ヘスティア・ファミリアのエセシスター 作:カラスガラス
「じゃあ、開始前の最後の作戦会議ね。まぁ、作戦ってほどじゃないんだけど、敵の数を減らすならまだ城周辺に人が集まっているゲーム開始直後。つまり、開幕速攻を狙う。普通の魔剣はいっぱい作ってきたから、好きなだけ使ってくれて良いよ」
私はベル、ヴェルフ、命の3人と作戦会議をしていた。場所は
「まずは命が魔剣ブッパで陽動かな。その隙にベルとヴェルフはスパイとして向こうに紛れ込んで情報を掻き回してるリリと合流して別の方角から侵入。手分けして手当たり次第に敵を落としていく感じで。もし敵の大将と遭遇した場合はベルに任せるか逃げる。向こうと違ってこっちは1人でも落ちたら戦力大幅ダウンだから」
「魔剣がこんなに……全部使って良いんですか?」
「使い切ってくれて良いよ。ポーチの中にまだまだ在庫はあるから、なくなったら取りに戻って来ても良いし。ベルの場合は自分の魔法もあるから
「あんな短時間でこの量かよ……鍛冶師としても自信なくすぜ」
「これを全て買い揃えようとすれば、一体いくらになるんでしょう……」
ベルは比較的軽装だが、ヴェルフ、命の2人は普段のリリのように身体以上の大きさのバックパックを背負っている。その中身のほとんどは私が用意した魔剣だ。【ルクレエ】でズルをして大量生産したが、この際仕方ないだろう。
「まあ、作戦っていってもそんな感じかな。長期戦になるから、適宜休憩に戻って来てもらって良いし、朝昼夜はご飯を作っておくよ」
「準備が良いのは分かったけどよ、本当に100人以上いる敵を殲滅出来るのか?」
「君が作った特上の魔剣もあるし、攻撃力でいえば十分十分」
敵は最大でLv.3だが、それは大将だけで他は全てLv.2以下だ。こんなに用意すれば正直本当に私がいなくても何とかなりそうな気もする。
とはいえ、それが不可能でもどの道問題ない。
「大丈夫。心配しなくても最悪私がやるから」
「ユイ殿が? ここから動けないのにどうやって……」
「それはお楽しみ。開始からちょうど2日間経ったら動くから、それまでにリリを連れて戻って来てね」
ほどなくして、
私に出来る事はないため、読書でもして時間を潰す事にした。
べつに開幕から私が出ても良いのだが、せっかくの
それから、私視点では特に何も起こらない時間が過ぎていった。
昼。
「お疲れー。どうだった?」
「ベル様が敵の大将を討ち取りました!」
「え、マジで? やるじゃーん! よーし、夜ご飯は気合い入れるぞー」
夜。
「お疲れー。どうだった?」
「ベル殿が大将を倒したのが響いたようで、逃げに徹する者が増えてきました」
「まぁ、仕方ないね。あ、魔剣補充する?」
また昼。
「お疲れー。どうだった?」
「僕の姿を見るとみんな逃げて行っちゃって……1人倒すのにもかなり時間がかかっちゃいます」
「そっかー。大丈夫、大丈夫。数は減ってきてるはずだから」
夜。
「お疲れー。どうだった?」
「これはもうどうしようもないぞ。アイツら、まともに戦う気がない」
「なるほどね。オッケー。じゃあ、そろそろ私も腰を上げようかな」
ようやく、開始から2日間が経過しそうだ。
長かった。ただひたすら長かった。
私の姿も中継されているかもしれないから、寝転がって本を読むみたいなだらしない事は出来なかったし。
「ユイ様を疑っているわけではありませんが、本当に大丈夫なんですよね?」
「もちろん、もちろん。頼れる団長様を信じなさい」
翌朝。
あと数秒でちょうど開始後2日間が経過する。
私はポーチから1つの
「あの、それは……?」
「これ? 拡声器」
ベルは見覚えがないようだが、私にとってはありふれた道具だ。前世の、という注釈が付くが。
私が手にしたのは拡声器。ただし、ただ声を大きくするだけでなく、これを通した声はギルドの放送でオラリオ中へ届けられるようになっている。水晶板の通信技術を応用した。
当然だが、ギルドにもちゃんと許可は取っている。
「ちょっと大きい音が出るからみんな気を付けてね。うゔんっ!」
時間だ。拡声器のスイッチを入れる。
『【アポロン・ファミリア】全軍へ告ぐ。
この放送終了30分後、砲撃を行う。巻き込まれたくなければ、地面から1.5M以内の位置に伏せよ。従わない場合、『
繰り返す。
この放送終了30分後、砲撃を行う。巻き込まれたくなければ、地面から1.5M以内の位置に伏せよ。従わない場合、『
以上で放送を終了する』
スイッチオフ。
「さて、と。とりあえず30分後まで待機だね」
「砲撃って何をするんですか……?」
「あー……俺なんとなく予想ついたわ」
「あの、まさかとは思いますが……」
「もしや、ここから……!?」
上からベル、ヴェルフ、リリ、命の反応。ベルだけ分かってなさそうだが、他3人は分かったようだ。
「これをここからぶっ放す」
ポーチから黒聖剣を取り出して見せる。ベルも見た事のあるものだ。見たどころか、使った事もあった。
ただし、みんなが見たのは私がLv.6のときにLv.6の身体能力に合わせて作ったもので、今取り出したのはLv.7の身体能力に合わせて新しく作ったものだ。詳しくは試してないが、出力が違う。
もうすぐ終わると思うと、時間が過ぎるのも早く感じる。
先ほどの放送からちょうど30分が経過した。
「それじゃあ、と」
私は黒い魔力を纏った聖剣を前面の地面から少し高い位置へ凪ぎ払った。
地面から突出した岩や城の2階以上の部分が跡形もなく消え去った。
「あれ?」
軽めに遠距離斬撃の通常攻撃みたいなイメージ
Lv.7の鍛冶師が打ったというのが一番大きいだろうが、Lv.7にランクアップしたときに発現した『魔砲』という発展アビリティも関係しているのかもしれない。
あるいは、ようやく日の目を浴びる事になったヘスティア・ハンマーの効果も少しあるかもしれない。
本気で撃ってたらどうなってた事やら。我ながら恐ろしい。ベルたちも絶句している。誰も巻き込んではいないだろうが、それほどまでに衝撃的だったのだろう。
いや、ベルにだけは引かれる謂れはないのだが。ゴライアス事件でこれより強い一撃を放っていたのだから。
というか、ベルのスキルが無法過ぎる。私のも相当だとは思うが、黒聖剣由来の火力に上乗せする形だったとはいえ、当時の私とアリーゼの最高火力に並ぶってどういう事? Lv.2のくせにLv.6に火力で並んでくるの控えめに言って怖過ぎる。
今は私がLv.7に上がった関係で勝っているだろうが、これもベルがLv.3になったら恐らくまた並ばれる。ベルの成長速度から言って私がLv.8に上がるよりも先にLv.4に上がりそうだし、そうなれば火力勝負では勝てなくなるかもしれない。
神ヘルメスの事を擁護する気は全くないが、もてはやしたくなるのも分からなくはない。ただ、火力以外は弱弱なので英雄というよりただの超火力砲台だが。
まあ、良いだろう。これはまだ第1段階だ。
落ち着く時間が必要だろうから、それから数分待って、再び私は拡声器のスイッチを入れた。
『【アポロン・ファミリア】全軍へ告ぐ。
この放送終了2時間後、再び砲撃を行い、【ヘスティア・ファミリア】側の城内エリアを除いたこの島を全て破壊する。死にたくなければ投降せよ。従わない場合、『
繰り返す。
この放送終了2時間後、再び砲撃を行い、【ヘスティア・ファミリア】側の城内エリアを除いたこの島を全て破壊する。死にたくなければ投降せよ。従わない場合、『
以上。放送終了』
スイッチオフ。
これで全員降参してくれれば良いが、そうならなくても宣言通りの事をすれば自動的に勝てる。
かなりめちゃめちゃな事をするが、ちゃんと事前にヘスティア様が神々の前で私に挑むなら命の保障はしないという事を取り付けている。この放送をオラリオに届けているのも、言い掛かりを付けられないようにするためだ。
◆◇◆◇◆◇
「「「「う、うわー……容赦ねぇ……」」」」
観戦していた神々の心の中が一致した。
「楽しませてもらったよ、アポロン」
「そうだろうな、とは思ったぜ」
「勇気あるアポロンくんに合掌」
先ほどまではどちらが勝つか分からないという空気だったが、ユイが動いた途端に神々はどちらが勝つか確信した。
「馬鹿な、やめろお前たち!」
そう叫ぶアポロンの目線の先では次々と【アポロン・ファミリア】の団員たちが降参しては島から避難していく。
そして、最後の1人が降参するまで、そう時間は掛からなかった。
「最近はそうでもないけど、あの子結構バーサーカーだったよなー」
「そうそう。暗黒期のときとかなー」
ワイワイと神々が話している横で、アポロンは崩れ落ちる。
「そ、んな……」
「ユイ君を怒らせるからそうなるんだ。言っておくけど、ユイ君ほど怒らせたらヤバい相手もそういないんだぞ」
「あり得ない……あんな、滅茶苦茶な……」
「そういえば、こっちが勝ったら何でも言う事を聞くって言ってたなぁ?」
ヘスティアはアポロンににじり寄った。
そして、自身が原因で失ったウン十億を取り返すべく、むしり取れるだけむしり取った。
○通常攻撃
・超広範囲殲滅超高密度極太魔力ビーム
・クールタイム0秒
・残弾無限(
・普通に島を沈められる
○発展アビリティ『魔砲』
・魔力の砲撃が強くなる