転生主人公が非戦闘員なHUNTER×HUNTER   作:ネモ

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話の流れ的にメンチとブハラが登場するので、飯テロ回です。


危機=注目+道化師

人間にとって、鳩尾(みぞおち)というものは急所である。アニメやゲームでもこれは語られていることではあるが、改めて説明しよう。まず鳩尾と言われてパッとその箇所がどこなのか分からないだろうが、具体的には下腹部より少し上で(あばら)よりも下。

 

…これではまだ分かりにくいと思うので、更に簡潔(かんけつ)にすると鳩尾とはへそよりも少し上にありながらも肋よりも下にある腹部のことを指す。表現としては、胸とへその間のへこんだ部分でもいい。そもそも、基本的に人間の内臓は鳩尾近くに集まっている。

 

特に、呼吸器官として有名である肺を動かす際に関与している横隔膜(おうかくまく)が外部的衝撃を受けやすい箇所なのだ。他にも胃腸や膵臓なども影響を受けやすいので、殴られたり蹴られたりしていないのに鳩尾が痛い場合は病院に行った方が良い。ちなみに俺の体験談なこれ。

 

それくらい人間にとって重要な器官が集まっている鳩尾は、大きな衝撃を受けた際に横隔膜の動きが一瞬止まって正常な呼吸が阻害(そがい)されることがある。アニメなどでは鳩尾を攻撃されたキャラが口から唾液を吐いたりしてしまう時があるが…。

 

鳩尾に衝撃を加えられたことで、胃腸などから胃液が逆流しかけている為に唾液が増えているのかもしれない。まあ、場合によってはそのまま吐いてしまう場合もあるだろう。まあとにかく人間にとって鳩尾とは、外部的な衝撃を受けるとかなりのダメージが与えられてしまう箇所なのだ。

 

先程例に出した横隔膜の場合、呼吸する際に人間が意識せずとも動いている器官なのだが…。鳩尾に強い衝撃を受けることでその動きが一時的に止まってしまい、人間は意識的に動かせなくなった横隔膜の痙攣が治るまで呼吸困難に(おちい)る。

 

簡単にまとめると、鳩尾を攻撃されると息を吸うだけ吸って吐けないか、息を吐くだけ吐いて吸えないの二択を迫られる。戻す方法は時間経過が基本であり、意図的に戻す方法はほぼないと言っていいだろう。ゲームで言うところのスタン状態*1だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、この程度ならここで始末しようかな♥︎」

 

 

何が言いたいかと言うと、鳩尾は人や当たりどころによって意識さえも奪う可能性がある弱点なのだ。現に俺は(オーラ)での防御に間に合わず、膝蹴りが直撃してしまった。どれだけ息を吸っても吸っても、いつも通りに吐き出せない苦しさで(もだ)えていた。

 

トランプ男と俺の体格差や、筋肉量の差もあってあまりにも重い一撃になっていたのだ。息苦しい、息苦しい。意識がぼんやりとして、目の前が真っ暗になりそうで。どうにか根性で意識が途切れないようにするも、訪れるであろうと痛みを(こら)えるように両目を強く閉じた。

 

 

「…っくっっそおお!!!」

 

 

そんな時、負傷(ふしょう)していた筈のレオリオから突如悔しげに叫ぶ声が聞こえた。その声に申し訳なくなっていると、俺が薄く広げていた(エン)*2によってレオリオが立ち上がって動き出すのを感じ取った。目に見える訳じゃないけれど、レオリオが何をしたいのかを察した。

 

だから少しだけ無理をして、身体全体に(オーラ)(テン)*3に切り替えてトランプ男が乗せている足のバランスを力技で崩させた。まだ呼吸は正常ではないものの、トランプ男の足を無理やり背中で持ち上げる。…(テン)をしてなかったら、どっかの骨が折れてたと思う。

 

トランプ男もそう簡単に俺を逃す気はないとばかりに、足に(オーラ)を集めてより負荷をかけようとした瞬間。俺は身体ごと横に転がってトランプ男の足元から逃れると、入れ違うようにレオリオがトランプ男に殴りかかった。

 

レオリオの拳自体は当たらなかったものの、続け様にクラピカも持っていた木刀を構えて振りかぶった。当然のようにそれは避けられるが…その隙に俺は呼吸が正常へと戻ったことを確認し、少しでもクラピカやレオリオの援護に回れるように距離を取る。

 

 

「〜ん、いい顔だ♦︎」

 

 

それでもトランプ男の表情は余裕そうなままだった。むしろ、そうこなくては楽しめないとばかりの狂気的な笑みを見せるではないか。そうして、現時点で一番距離が近いレオリオの背後に素早く回り込んだと思った時。

 

(オーラ)自体の濃度を低くする為に最初から狭くしていた(エン)の外側から、釣り針の(おもり)がレオリオの背後へ振り返る俺の視界に飛び込んできた。その錘はだいぶ振りかぶられた遠心力でもあったのか、トランプ男の額に直撃すると直撃した額をほんのり赤くさせた。

 

いくら頭蓋骨があったとしても、頭部に強い衝撃が加えられた際は事前にある程度防御が出来ていてもダメージが通る。それはトランプ男も同じだったらしく、少しだけ足元をふらつかせて後退した。思わぬ援護に錘が飛んできた方を見ると、そこには茂みに身を隠すゴンの姿があった。

 

 

「ゴン!?」

 

「やるね、ボウヤ♣…釣り竿?面白い武器だね♥ちょっと見せてよ♠︎」

 

「テメェの相手は俺だ!!」

 

 

そう言ってトランプ男はレオリオではなく、今度はゴンに目を付けた。恐らく本能的なものでゴンはトランプ男の危険性を悟ったのか、少し怯えるように身体を揺らしてから後退りする。しかし、明確にゴンが不利であることを見過ごせなかったらしいレオリオが、もう一度殴りかかった。

 

だが、実力差があるのはレオリオも同じこと。今度こそトランプ男の拳はレオリオの頬に叩き込まれ、その勢いでレオリオは仰け反りながら吹き飛ばされた。その様にレオリオが危ないと判断したのか、ゴンは茂みから飛び出してトランプ男に向かってその釣り竿で殴ろうと振りかぶる。

 

だが…ゴンの決死の攻撃は避けられ、ゴンの援護をするようにクラピカがレオリオに刺さっていたトランプを投げ返すが簡単に取られてしまう。状況はトランプ男に対して、四人で挑んでも変わらないまま。数に物を言わせても意味がない…どうしようか。

 

…流石に試験どころじゃないかと思いかけた時、トランプ男は先程吹き飛ばしたレオリオを助けようと接近していたゴンの目の前にしゃがみ込んだ。…なんだ?何をしようとしているんだ?

 

 

「仲間を助けにきたのかい?いいコだね~~~~~♣」

 

うわ…

 

「ん〜〜〜……うん!君も合格♥いいハンターになりなよ♣」

 

 

ゴンの目の前にトランプ男がしゃがみ込んだと思えば、何とトランプ男はまるで犬か猫を見ているかのような態度でゴンを褒めた。180以上はありそうな男が十一歳の男の子に向かって行っている行動ということもあり、俺は思わずその絵面に引いてしまった。

 

…何だったら声も出た。いやトランプ男とは実質初対面だから、いつもはこんな態度じゃないとかだったら悪いが…。ちょっと絵面的に俺は嫌だな…。凄い事案臭が…。そんなことを他人事のように思っていると、トランプ男はスッと立ち上がる。

 

ゴンに構うのはもう満足したのかと考えるが、トランプ男はそのまま俺の方へ歩いて来た。それもゴンの時とは別の意味で笑ったまま、俺の目の前で立ち止まってしゃがみ込んだ。俺は流石にゴンと同じように目の前で気持ち悪いことを言われて、引かない自信がなかった。

 

だから今は、俺の口がトランプ男の発言に引いてしまわないかの方が心配で唾を呑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ、ボクが言うことじゃないと思うけど…♠︎君、ちゃんと食べないとせっかくの伸び代がムダになるよ♦︎」

 

 

…は?

 

トランプ男の言っている言葉が理解できなくて思考が停止する。宇宙猫と同じ状況に頭の中でなっていると、トランプ男は思考停止状態の俺の頭をフード越しにポスポスと撫でて来た。それにフォグが過剰反応する中で、俺はトランプ男のことがより分からなくなった。

 

一体何が満足したのか分からないし分かりたくないが、何度か俺の頭をフード越しに撫でるとにんまりと笑った。ピエロメイクによって愉快犯にも、吊り目の猫がニヤリと笑っているようにも思える笑みがその顔に浮かんでいた。

 

 

「さっきボクに対して、うわって言った仕返し♪」

 

 

腹立つぅう!!コイツ!!

腹立つぅう!!コイツ!!

 

俺は心底そう感じて、思いっきり顔を(しか)めた。

我ながら最初の警戒心は何処に行ったのかと言いたくなる程、俺は目の前で愉快と顔に書かれているようなトランプ男の顔を殴りたくなった。チビって言いたいのかテメェ!!!

 

腹立たしさで頭が一杯になっているものの、トランプ男はシリアルキラーに切り替わるスイッチさえ踏まなければ案外面白い人間なのではないかと感じた。…いやまあ、そんなことはどうでもいいんだ。トランプ男越しに目が合っているゴンは、俺がどれだけ不愉快なのかが見えていた。

 

だからか、ゴンはどこか気の毒そうな困り眉で俺を同情的に見つめていた。俺が不機嫌になっているのを見て、トランプ男は十分仕返しが出来たと思ったのか目を細めて立ち上がった。するとそのタイミングを狙っていたかのように、誰かの携帯が鳴る。

 

…携帯を手に取ったのはトランプ男だった。

 

 

()()()そろそろ戻ってこいよ。どうやらもうすぐ二次会場につくみたいだぜ』

 

「OKすぐ行く♦」

 

 

電話越しの相手は、トランプ男のことを"ヒソカ"と呼んだ。どうやら一人でハンター試験に来ていたのではなく、誰かしら知り合いと共に参加していたらしい。誰だが知らないが、よくこんなコスプレっぽいシリアルキラーもどきと行動できるな…。

 

多分電話相手もマトモじゃないだろうし…。俺って本当に今回のハンター試験で合格できるのか…??仮に合格しても、こんなシリアルキラーと接点ができるなんて望ましくないんだが…??

 

 

「お互い持つべきものは仲間だね♥」

 

 

ヒソカがそう言ってニヤけながら二次会場に向かっていく背中を、俺達はレオリオの意識が回復するまで警戒し続けていた。レオリオの意識が戻ってからは、急いでキルアが待つ二次会場に走った。その間、ヒソカの犠牲者らしい誰かの血の匂いがした。

 

同時に、湿原の生物達から邪魔をされる訳にもいかないからと会場に辿り着くまではずっと(エン)を続けた。おかげで俺以外が不思議に感じてしまう程、湿原の動物達は俺の(オーラ)を恐れて近寄らなかった。こういう時にしか役に立たないのが難儀だけどな…。

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

一次試験が始まるまでの待機中、ぶつかって来た受験者の両腕をトランプで切り落とす。ボクが狩ったところで、大した旨味もない58番のけたたましい叫びが地下に反響する。…昨年は試験官がどうしても狩りがいがある相手だったからヤっちゃったけど、今度はどうだろう。

 

目の前で両腕を失った痛みで床に()(つくば)る58番のプレートが付けられた男を放置して、他の受験者を見回す。それなのに、周囲からボクに向けられるのは恐怖と困惑が入り混じった目線ばかり。…どいつもこいつも、まだ実にすらなってない。

 

つまらないし、多分この先も大して強くもなれなさそうな連中ばっかり。どうせなら、イルミの弟くらいのがいてくれないと退屈だなぁ。…でも肝心のイルミの弟に手を出したら、イルミからは本気で追い掛けられるよね。

 

イルミはイルミで何だかんだブラコンみたいだしさ。イルミがゾルディック家じゃなかったら是非ヤりたいけど、流石のボクもゾルディック家と真正面で敵対するのはね…。それに、数の暴力に晒されるのも晒すのもボクは基本好きじゃないからね。

 

…まあイイや。

何処かの試験でバレない程度に受験生を始末しておけば、少しは気も晴れるだろうし。念能力どころか、(オーラ)すら知らない初心者だから仕方ないことだけど…。

 

今年はヤる気の出しがいがある相手が見つからず、珍しくため息でも吐きそうな気分でいた。少しでも早く、この面白みも旨味もない野次馬を減らしたくて堪らなかった。最低限のサンドバックにすらならない相手で、どう期待すればいいのか…。楽しくない。つまらない。

 

すると不意に、お得意の操作系念能力で整形状態のイルミが視界に入り込んだ。確か…えー…ギタラクルだっけ?そうそう、このハンター試験中にターゲットを仕留めるんだって言ってた。何処の場面で仕留めるのか知らないけど、邪魔しないようにしないと。

 

イルミが今回のハンター試験にいる経緯を思い出していると、あのイルミが断固として”手を出すな”と言っていた弟を見ていないことに気付く。ボクが引く程のブラコンなイルミが弟を見ることよりも優先してることが気になって、自然とその目線の先を追った。

 

そしたら、そこには(オーラ)(イン)*4状態にした受験者がいた。彼女だか彼だか知らないその受験者が、今の今まで地下にやってきた他の野次馬に手を出されていない環境に少しだけ感謝する。あぁ良かった、狩りがいがありそうな実があって。

 

だからいつも通りにその実が熟しているのか、それともまだ成長の余地があるのか確認したかった。ただ手を伸ばそうと、足先を向けただけだった。声をかけようとしただけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

近寄るな。

 

 

 

 

 

 

 

 

だから音もなく、非常にピンポイントで重い(オーラ)がボクだけに当てられた時…。ボクはその場で自制出来ているか、もう分からなくなってしまう程の興奮が身体を襲っていた。そして興奮のあまり、反応してしまいそうな下半身ごと身体をその受験者から離した。

 

それでも、顔は絶対にニヤけていた。これだ、これがこの場の野次馬達に向けられた。それなら、誰もあの受験者には近寄らないのも納得がいった。ボクでさえも死を連想してしまうような重過ぎる(オーラ)なんて、念能力者ですらない野次馬が向けられればひとたまりも無いに決まってる。

 

ゾクゾクッと快楽にすら思える痺れがボクの身体を駆け巡っていた。あぁ誰の(オーラ)だろう、戦ってみたい。戦って、頭を使った駆け引きがヤりたい。シたい。ヤりたい。でも、1番の受験者は明らかに意識がなかった。ただ寝ているのか、それとも死んでいるのかは流石に分からない。

 

だけどあの受験者自身か、受験者に取り憑いている死後強くなる(オーラ)なのか…。分からないことは分からないままだけど、あれがどんな除念師でもお手上げだって聞く”ドス黒い(オーラ)ならどうしよう。………でもいいか、まだ確認するタイミングはいくらでもある。

 

だから早く起きてよ。

ボクだって我慢するのに限度があるんだから…♥

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

「あ、やっと来た…」

 

「ごめん!ちょっと色々あったんだ!!」

 

 

呆れた表情をして、二次会場で先に待っていたのはキルアの姿。どうやら、湿原からすぐそばで座って待っていたようだった。その手には、暇つぶしにでも遊んでいたらしいヨーヨーが握られている。随分と久しぶりにヨーヨーを見た気がした。

 

ヌメーレ湿原を抜けたところに広がっている自然風景、…なるほど”ビスカ森林公園”という場所のようだ。…案の定、ヒソカもキルアと同様にサトツから離れずに行動していた受験者に、こっそりと混じっているのがまたイラつくところではあった。なにわろてんねん!!

 

 

「…ま、あの44番に襲われでもしたんだろうけど…流石におせーぞ」

 

「そんな分かりやすかった…?」

 

「だってアイツ、ここに到着した時に血の臭いがしたし…」

 

 

キルアとそんな話をしながら、ヒソカに襲われた時の状況を共有する。キルアもヒソカの行動原理が分からないのか、気味悪そうな顔をしていた。それでもお互いの無事を喜んでいると、先に辿り着いていた受験者達が集まっていた公園内に設置されている倉庫のような建物から音がした。

 

まるで獣の唸り声にも聞こえるそれに、一部の受験者が怯えていた。…フォグがめっちゃ空腹の時みてえな音だな。フォグの身体って比喩表現じゃなくて、マジのガチで不思議いっぱいだからなあ。何食っても排泄よりも(オーラ)に還元されるし、人体の構造上で食べれるものは食べれるし。

 

 

「なんで皆入らないの?」

 

「十二時からなんだと。なんか中から唸り声がするけど……まぁ、待つしかないんだろうな」

 

「…あんな建物に、わざわざ閉じ込める必要があるのか?」

 

「余程身体が大きくないと、獣でもここまでの唸り声はしないから…凄く狭くて嫌がってるとか?」

 

「もう戦うのはカンベンだ…」

 

 

一次会場では割と序盤から疲れていたり、湿原に入って早々にヒソカから気絶させられたりと痛い目ばかり遭っているレオリオの言葉に苦笑いした。確かにここまで来ると、襲われるのも急かされるのも辛い。

 

決して出来ない訳ではないが、それでも精神的に追い詰められていくことに変わりはない。まだ余裕があるらしいキルアと、ヒソカに遭遇した余韻が引いてきたらしいゴンと話していると…不意にフォグが十二時直前であることを知らせてくれた。

 

自然と他の受験者達も時間が十二時に近付いていると気付いたのか、それまでの休憩時間と言いたげなゆるい雰囲気がヒリヒリとした緊張感に包まれた。時間になる前から、ずっと聞こえる唸り声のような音。

 

倉庫の外まで聞こえるその音が、一体何なのか。そんな警戒心が思わず身体をこわばらせる。そして、時計は静かに十二時を差し示した。正午と同時に倉庫の扉が開き、その音の正体が飛び出してくるかもしれないと受験者達は身構えた。

 

いつ飛び出してくるのかと警戒する受験者達の心境など知らず、倉庫の扉は程よい速度で完全に開かれた状態になる。受験者達の目と鼻の先に開いた扉の先、そこにいたのは足を組んでソファに座る勝気そうな女性と、その背後で床に座り込んでいる巨漢だった。

 

直後、3mあるのではという巨体を持つ男の腹から聞き覚えのある音が鳴り響いた。いやお前の音かーい!!と…昭和であればずっこけてしまいたくなる程の真実に、受験者達はそれぞれ呆気に取られてリアクションに困っていた。

 

むしろさっきまでの緊張感が一気に吹き飛ばされ、少し気が楽になったといえば良いように聞こえるが…。逆に考えればその分、気が緩んでいるということになる。だから人によってはさっきの緊張感の方がいいと言ってしまうような状況に、俺はまた苦笑いする以外なかった。

 

 

「どお?お腹は大分空いてきた?」

 

「聞いての通り、もーペコペコだよ」

 

「そんなわけで二次試験は”料理”よ!!美食ハンターのあたし達二人を満足させる食事を用意して頂戴!」

 

 

説明しようのない気の緩みに包まれている受験者達の状況など気にもせず、試験官であるらしい女性は声を大にして二次試験の内容を伝えた。テーマは料理と言われ、基本的に受験者の大半が野郎どもである受験者達は困惑やら戸惑いを露わにした。

 

まあ、ハンター試験で受験者に料理を作らせるなど予想できる訳が無い。基本ハンターってイメージの大半が、『ハンター=戦闘するor冒険する』っていう認識だからな。美食ハンターも追い求めるイメージが大半で、まさか作る方もできるとは思わんだろ。

 

…ゴンとキルアはまだ仕方ないにしても、レオリオくらいの年齢になっている男の一人暮らしは料理しない場合もある。アルバイトとかで稼いでも、手持ちの資金がカツカツならば自炊する層もあるだろうが…。

 

そこまで一人暮らし生活がカツカツではない男の一人暮らしでは、料理が趣味だったり彼女がいてスパダリ感を出したいとかじゃない限り、大抵は料理しない連中が多い…と思う。俺は彼女作るとか考えない重度のゲーマーだったので、俺よりも友人の方が料理してたかもしれん。

 

つーか、俺って現役の男子大学生にしてはかなり真面目だったんじゃないか…??確かにプライベートではゲーム三昧だったが、ゲームする時間が奪われたくなくて勉強は結構しっかりやった。つってもまあ、学力が高かった訳じゃないからなおさらだったけど。

 

アルバイトって言っていいか分からんけど、オンライン上でIT系の仕事をして資金源を稼いでいたりした。まあ実家暮らしではなかったし、ゲームを買う方を優先したくて我流とはいえども自炊だってしていた。得意料理はカレーだ。肉じゃがとほぼ同じ材料でできるからな!

 

VRゲームを勧めてくれた友人は大学生になって俺がガリ勉だったから、とソイツがサボる度にノートを貸したり授業内容を教えたりしているうちに仲良くなっていたし…。でもアイツはアイツで、顔立ちが整っていた分下半身が軽くて軽くて…。

 

何があったのか知らんが、俺が知る限りは常時恋愛モノの世界で生きているようなイケメンだった。地味に料理が出来ると知った時は、他の友人達と共に台パン*5した記憶がある。…お前みたいに下半身が軽くて許されるのはイケメンだけなんだよ!!!スパダリすんなクソが!!!

 

 

「まずは俺、ブハラの指定する料理を作ってもらい」

 

「そこで合格した者だけがあたし、メンチの指定する料理を作れるってわけよ。つまり、あたし達二人が美味しいと言えば晴れて二次試験合格!試験はあたし達が満腹になった時点で終了よ」

 

 

…おっと、危ない危ない。

つい虚空に怒りを伴った拳が出そうになった。

 

そんなことを考えていると、メンチという名前らしい女性ハンターの説明に受験者達が険しい顔する。…というかあの巨体を持つブハラはともかく、メンチは頑張ったとしても人並み程度しか食べれるように見えないんだが?

 

ファミリーレストランのメインメニューが三品くらいで限界そうな身体して何言ってんだ…??いやでも、フォグも体格以上の量を食べて総合的な物体の面積が増えないんだよな…。食った物の分だけ、多少膨らんだりしている筈なんだけど…。

 

 

「俺が指名するメニューは……"豚の丸焼き"!!俺の大好物!!もちろん森林公園に生息する豚なら、種類は自由だよ」

 

 

…うーん、それが料理って言っていいのか分からん。でもなぁ、例の友人曰く「サンドイッチメーカーを使って作ったものは料理だし、オーブンを使ったものも料理」らしいしな。とりあえず、ハンター試験で料理がテーマだとしてもキャンプ感が拭えないお題を突っ込むべきか困る。

 

あとは、内臓の処理とかしなくちゃいけないって後で言われると面倒だ。…これでもハンター試験であることに変わりはないし、多分どっかで躓きかねないから侮らないようにするか。ついでに試験用とは別で豚をお持ち帰りしようじゃないか…!!

 

 

「それじゃあ、二次試験スタート!!」

 

 

メンチによって切られた開始の合図と共に、受験者達は一斉に森林公園の奥へと向かって走り出す。そりゃまあ、肝心の豚がいないと豚の丸焼きなんてできる訳が無いし。そう考えて移動を始めると、不思議と五人揃って移動していた。

 

…まあ別にいいか、それくらい。レオリオもヒソカから気絶させられた割には元気そうだし、キルアもそこに関してあんま疑問に思ってないなら五人で動いた方がいい。人手は多い方が簡単になるしな。それに、通常サイズの豚とは思えないし。

 

 

「いやー、正直ホッとしたぜ!!簡単なメニューでよ!」

 

「豚捕まえて焼くだけだもんね」

 

「しかし、早く捕まえねば。あの体格とはいえ食べる量には限界があるはずだ」

 

「そう簡単に捕まればいいけど…」

 

「豚だぜ?楽勝だろ!」

 

「だってあの湿原の近くにいる豚なのに、弱いなんてことある?」

 

 

すぐそばで走っているレオリオの顔が引きつる。…『嘘だろ?』って言いたげな顔してるとこ悪いが、多分レオリオが思ってる豚とは違うと思うんだよなあ。そもそもあの巨漢が好物に指定する料理を、通常サイズの豚で合格にしてくれるように思えない。

 

それに、自然界ってのは不思議なことに頭が良かったり強かったりする生き物程、旨み成分であるアミノ酸を多く含んでいることがある。豚はその場合、強ければ強い程その肉は美味しくなると思う。…だって豚って、あの身体で体脂肪率は人間よりも少ないんだぞ?

 

あとはまあ…豚ではないものの、同じ食べ物系の生物の例としてあげるならばタコやイカが分かりやすい。基本的にタコは人間でいうところの三歳児に匹敵する知能を持っていて、人が飼っているタコに関しては自身が水槽というケースに入れられていることを認識する場合もある。

 

まあカラスよりは頭の発達が良くないように思えるかもしれないが、どちらも場合によっては飼い主を殺しかねないリスクがある。また、タコもイカも同様に頭の良い個体の方がより旨み成分を含んでいると言われている。

 

対象の生物によって、頭脳か身体のどちらかが生存戦略に関わってくる。タコはそれが頭脳だっただけだ。さっき、ヒソカ以外でもあれだけ脱落者を発生させたあの湿原の近くのこの公園で、一般的な豚が生存していられるだろうか?俺は無理だと思う。

 

生態によっては、あの湿原で現れた人面猿よりも身体能力に優れている可能性もある。だから、あの人面猿は騙しやすい人間を標的にしている可能性がある。豚よりも弱く、言葉で戸惑わせられてしまう人間を狙う理由としては割と妥当だと思ったんだが。

 

 

「そうだな。食べる数に限界がある料理ということは、それだけ料理が作ることが出来ない可能性がある」

 

「マジかよ……」

 

「めんどいけど、やるしかないか…」

 

「とりあえず豚を見つけないと!話はそれからだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森林公園が広すぎる弊害か、ゴン・レオリオと俺・クラピカで一旦タッグを組んで別行動も視野に入れることにした。キルアは「オレは一人で大丈夫だから、ちょっと奥まで見てくる」と言って、完全に別行動をしている。場合によっては死亡フラグだぞそれ。

 

湿原よりも移動がしやすいとはいえ、豚が見つからなかったら意味がない。こればかりは流石に、あのヒソカも手こずってたりして…。そんなことを思いながら豚を探し求めて森林を探索していると、下にあった太めの木の根に足先を引っ掛けて転んでしまった。

 

 

「大丈夫か…!?」

 

「…ってて、一応は…大丈夫」

 

 

俺と一緒に行動していたと言っても、若干先行してくれていたクラピカが差し伸べてくれた手を握り返す。所々が土まみれになったレインコートの裾を叩いていると、一次試験が開始してからずっと使っていたレインコートが木の枝で結構ザックリ破けているのに気付いた。

 

…別に安物を使っていた訳ではないのだが、直しようがない程に破けてしまった以上は仕方がない。そう思って、大きな裂け目が出来てしまったレインコートを脱ぐ。レインコートに付いていた汚れや水気を振り回して落とし、出来るだけ小さくなるように折り畳んでからリュックにしまう。

 

 

「……レアン…だよな?」

 

「え?そうだけど…どうしたの?」

 

 

この世界で、割と一般的な髪色らしい金髪が露見するのは百歩譲ってまだいいとしても…。赤眼がバレるのは一番マズい。そう判断して本当であれば熱中症対策として持ってきていた、つばが広くて深く被れる大人用の帽子を被った。

 

すると、その一部始終を見ていたらしいクラピカが今までで一番と言っていい程の動揺を表して俺を見ていた。…まあクラピカのことだし、余程ピンポイントで聞かれない限りは俺の情報を売ったり広めたりしないよな。

 

 

「っいや………何でもない、気にしないでくれ」

 

 

…それとも何か俺がおかしいことでもしたのか?そう思って、何かおかしいところを探そうと足や腕をキョロキョロと見渡した。そんな俺の仕草をクラピカは動揺を隠し切れないままで制止した。体調でも悪いんだろうか?

 

そう思ってその後も何度か会話していたが、質問の形式を変えてもクラピカがその動揺の原因を語ることはなかった。これでもかと目が泳いでいるというのに、断固として語らない選択をする辺りは頑固なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

「げ!?」

 

 

ちょっとした不可解なトラブルに見舞われながらも森林を探し回っていると、不意にゴンとレオリオの方で小さく何かを見つけたとばかりに声があがる。ゴンと出来るだけ離れないように行動していたレオリオは、自然とゴンの目線の先を見る。

 

するとその先で嫌なものでも見たのか、レオリオは声をあげて顔を顰めていた。ようやく訪れた変化に俺もクラピカも合流を兼ねて食い付くと…二人が居る場所から少し坂を滑り降りた場所に、ようやく豚の群れが見つけられた。

 

だがしかし…俺とクラピカも二人のいる場所から目線の先を移動させ、顔を険しくさせてしまった。そこには、目測でも3mは余裕である巨大な豚が何匹もいたからだ。豚や猪の特徴でもある鼻は大きく少し前に飛び出ていて、その左右には口元から伸びている牙が見えていた。

 

フォグ曰く…その豚の名前は"グレイトスタンプ"。通称、"世界一凶暴な豚"。その巨大な鼻で獲物を圧し潰して捕食するのが特徴である、この森林公園唯一の豚だととか…。フォグ…お前、参加しないからってやけに他人事みたいな…。

 

流石に、どうしたってあの巨体を持つ豚を四人がかりでどうこうする予想図は頭の中に浮かんでこない。一体どうしようかと四人で息を呑んでいると、ふとこちらを見つけたらしいグレイトスタンプ達がその目をギラリと輝かせる。それは明確な敵意だった。

 

その目付きの鋭さに、野生児であるらしいゴン以外は慣れずに身体の動きが鈍くなる感じがした。そして明らかにこちらが潜んでいる茂みに顔を向け、今にも走り出しますとばかりに片足をあげて地面を踏み固めるように何度か蹴っていた。

 

 

『ブオオオオオオオ!!!』

 

「うおおお!?」

 

 

一体何がキッカケになったのか分からないが、タイミングを測ることも出来ずにグレイトスタンプ達は揃ってこちらに対して猪突猛進してくる。その勢いに若干気圧されながらも、一旦四人共飛び上がって突進に直撃してしまうことは回避する。

 

一度勢いを生んでしまったからか、簡単には止まれないまま木にぶつかる個体もいる中でゴンが真っ先にその隙を狙った。ヒソカの額にぶつけていた釣り竿の錘を振りかぶり、木にぶつかって足元をふらつかせている個体の額に叩き付けた。

 

するとゴンが攻撃したグレイトスタンプは昏倒したかのように地面へと倒れ込み、涎を口からこぼして動かなくなる。…もしかして、額の骨がそこまで強くないのか?その様子を見ていたクラピカとレオリオも、グレイトスタンプの倒し方を理解する。

 

 

「こいつら、頭部が弱点か!」

 

「巨大で硬い鼻は脆い額をガードするための進化というわけだ」

 

 

そんなことを話している二人の言葉を聞きながら、俺も手頃に足元をフラフラとさせている個体に目をつける。そして最初の突撃を回避する為に乗っていた木の枝から飛び降りて、その個体の額目掛けて両足を揃えて落下する。

 

靴の踵のみを額に当てるイメージで落下すると、見事グレイトスタンプの額に直撃してその個体はゴンが仕留めた個体と同じように倒れ込んで動かなくなる。クラピカやレオリオもグレイトスタンプを倒すと、その鳴き声や騒音を聞き付けて別行動していたキルアや他の受験者達が現れた。

 

 

「お~、でっけー豚」

 

「こいつなら試験官も満足できそうだな!」

 

「キルア!額が弱点だよ!」

 

「サンキュー」

 

 

十中八九、ゴンは完全なる親切心でキルアにグレイトスタンプの弱点を教える。だがもちろんそれは、キルアと同様に集まって来ていた他の受験者にも聞こえていた。…視界の端でヒソカが嬉しそうな顔をしてたのなんか見てない見てない。

 

ちょこちょこと視界の端に入ってくるヒソカを無視しながら、ゴン達と共にグレイトスタンプを両手で担ぎ上げて会場に戻った。二次会場の広場に戻ってから、手頃な場所を決めて早速調理を始める。その時の俺は、キルア・ゴン・レオリオの三人が何か言いたげだったのに気付かなかった。

 

てんててんててて、てんててんててて、ててて、ててて、ててて、ててて、てててててん!*6沢山上手に、焼けました!*7…という訳で、グレイトスタンプの丸焼きを無事作り終えた。ちなみにフォグはどうしてもグレイトスタンプが捕獲したいと言って、少しの間だけ別行動中である。

 

多分フォグの念能力で二匹くらいは絶対に攫ってくるだけだろうが、確かに調理法によっては美味しそうだったので許した。余談だが、豚の丸焼きと聞いて小学校の時に習わされた鉄棒の技を思い出した。もちろんだが、誰にも伝わらないネタだったので悲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「うひゃ~!」

 

「あらま、大漁だこと。ちょっと舐めてたわ」

 

 

そんなこんなで試験官であるブハラの目の前には、豚の丸焼きが大量に積み重ねられていた。隣に座っていたメンチは目を丸くして、驚いたように皿の上で山を作る豚の丸焼きを見上げていた。流石に豚の丸焼きと言えど、この質量の状態はあまり見ないものらしい。

 

どれもこれも丸焼きということもあるが、それでもブハラはもう我慢出来ないとばかりにまだ焼きたてで湯気が上がっている一頭目に(かじ)り付いた。ちゃんと咀嚼(そしゃく)してんのかと思ってしまうような速度で、ブハラは一頭目を容易く骨だけにしてしまった。

 

ガツガツ、とブハラが次の個体に齧り付く。

…何というか、見ていてとても圧巻と言えるような食いっぷりで爽快感すらある。そこまで手間暇かけた訳じゃないが、作ったこちらとしても悪い気分はしない。

 

…でも、ちゃんと味わってんのかは分からない。ちゃんと噛まないと身体に悪いし、そういう時に少しでも多く噛むだけで脳の働きが活性化されるんだぞ?そんなことを考えていると、先程グレイトスタンプを何頭か捕まえてくると言っていたフォグがこっそりと帰ってきた。

 

 

「うん、美味い美味い」

 

 

ムシャムシャ、と視界の端でブハラが食事を続けている。

何だかご機嫌そうなフォグに最終的な捕獲数を聞いて、一瞬叫びそうになったが何とか口を押さえた。うわっ…私の年収、低すぎ…?*8…ではなく、俺の反応はその逆である。

 

あのなぁ…生態系に問題が出ない程度って言われても、正直信用ならないくらいの数だがおい。…え?子供は見逃した?そりゃ当たり前だろうが、そうじゃないとここに生息するグレイトスタンプが絶滅するだろ!?

 

…どう調理したいって、やっぱ無難にカツ丼が材料的にも作りやすいんじゃないか?カツ丼のカツが作れれば、カツカレーも作れるだろうし…。豚を使う料理ってかなりあるからなぁ…。鍋にも丼にも、豚肉が合わない調理法って逆に少ないくらいだと思うぞ。

 

あぁでも、フォグには一回は豚の角煮食って欲しいな。マグロとかカツオの角煮でもいいんだけど、煮物は口当たりが良くてご飯が進む。豚肉の生姜焼きもたまに食べると美味いんだよな…。まあ、当たり前のように後処理は大変だけどな。

 

うーん…。いやな…丸焼きが不味いって訳じゃないんだが、せっかくグレイトスタンプっつー特別な豚を使うなら多少は時間をかけたくないか?それに俺と合流するまででフォグってどんなもの食べてたんだ?………なるほどな、じゃあ尚更だ。

 

 

「お、これも美味い」

 

 

ボリボリ、とブハラが咀嚼する音がする。

豚肉に合わせるってことを考えるなら、キャベツは最高に相性がいいぞ。

 

ロールキャベツにしても、どっちも鍋に突っ込んでも美味い。それか、適当に好みの味付けをして炒めても美味い。出来るなら減塩をして、キャベツ多めにするとカリウムを多く取れて高血圧の対策になるんだ。なんなら食物繊維も取れる。

 

…カリウムって何?そうだな……野菜に含まれてる不思議な成分で、身体を健康に近付けてくれるんだ。…あぁ!卵やほうれん草もいいな!!ごま油で炒めたら最高のおかずになりそうだ!あとは肉じゃがにしてしばらく楽しんでから、具材を足してカレーにするっていう手段もあるぞ。

 

あー…豚汁も捨てがたいが、好き嫌い関係なさそうっていう意味ではカレーの方が受けはいいだろうな。…まあ単純に、味付けが簡単だってのもある。…シチューは俺が風邪引いてる時に食ってゲロったことがあるから、俺は食わんぞ?

 

 

「これも美味」

 

 

まあとにかく、一番使い道が広いのはやっぱり挽肉だな。豚バラ肉よりも多少お手頃に売ってるし、使える用途も幅広い。作った炒め物に肉が足りないと思った時、めっちゃ重宝することになる。最悪、困ったら玉ねぎとかと合わせてハンバーグという形で使えるのがデカい。

 

それに肉自体の賞味期限とか消費期限が気になるなら適当に焼いておいて、ちょっとの間は生肉の状態にしないで置いておける。そのことを考えると、ある程度時間が経過している豚肉でも大半がスパイスで誤魔化されるカレーは最強と言ってもいい。

 

豚挽肉でも豚バラ肉でも良いんだから、もっと最強だな。ま、すぐに使わない肉を放置しちゃっても焼いて粗熱(あらねつ)が取れるまでは一旦放置して、人肌程度に落ち着いたら冷蔵庫に入れて肉を使う料理が作れる時に取り出せばいい。

 

でも結局は長持ちするとかそういうことじゃないから、使うなら早めに使っておいて損はないぞ。確かY◯uTubeのあるチャンネルで、巨大ハンバーグを作って食べるという動画があった筈だ。作るのはちょいと大変だが、作り方さえ間違わなければ美味しいと言っていたのを覚えている。

 

あー…やばい、考えてたら腹が空いてきた。なぁフォグ、ハンター試験中にタイミングがあったらなんか作って食べようぜ。

 

 

「あ~、食った食った。もうお腹いっぱい」

 

 

…とそんな余計なことを考えている間に、ブハラは全く勢いが落ちることなく食べ続けていた。そして、何と用意された豚の丸焼き計七十頭を全て平らげたのだ。その手に持っていた最後の一頭すらも骨と化し、最後の最後に遠慮ないゲップをすると満足そうに自身の腹を撫でた。

 

豚の丸焼きを食べる前とは違い、着ている服がはだけてしまう程にブハラの腹は膨れ上がっていた。それを見ていたメンチは、いつの間にか横に設置されていた銅鑼(どら)を思いっきり叩いた。

 

 

「しゅ~りょ~!」

*1
ゲームにおいてキャラクターが気絶して一定時間動けなくなる状態異常のこと。

*2
オーラの覆っている範囲を広げる。オーラに触れたモノの位置や形状を肌で感じ取ることができる。

*3
オーラが拡散しないように、体の周囲にとどめる。体を頑丈にし、若さを保つ。

*4
オーラを見えにくくし、気配が消せる。「発」が見えなくなるため、仕込みや不意打ちが可能。具現化した物体も見えにくくなる。

*5
ゲームで怒りや悔しさを感じた人がゲーム筐体などの台を叩くこと。

*6
(M◯3・MH◯Gの肉焼きセット)

*7
(◯HP3の10連よろず焼きセット)

*8
とあるネット広告のキャッチフレーズ。




飯テロ(によって盛大に話が逸れる)回でした。

あと、イルミがハンターライセンス取得とターゲット殺害を同時進行していることになってしまいました。すみません。でもやりかねないと思ったのでそのままで行きます。
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