BAD COP   作:ノキシタ

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皆さん、明けましておめでとうございます。(1ヶ月遅れ)

 ちょっと目を離した間にブルアカも凄いことになってたもんですなぁ。セイアちゃんもリオちゃんも実装されてよかったじゃんね☆

 あと感想、お気に入り登録ありがとうございます!励みになります。(更新が早くなるとは言ってない)

※令和8年5月10日午後17時16分:あとがきのキャラクター紹介を一部改訂致しました。


免許センター

 朝霧スオウは、アビドス高校に在籍する3年生である。

 元々不良だったスオウはある時セイント・ネフティスに雇われ、令嬢たるノノミの護衛(監視)としてハイランダー鉄道学園へ入学していた。

 しかしノノミ本人がハイランダーへの進学を拒否してアビドスへと入学。本来ならそこで契約終了となるはずが、ある連邦生徒会関係者の口添えで契約更新が決定、ノノミの護衛任務を継続するという名目でアビドスに転校してきたという経緯がある。

 さらに以前にはカイザーPMCに所属していた時期もあったが、そのことを知っているのは対策委員会ではホシノだけだった。

 

「これでよし……アヤネ、最後の水道管終わったぞ」

「ありがとうございます、スオウ先輩!これで学校の水道は全面復旧です!」

 

 後輩達に頼まれた仕事を終え、スオウはタオルで顔を拭う。

 以前襲撃してきたヘルメット団には多少頭の回る奴もいたようで、電気、水道、ガスが尽く遮断されていた。電気と一部水道及びガスは最優先で復旧させたが、まだ直せていない箇所があったのだ。

 

「ありがとね、スオウ先輩。お陰で助かったわ」

「少し手伝っただけだ、礼を言われるほどじゃない」

 

 ノースリーブに改造した制服用ワイシャツに、緩めていたネクタイを結び直す。作業のため脱いでいたブレザーのジャケットを羽織ると、スオウはさっさと帰ろうとした。

 

「もう帰るの?」

「私の仕事は終わったろう?用もないし帰らせてもらう」

「対策委員会の仕事はまだ残ってるんだけど……」

「入部届を書いた覚えはないんだが」

 

 引き留めるセリカにやや眉を顰めるスオウ。

 アビドス側(小鳥遊ホシノ)が対策委員会への入部を転校の条件としていたので、転校と同時に自動的に入部させられたのである。

 とはいえ、その事情は転校当時入学していなかったセリカやアヤネには関係がない。断ってしまうのも忍びない。

 

「わかった、そちらの仕事も手伝おう」

 

 スオウは降参して、後輩達を手伝うことにした。

 何だかんだ言って結局は後輩の頼みを聞いてくれるから、スオウは何かと頼りにされることが多かった。

 

 

 

 対アビドス対策方面本部跡地では、今日もいつものようにリコが警衛についている。厳密には警衛司令という役回りだが、上番人数を少なくしているためにリコ自身が歩哨をしたりもしていた。

 リコは警衛にあたる人間を最小限にし、なるべく多くの時間を訓練や休養に充てさせている。警衛のような臨時勤務で隊員達の時間が奪われるのを嫌ったというのもあるし、そもそもリコ自身が警衛をするのが趣味だったというのもあった。

 さて、この日の来客(ゲスト)は驚くべき面子である。防衛室長が来たかと思えば、今度はアビドス高校のワゴン車が来たのだ。

 

「はーい止まってー。おっ、ホシおじじゃん」

「やっほー警衛ちゃん、久しぶり〜」

「免許更新したばかりじゃない?どしたの?」

「やー、今日は可愛い後輩達にも免許を取らせてあげようと思ってさ」

「そりゃいい。どれどれ……」

 

 リコは車内を覗いて人数を確認する。

 運転席のホシノの他に、助手席のノノミ、後部座席にはシロコと、そして大人が1人がいた。

 

「おや、そちらの大人は?」

「私は先生、シャーレから来たんだ」

「ああ、あの独立組織の」

 

 リコは相槌をうつ。先生の噂は彼女も知るところだ。

 赴任1か月にして多くの事件を解決し、常に生徒に寄り添ってきた変な大人。そんな人間が何故アビドスなどという僻地に来たのかは謎だったが、ともあれリコも名乗った。

 

「私はヴァルキューレ警備局、アビドス監視班長の守屋リコです。今はここの警衛司令もしてます」

「アビドス監視班?」

「アビドスの砂嵐とかを監視してくれてる人達だよ。予報情報とかをくれるから私達も助かってるんだ〜」

 

 先生にホシノが解説する。確かに知らない人からすれば、アビドス監視班というネーミングには引っかかる所はあるだろう。

 ホシノの解説に、リコが苦笑して付け足す。

 

「口外無用でお願いしますね、割とヤバいことやってるんで」

 

 意味を察して先生は頷いた。アビドス監視班が発報している砂塵予報等は公表されていない部内情報であり、正式な手続きなくこれをアビドス側に流していることがバレたら大問題なのである。

 先生は組織図的にはむしろ行政(連邦生徒会)側の人間だが、生徒のためならそうしたことに目を瞑るぐらいには柔軟な人物だった。

 

「ほどほどにね」

 

 そう釘を刺すことも忘れなかったが。

 苦笑しながらにリコはプレートキャリアの左脇に備え付けたポーチから入場申請簿を出し、必要事項を書き込んでホシノから申請印を貰う。

 

「はいじゃー、これ駐車許可証と入場許可証ね。入場許可証は1人1つ、首から提げてね」

 

 申請簿をしまうと、ファーストラインのダンプポーチから必要分の許可証を渡した。

 そんな時、ふとリコの無線機が鳴る。

 

『東ゲート防衛室長車退出、ゲート開きまーす』

「はいりょーかーい」

 

 ゲートを挟んで反対の歩哨からだった。間もなく分厚いゲートが開放し、1台の業務車が進み出る。

 

「連邦生徒会……?」

 

 出てきた車の所属表示とナンバープレートを見て、先生は少し驚きを交えて呟く。

 先生もこんなところに人など滅多に来ないことは承知していた。そこに連邦生徒会の車両が来たということは、ようやく対策委員会の支援要請に応える向きになったのだろうか。

 

「あれは防衛室長の専用車ですね」

「防衛室って?」

「ご存知ないので?」

「うん……」

 

 首を傾げる先生の様子を、リコは訝しんだ。シャーレは仮にも連邦生徒会の組織で、連邦生徒会の部署についてもある程度把握していて不思議ではない。むしろ知らなければ仕事もままならないはずだ。

 例えば何か物品が必要になった時、その物品あるいはその購入経費は財務室に要求しなければならない。その時財務室のことを知らなければ要求のしようがないから、予算が執行されることもない。

 

「(どんな運営してるんだ、シャーレは)」

 

 そんな疑問を持ちながらも、リコは先生に簡単に説明した。

 

「防衛室は連邦生徒会の中でも安全保障や治安維持を担当する部署ですね。我々ヴァルキューレの上位組織になります。

 で、あの車に乗ってるのが防衛室長の不知火カヤっていう、まあ私ら下っ端からすれば雲上人みたいな人です」

 

 説明を聞きつつ、先生はすれ違っていく業務車を眺める。ふと、車内の少女と目があった。

 ピンクの髪に細い目。連邦生徒会の室長クラスの制服は、やはりあの人物が防衛室長とやらなのだろうと先生に理解させた。

 

「さ、入って入って。ホシおじは免許センターまでの道わかるよね?」

「大丈夫、わかってるよ〜」

「ならよし。後輩ちゃん達も試験頑張ってきてね」

 

 リコに見送られながら、ホシノ達の乗る車は要塞へと入っていった。

 

 

 

 「で、仕事ってこれですか」

 

 呆れ半分、怒り半分といった様子で、シイナはコイに尋ねた。2人は免許センターの試験場にいて、技能試験係の手伝いで判定員兼安全係をしている。

 といっても遠巻きに眺めるだけであり、双眼鏡を覗くシイナの隣でコイはスマホを弄っていた。

 

「『面白い仕事が来たぞ』って言うから飛んできたのに、これのどこが面白いんですか」

「いやごめんて。その仕事とこれは別だから」

 

 苦笑するコイをちらとシイナは睨んだが、確かにこの常識外の問題児がこんな仕事を面白がるとも思えないので、ひとまず矛先は収めてやることにした。

 

「技能試験班も人手が足りないようで」

「まあ免許係自体人が来ない部署だからねェ」

「何故です?キヴォトス全域の運転免許行政を司る組織の1つじゃないですか」

 

 シイナは双眼鏡から視線をコイに向けて尋ねる。初度配置が交通局なだけあって免許行政の重要性は心得ているようだったが、まだ1年生のシイナには組織のことがよくわかっていなかった。

 

「仕事が地味、昇進できない、僻地の癖に手当が出ないとなればどうだ?シナモンはそんな職場で働きたいかね」

「いいえ」

「そーゆーこと」

 

 シイナを納得させたコイは退屈そうに欠伸をして、持っていたコーヒーの空き缶をシイナに押し付けた。

 

「シナモン、コーヒー買ってきて」

「仕事はどうするんです?バディ行動しろって技能班長言ってましたよね」

「こういう時パシリにする為にバディってのはあるんだよ。ほら行った行った」

「理不尽……」

 

 シイナは空き缶を持って舎内の自販機に向かった。口で何か言いはするもののしっかり従う辺り、コイの無茶苦茶具合以前にもとより頼み事を断れない性格なのかもしれない。

 さてシイナが席を外した直後、コイの横に歩み寄る足音がした。先程来その存在を承知していたコイは振り向くことすらしない。

 

「今の子は?」

「新入り」

「何年生?」

「1年」

「うへ〜、君も後輩を持つようになったんだね」

「お互い歳食ったってわけだ」

 

 赤信号の前で停車する試験車を眺めながらコイは鼻を鳴らした。どうやらあの獣耳の2年生は行儀よく『待て』ができるらしい。

 

「随分賑やかになったじゃねェの。他校のバスでも襲った?」

「そんなことはしてないよ。みんな自分から来てくれたんだ」

「そりゃめでたい。梔子ユメのボランティアが功を奏したかな」

「あとは本人が見つかれば万々歳なんだけどね」

 

 小鳥遊ホシノはため息をつく。ユメが残した手帳の類は見つかったものの、肝心の本人が未だに見つからない。

 無論探さなかったわけではない。砂漠は1、2年生の時にホシノが全て踏破したし、都市部の捜索はコイの計らいでヴァルキューレ情報通信局のある部署が行っている。

 それでも見つからないとなれば地下に潜ったか、何かしらの方法で記録に残らぬよう越境したかである。

 トリニティ領域保全委員会、ゲヘナ境界警備隊、いずれも簡単に通してくれる相手ではないはずだが。

 

「探し物はまだまだ続きそうか」

「お互いにね。そっちも見つかってないんでしょ、2()()()()()()

「そりゃまあねェ……」

 

 話題を移されるやコイは途端に口数を減らした。自分のこととなると途端に静かになるのは相変わらずらしい。

 その様子は、今のところ捜索が進展していないことも示唆していた。

 

「まあ深く聞いたりしないけどさ、後輩ちゃんのこともちゃんと気にかけてあげてね」

「後輩ちゃん?」

「そう。自分の目標ばっかり追ってちゃダメだよ?おじさんも2年の時、よく後輩を放ったらかしちゃったからさ」

 

 ホシノはちらと舎屋の扉を見る。隙間から覗く瞳が、ホシノと目が合った。

 ふっ、と微笑んで、ホシノは踵を返す。

 

「じゃあね。後輩ちゃんとしっかりお話するんだよ」

「あいよー」

 

 手をひらひらと振ってホシノに返す。

 やがてホシノが帰ると、入れ替わりでシイナが帰ってきた。手には缶コーヒーが2つ。

 

「どっちがあたしの?」

「どちらでも」

「んじゃモーニングシュートで」

 

 シイナから赤い缶コーヒーを受け取り、蓋を開けて啜る。豊かな香りが鼻をくすぐり、爽やかな苦味と微糖の甘味が舌を楽しませるところ、隣で青い缶コーヒーを啜るシイナは尋ねてきた。

 

「先程の方、アビドスの小鳥遊ホシノさんですよね」

「そうだな」

「何のお話をされてたんですか?」

「とぼけなさんな、聞いてたんだろ」

「……まあ、大体は」

 

 気まずそうに答えて口を缶で塞ぐ。シイナにとっては盗み聞きをしてしまったことが後ろめたいのだろう。

 そんなシイナに、コイは笑い飛ばした。

 

「別に聞かれて困る話じゃねェよ。ただの世間話さ」

「では2年前の事件というのは?」

 

 シイナはそう質問を投げる。別に答えは求めていない、ただ本当に聞かれて困る話でないのか確かめたかっただけだ。

 そんな質問に答えを探すように少し間を開けると、コイは口を開いた。

 

「……未来を閉ざした者の」

「え?」

 

 答えながら、コイはコーヒーを飲み干して立ち上がる。

 きょとんとした様子のシイナは、ただそれを見つめて聞いていた。

 

「目の前の仲間を救えなかった者の、初めて他人の痛みを知った者の」

 

 空いた缶を試験場の向こう側にあるゴミ箱へ投げ込む。そのコイの目はどこか遠くを見ていて、表情は見たこともないような険しさと憎悪を兼ね備えていた。

 

「あまねく因縁の始発点。そんなもんさ」

 

 それだけ言って、コイは歩き去る。

 気付けばもう技能試験は終わっていた。となればコイがここにいる理由も、ましてシイナがこのまま居残っている理由もない。

 

「……結局聞かれて困るんじゃん」

 

 意味不明な答えに一言呟き、シイナもまたコイの後に続いた。

 

 

 

 アビドス市街のとあるビルでは、『黒服』という人物がワンフロア丸々借り切っていた。

 黒服は謎めいた人物である。諸所のクラックから青い炎が見え隠れする真っ黒のマネキンが黒いスーツを着ているような風貌で、出身、本名、目的等一切謎に包まれている。

 

「そんな私をわざわざ訪ねてくるとは、あなたは余程の物好きなのでしょうかね」

 

 黒服はデスクから来客に向けてそう言った。デスクの前の来客は一見するとカイザーPMCに所属するただの少女兵である。

 違うところは、右側頭部から乱雑に鋭い棒状の機械が深々と挿し込まれていることであろう。見るからに脳まで到達していそうだ。

 

「ヘイろーに干渉しテの反転実験をやろウっテいう奴がソれヲ言うかイ?」

 

 おかしなトーンで喋るその少女兵は明らかに異常だった。目の焦点は合わず、黒服の方を見ているようで見ていない。口はほとんど半開きで涎を垂れ流し、たまに手がびくりと震える。

 そのくせ、黒服の実験内容とそれの企図するところを理解している。このレベルの少女兵が知っていていい話ではない。彼女は機械を通して何者かに操られているのだろう。

 

「……で、どのようなご用件でしょう?こんな趣味の悪い形での訪問となれば、まああまり愉快な話ではなさそうですが」

「ナに、ちョっと忠告しトこうと思ッてネ」

 

 言いつつ、少女兵は1通の封筒をデスクに置く。表にも裏にも何も書かれていない、ただの茶封筒だ。二重封筒になっていて中身まではわからないが。

 

「『ゲマトリア』は、キヴォトスから即刻手を引くコとだね。こコはボクの実験場ナんだ、荒ラサれちャ困る」

「嫌だと言ったら?」

「そノ封筒の中みタいになル。賢明な判断ヲ期待スるよ」

 

 ますます封筒の中身が怪しくなる。もとよりいい予感などしていなかったが、この言葉で概ね察しはついた。何にせよ見て楽しいものではないだろう。

 警告を済ませた少女兵は、踵を返してさっさと部屋から歩き去った。

 

「……全く、趣味の悪い客人だ」

 

 そう呟きながらに黒服はペーパーナイフで封筒を開ける。中身は写真だった。

 何の写真かといえば、端的に言えば遺体である。

 

「本当に、趣味の悪い……」

 

 途端に、デスクの電話が鳴る。外線でも内線でもない、専用回線の電話だ。

 

『黒服!』

「おや。今は貴方ですか、フランシス」

 

 慌てた様子の相手は同じ声で違う人格を見せるが、しかし話し方で概ね相手が誰であるかわかる。今はフランシスという奴らしい。

 

『そんなことはどうでもいい、それより重大な事態だ。地下生活者が殺された!』

「でしょうね」

 

 特段驚きもせず、黒服はただそう答えた。

 封筒の写真に写っていた遺体がその地下生活者なるかつての仲間のものだったからである。

 

「大至急他のメンバーを集めて下さい。緊急会議を開きます」

 

 黒服はすぐさま指示を出した。相手が誰であれ、ゲマトリアの探求を妨害するのであれば何かしらの対応をしなければならない。

 先生とやらの対応もしなければならない中で、2正面の対応を強いられるのは、いずれにせよ痛手だった。




守屋(もりや)リコ
 ヴァルキューレ警察学校:3年生
 警備局アビドス監視班長 兼 第1分隊長
 警備局第20機動隊、捜査局アオバ中央支所殺人係第1班、情報通信局外事情報部第2係、総務局人事係長、総務局長、生活安全局押収品係多磨川分班を経て現職。
 固有武器:『第6号ヴァルキューレ制式ライフル改・乙4』AR

 アビドス監視班のボスにしてコイの数少ない友人。菱形の四角形をX字に5つ並べたヘイロー。
 黒髪左サイドテール。半袖制服にSPC(スケーラブルプレートキャリア)とIHPSヘルメットを装備。
 人と話すのが好きで、よく正門たる東ゲートにいる。
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