転生主人公が非戦闘員なHUNTER×HUNTER   作:ネモ

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転生=異常

××月××日

 

私は異常らしい。

それを忘れない為にここに記す。

 

母親譲りの鮮やかな金髪、父親譲りの赤い瞳。そこまでは良かった。ただ生まれつき、澱んだヘドロのような何かが身体に(まと)わり付いていた。私自身は何も感じないのだが、父や母はそうは思わなかったらしい。故に幼くして流星街(りゅうせいがい)へ捨てられた。

 

この日記が書けるよう、流星街で立場を得るまでにそこそこ時間を使ってしまった。

それに、赤子でありながら禍々(まがまが)しい何かを持つ私を今日まで育ててくれたのも彼らだ。恐らくこれは今後私が一生忘れることのない恩になるだろう。

 

同様に、私も彼らの為になりたいと思うのはとても早かった。

外のことを少なからず知っている私から見ても、流星街と形を成しているルールはとても(いびつ)である。だが、それらは全て彼らがここで互いの手を取り合って生きることを選んだ結果であり、最初から望んだものではなかったんだろう。

 

故に彼らは外を酷く恨んでいる。私も客観的に見れば外を恨んでもおかしくないんだろうが、彼らに拾われるきっかけをくれたのは外の人間であるから、心の底から深く恨むことはできなかった。何の利益にもならない禍々しい赤子を拾った神に感謝を抱くように、その外的要因になった外の人間などどうでも良かった。ただ、捨てるという判断をしてくれてありがとう。それだけだ。

 

話を戻そう。

彼ら曰く、私の禍々しい何かは(オーラ)と呼ばれるものらしい。そしてその総量が並外れたものである為、(オーラ)を扱う者から見れば私は悪魔か何かに感じるようだ。流石に怯えられながら(オーラ)について教わるのは申し訳なく、自力で(ぜつ)という技術を習得した。

 

彼らは私に念を習得するように言う。

だが、私はそれを断った。当然彼らからは反対されたし、同様に理由を求められた。

 

外の人間が流星街に人間を捨てる時、大抵力ずくか抵抗する力すら持たない人間を捨てていく。私はそれがとても嫌だった。彼らは外の人間など人間ではないように言うが、人間でなければ自身に不都合の及ぶ存在を捨てる判断などしないだろう。

 

いくら外から見れば無法地帯のように見える流星街でも、頭の回る者が管理してある程度の治安が生まれている。かつて犯罪者と呼ばれ、ありもしない罪を逆恨みでかけられた者は流星街で教師として生きている。

 

私は、私の嫌うやり方で彼らを捨てた外の人間と同じやり方をしたくない。それならば、彼らを捨てた外の人間がどれだけ馬鹿でも理解できてしまうくらいの偉業を成すか、せめて力ずくだけで荒らすことだけはしたくない。念能力は秘匿(ひとく)されてしまうなら、意味がない。

 

私が慕い、今もなお感謝する彼らが秘匿されていい人だなんて認めたくない。だから同様に秘匿されてしまう(オーラ)による外への報いはやりたくない。それこそ、大々的なニュースになるくらい秘匿されないもので見返してやりたい。でなくては私が納得できない。

 

彼らは反対する意見こそ強くなくなったが、念能力による報復でないのなら支援(手助け)しないと言った。私はそれを構わないと啖呵(たんか)を切った。いつまでも彼らの(すね)(かじ)って復讐を果たすなんて、私が嫌なのだ。私が頑張ってもたらした復讐を、何も関与していない彼らに差し出したいだけだ。

 

彼らが絶句する中、私はただ見てくれるだけでいいと言って流星街を出る決意を述べた。

これでいい。これでいいんだ。これなら彼らが私の失態を被る必要がなくなるのだから。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

初めはただ、また流星街に一人仲間が増えると思っていた。

それが赤子であろうと、老人であろうと、流星街は捨てられたものを許容(きょよう)する。そして新しく増えた同志として力を与える。また、それだけだと思っていた。

 

故に新たな同志を迎えに来た男は、捨てられたそれを見て冷や汗を流すことになるなど予想できなかった。男も流星街に捨てられ、捨てられる前の経験を活かして教師として周囲にものを教えていた。流星街に捨てられる者は大抵が訳有りであり、問題児など山のようにいる。

 

その為、男は問題児である生徒に舐められないように(オーラ)を習得していた。人権が存在しない流星街にて、生徒である問題児達が攫われないように護衛する為でもあった。念能力者としてはまだまだ伸び代のある男は、その人生を流星街で過ごし骨を埋める覚悟もしていたのだ。

 

だが、まさか生まれて間もない赤子を捨てるなど、男は流星街に来てから体験したことなどなかった。男が(ギョウ)で赤子を見れば、まだその身体に少なくない血が付いているではないか。急いで男は赤子を拾う為に接近を試み、そして赤子が捨てられた理由を体感する。

 

男が赤子のいるゴミ山に足をかけた途端、全身にヘドロが纏わりついたような重さを感じた。まるで人間が力の及ばない化け物に見下されているような威圧感。男は自身の呼吸が過呼吸になりかけているのを何とか戻しつつ、赤子の発する死者の(オーラ)のように(よど)んだ(オーラ)が捨てられた原因であることを悟った。同様に赤子の両親が(オーラ)を習得していないことも。

 

男が未だ自身にかけられるとても大きな圧に抗い、本能的に震える両手で赤子を抱き上げた。もしかしたら死んでしまうかもしれないという恐怖に、男は足が生まれたての子鹿のように震えそうだった。自身の心臓の音が聞こえるような幻聴が聞こえるくらい、男はその時点で消耗していた。

 

しかし、男が赤子を抱き上げあやした途端、赤子は即座に圧を消して嬉しそうにキャッキャと笑った。まるで男が自身を拾い上げることを待っていた、もしくはそれを褒めるような笑顔に見えてしまった。男は限界を突破した本能的恐怖に、赤子のように大泣きしたことは記憶に新しいだろう。

 

 

 

 

******

 

 

 

 

××月××日

 

流星街の外に出た今、私は彼らの与えた恩恵(おんけい)の大きさを思い知った。

生まれ付き莫大な(オーラ)を持っていただけあり、私は同い年の子供より大喰らいだった。その度に自身の世話などをする男に、大喰らいをしたことで迷惑をかけていないかと何度も聞いていた。

 

年々目に見えて髪が薄くなる男は、大した負担にはなってないと意外そうに笑うだけだった。だがしかし、流星街で大きく啖呵を切った以上…出て行く以外の選択肢はなく、今更お腹が空いたと戻るのもどうかと思うのだ。

 

故に私は自身がどれだけ食料を喰らっていたのか体感しながら、今日もまた成り上がりまでの道中を歩いている。流星街が近いだけあり、今いる街の識字率はかなり低い。そこを利用し、ひとまず知識を買ってくれる相手を探すことにする。

 

…というか、どうしてこの国には足し算と引き算しかないんだろう。掛け算と割り算なんて言葉は存在しないし、方程式*1や命題*2も存在しない。その割に、確率は存在しているのは矛盾している…。掛け算がないので因数分解*3もない。

 

そこまで数学的思考力に恵まれてた訳じゃないが、流石に小学校で習う掛け算がなかったのは違和感がある。もしかしたら先進国にはあるのかもしれないが、少なくとも掛け算が存在しないこの国では例の如く学生を苦しめた点Pの呪い*4がないことになる。

 

私は数学が得意ではないから、微分積分*5や確率にはとても苦しめられた。(学生時代に私を苦しめた微分積分がないことで)あまりの感動に、な、涙が出ますよ…。だがまあ、確率は存命しやがってるのでもう諦めの境地である。何だよ友人の子供二人が両者とも男である確率って。LGBTQ+に配慮した問題にしろよ。心は女かもしれないだろうが。

 

話を戻そう。

どうしてこんなにも日記に数学関連の愚痴が多いのかと言うと、知能として私を買った連中のせいである。恐らく、クカンユ国とかいう国の使者にほぼ身売り同然で連れていかれる羽目になった。

 

どうやらクカンユ国は男尊女卑が激しい国らしく、まだ二桁になったばかりの子供であろうと女であれば酷使するらしい。とんでもないブラックな職場で勤めることになった。当然、この間から私と同じ場所で研究者見習いをしている男連中なんて最悪だ。未成年に手を出そうとしたんだぞ。

 

とりあえず、流星街出身とは言ってしまったが自衛として手を出した男をぶん投げたので、一応まだ頭の良さを買って見逃してくれた。危なかった…。出来ることなら胸は育たないことを祈ろう。私もそうだったが、男の大半は胸に意識が持っていかれやすいからな。

 

そういえば…出発の直前、いつも世話になっていた教師の男を見たような気がするが、多分気のせいだろう。私は流星街を勝手に出て行った者なのだから。

*1
変数の特定値についてだけ両辺が等しくなる等式。この場合、一次・二次・三次・四次・五次のことも含む。

*2
客観的に正しいか,正しくないかを判断できる文章のこと。真は本当のことを言っている場合を指し、偽は間違っていることを言っている場合を指す。

*3
1つの足し算や引き算が混ざっている式を、カッコでまとめて掛け算の式に変形すること。

*4
数学の微分積分などを必要とする問題文に多い、移動する点をPと表す構文の呪いのこと。

*5
簡単にいうと、瞬間の速度を求めるのが「微分」、変わり続ける位置変化の積み重ね、つまり距離を追うのが「積分」ということ。

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