 

キルアに手を引っ張られて電車ごっこもどきになっていた俺は、ゴンと再会して立ち止まったキルアの背中にそのままぶつかってしまった。同様にフォグも俺の背中にぶつかって、車道だったら連鎖的な事故の典型例みたいになった。逆玉突き事故でもいい。

 

応接間のソファにはゴン・クラピカ・レオリオが並んで座っており、その周囲を厳つい顔の執事を筆頭にした使用人達が囲むように立っていた。明らかに一人だけヤクザじみた雰囲気を持っていたが、見た目だけで判断するのはネテロ(ジジイ)にも失礼だからそれ以上気にしないことにした。

 

 

「レアン!!フォグも!!良かった、無事だったんだね!」

 

「怖いこと言うなよ…」

 

 

その直後で俺はいつの間にか、ゴンから無事じゃない判定されていたことが判明してショックを受けた。だが、全員集合して嬉しそうに笑う傷まみれなゴン、それを困惑気味に見ているフォグを見て苦笑いする。まあ、いい感じに収まったならわざわざ後に引き摺る必要もないか。

 

 

「後え~っと、クラピカ!リオレオ!!」

 

「おいおい、俺達ゃついでか?」

 

「レ オ リ オ!!」

 

「ははっ、()()()()()だよ()()()()()

 

 

キルアがわざとらしくクラピカとレオリオをそれぞれ順番に指差すと、なんだか窶れた様子のレオリオが少し肩を落とした気がする。それを隣に座っていたクラピカがレオリオへ咎めるように言うと、キルアはそんな二人のやり取りを見て心底嬉しそうな笑みを浮かべて、肩を竦めた。

 

俺としては、その微笑ましい状況に関しては全く問題ないのだが…。それ以上にゴンの顔がいつもよりも腫れ上がっていることが気になって仕方がない。何かがあったのは丸わかりだが、ゴンの表情や反応的にはそう悪いものでもなかったんだろう。

 

 

「ってなワケで久しぶり!よく来たな!そんで、再会早々にどーしたんだよゴン?ヒデー顔だぜ?」

 

「キルアこそ」

 

 

何気なさそうにゴンとキルアが笑い合うのを見てホッとしていたら、不意にキルアからグッと手を引かれた。そうして輪の中に引き込むように引きずられると、ニヤリとした揶揄うような笑みを浮かべてキルアが俺を見ていた。相変わらずというか…猫のような笑みを浮かべんだな、キルアは。

 

 

「…なーに他人事みたいな顔してんだよ…ほら!前出ろレアン」

 

「ちょっ!?急に引っ張んなって!」

 

 

直後、俺は普通に怒っている様子のレオリオに捕まった。律儀に俺へ目線を合わせるように屈んでくる辺りは、なんともまあレオリオらしいというか…。だが、そんなレオリオの手はそれぞれ俺の肩に置かれて、グラグラと前後に揺らして来る。

 

 

「あ!おいレアン!お前門潜ってからどこいやがったんだよ!このバカヤローが!心配したじゃねぇか!!」

 

「れ、レオリオ…!ご、ごめんて…!お、俺も悪気があったとか、そういうんじゃ…!次はなんか連絡しとくから…!」

 

「…レオリオ、私も言いたいことは分かるが…それくらいにしろ。レアンが吐きそうな顔をしている」

 

 

どうも三半規管が弱いのか、あまり揺れに強くない俺は何度目かの揺さぶりで胃からの逆流を薄っすらと感じ取っていた。ヤッベェぞ*2これ…。ギブを訴えるようにレオリオの腕を軽く叩くと、その仕草と俺の顔色を察知したらしいクラピカが助け舟を出してくれた。

 

 

「あぁ…悪ぃ、レアン。お前はこん中で一番体弱いから、別行動してっと色々と気になんだよ。ハンター試験でやらかした前例もあるしな」

 

「……」

 

「ん?…なるほどな、先人ハンターのアンタが一緒に行動してたなら大丈夫か。…つーか、だからって呑気に寝るなレアン!それはそれで肝が据わりすぎだっての!!」

 

「だからごめんて…」

 

 

わしゃわしゃとレオリオから雑っぽく頭を撫でられて解放されたので、俺はぐしゃぐしゃにされた髪を軽く手で整えた。俺的にはしてやられた感が否めない中、ようやくハンター試験以来に全員集合したゴン達の会話風景をフォグと見ていた。

 

 

「つーか、それより早く行こうぜ!どこでもいいからさ。ここにいるとお袋がうるせーんだよ」

 

「確かに、もうあの母親には会いたくねぇな」

 

「左に同じく」

 

 

不意に、思い出したように焦るキルアの言葉にレオリオが同意する。その表情はうんざり、と顔に書いてあるような感じだ。徐にクラピカも立ち上がって同じような返答をする。…一体何があったんだ?フォグは何か知ってるか?…え、キルアのお母さん包帯しまくってんの?

 

それで…変なゴーグル付けてて、猿みたいにキーキー言ってゴン達を威圧…?…これほどまでにヒステリックな母親を知ったのは、今世の俺の母親(笑)以来だ。え、マジで何?それでゴン達に文句言うだけ言って、そそくさと去ったって?…何があったらそんな母親からキルアが生まれんだ?

 

 

「…うん、キルアには…その…悪いけど」

 

「いーんだよ!気にすんなゴン!」

 

「キルアも大変なんだな…」

 

「だぁーッ!!そういうのいーから!!早く行くぞ!!」

 

 

どういう理由なのか分からないが、キルアは頬を染めてどこか苛立ちにも恥じらいにも見える表情で、自身の白い髪をぐしゃっとかき混ぜる。毎度思ってるが、キルアの髪って猫っ毛だし雨の日とか冬とか大変そうだよな。静電気とかドライヤーで乾かす時とか大変そうだ。

 

 

「ゴトー、お袋が何言っても付いてくんなよ」

 

「承知しました。行ってらっしゃいませ」

 

 

ゴン達と一緒にキルアを待っていた執事達の中で、一番威圧感みたいなものを放っていた男にキルアがそう言う。…へえ、あの人ゴトーっていう名前なんだ。日本だったら絶対()()だよな、その名前。なんか親近感あっていいな。あとそのメガネ似合ってるぜ、アンタ。

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく終わったハンター試験。その会場から離れるように移動する。そして、ソコで受け取ったハンターライセンスを歩きながら眺める。様々な機関で身分証明の代わりで使えると言っているだけあって、その装飾や触り心地は上質なモノだった。

 

 

「うーん、ボクのトランプよりひ弱…♪」

 

 

こんなカードじゃ、守るコトよりも壊さないかが気になっちゃうな。そう思いながら、以前であれば一手間必要か…最悪伸縮自在の愛(バンジーガム)で移動する羽目になる公共交通施設へ向かう。案の定、ボクだって自覚あるくらいに怪しい(ピエロ)姿に邪険な顔をされた。相変わらずヒドイな。泣いちゃうかも。

 

 

「すみません、そこの方」

 

「…んー?ボクに何の用だい♠︎」

 

「失礼ですが職質をさせて頂きたく…」

 

 

だけど、ここぞとばかりにハンターライセンスを提示すると近くの警備員や係員がハッとしたような顔になる。…へぇ、やっぱりこういう時も使えるんだ。これなら人をうっかり殺しちゃってもどうにかなりそうだし、疑われて追いかけっこ騒ぎをしなくても良くなりそう。

 

 

「うんうん、ボク怪しい見た目だから仕方ないよ♦︎」

 

「い、いえ…失礼しました。お気を付けて」

 

「じゃあね♣︎」

 

 

そう言ってあっさりと通過する。バカみたいに簡単な正面突破でちょっと面白くないケド、確かに有用ではあった。…そりゃあの団長(クロロ)が欲しがってもおかしくないモノだけど、使うんじゃなくて売っちゃうのか。相変わらず"クモ"は何をしたいのか、ボクにはサッパリだ。

 

そう言えば何だかんだでボクにしては珍しく色んな人と話した気がする。だけど、あんまりイライラはしなかったし…大したストレスにもなっていなかった。ハンター試験にイルミが居たのも大きいけど、それ以上に…あぁ、本当に楽しみ…。

 

 

「…ククッ…ゴン、君はどのくらい実ってくれるのかな♥︎」

 

 

足取り軽く歩きながらも、思わずしてしまう舌なめずりがやめられない。ボクがハンター試験で持っていた44番のプレートを…ゴンが返しに来ると宣言したあの時から、今に至るまで…そう!ボクはまるでお預けをされているような気分で、いつ爆発するか分からない欲求を抱えていた。

 

イルミにソレを言ったらイルミは無言で引いていたケド…仕方ないことなんだよ、ボクの性分なんだから。ほとんど焦らしと言っても過言ではないソレは、ボクに首輪を嵌めて従属をさせてくる。でも、それくらいにゴンへの期待値はとぉっても大きい。

 

 

「おっと…♠︎興奮してたら、メイクが取れちゃったよ…♦︎」

 

 

かなり興奮していたのか、いつからかの癖で続けているピエロメイクが少しずつ剥がれているのが建物のガラスに反射した。今が昼間じゃなくて良かったと思いながらも、足早に近くのトイレへ滑り込む。本当は部屋で鏡を見ながらやりたいケド…。

 

 

「今は、ゴンが余計な虫に食われないようにしないと…♣︎」

 

 

まだ、ゴンは(オーラ)を知らない。下手にヨくない知識を与えられて、せっかく実りかけた成長の余地が潰されるなんてダメなんだよ。ボクが許さないし、ボクが許せない。それに、ゴンみたいに真正面から正々堂々と突撃してくるタイプ、結構好きなんだよね。

 

しかも、ゴンはボクの読みが合っていれば…あの性格だ、きっとイイ強化系になる。…そんな強化系の念能力者とヤるチャンスが目の前にあるのに、食い付かないのはあり得ない。流石、釣竿を持っていただけあってゴンそのもの自体が釣り餌みたいだ。

 

あぁ…ダメ。

どうしても、ヤりたい。

 

ヤりたい…。

 

ヤりたい、ヤりたいヤりたい…!!

 

早く実ってよゴン、レアンの青い実が腐り落ちるその前に!!

 

ボクが、欲しくて欲しくて飢える前に!!

 

 

「ハァ……♥︎」

 

 

止まらなくなってそんなコトを考えていると、自然と息が荒くなる。あぁ、アツい。犬みたいに息を荒げて、恍惚とした表情になってしまう。ボクの吐くソレは、恋人同士が吐き合うような甘ったるい吐息じゃない。ヤり合いを目前として、相手との競り合いを夢想する道化(狂人)だ。

 

だけど、不意にボクの携帯が鳴った。今いる場所がトイレの個室で良かったと思いながらも、息を荒げたまま携帯を手に取る。携帯の通知は新しいメールの知らせではなかったみたいで、ボクが見慣れた名前が携帯にかかってきた電話主として表示されていた。

 

 

「…ふ、フフ…♠︎」

 

『…えっ、キッショ』

 

「えぇ?ヒドイよイルミ、電話をかけてきたのはソッチだよ♦︎」

 

『…ま、いいや。ヒソカだし。あと、今回オレが話したいのはソレじゃない』

 

 

そうしてイルミから伝えられたのは、ボクが団長(クロロ)から頼まれていたコトに繋がる情報だった。イルミが探していた"死神"が、レアンの影に潜んでいた存在なのは会話から察してたケド…。まさか、その"死神"が暗黒大陸産とは思わなかったな。どうやって来たんだろう?

 

 

「ちなみにさ、どうしてイルミは"死神"の出身が分かるんだい?」

 

『……身近に似たような力を、断片的に持ってるヤツがいるんだよ』

 

「そっか♣︎」

 

 

電話越しだけど…何だかそれ以上追求するなって言いたげな沈黙だったから、ボクはそれ以上追求しなかった。…イルミとは、仲間であり友達みたいなモノだからね。まあ、きっとイルミはボクのコトを友達じゃないって言うかもね。…()()()()()で辛いよ、…なんちゃって。

 

 

『…っていうかさ。ハンター試験でキル説得してた時、邪魔してきたの、なんで?』

 

「あぁ…ソレはね…♥︎」

 

 

その後、ボクは興奮がちょっと萎えるくらいにイルミから文句を言われた。確かに、ハンター試験の最終試験中にイルミが実の弟クンを説得してる時、ボクはレアンの妨害を妨害しようとするイルミに介入した。なんでって聞かれたら、だって面白そうだったからだよ。

 

それに、ボクですらイルミが弟クンに向けるソレは異常だなって思うくらいだから。…結果はどうであれ、ちょっとくらい良かったんじゃないの?とは思っていた。まあ、中途半端に手助けしちゃったからレアンは色々思ってそ…

 

 

「…レアンは思ってることがかなり顔に出るタイプだね♦︎」

 

「あぁ…うん、俺がヒソカを怪しんでるのが丸わかりってことだろ?」

 

「もしかして意図的?それはそれで傷付くなぁ♣︎」

 

「いや…だけど、ヒソカは俺が知ってる中でもまだ常識の範疇に片足突っ込んでくれてるからマシ。でも傷付いたならごめん。そういう意図はなかった」

 

 

───うーん、もう思ってないかな、あの感じ的に。

 

ゴンは確かにボクからして好ましいし、あの素直さで好戦的な感じが好きなんだ。だけど、レアンはまたソレとは違う系統で目を惹く。…なんて言っていいか分からないけど、レアンはまるで、酸いも甘いも噛み分けた大人のような…そんな一瞬がある。

 

…今よりも随分昔に、行き場を無くした幼い頃のボクがサーカス団で道化をしていた時、似たような感じをしている人が居た気がする。でも、その人は今になってもボクからすればどうでもいい人だった。だから名前が思い出せないケド、レアンが一番近いのはその人だ。

 

感情豊かで起伏が激しく、表情がコロコロ変わる。ボクよりも道化(ピエロ)らしい状態なのに、レアンには筋が通った中身がある。ボクは、ソレが無くても問題なかった。ここだけ見れば、レアンはボクにとって意味不明な何かだ。でも、…謝られた。だから、困った。どうしたらいいのか、分から

 

 

『…賢者にでもなってるの?それかイっ』

 

「イルミはボクをなんだと思ってるのか、今の一瞬で大体分かったよ♠︎」

 

『電話出て、息荒げてる方が悪い。あと日頃の行い』

 

「クククッ…相変わらずヒドイなぁ…♦︎」

 

 

 

 

 

 

イルミと電話をして、"死神"に関する新たな情報を得てから約二週間くらいが経過した。道化(ピエロ)らしく軽率な態度で受付の人とやり取りをしながらも、慣れたように天空闘技場へ足を踏み入れる。ボクは期待の笑みをトランプで隠して誤魔化して、指定された部屋へ入った。

 

レアンの件をハンター試験が終わってすぐに団長(クロロ)へ連絡を入れた以上、レアンとは早めに連絡を取る必要があるケド…。でも、レアンと電話番号を交換した今はゴンの方を優先したい。アレを持って挑んでくるであろうゴンと、早くヤり合いたい。

 

だけど、その為にはやっぱりゴンが(オーラ)を知って鍛えられるところじゃないと無理だ。必要最低限の基礎だけでいい、実り立てのゴンが欲しい…。できるなら、誰にも手を付けられないままの一番最初が欲しいんだ…。初めて(オーラ)を知ったゴンと、ヤり合いたい。

 

自ずと喉が渇き、狂ったような笑みを浮かべてしまう唇を舐める。ゴンが実る下地が揃ってるのは天空闘技場が一番に上がってくるだろうと見込んで、ボクはそこで待ち構えることにした。ゴンには、余計な洗礼なんて必要ないからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、無事に合流した俺達は今度こそ全員揃う形で行動を再開した。移動中は、主に俺とゴンが終始はしゃいでキルアとフォグを連れ回した。レオリオとクラピカがほとんど保護者枠になりながらも、俺達は結果的に徹夜する形でデントラ地区の町へと到着した。

 

 

「てか、五人ってどうやってこっち来たんだ?やっぱハンターライセンスか?」

 

 

キルアがふと、町中を歩いている途中にそんなことを呟く。案の定、ある意味頑固なゴンを筆頭にフォグ以外の全員が苦笑いを浮かべる。フォグは入国とかそういう手続きなくとも不法侵入可能なので、一旦論外だ。だが、キルアを除いた四人はゴンに釣られて観光ビザで入国した訳で…。

 

 

「はぁ!?観光ビザで来てんのか!?ハンターライセンスを使えば観光ビザなんてなくても、ずっと滞在出来るんだぜ?」

 

「俺達もそう言った」

 

「でもまあ…ゴンに釣られて観光ビザで来ちゃったというか…」

 

「だが、今思うとここまで期間が掛かるとは思ってなかったのは色々と迂闊だったな」

 

 

別に批判している訳ではないものの、レオリオ・俺・クラピカの順で経緯を述べた。事実、俺達はゴンの熱意に負けて乗ってしまった。それは反省すべきことだが、確かに最初は観光ビザで十分事足りるだろうと思っていたせいもある。一概にゴンだけのせい、という訳ではない。

 

 

「う~~……だって決めたんだもん。やること全部やってから使うって!」

 

「何だよ?やることって」

 

「え~っと……お世話になった人に挨拶に行って……カイトと連絡とって落とし物返したいし。でも一番は……」

 

 

キルアからやることが何なのかと聞かれたゴンは、沢山のことを頭の中で整理整頓でもしているのか、珍しく考え込む。多分、その中に手紙を送っていた相手のミトさんも居るんだろうな、と俺は一人でほっこりする。何というか、ゴンが関わってほっこりすることって多いな。

 

…ゴンがほっこりするって何って…あー、説明が難しいな。えっとなフォグ、こう…気持ちがほかほかして気が緩む感じっつーか…。いや、油断じゃない!そっちの緩むじゃなくて、落ち着くとか安心するって意味での気が緩む、だ。分かったか?…おい、首を傾げるな。

 

俺とフォグがそんな会話をしていると、ゴンが徐にポケットから白くて丸い物を取り出す。レオリオとクラピカはそれが何なのか知っているようだった。何かと思って俺とキルア、そしてフォグがそれを覗き込む。そこには、44と書かれているハンター試験用のナンバープレートだった。

 

俺は、思わずキルアと揃ってギョッとしてしまう。だって、それは番号的にヒソカが試験中に付けていたナンバープレートそのものだからだ。俺はなんだかんだで電話番号を交換してしまったとはいえ、一応ヒソカは危ないヤツであることに変わりはないのだが…。

 

 

「このプレートをヒソカに顔面パンチのおまけ付きで叩き返す!!そうしないうちは絶対ハンターライセンスを使わないって決めたんだ!!」

 

「…頑固かよ」

 

「確かに」

 

 

まるで某黄門様*3のように、ナンバープレートを掲げているゴンに対してキルアとそれぞれでツッコんでしまった。よっぽどのことがあったのは反応的に分かるが、恐らくそれが発生したであろうゼビル島の時、俺とキルアはゴンとは行動していなかったので分からない。

 

…だが、それだけ意気込んでいるゴンの気持ちを無理に捩じ伏せてまで、その気持ちを否定するのも何か違う気がする。レオリオとクラピカも大体そんな気持ちなのか、呆れたような表情をしていた。チャレンジ精神ってのは悪くないが、無謀と勇気は別のものだからな。

 

 

「…で、ヒソカの居場所は?」

 

「……知らない

 

「アホ」

 

「うぅ……」

 

「うんまあ…次から、次からもうちょっと考えような、ゴン」

 

 

キルアから鋭い一言を切り返されて、ゴンはしゅんと反省するように項垂れてしまった。流石に可哀想だったので、横からフォローするとゴンが「がんばる…」とか細く呟く。いつも明るいゴンが項垂れていると、何だかこっちも戸惑ってしまうな…。

 

そんな中、クラピカがため息を吐いてから口を開いた。

 

 

「私が知ってるよ」

 

「本当!?」

 

「ああ」

 

 

素早く顔を上げてクラピカに詰め寄るゴンを横目に、俺はちょっとだけホッとしていた。キルアも少しだけ似たような雰囲気をしている。やっぱり、ゴンが落ち込んでいるのを見るとこっちが無性に落ち着かない。…なんか、これだけ聞くと恋みたいだな。

 

 

「……最終試験の時か?」

 

「それもあるし、講習会の後にも聞いた」

 

「え?誰から?」

 

「ヒソカ本人からだ」

 

 

俺の疑問にクラピカがそう言うと、キルアが分かりやすく顔を顰めた。ま、ヒソカは見た目通り愉快犯的なところがあるからな…。言ってることを信じていいのか、確かに悩むところではある。本当のこと言ってる時もあるし、悩むんだよなぁ。そこでレオリオが真剣な顔でクラピカに訊ねる。

 

 

「なぁクラピカ、ずっと気になってたんだが…何を言われたんだ?」

 

「……『"クモ"についていいことを教えよう』とな。そして、講習会の後に問い質したら『9月1日。ヨークシンシティで待ってる』と言った」

 

 

…なんでヒソカがそんなことをクラピカに伝えてくるのかは置いておいて、要するに待ち合わせ…?でいいのか?ヒソカのことだし、多分単なる待ち合わせではなさそうだが…。それもゴンとかじゃなくて、クラピカっていう人選が意味分からん。案の定、ゴンが首を傾げる。

 

 

「クモ…?それって、空に浮かんでる方?それとも、足が生えてて巣を作る方?」

 

「巣を作る方だ。そして、"クモ"とは幻影旅団の別名でもある」

 

 

クラピカがそう言うと、微かにフォグを除いたこの場の全員の雰囲気がピリつく。そりゃ、クラピカの話を聞いた上でヒソカを通してより現実として近付いて来ているのだから、過敏にもなる。…というか、クラピカが纏っている雰囲気がそういうものなので、当てられているのかもしれない。

 

 

「ヨークンシンシティか…幻影旅団が出張ることも考えると、恐らくは…」

 

「あぁ、そうだレオリオ。恐らく奴らの目的は、あそこで毎年大々的に行われているオークションだ」

 

「あー…あれか、聞いたことはあるかも」

 

「キルアは知ってるの?」

 

「…噂程度は」

 

 

話を簡単に纏めると…まずヨークンシンシティはヨルビアン大陸西海岸の都市で、毎年九月に世界最大のオークションを行なっていることで有名らしい。オークションというだけあって、数多くの珍品や貴重品が競売にかけられる為、その10日間という開催期間に様々な人が集まるんだとか。

 

無論、一般向けのものもあれば闇市的な犯罪組織ばかりが参加する競売もあるらしく、その期間中は危険でもあるようだ。それこそ、金持ちらしい相手にスリを行うだけでほぼ一攫千金が行える訳なのだから、そりゃ一時的でも犯罪率は多くなるだろう。

 

 

「そして、私はそこで同胞の緋の眼を探す予定だ。あれば、ではあるがな」

 

「…そっか…。見つかるといいね、クラピカ」

 

「あぁ、そうだな。一つでも多く見つかることを願っているよ」

 

 

…クラピカとゴンの会話を見ていて、俺もヒソカに理由を聞いた方がいいのか迷ってきてしまった。ヒソカが妥当な理由を持っているとは限らないが、聞く手段があるのだから聞きたくなっている訳で…。でも、ゴン達はこの後どういう風に行動するのかにもよるところがある。

 

そう、俺はフォグにもっと色んなことを学ばせたいんだ。色んなものを見せて、色んな体験をさせて。その過程で何を見るのか、何を学ぶのかを近くで感じ取っていきたい。だが、その対象は大人ではない方が望ましい。可能なら、フォグと同じように今から色んなものを見る、子供がいい。

 

それこそ、ヒソカをフォグの常識にしてしまうと、偏ったことばかり学ぶことになる。だが、ゴンやキルアと共に行動させることで沢山の考え方に触れ、沢山の反応を知るだろう。ずっと俺と居るだけじゃ、ダメなんだよフォグ。そう言ったら、また泣いてしまいそうだが…。

 

でも、それが俺の復讐なんだ。

 

ごめんな、フォグ。

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

 

初めはなんだったか覚えていない。

 

いつの間にかそこにいて、いつの間にか同胞が消えていく。何の意味もない、霧のようなナニカ。ただ、あいして欲しかった。まるで人間が生きるのに水がいるように、あの時はそれと同じ程にあいを求めていた。

 

あいが欲しかった。

 

あいが欲しかった。

 

かつてなんだった思い出せないから、あいを求めた。

 

 

「…おわ。…びっくりしたぁ」

 

 

ある日突然、あなたは現れた。

 

 

「何だお前…??」

 

「…あい、あい」

 

「……うーん、お前ってサボ◯ー*4って名前だったりしない?身体が霧っぽいのを除いたら、マジでそれなんだけど」

 

「あい、あい」

 

「…………多分、それ鳴き声的なヤツだよなぁ。じゃ、サボ◯ーじゃねえのか」

 

 

綺麗な金髪をした、赤い瞳のあなた。

 

 

「てかさ、お前ってこのゾンビみたいになるの効かないの?大丈夫なのか?」

 

「あい、あい」

 

「…うんまあ、そう言うのは察してたけどさ。蝿を媒介にしてるって考えたら、霧が身体のお前には効かないよなあ」

 

「あい、あい」

 

「合いの手どうもありがとう。…って、言っても伝わらねえか」

 

 

その瞳はコチラを見て、いつしか微笑むようになった。

 

 

「なあ、お前ってこっちの大陸だと随分と可愛くて大人しいヤツなんだな…」

 

「あい、あい」

 

「多分、頭がおかしくなってんのは分かるんだけど…。あの緑色の全裸マンよりはすこぶる可愛いよお前は」

 

「あい、あい」

 

「よし、お前にはこの花をやろう。…あ、ごめん。そうか、持てない…よな。すまん」

 

 

あなたは少しずつ、楽しそうに微笑むようになった。

 

 

「…なあ、お前って頭あるのか?」

 

「あい、あい」

 

「いや、明らかになさそうなところ聞いて悪いんだけど…」

 

「あい、あい」

 

「……えぇい、痛かったりしたら言えよ??」

 

 

頭を撫でてくれた。

頭なんてないけど、撫でられる度にあったような気がした。

 

 

「あのさ、何だかんだで長いこと一緒にいるし…名前で呼びたいんだが…」

 

「あい、あい」

 

「……えっと、頷いたって認識するからな?」

 

「あい、あい」

 

「じゃあ、今日からお前の名前はフォグだ。英語で、霧って意味が……ってあー、英語ってこっちじゃ意味ないんだっけ…」

 

 

あなたは()()()という名前を付けてくれた。

 

嬉しかった。

あなたから貰った、自分だけの名前。自分の証明。

 

 

「フォグ、これなぁんでしょうかっ!」

 

「…えぇいぃ(ヘビ)!」

 

「じゃあこっちは何でしょう!」

 

あぁあぁあぁ(あたま)!」

 

「……なるほどなあ、見事に五十音の母音しか話せない…と。よし、協力してくれてありがとうなフォグ。今日は沢山撫でてやろう」

 

 

あなたが証明してくれた。一緒にいることを許してくれた。嬉しくて嬉しくて、もっとずっとあなたと一緒に居たいと思った。

 

 

「フォグー、そこ危ないから退いててくれ」

 

「あい、あい」

 

「っと……よし、これで仮拠点くらいにはなるだろ」

 

「あい、あい」

 

「はぁああ……マジでフォグがいるだけで場が和むんだよなあ。あの緑色全裸マンとは違って、かなり可愛いし…」

 

 

あなたは大事にしてくれた。あなたに何もあげられないのに、あなたは沢山をくれる。あなたのように口があれば、あなたと話せたのかな。あなたのように四肢があれば、あなたを引き止められたのかな。あなたのように人型であれば、あなたと居てもいいのかな。

 

 

「なあフォグ、フォグって性別あんの?」

 

「………」

 

「えっ……あのフォグが黙った……だと…!?*5

 

「………あい」

 

「ごめん、頼むから拗ねないで…俺が悪かったから…」

 

 

あなたのように心があれば、あなたをくれるのかな。あなたのようになれる気がしない。人型の身体も持っていない。けれど、あなたと離れ離れにはなりたくない。置いていかないで。あなたと居たい。あなたが居る世界で生きたい。

 

 

 

 

 

 

今も昨日のように覚えている。

 

かつて、足で踏み締めたあの大地を。

 

 

「……」

 

 

あなたが目の前で物言わぬ屍になっていくのを、見つめていることしかできなかった。その肌に蛆が這い回り、あなただったものが食い物にされていると気付いたのはいつだったか。気付いた時にはそうなっていて、どうしようもないところまで進んでいた。

 

あなたが、目の前で崩れ落ちるのを見ていた。なかった身体はいつの間にか出来ていた。ドロドロのぐちゃぐちゃになったあなたの、手だったものに触れた。暖かくなくて、頭まで届かないまま崩れた。どうしたらいいのか分からなくて、それが骨になるまで見ていた。

 

払っても払っても蛆が集まっては増え、集まっては増える。蛆を追い払ったところであなたが戻らないのは、後になって気付いたことだった。どうしたらいいのか分からなくて、ただ動かなくなったあなただったものを見つめるのが精一杯だった。

 

思い浮かぶのは沢山の「どうして?」であり、ずっとそればかりが空回りしていた。また声が聞きたいと願っても、あなただったものの喉から蛆が生まれるのを見た。また笑ってほしいと願っても、あなただったものの顔が少しずつ溶けていた。

 

また知らない場所の話をして欲しいのに、白いドクロとなったあなたは声を持ってない。待ち続けた。ずっと、ずっと。雨が降って寒いと感じた。日が照って、暑いと感じた。雨が降っても、雷が落ちても、太陽の光があなただったものを骨にしても。

 

ずっとずっとそれを受け入れるまで時間がかかった。あなただったものはついに骨だけになって、その骨すらも草木によってなくなってしまうところだった。ようやくそこであなたがもうここにいないことを理解して、沢山の水を流した。

 

沢山、沢山水が流れて落ちた。その時の骨は今も大事にしまっている。胸の奥がギュゥっとする時に取り出して、ボロボロになっている骨を抱きしめた。でも、やっぱりあなたはそこにいなかった。あなたはどうしても、戻らなかった。

 

あなたの居ない世界はちっとも楽しくなんてなかった。嘘つきだ。騙された。どうして置いてどこかにいったの。あなたが居ないと、四肢があっても口があっても嬉しくないよ。だから、あなたがここに来たように、あなたが居そうなところへ向かった。

 

あなたが船に乗ってやってきたと言っていた大地を目指して、大きな大きな水たまりを泳ぐ。なんだか水がヒリヒリして痛かったけど、大したことではなかった。それ以上に、あなたへ会いたかった。つまらない。苦しい。辛い。あなたが居ないなら、あいなんて欲しくなかった。

 

 

「おいおい……報告と違うぜ、外来種さんよォ」

 

「……?」

 

 

あなたが言っていたところにやってきたと思ったら、知らない誰かがいた。分からない、誰だろう。そう思っている内に物凄い勢いで全身が吹き飛んだ。知らない人よりも小さな、あなたから貰った体が宙を舞う。空を、飛ぶのは案外簡単だった。

 

痛い!!痛い痛い痛い!!!

その代わりに、体が地面に触れた時はとても痛かった。肉体的な痛みを体感しながらも、黒くドロドロとした粘着質な血液を撒き散らしてしまいながらも立て直す。大きな水たまりを泳いできたときのヒリヒリとは全く違う、内側から焼け焦がすような痛みで唸り、暴れた。

 

 

「…おかしいのぅ、一撃で消し飛ばしたつもりじゃったが」

 

 

あなたから貰った体が黒い煙を立てている。どうしてそんなことをされなくてはいけないのか、意味が分からなかった。あなたに会いに来ただけだった。痛い、ただそれだけが沢山溢れる。溢れて、溢れて、溢れて、溢れて、溢れて。何もしてないのに、なぜこうなるのか。

 

 

「お前さんにソレ耐えられちゃァ困んだぜ、こっちは」

 

 

明るいソレに、体が悲鳴を上げる。

再度訪れる痛みに悶え苦しむ。どうしてこんなことをしてくるのか、意味が分からなかった。何故否定する。何故拒絶する。ただ、この地に降り立っただけでこんなにも攻撃されなくてはいけないのか。あなたはあんなに優しかったのに、あなた以外はみんなこうなのか。

 

誰か分からないが、アレは邪魔をしているのは分かった。だから、邪魔をするなと叫んだ。自然と手に【禁忌「レーヴァテイン」*6を握る。熱いそれはあなたから貰った体の手を焼いていたが、焼かれた傷を治す速度の方が速い。知らない人が目を見開く。

 

 

「…マジかよ、おい。そりゃ」

 

 

とりあえず、反撃をすることにした。握った熱の塊は、自然と扱い方を教えてくれる。元になった起源はこの熱を災いの杖、もしくは破滅の杖と呼んだ。他にも色んな呼ばれ方をしているってことは、今は一旦どうでもいい。杖だか剣だか分からない、ただ棒状であればいい炎の塊を振るう。

 

ゴウ、と赤いそれが熱と共に空気を切る。遠くから沢山の目線が集まってきているのが分かる。その目線に含まれた意図は、濃厚な恐怖だ。ソレが向けられた途端、力が増幅したのを感じた。そして、ソレが不可思議な歓喜を呼び起こした。もっと恐れられたい。もっと、怖がらせてしまえと。

 

 

「…えっ、それってアリ?」

 

 

目の前の相手が一歩後ずさる。お前も怖がらせてしまおうと、殺してしまおうと新しく付与された本能が叫ぶ。コイツを見せしめにして、邪魔されないようにしようと。それなのに、相手は余裕そうに回避してはずっと何かを考えてばかり。だから、胸の奥がムカムカした。

 

どうして、なんで、お前は怖がらない。

 

怖がれ、この力を目にして。

 

 

 

 

 

 

「で、つまりは人探しに来たっつー訳じゃな?」

 

 

正直、何度も立ち向かっても負けてしまうことが何よりも嫌だった。でも、多分、相性がコイツと悪かった。だから、渋々頷いて攻撃をやめ、従った。余裕そうに逃げるその姿が気に入らなかった。それでも、あなたの命には変えられなかった。

 

ハンター試験という、基本的に簡単すぎて暇になる試験は退屈だった。何より、あなたがここにいないから。戦いにおいて、あの老人を除けば大した敵は誰もいなかった。それより面倒だったのは、あの老人にいつも付き纏う胡散臭い鼠だった。

 

 

「やあ!初めまして!ボクはパリストン=ヒルと申します!」

 

 

見た目が綺麗なものこそ、一番信用ならないことをあなたから教わっていた。だから、あの鼠に騙されることはなかった。火炙りにしたい時は何度かあったけど、あなたを探す手伝いをしていたあの鼠は簡単に殺せなかった。夢を見ている癖に、それがおかしいことに気付かない。

 

…でも、その鼠が心の中に飼っている底知れない寂しさのようなものは、嫌でも分かってしまった。鼠にそれを理解していることを言ったことはない。言ったら言ったで面倒なことになる。だから言わなかった。あれはあの老人に酷く懐いていたから。

 

それこそ、あの老人が強化系だから鼠に好かれているのだろうか。…それは分からないが、あの老人を嫌いになれないのは分かった。でも、やっぱりあなたの方がよかった。あてもなくフラフラと彷徨い歩いて、あなたを見つけられたらと何度願ったことか。

 

あいたい。ただそれだけが、あなたから貰った体を動かしている。瞼を閉じると、いつだってあの時死んでいったあなたの姿が浮かんでくる。…ただ、死なないで欲しかったんだ。約束したのに、また置いて行かれたから。色んなものを見せてくれると、言っていたのに。

 

あいたいんだ。また、あの温かい手のひらで撫でて欲しい、褒めて欲しい。冷たい手のひらじゃ、この願望は到底満たされない。見知らぬ誰かじゃなくて、あなたじゃないといけない。ボロボロになりながらも、色んなことを教えてくれたあなたじゃないと。

 

あいたいだけなのに。金髪を見る度に、あなたのことを思い出す。そうすると胸の奥がひんやりして、足元が不安定に感じる。ソレが嫌だった。今はあなたから貰った体がある。だから、会ったら抱きしめて貰いたかった。なんだって良かったんだ。あなたに会えるなら。

 

あなたが欠けて空いた穴を、何かで埋めたいと思ったのはいつからだろう。あなた以外に穴を埋められるものがないと分かっていても、風が通る度に心が寒くて辛いから。あなたは心臓のようなものだった。だから、誰にもとって変われない。分かっていても、期待はしてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「…フォグ?どうしたんだ?」

 

 

あれから時間が経った今、こうしてあなたと手を繋いで歩いていることがとても嬉しい。姿なんていくらでも変えるから、どうかこのまま側にいて。誰から何と言われようと、あなたがいい。あなた以外なんていらない。例え同族から何を言われようと、あなたの献身に応えたい。

 

願いを叶えることを望まれることはあった。けど、それ以上に沢山のことをくれた。食べ物のおいしさを知った。遊ぶことの楽しさを知った。景色の美しさを知った。挑戦することを知った。誰かに優しくすることを知った。怒ることを知った。

 

やっぱり、あなたと一緒に居るだけで世界はおかしいくらいに楽しくなった。歩いているだけの時間が、こんなに安心するなんて。だから、もう、この手を離さないで欲しかった。約束したことを破らないで欲しかった。もう、置いて行かないで欲しかった。

 

ただ、それだけだったのに。

*1
※レアン視点ではほぼこんな感じ

*2
元ネタはお笑いコンビ・コロコロチキチキペッパーズのナダルさんの代表的なギャグ。

*3
実質答え。水戸藩の第2代藩主、徳川光圀の別称。あるいは同人物を主役とした時代劇シリーズの番組名。 概要常陸国水戸藩2代目藩主・徳川(水戸)光圀の事です。

*4
個別指導の学習塾「明光義塾」のテレビCMや広告に登場するオリジナルキャラクター。勉強をがんばる子どもたちの前に現れて、あの手この手でサボるように誘惑してくるユニークなヒール役として知られている。

*5
漫画『BLEACH』にて多用されるセリフ(モノローグ含む)。驚いた時、信じられない事が起きた時などに使われる。

*6
※文字が変なのは仕様です。




今までの投稿時間からなんとなくお察しかもしれませんが、
基本的に投稿日数自体は不定期でも、大体昼間に投稿しております。
この形式は今後も続行する予定です。

フォグの心理描写について

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  • あったら嬉しい
  • どちらでもない
  • 無くても大丈夫
  • 不必要だと思う
  • 本作の筆者/作者に判断を任せる!
  • 答えたくない
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