ヘスティア・ファミリアのエセシスター 作:カラスガラス
18階層の黒いゴライアス事件を経験して地上に戻ってきた翌日、私は【ゴブニュ・ファミリア】に呼び出された。
何か悪い事をしたわけでもないし、彼らに頼んでいた仕事は1つだけだ。つまりは完成したという事だろう。我らが【ヘスティア・ファミリア】の新しいホームが。
「これが依頼されていた建物です」
「おおー!!」
荘厳な門を潜った先にはまず、芝生が広がった庭があった。かなり広い。門から建物までの間に結構な距離があった。
そして庭の中央に位置する建物は、これまた大きく立派に造られていた。西洋の貴族の館という表現がピッタリ当てはまる。玄関の扉には、【ヘスティア・ファミリア】のシンボルである聖火の模様があった。
建物の中も案内してもらう。
玄関の時点でかなり広かったが、広間に食堂、応接室や居間と全て豪華で文句の付け所がなかった。そして注文通り、地下にはポーションなどを調合するための調合室があり、離れとして鍛冶場も備えられている。風呂も大きいし、たくさんの本が収納出来る書庫もある。
感動した。さすがは天下の【ゴブニュ・ファミリア】だ。
自分の城を持つというのはこういう感覚なのか。ファミリアのホームとはいいつつも、お金を全額払ったのは私なので私の城といっても過言ではないだろう。
「凄すぎて言葉が出ない……」
「気に入ってもらえたようで何よりです」
「また何かあったらお願いします……」
「ええ。今後ともどうぞご贔屓に」
早くヘスティア様たちに教えてあげなければ。新居までのつなぎをリリに探してもらっていたが、無駄になって少し申し訳ない。けどまあ、これでボウガンの矢ぐらいすぐに作れるから許してもらおう。
「デカ──!!」
「すごいです!!」
「下手な中堅ファミリアのホームより広いです……」
「さすが【ゴブニュ・ファミリア】だな。建築に関しては右に出る者がいないわけだ」
ヘスティア様とベルはもちろんとして、ベルとパーティーを組んでいるリリとヴェルフも招待した。後でアリーゼたちも呼んでバーベキューでもするつもりだ。
「この部屋ボクのー!」
「あ、その部屋私が目を付けてたのに!」
「主神命令だユイ君! この部屋をボクに譲るんだ!」
「隣の部屋でも良いじゃないですか!」
「いーや! ボクはこの部屋が良い!」
「ウン十億の借りがあるのを忘れました??」
「ヴッ……」
部屋を横取りしようとしたヘスティア様を成敗。立場を忘れてはいけないのだ。
「知ってはいたが、随分愉快なファミリアだな、ベル」
「あはは……」
それからベルの部屋を決め、さらにはリリやヴェルフが泊まりにきたとき用の部屋やアリーゼが泊まりにきたとき用部屋を決めたりしてから、廃教会に置いてあった荷物を移動させた。
そして、引っ越しが一段落したらアリーゼの所とヘファイストス様の所に新居完成の挨拶をしに行った。ついでにバーベキューパーティーのお誘いも。
「バーベキューコンロ作っておくから、みんなで買い出し行ってきてー。お肉ね、お肉!」
「よーぅし、行くぞベル君! お肉の選別は任せておくんだ! ボクはこういうのにはうるさいからね!」
「あ、はい」
「リリ、お金渡すから良い感じのお願いね」
「おーい、ユイ君!? どうしてボクじゃなくてサポーター君に……?」
「リリの方がしっかりしてるからですよ」
ヘスティア様とベル、リリ、ヴェルフが買い出しに行ったのを確認すると、私は地下室を訪れた。
地下室はポーション類を調合したり、アイテムを作ったりするための私専用の部屋という取り決めをした。危ない薬品などを置く事になるから勝手に入るなとも言っておいた。
私は扉を閉めて密室となった地下の中央にある台に1つの
リオンに託された、
おそらくこれがなければあの秘密基地には入れないだろうし、
出来れば再現して、複製したい。
「やっぱり特定の魔力の波長に反応する感じか……」
バラさないで解析出来る内容には限度がある。
分解すればもっと色々分かるだろうが、1度分解してしまうと後で元通りに出来るかどうかが分からない。やるならもう1つ手に入れてからが良い。
アリーゼたちと相談して、どこかで張るかもう1度あの迷宮モドキに突入して
「一応同じような波長を再現出来るかだけ試してみようかな」
バーベキューコンロなんて適当に鉄板と鉄の棒を組み合わせれば作れる。片手間にそれを作り、作業を続けた。
「それじゃあ、【ヘスティア・ファミリア】の新ホーム完成、私とアリーゼのLv.7到達とライラのLv.6到達、後は18階層お疲れ様とか色々含めてかんぱーい!」
新生【ヘスティア・ファミリア】ホームの庭にはアリーゼたち【アストレア・ファミリア】の面々とその主神であるアストレア様、ヘスティア様の神友であるヘファイストス様、リリとヴェルフ、あとは個人的に付き合いのあるアスフィとアミッドが集まっていた。
「なになに? 火が弱い? 私に任せて! 【
「よっ! さすがアリーゼ!」
「こんな事に魔法使うなアホ共! おい、誰かとめろ!」
【ロキ・ファミリア】の遠征に2週間ぐらいついて行ってたので、こうして地上でワイワイやるのは随分久し振りな気がする。テンションも上がる。
「クラネルさん、18階層では大変だったと聞きました。しっかり活躍したとも」
「いえ、僕は最後に良いとこ取りしただけで、他ではただ助けられて……」
「あまり自分を卑下しない方が良い。アリーゼによればLv.7クラスの怪物だったのでしょう。Lv.2の身で立ち向かうなど、そうそう出来る事ではない」
「……リューさんのおかげで立ち向かえました」
「それは、普段から怪物みたいな私を相手にしていたから、という意味ですか?」
「え……ち、違いますよ!?」
リオンとベルも仲良くやっているらしい。良い事だ。
「ヘスティア、アンタもついに自分の家を持つようになって……」
「なんだいヘファイストス。ボクは君の子供じゃないんだぞ」
「10年も面倒見たのよ? 10年よ、10年。下界の10年といえば、小さかった子供たちが大人になるには十分な時間よ。私はアンタがいつまで経っても変わらないから、もうどうしようかと」
「うっ……それは悪かったよ……」
ヘスティア様とヘファイストス様はお酒を片手に話している。
「私がここにいても良いのでしょうか。場違いなような……」
「俺も場違い感半端ねぇ。ヘファイストス様もいるし、と思ったが」
「リリもです。ベル様はリュー様に夢中ですし」
「あなた方は……?」
「『リトル・ルーキー』ベル・クラネルとパーティーを組んでる。ヴェルフ・クロッゾだ。ヴェルフと呼んでくれ」
「同じくベル様とパーティーを組んでいるリリルカ・アーデです」
「これはご丁寧に……アミッド・テアサナーレと申します。ユイさんには懇意にしてもらっています」
アミッドはリリ、ヴェルフと話していた。
話しかけようかと思ったが、普段話さない相手と話すというのもこういう場の醍醐味だ。良きかな良きかな。
「リオン、火が弱くなってきたのですが、追加の炭があるか知りませんか?」
「追加の炭ですか。ユイに聞けば分かると思いますが……」
「火が弱くなってきた? じゃあこれ使ってみて」
「これは一体……? 魔剣ですか?」
「……なんだか嫌な予感がしてきました」
「これね、着火剣。あ、使用者の
「おい、バカが魔剣使おうとしてるぞ! リオン、とめろ!」
「やっぱり……!」
アスフィとリオンの所で火が弱くなってきたようなので、手を貸してあげた。
「アストレア様、これを」
「何度もありがとう、輝夜。でも、私にばかり構っていないで、他の子たちと話してきても良いのよ? アリーゼたちだって焼いてくれるのだし」
「団長様とユイだけはやめた方がよろしいかと。あのボケ共は先ほどからとても肉とは言い難い黒塊を量産しているようでございますので」
「毒が隠し切れていないわね……?」
輝夜とアストレア様が何やら話しているようだが、ともかく楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
「いやー、良いホームじゃないか。招待してくれてありがとう、ユイちゃん」
なのに、呼んでもいない水を差す存在が。
「18階層の件。貴方がヘスティア様を唆したそうですね」
「唆したなんて人聞きが悪いじゃないか」
18階層での黒いゴライアス事件。
来てしまったものは仕方ないと流していたが、ヘスティア様が来たのはこの神ヘルメスがダンジョンに行くなどと言い出したかららしい。
「他の冒険者にヘスティア様を攫わせて、ベルも襲わせたそうですね」
「…………」
ヘスティア様が神威を解放するに至った原因はベルが冒険者たちに集団でリンチにされそうになっていたから。その主犯は透明化の
「貴方のせいであの事件は起こった。貴方のせいでヘスティア様も、みんなも危険に晒された。ベルたちは、一度死んだ。私がいなかったら、どうするつもりだったんですか」
「しかし、いた。結果が全てさ」
「……ベルに目を付けた理由は」
「知っているかい、ユイちゃん。世界は英雄を欲している。『
「それがベルだと?」
「君だって見ただろう? ベル君の最後の一撃を。彼は器だ。最後の英雄足り得るね」
何を以って最後の英雄だなんだと言っているのかは分からないし、どうでも良い。
「次、同じような事をしたら私は貴方を邪神と判断する」
「邪神だなんて酷いじゃないか」
「私は邪神を斬るのに躊躇いはない。どうせ、死にはしないのだから」
「……。気を付けるとしよう」
せっかくの楽しい気分が台無しになった。
○主人公
・転生者であるため、この世界生まれの者とは一部の価値観が違う
・まだ経験はないが、それが邪神であれば、斬る事に躊躇いはない
・もちろん邪神だからといって積極的に斬りにいくというわけではないが、斬るに値するのであれば斬る
・天界に送還されるだけで死なない分、ただの人間よりもハードルが低い可能性がある