ヘスティア・ファミリアのエセシスター   作:カラスガラス

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歓楽街

 

 

「ああぁぁ……色々疲れた。1週間ぐらいニートするから朝昼晩のご飯だけ運んで」

「えぇ……天下の【ヘスティア・ファミリア】の団長がそんなので良いんですか?」

「いやもう疲れた疲れた。【ロキ・ファミリア】の遠征はイレギュラーあったし、戻って来る途中でまたイレギュラー。やっと地上に戻って来たと思ったら戦争遊戯(ウォーゲーム)。分かる? 休みがないの、休みが。最後のは元はといえば君たちが引っ張って来たんだから。【ヘスティア・ファミリア】に入ったなら私の言う事を聞くの。これ、団長命令」

 

 リリを追い払って、自室のベッドに倒れ込む。

 改めて思い出すとちょっと最近の記憶は濃すぎる気がする。少し前までは1週間に1回ダンジョンに潜るか潜らないかぐらいの落ち着いた生活だったのに。

 まだ解決してない問題もあるし。

 

闇派閥(イヴィルス)もなんでこの時期に出てくるかなぁ……」

 

 特に目撃情報があるわけでもないから、今すぐ何かを企んでいるというわけではないとは思うが。

 

「作戦会議しないとなぁ……もう集団ストーカーいないし、アリーゼとご飯でも食べに行くか……まぁ、後で良いや。寝よ」

 

 それから少しの間、穏やかな時間を過ごす事が出来た。多少は例の闇派閥(イヴィルス)の隠れ家の鍵の解析も進んだ。

 途中、ベルが朝帰りをしたなんて話も聞こえてきたが、まぁ、私には関係ない。ベルだって年頃だという事だろう。

 同じファミリアといっても、プライベートまで干渉する気はない。私だって干渉してほしくないし。

 だから、ベルが娼婦と一夜を過ごそうが、その件でヘスティア様やリリと修羅場を形成していようが構わないのだが。

 

「で? 何があったって?」

「ベル様と命様が……」

「ベル様と命様がどうしたって?」

「ダンジョンで【イシュタル・ファミリア】に襲撃され、攫われてしまいました」

 

 宣言した1週間が経過する前に叩き起こされたかと思えば、こんな事を聞かされた。

 その場には【ヘスティア・ファミリア】のメンバーだけでなく、【タケミカヅチ・ファミリア】のメンバーとその主神もいた。

 

「はあぁぁぁあああぁぁぁ…………なぁんでこんなに厄介事ばっかり起こるかなぁ──!」

 

 そりゃあさ、団長の私が団員を放ったらかしにしてたといえばそうだし、私が一緒にいたら攫われなかったというのもその通りだけども。

 これって私のせいじゃないよね? 私のせいじゃないよね? 

 

「前の戦争遊戯(ウォーゲーム)でウチに手を出したらどうなるか示したと思うんですけど。そこのところどう思います、ヘスティア様?」

「ボクも予想外だ。まさかこんな事が起こるなんて……」

「もう喧嘩売られたって事で良いですかね。ベルと命を取り返すって名目で敵のホームぶっ壊してきても良いですかね」

 

 こっちは団員を誘拐されているのだ。攻め込む口実はこっちにある。誘拐された者を救出するという秩序側の立場もある。

 やる前にギルドに通しておけば、後からの面倒も少ないだろうし。

 

「新たに誘拐とかされたら面倒なので、ヘスティア様たちはアリーゼのところに行って保護してもらってください」

「ちょっと待ってくれ、ユイ君」

「なんですか」

「実はイシュタル関係で他にも問題があって……」

 

 ヘスティア様から語られたのは、【イシュタル・ファミリア】の娼婦の中に命や【タケミカヅチ・ファミリア】の団員たちの知り合いがいたという事だった。

 その知り合いというのは狐人(ルナール)らしいのだが、ベルたちは身請けをしようと考えてダンジョンでお金を稼いでいたらしく、その矢先に誘拐事件が発生。さらになぜか神ヘルメスからもたらされた情報によると、【イシュタル・ファミリア】は殺生石というアイテムを用いてその狐人(ルナール)に良からぬ事を企んでいるかもしれないとのこと。

 

「じゃあ出来るか分からないですけど先に身請けやります? 1000万もあれば大丈夫ですよね」

「えっと、そのお金はどこから……?」

「私が出しますよ。後で返してくれれば良いですし」

「あ、あの、ユイ君? イライラしてるよね?」

「そりゃしますよ。これは後でアリーゼに甘やかしてもらわないと収まらないですね」

「あぁ、うん……」

 

 

 結果として、身請けは上手くいかなかった。というより、門前払いを食らった。件の狐人(ルナール)に会う事すら出来なかった。

 

「待て、ユイ。冗談ではないぞ、【ヘスティア・ファミリア】と【イシュタル・ファミリア】が抗争などと。はい、そうですかと許可するはずがなかろう!?」

「そんな、抗争なんて。ちょっと攫われた仲間を取り返すだけですよ。被害は最低限にしますし」

「お前が始めたらどうせ【アストレア・ファミリア】も出張るというのに許せるか!」

「もちろんアリーゼには迷惑を掛けませんし、巻き込みもしません。後で神を交えた事情聴取をしてくれても構いません。正義の側に立つ者として恥ずかしくない行動を心掛けます」

「おい、待て貴様!? というか、アリーゼではなくギルドへの迷惑を考えろ!」

 

 とギルドの豚などと呼ばれているらしいギルド長に一言入れてから、私はこれから【イシュタル・ファミリア】にベルたちを取り返しに行く旨を伝えに【アストレア・ファミリア】のホームへ向かった。

 

「団長なら出掛けているが」

「……どこに行ったか分かる?」

「確か、歓楽街の方だったか。誰も連れずに1人でな。私がついて行こうかと言ったら断られた。一体何をしにいったのやら。まぁ、歓楽街に行く目的などそう多い選択肢ではないがな」

「…………。え、ちょっと待って」

 

 アリーゼが歓楽街に……? 

 いや、アリーゼに限ってそんな……でも、オラリオの歓楽街って言ったら……。

 

「いつ? いつ行ったの? というか、何回目? 結構行ってる感じ? もしかして私がニートしてるこの1週間に? アリーゼ、もしかして溜まってたのかな……それなら私が相手になるのに……でも、もう他の人に……? 嫌……どうしよう、そんな、でも、アリーゼ……」

「お、おい。どこに行くつもりだ」

 

 

 

「歓楽街っつっても【ヘスティア・ファミリア】の団員見かけたからちょっと様子見に行っただけだろ。ちゃんと教えてやれよ」

「いや、どんな反応するかと思って……」

「大丈夫かよ、アレ……ていうかアイツ何しに来たんだ」

「そういえば聞きそびれたな」

「いやマジでアイツ大丈夫か」

 

 

 

 結局【イシュタル・ファミリア】関連は私が何かするまでもなく解決? した。

 何故か【フレイヤ・ファミリア】が抗争を仕掛け、【イシュタル・ファミリア】が攻め込まれているゴタゴタの中でベルと命はこちらが助けるまでもなく逃げ出すどころか、例の狐人(ルナール)まで助けてしまったらしい。

 私はベルたちを探しながらアリーゼも探していたのだが、アリーゼは見つからなかった。まぁ、【フレイヤ・ファミリア】のせいであちこちから火が上がっていた歓楽街で、そんなコトに及ぶなんて出来ないと思いたいが。

 途中で【フレイヤ・ファミリア】の団員には遭遇した。またあの猪野郎に仕掛けられるかと思ったが、今回はそんな事はなかった。

 帰りにギルドには私たちは【フレイヤ・ファミリア】のせいで何も出来なかったと報告した。実際嘘じゃないし。ベルと命は知らないが。だって攫われてたもの。

 

 そして、例の狐人(ルナール)ことサンジョウノ・春姫は【ヘスティア・ファミリア】に入団する事になった。一応団長として個人面談をしたが、素直だし良い子だったので入団を認めた。

 魔法が少し特殊だったので、後でちょっと実験に付き合ってもらうが。

 

 まぁ、それは置いといて。

 最大の問題が残っている。

 

「お願い手伝ってー!!」

「だーっ!! くっつくな!」

「そういう経験ないの! 実際にやらなくて良いから! 形だけで良いからお願い!」

「どこに手入れて……! 輝夜ー!! 輝夜どこ行きやがったー!!」

 

 昨日はうやむやになったが、アリーゼがその、溜まってるなら、私が相手をしてあげなければならない。

 しかし、問題が1つ。私にそういう経験がないということ。

 知識はある。ある、が。やっぱり想像と実際にやるのでは違うだろう。いざそのときになって、アリーゼに下手くそと思われたくない。思われるだけならまだしも、そういう性に関わる事が原因で別れるとかあるみたいだし。

 だから、ライラに練習相手になってもらいたい。

 

「な、なな、な、何をしているんですか2人とも──!?」

「リオン、良いところに! コイツ引き離してくれ!」

「ユ、ユイ! あ、貴女にはアリーゼが……! アストレア様ー! アストレア様ー!」

「ちょっ、リオン! その前にコイツ引き剥がしてくれー!」

 

 もちろん本番までしようという話ではない。ライラだってフィンさんがいる。

 でも、そういう雰囲気とか練習しておけばライラにだって役に立つかもしれないし。

 

「帰ったぞ……なんだ、この状況」

「ただいまー。あら、ユイ、来てたの」

 

 と、そうこうしているうちに輝夜とアリーゼがパトロールから帰ってきた。

 

「おい、輝夜! お前が適当言うからコイツ暴走してんだぞ!」

「米3杯食えるぐらい面白いな」

「言ってる場合か!」

 

 さすがにアリーゼの前で練習するのはアレなので、ライラを部屋に連れて行くために持ち上げた。

 

「まあ、待てユイ」

 

 そんな私の耳元に輝夜が口元を寄せてきた。

 

「昨日言ったのはアレだ、軽いジョークというやつだ。確かに団長は歓楽街に行ったが、それはお前のファミリアの団員を見かけたからだ。そういう事をするために来たような感じじゃなかったようだしな」

「え?」

「まあ、つまり、だ。別に団長は男を漁りに行ったとかそういう事実はない」

「え?」

 

 輝夜は私からライラを取り返し、子どものように地面に下ろした。

 ライラは乱れた服を直しているが、そんな事よりも。

 

「は?」

「正直すまんかったと思ってる」

「は──?」

「う……すまん…………。ご、ごめんなさい」

「じゃあ、つまり何? アリーゼが欲求不満で溜まってるから発散しに行ったっていうのは嘘ってこと?」

「いや、そこまでは言ってないが」

「アリーゼがどこの馬の骨とも分からない野郎に〇〇(ピー)して〇〇(ピー)な声で〇〇〇〇(ピ──ー)とか〇〇〇〇(ピ──ー)とかしてるっていうのも嘘ってこと?」

「そこまでは言ってないが!?!?」

 

 嘘ならそれに越した事はない。そんな事はなかったに越した事はない。

 とはいえ、はいそうですかと終わる事は出来ない。昨日私がどんな気持ちで過ごしていたか。アリーゼのそういう姿を想像して全然眠れなかった。

 

「輝夜? 一体どういうこと?」

「いや、団長も落ち着いてくれ。本当にそこまでは言ってない」

「じゃあどこまで言ったの?」

「そ、それは……」

 

 前を私が、後ろをアリーゼが挟んだ。

 

「冗談でも言って良い事と悪い事があるのが分からない? この世に未練がないならそう言ってよ。馬鹿な私にも分かるようにさ」

「ちょっ」

「悪いのはあんな事言ったこの口? それともあんな事考えたこの頭?」

「あっ……あ……」

 

 私は2度とふざけた事をしないように、アリーゼと2人で輝夜を心の底から反省させた。

 

 

 




○イシュタル・ファミリア
・原作通り壊滅した
・【ヘスティア・ファミリア】に喧嘩を売る形であったため、正直気が気でなかった
・実は某ヒキガエルも心の底では少しビビっていた

○イシュタル
・フレイヤのお気に入りであるベルを狙った
・仮に主人公が乗り込んで来ても魅了すれば良いと考えていた
・むしろ、対【フレイヤ・ファミリア】の駒にしたいから乗り込んで来いとすら思っていた
・【ヘスティア・ファミリア】は主人公以外怖くないので、主人公を押さえればどうとでもなると考えていた(【アストレア・ファミリア】の事は頭から抜けている)
・対外的には勘違い(という事にする)で抗争を起こそうとした主人公にお詫びとして力を貸してもらっている、みたいな感じででっち上げようとしていた

○サンジョウノ・春姫
・原作通りベルや命に救われた

○主人公
・妄想力が強い
・疲れていた
・脳が破壊されそうになった
・NTRは悪い文明
・アリーゼ関連だと冷静さが失われて『直感』がまともに機能しなくなるときがある
・今回の件は、それはそれとして、もしものときのために練習しておこうかと思っている
・そのうち女同士でも子どもを作れる魔道具(マジックアイテム)でも開発するかもしれない
・怒らせると怖い

○アリーゼ
・主人公の脳内で様々な想像をされた
・風評被害

○輝夜
・本気で反省した
・本気で反省した

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