どうにか生きております。
それ以上に、HUNTER×HUNTERの最新話でゴンとキルアが久しぶりに出てびっくり仰天しました。
そして、本作でやろうと思っていた流れがしれっと一つ破壊されてしまったので、プロット練り直ししてました。
そして、クラピカの話に上がって来なかったレオリオェ…。
「…フォグ?どうしたんだ?」
なんだかフォグがボーッとしていたので、声をかけた。見るからに上の空だったが、フォグ自身はなんでもないと首を横に振った。そんな些細なやり取りの最中、どうやらゴン達の会話も決着がついたようだった。このまま、全員で行動できたらいいけど、流石に無理だよな…。
「じゃ、私はここで失礼する」
「え!?」
「ど、どうして?」
唐突にクラピカから離脱宣言が言い渡されると、ゴンと俺はほとんど似たような反応で驚いて狼狽えた。い、今ここでさよならかよ!?もうちょっと一緒に行動したって許されると思うんだけど!?だが、クラピカにも事情があるかもと思って投げかけた疑問に、クラピカは返答をした。
「最終試験で気に掛かっていたキルアとも再会できたし、私としては一区切りついた。これからは本格的にハンターとして、仕事を探す。オークションに参加する金も要るしな」
「た、確かに…そうだよね…」
…と、止めようもない程に的確な返答だった。そもそも、これを止めてしまうとクラピカの目的を果たせないかもしれなくなってしまう。オークションに出る品目は、買われてしまえばしばらく表に出てこないだろうし…。そう考えると、今回のオークションを逃す訳にはいかないんだろう。
「そうか。……じゃ、俺も故郷に戻るとするか」
「レオリオも!?」
思わず、ゴンと揃ってレオリオを見てしまった。フォグは相変わらず反応が薄いが、俺はレオリオと別行動になるのがかなり寂しかった。だって、言いたいことをめっちゃ代弁してくれんだもん。一緒に居て、爽快ってくらいに心地いいんだよ。
「やっぱり医者の夢は捨てきれねぇ。国立大学に受かれば、バカ高い授業料もハンターライセンスで免除だしな。これから猛勉強よ」
「…そんなに寂しそうにするな。連絡先は交換しただろう?また会えるさ」
「……うん!頑張ってね!」
苦笑いするクラピカの言葉に説得される形で、俺はぎこちなく頷いた。これから寂しくなると思うと、色々と思うところはある。だが、俺はクラピカとレオリオに団体行動を強制したい訳でもないんだ。仕方ないことだと、素直に諦めよう。
「レアンはどうするんだ?」
「俺は…ゴンとキルアについて行こうかな。特に行く宛もないし、見つかったらまた考えるよ」
「……」
「んじゃ、誰も異論なしってことでオレらはテキトーに四人行動してくか」
ハンター試験を受ける時は、てっきり俺とフォグの二人で行動していくのかと思っていた。だが、今になって見ればそれさえもどこか寂しくなってしまう。それくらいには、俺はゴン達と出会えて良かったと思っているし、人数が減ってしまうことを重く受け止めるようになっていた。
前はやりたいことだけを考えて、フォグが成長できるような場を探すことばかり考えていた。俺の復讐はとっくに終わっていたし、俺がフォグにしてあげられることもいずれ無くなっていくと想定していた。しかし、今はその終わりが予想よりも広くなった。
色んなところを見て、色んなものを体験して、色んな人と出会って。フォグはそれによって、より人間らしくなっていくだろう。もしかしたらフォグ自身の決断によっては、俺に反抗する未来もあるのかもしれない。だが、俺としてはそれすら構わないと思っている。
それが、本来暗黒大陸から来る筈もない叡智の塊のようなフォグが、学習してきたことから決断したのなら…俺はもう何も言うことはない。何せ、今まで判断基準を他人任せにしてきたフォグが自分の判断でものを決め、特定のものを排他するかもしれないのだ。
それはきっと、フォグが想定しているよりも大きな社会的圧力になる。今も割とそんな感じではあるが、誰もがフォグの顔色を窺って頭を下げてもおかしくなくなるのだ。そして、俺はそんなフォグを生み出した存在として忘れられなくなっていく。ただ、それだけが前の目標だった。
「また会おうね!」
「そうだな、次は……」
でも、今は違う。
今はゴンやキルア、クラピカやレオリオとハンター試験を通して積み重ねてきたやり取りや経験がかけがえの無いものになっている。フォグもそれを見ていて色々と学ぶことがあったようだったし、俺もまたフォグに学ばせるだけではなく、単純に楽しかった。
だから、俺自身の考え方の変化を受け入れた上で言わせて欲しい。
「「「「「
やっぱり冒険は楽しい、って。
ゴン・キルア・クラピカ・レオリオ・俺が誓い合うように言った後、相変わらず反応の薄いフォグにキルアとゴンが絡みながらも移動した。そして…別行動すると言っていた通りに、クラピカとレオリオとは最寄りの空港で別れた。フォグは手を振らなかったので、俺が手を掴んで振らせた。
「さて!これからどーするの?」
「どうするって、特訓に決まってんだろ?」
「特訓って簡単に言っても、どこでやるのか?とか何をやるのか?ってことじゃないの?ゴンが言いたいことって」
「そ、そう!」
「ったく…ヒソカのヤローを殴るって言ってたのに、肝心なこと忘れんなよな。鍛えなかったら、殴るもんも殴れねーんだから」
「うぅ……」
横から差し込むように言った俺の解説に、戸惑い気味で頷いたゴンに対してキルアがちょっとだけ棘のある返答をすると、ゴンは再び萎れるように項垂れてしまった。なんか、ごめん。キルアも、ゴンが無知だと言いたかったとかでは無く、今のままでは無謀すぎると伝えたかったんだと思う。
「まあまあ、それは移動しながら考えようよ。それに、俺やゴンはあんまりそういうのを知らないから、割とキルア頼りになっちゃうからさ」
「あー…そっか、ゴンは島暮らしでレアンは家の近所くらいしか知らねーんだっけ」
「役に立てなくて、ゴメンね……」
「だぁーっ!!分かった分かった!!オレが悪かった!!!」
言い逃れできない程に図星すぎるキルアの言葉に対して、ゴンの雰囲気がどんどんと気迫を失って縮む。俺はフォグを通して色々見聞きしているし、去年のハンター試験も含めてゴンよりは外の世界のことを知っているとは思う。だが、ゴンは今回が初めてなのだ。
それこそ、ゴンは物心付いてからずっとお世話になってきたミトさんの制止を振り切って、ようやくくじら島から出たのだ。その間にゴンが知れるのはミトさんの監視下で許された情報か、くじら島へやってくる運搬船などの船を通した情報だけだろう。
無論、ゴンがキルアや俺のような年齢の近い友達を欲している理由もそれが関わってくるだろう。何かと島暮らしっていうのは閉鎖的で、自ずと島に暮らす住人は余程の土地がなければ少なくなりやすいし、年齢も極端に若いか年寄りかで分かれる。
ゴンの性格を鑑みるに、くじら島にはゴンより年下の相手は赤ちゃんくらいしかいなかったのだろう。典型的なおじいちゃんやおばあちゃんには恵まれた分、ゴンの身体能力に年齢的な意味でついて行ける遊び相手は動物くらいしかいなかったことが分かる。
かと言って、キルアもキルアで身内が一癖も二癖もありすぎる。住んでいる地域的な制限は受けないものの、キルア自身に実力がありすぎて普通の同い年とは一緒に遊んでも簡単には馴染めないだろう。それこそ、ゴンのようにハンター試験へやってくる程でなければ。
だが、仮に相手がキルアの求める同い年だとしても、恐らくはゴンのような素直さと頑固さを兼ね備えたような性格である相手は中々いない。強さに伴うだけの成り立ちや過去を抱えていると考えても、十中八九訳ありだ。復讐に駆られたクラピカのような状態になってしまう。
…何というか、側から見てるとゴンとキルアはまるで…
…うーん、どう考えても某見た目が子供な死神と高校生の幼馴染*1みたいになってしまう。つーか、ゴンとキルアを見て連想するのがそれなのめっちゃ嫌だな…。他人の好みにどうこう言うタチじゃないが、レアンとして生きている今の俺自身の状態を考えるとかなり不愉快だ。
あー、何というか…こう…創作のお腐れ様*2はまあいいとしても、現実のお腐れ様*3が妄想に登場させる相手が俺の友達だったみたいな…そんな不愉快さがある。それに、ゴンとキルアがそういうのにならないって分かってるからこそ不愉快っていうか…うん。
よし、このことについて考えるのやめよう。
「はいはい、ゴンもキルアも一旦ストップ。ヒソカのことを考えるよりも、まず先にすることがあるだろ?」
「…すること?」
「ほら、お店でお買い物する時に必要なもの、今足りてんのか?」
「あー、アレねアレ」
キルアが軽く首を傾げてから、察したように呟く。そして、キルアもゴンも揃ってそれぞれで自身の荷物から財布を取り出して、その中身を確認し出した。…まあ、案の定って言われたらそうだが、ハンター試験が終わってからは特に散財していたかもしれない。
ハンター試験自体に参加費などはないが、試験中はその費用の大半がハンター協会が補ってる。その感覚を持ったまま、好き勝手気ままに行動していたらいずれ訪れることではあったんだろう。そう、交通費を含めた資金の限界、がな。
「ゴン、金はまだあるのか?」
「……そろそろやばい」
「ま、だろうとは思ってたよ」
原因として考えられるのは、ハンター試験で失格になったキルアを全員で追う関係で中々な出費をしたからだろう。ゾルディック家があるパドキア共和国のククルーマウンテンに辿り着くまでも、結構移動したからな。それ相応の交通費も食費もかかっている。
しかも、ゴンがヒソカとの因縁を気にして観光ビザで来てしまったから尚更だ。得たばかりのハンターライセンスを無闇に晒さなかったことは偉いが、その代わりに免除を受けられなかったことは痛手でもある。ある意味予想通りの展開かもしれない。
「うぅ、ミトさんに貰ったお小遣いがあとちょっとしかない…」
「マジか…それは、キツいな」
ゴンが島出身だと考えると、ゴンの保護者であるミトさんはかなりの金額をゴンに渡していたのかもしれない。恐らく、ゴンとしても使い切るのは意図してなかったんだろうが…。それでも、日々進化が加速していく都会と日々がゆったりしがちな島との資金的な落差は侮れない。
それこそ、一度手紙を通して助けを求めてもミトさん自身もそう簡単に資金を集められないだろうし、そもそもが島に届くまでにかなりの時間がかかる。資金的な支援を求めるとしても、ミトさんを頼るのはかなり難しいだろう。詰みかけだな、これは。
「…なら、さっき言ってた通り
「えっ!そんな場所があるの!?」
「…それ、本当に大丈夫なヤツ?内臓取られたりしない?いつの間にか犯罪者*5とかにならないよな?」
直後、キルアが俺の言葉が笑いのツボに入ってしまったらしく、腹を抱えて大爆笑し始める。地面をベシベシと叩いては、キルアは笑い転げていた。ゴンはハッとしたように俺の言葉を理解して、険しい表情でなんだか考え込んでいる。流石、最終試験で片足がなくなるのを危惧しただけある。
「ははは!!ンなワケあるかよ!ちゃんと合法だっての!一般人が借金も無く金の為に内臓売るとかいつの時代だよ!!ゴンも本気にすんなって!!」
「笑うなよキルア、俺は真剣なんだぞ?」
「ひぃーッ腹いてぇ…!はぁー…久しぶりにめっちゃ笑ったかも…。ま、確かに利点あり過ぎるのは否定しねーけど」
『うまい話には
俺は単にそれを危惧しただけだったんだが、まさかそんなに笑われるとは思ってなかった。思わずムッとしてしまいそうな気持ちをなんとか宥めて、俺はついさっきまで笑い転げていたキルアをジトッと見つめた。すると、キルアは肩を竦めて「バカにはしてねーよ」と呟いた。
「その名も『
「天空、闘技場…?」
「そ、オレも一回行ったことあるし、きっとゴンも数万くらいは稼げる筈だぜ」
…ということで、俺達は早速キルアの言う天空闘技場に向かうことになった。近くではハンター試験で何度か聞いていた、ゴオンゴオンという飛行船特有の音がする。正直、フォグも知らない場所だったようなので、キルア以外の三人でキルアの説明を聞く。
「いいか?よーく聞いてろよ」
天空闘技場
そう呼ばれている場所は地上に対して251階の階層があり、その高さはなんと991m。世界第四位の高さを誇るタワー状の建物だという。大体一日に平均値でも四千人の腕自慢が世界中から集まり、それぞれの格闘技を競い争っては高みを目指すのだとか。なんだただのコロッセオ*6かよ。
無論その荒々しい状態から、通称「野蛮人の聖地」とも呼ばれているらしい。うん、誰が言い出したか知らんが的確な表現で草。そんな野蛮すぎる闘技場に集まる観客の数は年間で十億を超えるらしく、その規模の大きさからも多くのスタッフが雇用されているようだ。
「んで、天空闘技場のスタッフはみぃーんな被ってる帽子とシャツにそれぞれ太陽のマークが付いてる。これ忘れんなよ。もし付いてなかったら、金を騙し取りに来た詐欺師だから」
「え!そんな人もいるの?」
「ま、居たらちゃんと太陽のマークがあるスタッフに言うだけだぜ?」
「居るとこにはやっぱ居るんだな…」
そんな闘技場では基本的にタイマン形式*7で全ての対戦が組まれるらしく、もちろん勝てばファイトマネー*8を貰ってよりその金額が高くなる上の階へ挑むことができるらしい。なるほど…根本から下剋上形式で対戦が行われるのか。なんか、某週刊少年誌短縮版みたいなルールだ。
また全員が等しく一階からスタートし、その初戦の勝敗結果や試合過程によって次の階が決められるんだとか。だから拮抗する熱い試合を見せれば、その因縁に関わる選手がいる階へ行かされたり、逆に一方的な圧倒勝利となればあっさりと飛び級することもあるようだ。
ファイトマネー自体は入階チケットと引き換えシステムとなっているようで、建物内にあるエレベーターのすぐ近くにある専用窓口で交換してもらえるらしい。よくカジノやパチンコとか現金を施設内で利用するコインに両替するみたいな、そんな感じだろうか?某ありがてぇ*9さんか?
ただし、上の階へ向かうにあたってファイトマネーがどんどんと値上がりしていく代わりに、一階は一律で「その時期の世界経済情勢でのジュース一本分」しかもらえない。ここだけ見たらめっちゃファイトマネーが渋いが、金額が経済情勢でちゃんと変わってくれるあたりは良心的だろう。
「…じゃあ、ちゃんと上に行かないとお金がたくさん貰えないんだね」
「そゆこと」
肝心の試合形式は基本ノックダウン、もしくは試合内で10点獲得したことによるTKO*10で勝敗が決まる。つまり、相手をキッチリKOできなくても問題ないという仕組みだ。この点がないと、一部の選手は見せ場なく終わるって感じだろうな。単なる力押しの勝負になるし。
得点の換算はダウンで1点、頭や胴体等の
「ただなぁー…これが案外メンドーでさ、審判によってポイントくれたりくれなかったりすんだよな」
「は?なんでだよ、審判だろ?」
「あー…確かにそうだけどさ、審判も好みの選手とか判断基準が違うってこと」
「じゃあ、審判さんとお話しして仲良くしたらいいんだね!」
「…あ、そっち?」
キルアが渋い表情で言っていた通り、TKOに直結する採点システムは「どういうものをクリーンヒットなどにするか」などに関しては特に基準が定まっていないらしく、完全にその時に審判頼りになってしまうようだ。うーん、これは良くないよな。すぐにでも直して欲しいところだ。
例えば、①ゴンと俺が戦うとして審判がキルアだとしよう。この場合、ゴンと俺がルールに従ってちゃんと戦って俺が採点されるような場面があっても、審判のキルアが「ノーダメ」と認識して主張すれば俺はこれを採点されない、ということになる。
これはダメージの
今度は、②ヒソカとキルアが戦うとして審判がクラピカだとしよう。この場合、ヒソカとキルアがルールに従ってちゃんと戦ってキルアが採点対象になる攻撃をしたが、結果的にヒソカへ当たらなかった。だが、その攻撃によってヒソカがキルアの次の攻撃を防げなかった。
その時に審判のクラピカはそこに至るまでの判断や工夫、実行に至る技術を重視して採点する。これはその
最後に、③ヒソカと俺が戦うとして審判が
故に、本来はダウンと言えない一瞬の転倒をダウンカウントしたり、受け身は取れてる筈の攻撃をクリーンヒットとしてポイントに加算させて強制的に試合を終わらせる措置を取った。これは
「えっ、じゃあこの間の最終試験みたいになったらダメってこと?」
「大抵は、な。よっぽど実力差があって、一方がボロボロにされるってなると…しょーじきオレもイラつくけど、そうなる」
「いや…割と真っ当なことだからね?」
基本的にここでの戦いは一般人も閲覧できるエンタメ的な側面が強く、特に上層においては余程のことがなければ流血沙汰は避けたいと判断されやすいだろう。俺が知っているスポーツでも、スポーツマンシップに則って競技を行う前提での話が基本だ。
具体例を挙げるならば、総合格闘技が近いだろう。総合格闘技は全身を駆使しながらステージ全体を利用しながら戦うが、その根本的な要素の中に「客を楽しませる」というものがある。つまり、ガチもんの戦いなど楽しいと思えない客が大半な為、見せ場を作る必要があるのだ。
全ての総合格闘技が客のウケ狙いという訳ではないが、新しいファン層を得る為だったりでエンタメ要素を取り入れ、他選手との因縁を演出したりすることは割とある。そんな中で唐突に流血沙汰になってみろ。観客席から悲鳴が上がりかねないぞ。
「キルアの話聞いてる限り、エンタメ要素が強いんだろ?」
「えんため?」
「あー…その、見てるお客さんを楽しませる娯楽の一つみたいな?」
「そーなんだよなぁ…。だから、ハンター試験と同じ感覚では挑めないっつーワケ」
「そうなんだ、難しいね…!」
それと、選手にファイトマネーを支払ってばかりでは色々と財政難になりそうに思えたが…。どうやら、200階以上のクラスになるとファイトマネーは無くなってしまうようだ。ある意味そこがボーダーラインであり、200階以上の連中はこの天空闘技場に拘らなくてもよくなるんだろう。
また、観客達は観戦前にギャンブルを行っているようで…選手同士の勝敗や獲得ポイントの詳細まで予想するものなんだとか。この点は競馬と似たような予想屋みたいな形で稼いでいる連中も居そうだな。人気に合わせて倍率とかもあるだろうし、本当に競馬みたいだ。
普通民間でそんなことしたら争いが起きそうなものだが、そのギャンブルの仲介役として天空闘技場のスタッフが挟まっておくことで、外れた際の賭け金などを徴収しているようだ。観戦料だけに留まらず、ギャンブルをする際の仲裁と称して資金を集めている辺り、実に堅実かつ陰湿である。
ただ、説明を聞いている限りではステージ上で全てのことが済まなさそうではある。賭け事なども含めて大金が動く世界というのは、どうにか思い通りにその盤上を動かそうとする輩が定期的に現れるものだ。つまり、選手に妨害工作してくる可能性も十分にある。
その点が可能性として存在していることは実に恐ろしい。どんなところでも、結局は生きている人間が一番恐ろしい存在なのだ。特に、ゴンやキルアのような子供を貶めて自身の欲を満たすことに何ら罪悪感を持たないクソ野郎もいる。念の為で気を付けておいた方がいいだろう。
「一応オレは前に行ったことがあるし、とりあえず行こうぜ!」
ゴオンゴオンと、聞き覚えのある音を鳴らしている飛行船に乗り込み、俺達は約一週間を目安とした飛行船の旅に出た。目的地は天空闘技場、戦いの極地と地獄を一つで体現した彼の地。正直、俺が力になれる気が全くしないが、まあこういう時があってもいいよな。
******
「…はい、以上で選手登録は完了です。一階では各選手を放送等で番号による呼び出しを致します。繰り返しでのお知らせはありませんので、聞き逃し等にご注意ください。それでは中へどうぞ」
ガヤガヤと雑踏の絶えない天空闘技場で、今日もまた一人の自信過剰な選手を登録する。営業スマイルを浮かべて、見送る仕草は長年の経験もあって鉄壁のガードと化している。そこに、哀れみの一片も感じさせずにその背中が遠のくのを見つめた。
選手登録窓口は、年がら年中ずっと行列が出来ている。私もまた、その行例によって給金を貰っているしがないスタッフの一人だ。最初こそ、大多数が野郎共で構成された血生臭い争いに忌避感が強かったが、今やもう慣れた光景となっている。
最初で一番時間が掛かる選手登録窓口は諍いが起きやすく、それでいてクレーマーが定期的に現れやすい場でもあった。そこで長年のベテランになってしまった私は、毎度選手登録をする度に心の底でその大半が蹴落とされる未来であることを察していた。
別に見下している訳ではない。現に私など、ここに来る人々とは比べられないくらいに弱いだろう。だが、それでも上には上がいるという事実はずっと変わらない。どれだけのバックストーリーがあっても、どれだけの素質があっても、上に押し潰される選手達を見てきたのだ。
私という一介のスタッフが選手に入れ込んだとしても、何か有利になることもない。積み重ねがあったとしても、生まれ持った才能とセンスに努力が勝ることは難しい。例え性格が良くても、実際の実力にそんなことは関係ない。そうしてまた、選別されていくのだ。
「すごい行列だね。これ全部挑戦者なの?」
「ここはハンター試験と違って小難しい条件は一切ないからな。ただ相手をブッ倒せばいい」
「じゃあ、それ相応の
…聞き間違いだろうか。この天空闘技場で、子供の声が聞こえた。それも、複数。私の見解としては、ここは子供に限らず簡単に来ていい場所ではない。それこそ、見学するくらいでも教育に悪いと思ってしまう時すらある。どうか、聞き間違いであってほしい。
鉄壁と化した筈の営業スマイルを浮かべるポーカーフェイスの下で、私は静かに戦慄していた。嘘ではない。現に、ここは子供が足を踏み入れれば…最悪一生の傷となるトラウマすら植え付ける。泣いて喚いて、親を呼んだって助けなど来ない。ここは、蹴落とし合いの場なのだ。
「すいませーん、選手登録にしたいんっすけどー」
「…畏まりました。こちらの用紙に登録内容をご記入ください」
…どうも、聞き間違いではなかったようだ。本気でこんなところに、まだ年若く将来有望そうな子供達が居る。それでも動揺を隠すように、選手登録用の用紙を差し出してなんてことない風を取り繕う。こんなところで長年の経験が生かされてしまった。
私個人としては業務を中断して、帰るように言いたい気持ちではある。だが、実力さえあれば誰でも来れてしまうのが天空闘技場なのだ。かのハンター試験とは違い、そういった側面倒な手続きが少ない分好まれる理由でもある。天空闘技場は、力さえ示せば子供でも構わないのだ。
「あっ、そういやオレが前に登録してた情報って今どうなってんの?」
「…以前の選手登録ですね。失礼ですが、お名前とご年齢をお聞きしても?」
「キルア。キルア=ゾルディックって登録したと思うぜ。今は十二歳だけど、前は六歳くらいの時に来てた」
唐突に私への敬語が抜け、タメ口になったところに子供らしさを体感する。まあ、元から敬語にしては杜撰だった。変な言葉使いをされるよりはマシなのかもしれない。そんな気持ちで、私の窓口で対応している子供四人組の中で一番髪が白い少年を、過去の選手データから探す。
一応、キルア少年に同行している快活そうなゴン少年・金髪緋目が目立つレアン少女・一番寡黙なフォグ少年の選手履歴もついでで探す。だが、彼ら彼女らの記録は現状今回が初であり、過去に天空闘技場を訪れた記録そのものがなかった。それもそれでどうかと思うが。
「えっ、キルアって六歳の頃から選手登録してたの?」
「まぁな」
「いくら何でも早すぎだろ。どうなってんだゾルディック家」
「オレに言うなよ。親父からは200階には上がるなとだけ言われて、あと自由行動してただけだし」
今時の英才教育は、子供がまだ二桁になる前から天空闘技場に連れてくるのが常識なんだろうか。それにしては、200階の洗礼を受けてキルア少年の心が変に挫折を経験したようにも見えず、同時にキルア少年が悪意なく他の子供達を連れてきた雰囲気に戸惑う。
キルア少年の父親は至極正しい判断を下しているだろうが、その前に天空闘技場へ来させないという判断はなかったんだろうかと思う。だが、キルア少年の名前にあるゾルディックという苗字がある辺り、あの暗殺一家が我が子に施す教育はそれこそスパルタなのかもしれない。
「…なら、そん時の金があるんじゃないのかよ?」
「……えっとぉ、それは…」
「ゴンはまあ…島暮らしだし仕方ないにしても、キルアは資金源があったならここまでの飛行船代で資金が尽きるのはちょっとおかしいだろ」
「まあ…お菓子代とかゲーム代に消えたっつーか?」
「…どんだけ散財したんだよお前」
…これはレアン少女が呆れ返るのも仕方なく感じる。一応200階よりも下の階とされている150階辺りでは余裕で1000万ジェニーがやり取りされるのだが、それらが全て娯楽代に費やされていたなんて一部の連中からすれば激怒ものである。
そうして過去の選手データを探っていると、確かにあった。幼い頃のキルア少年と思わしき子供が、この天空闘技場で二年かけて200階目前まで到達した記録が残っていた。…だが、実際にその後に行われた試合は存在せず、キルア少年の意志によって登録が拒否されたままになっていた。
「…キルア=ゾルディック選手ですね、確認出来ました。ですが、残念ながら過去の選手データでは200階目前でキルア選手本人の意志によって登録が行われないままとなっている為、キルア選手は規則上再登録という形になります」
「あ、別にそれでいーよ。オレ、コイツらと一緒に上がってくつもりだったし」
「…承知しました。では、お友達の分の選手登録も行わせて頂きますね」
…そうか、なるほど。キルア少年はそもそも、今回同行している友人と共に上がっていくつもりだったようだ。ゾルディックという苗字を聞いて少なからず警戒してしまったが、キルア少年に限っては人付き合いを捨てている訳ではないようだ。
「注意ですが、今回と同じように選手本人の意志で200階目前での登録を拒否した場合、基本的に一度のみしか再登録が認められておりません。その為、キルア選手は今回のみ再登録が行われます。再度同じことが発生した際、キルア選手は同じ手続きを行えないのでお気を付けてください」
「そんなのもあったなー、そういえば」
「選手番号が決定されました。キルア様は2054番、ゴン様は2055番、フォグ様は2056番、レアン様は2057番となります。…以上で選手登録は完了です。一階では各選手を放送等で番号による呼び出しを致します。繰り返しでのお知らせはありませんので、聞き逃し等にご注意ください。…それでは中へどうぞ」
「うーっし、じゃあ行くぞ」
「はーい」
どちらにしても、私にあの子供達が酷い目に遭わないでほしいと願ったとしても、天空闘技場はそんなちんけな願いを叶えてくれたりはしない。結局のところは戦いを通して消費される娯楽の一角であり、子供達の悲劇さえも自己責任によるものなのだ。
******
天空闘技場に入ってすぐにある選手登録窓口にて、俺達がいざ登録しようとした矢先。キルアが齢六歳にして200階目前まで辿り着いていたという驚愕の事実と共に、当時のキルアがそうして稼いだジェニーのほとんどを自身の娯楽代で散財した事実も発覚した。
…まあ、六歳ならば仕方ないだろうという気持ちと、六歳でもダメだろそれはと思う気持ちが俺の中でせめぎ合う。キルアの父親はこんな形でキルアに散財癖が付いたことを良しとしてるんだろうか?もしそうなら、俺はキルアの父親のところへ直談判するべきか考えたいんだが…。
「ほら、レアンもフォグも早く行こう!」
「分かった分かった、ちゃんと行くっての」
「…」
ハンター試験の最初を思い出すような形で、ゴンに手を引かれた俺はゆっくりと天空闘技場の内部へと足を踏み入れた。直後、大きな歓声が場を震わせるような音量で響き渡る。…だが、実際には天空闘技場の中でもかなり低いレベルの戦いだからだろうか。
闘牛と闘牛士が駆け巡る場と類似性を感じる柵に囲まれ、沢山の観覧席から見えるように設計された見栄えのある一つの大きいリングの更に内側で、十六個の四角くて小さなリングが設けられていた。ある意味恒例なんだろうが、各選手が戦いをその上で繰り広げていた。
「凄い活気だね」
「…まぁ、そうだな」
…なんつーか、思ってたよりも規模がちっちぇな。いや、毎度の試合がこれじゃないのは流石に分かる。それでも、俺の中でのイメージ図とは実際の光景がかなりかけ離れてたというか…。まあその、ちょい落胆した。しょぼいなって。そりゃ、勝手に期待しちまった俺が悪いんだけどさ。
え、じゃあどういうのをイメージしてたの、って?…そりゃあ、こういうちっぽけな舞台がいくつか集まって一緒くたにされてるんじゃなくて、会場でルーキーが一塊になってお互いにお互いが蹴落とし合うみたいな?自分以外の全員を蹴落としてでものし上がっていくみたいな?
そういうのって総じて見栄えがいいんだよ。のし上がって勝ち誇る一人がスゲーカッコ良く見えるっつーか、こう、男のロマンみたいな感じがしていいだろ?……レアンは女の子でしょって、いやまあ確かにそうだけどさ。そうじゃないんだよ、フォグ、こういうのは。
「うぅ~……緊張してきた~」
「てかさ、ゴンお前、"試しの門"クリアしたんだろ?」
「…え?うん、そうだけど」
「いや、"試しの門"結果的にスルーしちゃった俺とフォグの横でそれ聞く?」
「あー、二人は確かツボネに連れられたんだっけ?」
そんな中、不意にキルアの問いかけをされたゴンが困惑したように頷く。思わず俺が横から口出しすると、キルアは少し考え込むように俺とフォグをそれぞれ頭の頂点から足先までをじっくりと観察した。それを真似するようにゴンも俺とフォグをそれぞれ見比べる。
…おうおう、何だよそんなジロジロと。俺は見せ物じゃないぞ。ふとそう思いつつも、大人しくキルアとゴンの観察を受け入れる。つーか俺にとっては、"試しの門"自体厳しいところがあった為、キルアの言いたいことによってはキツいんじゃないだろうか?
「フォグは…大丈夫そうだけど、レアンはちょっと出方考えた方がいーかもな」
「うげぇ…」
「ま、とにかくゴンとフォグは思いっきり対戦相手を押せ。それだけでいい」
やはり、厳しいという認識をキルアからもされてしまった俺はつい顔を顰める。だが、それとは別で単に対戦相手を押すだけでいいと言われたゴンとフォグは、それぞれで懐疑的な反応を示す。…でもまあ、あんだけ重たい"試しの門"を押せるんだから、瞬発的な力なら問題ないだろう。
ゴンは、本当にそれだけでいいのか分からないという困惑と疑いだったが…。フォグに関しては、手加減を間違えたら相手がとんでもないことになる、という意味も含めた困惑だった。…フォグ、とりあえず軽く相手を突き飛ばす感じでやれ。手加減に関してはキルアに相談してみろ。
「…」
「力加減?…んー、相手を一歩下がらせるくらいの感じで押して、それでダメだったらちょっとずつ力を調整するって感じで良いと思うぜ?」
「え…ホントに?」
「ダイジョーブだって!」
キルアがゴンを励ますように言っていると、どこからか放送が流れ出す。…ハンター試験の時も、似たような感じで番号呼び出しがあったな。大抵飛行船内に居た時だった気がするが、この天空闘技場程に雑踏が多いとうっかり聞き逃しそうで少し怖い。
『1973番、2055番の方。Eのリングへどうぞ』
「あっオレ、呼ばれたから行ってくるね」
『1992番、2056番の方。Kのリングへどうぞ』
「…!」
『1984番、2057番の方。Pのリングへどうぞ』
「ん?…俺もか」
どうやら十六個ある小さなリングには一つずつアルファベットが記されているようで、そのアルファベットと選手番号を利用することで呼び出しの短縮を行なっているようだった。立ち上がって移動しようとすると、未だ呼ばれていないキルアが頬を膨らませて不服そうにしていた。
「はぁー?なんでこーゆー時、いっつもオレだけハブられんだよ…」
「まあまあ、多分小手調べみたいなもんだろ?」
ハンター試験の時からか、何かと単独にされやすいキルアを思わず宥める。…そういえば、確かにキルアは一次試験の時から最終試験の時まで定期的に単独になっていたな。最終試験に関してはキルアの意志ではないものの、それ以外に関しては基本的にキルアの判断で単独になっていた。
かろうじてキルアが単独になっていなかった、という試験もトリックタワーの時くらいである。逆に俺が塔から飛び降りたことで単独行動になった形ではあるので、何かの意図を感じさせるところではある。絶対に誰かが単独行動になる呪いでもかけられているのだろうか?
…まあそれは、今は一旦関係ないな。すぐに思考を切り替えて、俺は指定されたリングへと歩く。すると、自ずと観客席から野次馬連中の目線が俺達へ向けられる。…品定めしてくるような目線に思わず鳥肌が立ちそうになるが、距離が遠いのでまだ耐えられる範疇だった。
「おい、あれ見ろよ。全員ガキだぜ?」
「あいつなんか金髪緋目だぜ?ガキが一丁前に見学気分かぁ?」
「おいおい!お前らぁ!怪我する前に帰んな!」
案の定、観客席に居る野次馬連中から好き勝手な野次が飛んで来る。やはりと言うべきか、この天空闘技場でも十歳と少しの子供が参加することは中々に珍しいようだ。さっきまでここまで活気がなかったというのに、野次を飛ばす相手を見つけたからとアイツら元気になりやがった…。
観客席から絶え間なく小馬鹿にしてくるような野次が未だ飛び交う中。俺はようやく指定されたPのリングに到着した。俺が番号で呼ばれたPのリングは一番隅っこにあるPのリングであり、対戦相手として対面するのは逆三角形をその体で体現したムキムキのゴリマッチョだった。
…悪く言えば、その逆三角形を余程維持したいらしく背筋が曲がっているのでずんぐりむっくりのようにも見えた。あれだ、ゲームとかでたまにある「お前下半身貧弱すぎない?」ってヤツだ。筋肉を誇るのは別に個人の自由だが、全体的に鍛えなかったら結局バランス悪いんだぞ?
つーかコイツ、さっきから鼻息で生暖かい風吹きかけて来んなよ。そんな感じで早速嫌な気分になっている俺の横から、ヌッと唐突に天空闘技場の太陽マークを付けたスタッフが現れる。裾をきっちりと捲って、俺とゴリマッチョの様子を見る辺り、多分ここでの審判なんだろう。
「ここでは挑戦者のレベルを判断します。三分以内に自らの力を発揮してください」
どうも俺は三分という区切りを聞くと…某「目がっ、目がぁぁぁぁあっ」と叫んだり、「三分間待ってやる」と言ってしれっとリボルバーの装填時間を確保したかと思いきや、普通に三分間待たずに一分未満で行動するというスーツグラサンクソ野郎を思い出す。*11
いやさ、仮にも他のキャラから「四十秒で支度しな」って無茶言われて実際に間に合ったことがあるアニメ映画の主人公なんだから、三分間も猶予与えてんじゃねえよ。映画での主人公力とヒロイン力を舐めんな。それだからお前もゴミのように落ちてったんだろうが。
「それでは、始め!!」
「デュフ、デュフフフッ…一戦目がこんなかわゆい幼女たんなんて、ワイにも運気が巡ってきたに違いない…!」
あっ、すまん。お前ってもしかして同郷だったりする???
ちなみに、アンケート結果に一番驚いているのは筆者だったりします。
まさか、そんなにフォグの心理描写が求められてるとは思ってなかったんですよね…。
マジで「あったら嬉しい派」と「必要だと思う派」が同数なのはびっくりしました。
意図的にフォグの心理描写は避けてきたところはあるんですが…。
まあ、不自然ではない程度に描写を挟むことにします。
少なくとも「そこはフォグの視点である必要ないだろ」というところには発生しませんので、ご了承ください。