ヘスティア・ファミリアのエセシスター   作:カラスガラス

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白兎捜索隊

 

 

 いつもなら帰ってきているはずの時間をとっくに過ぎているのに、ベルが帰還していない。初めての中層進出だ。多少は遅くなる事もあるだろうが、さすがに一夜を越えて帰ってこないのはおかしい。何かあったのだと思ったヘスティアはギルドに確認するが、やはりベルたちの目撃情報はない。

 未だダンジョンにいると考えるのが自然な状況だった。もう1人の眷族であるユイがいれば、ベルの活動階層程度軽く見に行ってもらえるのだが、生憎と【ロキ・ファミリア】の遠征に同行していてそうはいかない。ヘスティアは心の中で自身の宿敵ともいえるロキを罵倒した。

 仕方がないので【アストレア・ファミリア】の面々にお願いしようかと考えたところで、ヘスティアは友神(ゆうじん)のタケミカヅチに呼び止められた。

 

 端的に言えば、タケミカヅチの眷族がベルらしき人物にモンスターの押し付け、怪物進呈(パス・パレード)を行なってしまったのだという。

 

「ヘスティア、本当にすまない……」

 

 ホームの教会にて、ヘスティアの目の前ではタケミカヅチとその眷族が頭を下げていた。

 この場には他にヘスティアが真っ先に相談したヘファイストス、治療系界隈の繋がりでベルに紹介された薬神ミアハとその眷族である犬人(シアンスロープ)の女性、ナァーザ・エリスイス。

 

「もしもベル君が帰って来なければ、ボクは君たちの事を死ぬほど恨む。けれど、憎みはしない約束する」

 

 この場で争ったところでベルが帰ってくるわけでもない。ヘスティアは謝罪を受け入れ、とにかくベルを助ける方法を考えるように促した。

 

「よっ、ヘスティア。大変そうだな? 俺も協力するよ」

 

 話が捜索隊を組むという方向へ進んでいたところに新たな顔が現れる。

 

「ヘルメス? どうしてここに?」

「何やら困っているんだろう? マブダチのためならいくらでも手を貸すさ」

「ど、どうもです……」

 

 何かと胡散臭さを振りまく神であるヘルメスとその眷族であるアスフィ・アル・アンドロメダだ。ヘルメスはともかく、アスフィはユイと仲の良い人物であるため、ヘスティアとも面識がある。

 胡散臭いとはいえ、今はいくらでも助けがいる状況だ。ヘスティアはヘルメスの提案を受け入れた。

 そしてヘルメスが出せる戦力に関しては。

 

「このアスフィを連れて行く。ウチのエースだ。実力は信用してもらっていいぜ?」

「ん? 連れて行く……?」

 

 アスフィの呆けた声にも構わずヘルメスは続ける。

 

「ああ、俺も一緒に行く」

 

 そこからひと悶着。神がダンジョンに入る事は禁止されているからだ。

 さらにヘスティアも一緒に行くと言った事でふた悶着。

 

「心配しなくても大丈夫さ。ボクは7年前も18階層まで行ったからね。それより上の階層なんて余裕だよ」

「自分からフラグを立てにいくのはやめなさい」

 

 最終的に戦力がタケミカヅチの眷族とアスフィだけでは心配だという事で、【アストレア・ファミリア】にも助けを求める事になった。

 

「兎くんのピンチね? ええ、任せて!」

「クラネルさんが……私も彼とは浅からぬ縁があります。同行しましょう」

「さっさと終わらせんぞー」

 

 その結果集まってくれたのは、『紅の正花(スカーレット・ハーネル)』ことアリーゼ・ローヴェル、『疾風』ことリュー・リオン、『狡鼠(スライル)』ことライラの3人。Lv.6が2人にLv.5が1人。

 

「あの、ヘルメス様? これ私いります?」

「まあまあ、戦力はいくらあっても困らないだろう?」

 

 中層を探索するには十分過ぎる戦力であった。

 

 

 

 モンスターが悲鳴を上げる暇もなく消えていく。

 戦っているのはアリーゼとリューの2人。それ以外はついていくだけだ。雑談する余裕すらあった。

 

「そういえば、貴女のその2本の槍はユイが作ったのでしたか」

「ああ。ライ・ボルクⅠとライ・ボルクⅡな」

 

 話しているのはアスフィとライラ。ライラは背に装備した2本の赤い槍を手に取った。

 

「Ⅰは装備してると『敏捷』に補正が掛かる。槍兵(ランサー)には『敏捷』とか言ってたな。そんで、Ⅱは……」

 

 そう言って、ライラは片方の槍を投擲した。

 槍は容易くモンスターの一匹を貫き、まるで逆再生のようにライラの手に収まった。

 

「投げても手元に戻って来る。しかも両方不壊属性(デュランダル)。お前も同じようなの作れるのか? 『神秘』持ち同盟さん?」

「まさか。私に鍛冶は出来ませんよ。……何だか随分自慢げですね?」

「こうやってると、どこかの勇者様みたいだろ?」

「……ええ。全くもってその通りですね」

 

 一方先頭の2人は。

 

「うーん、いないわねぇ。色んな人に聞いてもいないって事は、もっと下に行ったのかしら」

「あるいは18階層へ向かった可能性もあります。上へ向かうのが難しい場合、下の安全階層へ向かうという作戦もあるとクラネルさんに話した事があります」

「なるほど、その線もアリね。どうせなら18階層で水浴びでもしていこうかしら?」

 

 そして同行した二柱の神。

 

「その格好、まるでユイちゃんだな」

「ユイ君が昔作ってくれたんだ。ダンジョンへ行く用にね」

 

 ヘルメスはいつも通りの旅人風の衣服であったが、ヘスティアは違った。

 白の短丈ワンピースではなく、黒い長丈の修道服。首には聖火を模したペンダントが3つ。肩にはポーチ。両手の中には1つのT字型の物体。

 ユイの戦闘衣と同じように作られたヘスティア専用戦闘衣のこれは、中層程度のモンスターからの攻撃であれば物理性・魔法性を問わず通さない。

 聖火を模したペンダントの1つは状態異常・呪詛への耐性、1つは気候変化への耐性、1つは体力が減りにくくなる効果が付与された魔道具だ。一つ目に関してはユイが普段付けているものと全く同じである。

 肩に掛けているポーチは普段ヘスティアが物置き代わりにしている、ユイから貰った四次元ポーチだ。中には色々入っている。

 手に持っているのはユイの愛用している武器、黒鍵の柄である。ただし、普段ユイが使っているものは、投げて使い捨てにする事もあって他のアイテムとは違ってユイの魔力にだけ反応し、ユイにしか使えないようになっている。ヘスティアが持っているのは特別にヘスティアにも反応するように作られたものである。

 

 同じ黒髪という事もあって、同じ格好をすれば姉妹に見えなくもない。

 なお、ユイはヘスティアがダンジョンへ潜るために作ったわけではない。

 

「それ、戦えるのか?」

「もちろんさ。やるかい? ヘルメス」

「いやいや、俺と戦ってどうするのさ」

 

 そしてタケミカヅチの眷族は、何も出来ない状況にただ黙っているしかなかった。

 

 

 

 結局ベルのパーティーは見つからないまま18階層の手前までたどり着いてしまった。

 

「ゴライアスがいるわね。【ロキ・ファミリア】が遠征のついでに倒したはずだけど、もう復活したのかしら?」

「まー、もう2週間ぐらい経ってるだろうしな。しっかし、Lv.2が1人にLv.1が2人だろ? ここまでたどり着いたとして、18階層まで抜けられたのかねぇ」

「私たちが来る前に他の冒険者がやられた形跡はない。抜けられたのか、引き返したのか、あそこを降りれば分かる事です」

 

 18階層へ続く連絡路があるのは、17階層の通称嘆きの大壁。階層主であり、推定Lv.4の大型モンスター、ゴライアスが出現する。

 1度倒されると一定期間復活しないが、その期間を経たのかヘスティアたちの前に巨人はいた。

 

「どうする? お前ら経験積んどくか?」

 

 冗談混じりで言ったライラの視線の先にいるのはアスフィおよびタケミカヅチの眷族。

 

「結構です」

 

 アスフィは即答。続いてタケミカヅチの眷族も断った。ベルたちに怪物進呈(パス・パレード)を行ってしまったのが中層進出初回だったのだ。ゴライアス挑戦はいくらなんでも早すぎる。

 

「じゃ、アタシら3人でやるか」

「ええ」

「そうね。30秒で終わらせましょう」

 

 そんな灰色の巨人は第一級冒険者3人を相手にいとも容易く蹂躙された。

 




○ヘスティア
・7年前に潜った事があると言っているが、10年前にもダンジョンに侵入した事がある

○ライ・ボルクⅠ&Ⅱ
・見た目はクー・フーリンのゲイ・ボルクそのもの
・値段はお友達価格で100万ヴァリスずつ
・純粋な価値は億を下らない
・ニ槍なのに破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)がモチーフではないのは、製作時に主人公が何も考えていなかったから

○【アストレア・ファミリア】の武具
・主人公作の装備を着けている者が多い
・アリーゼの装備は頭から爪先まで全て主人公作
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