ヘスティア・ファミリアのエセシスター   作:カラスガラス

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新メンバー

 

 

【イシュタル・ファミリア】問題が解決し、我が【ヘスティア・ファミリア】に新たな団員が加わった。狐人(ルナール)の少女、サンジョウノ・春姫。極東出身とのことで、姓も輝夜に似ているためもしかすると関係者かもしれない。

 ともかく、新人という事で団長である私が直々にホームの案内をしていた。

 

「ここが鍛冶場ね。今は私専用のしかないけど、そのうちヴェルフのも追加するみたい」

「鍛冶……」

 

 剣や防具を打つ場所だ。元々ファミリアで鍛冶をするのは私だけだったが、今では鍛冶師のヴェルフもファミリアに加わった。ヴェルフ用の炉も追加する予定だ。後から増築出来るようにスペースは有り余っているため、空間的な問題はない。

 

「ここは洗濯とか。今はリリとかベルがやってくれてる」

「なるほど……」

 

 ヘスティア様はぐうたらなので洗濯なんてした事がない。

 ちなみにだが、私の服は下着から修道服まで身に纏っているもの全て自動的に綺麗になる魔法的効果を編み込んでいるので、洗濯は必要ない。常に洗濯後ぐらい清潔なのだ。

 

「ここは調合室。他のみんなにも言ってるけど、危険なものがいっぱいだから勝手に入らないように。爆発するから」

「ば、爆発でごさいますか!?」

 

 入っただけでは爆発しないが、下手に扱うと爆発するものはある。他にも危険物はあるため、私以外は入らないように言ってある。

 

「お風呂とか食堂とかは昨日見たし、各々の部屋も教えたから、大体はこんな感じかな。それじゃあ次は採寸しよっか」

 

 春姫が持ち込んだ荷物は多くない。衣服も同様に。

 という事で新しい服を作る事になっていた。どんな服かというと、私が着ているのと同じ形の修道服だ。

 べつに私が強制したわけではない。いくつか形を提案した私の話を聞いて春姫が自分で選んだのだ。まぁ、せっかくファミリアのメンバーが増えてきたのだからちょっとぐらい統一感ある服があっても良いだろうとは思ったが。

 ちなみにリリの分も少し前に作った。

 

「はい、両手上げてー」

 

 春姫の身体を採寸する。

 よくアリーゼの身体を採寸するし、他の【アストレア・ファミリア】の装備を作るために色々と採寸したりするから慣れたものである。何度も同じ人間を採寸する必要はないだろうとか言ってはいけない。

 

「オッケー。じゃあ今日の夜にはできるように作っとくから」

「あ、ありがとうございます」

 

 さて、ひとまず春姫にすべき事は終了した。

 という事でこれからは私の個人的な用事に付き合ってもらおう。

 

「ちょっと付き合ってもらっても良い?」

「もちろんでございます」

 

 春姫を地下の調合室に連れて行く。

 

「あ、あの……入ったら爆発するのでは……?」

「勝手に入ったら、だから。私が一緒なら大丈夫」

 

 春姫はビクビクしながら周囲を見渡している。

 色んな瓶に入った薬品などは目新しいのだろう。

 

「1つお願いがあるんだけど、ちょっとだけ血を採らせてもらっても良い?」

「はい、もち……ち? ち、血でございますか!?」

「そう、血液。一瞬チクッとするだけだから」

「えっと、その……私の血を抜いて一体……まさか、の、飲む……!?」

「ちがっ、飲まないって! 研究に使うだけだから! 装備に本人の血を使ったら相性の良いものを作れたりもするし!」

 

 私が血を飲むなどという不名誉な勘違いをされたため、すぐに訂正しておく。

 

 春姫の魔法は既に見せてもらったし、実際に体験した。

 階位昇華(レベルブースト)。とんでもないチート魔法だ。実際、効果時間中、私はLv.8相当の身体能力を得ていた。【イシュタル・ファミリア】が春姫の存在に色々と躍起になっていたのも頷ける。

 私はもちろん春姫に外道な扱いをするつもりはないが、研究はさせてほしい。

 

 血にはその人間の様々なものが宿っている。魔法に関する因子もその1つ。つまり、血さえあれば本人にどうこうする必要なく魔法について研究出来るという事だ。無論、本人を研究材料にするよりも質も効率も大幅に落ちるが。

 しかし、血液には鮮度というものがある。1度に抜いた血をずっと使う事は出来ない。ならば春姫から定期的に血を抜かせてもらうとかといえば、そういうわけでもない。

 

 私の魔法【ルクレエ】は過去に自身の魔力を込めて作成した物を作り出すというものだが、この魔力を込めて作成した物の判断基準は結構曖昧というか、かなり判定がゆるい。

 採ったばかりの血液に私の魔力を混ぜただけの血液アンプルが、【ルクレエ】の対象になる。

 つまり、少しの量の血を1度でも貰えれば、以降は本人から貰わなくても【ルクレエ】で必要な分だけ作り出せる。

 さすがにこれは血液が素材として見做されるから可能なのであって、例えば既に他人によって完成した剣に魔力を込めたところで同じ結果にはならないが。

 

 アリーゼの血も同じように貰っていつでも血液アンプルを作れるようにしている。アリーゼには14歳のときから毎年血を抜かせてもらっている。もちろん装備に使うにしてもその時の身体に流れる血に近い方が良いからである。邪な考えなどこれっぽっちも存在しない。

 

「アリーゼとか他の人にも貰ってるし、この1回切りだから安心して。あ、アリーゼって知ってる? 『紅の正花(スカーレット・ハーネル)』っていう二つ名を持ってるんだけど……まぁ、ともかく。今度この血を使って春姫専用の装備も作るし。これまでの事を考えたらそういうのあった方が良いと思うから。あ、ちょっとだけチクッとするよ。こっち向かない方が良いかも」

 

 血を分けてもらってから、私は春姫と別れた。

 

 

 

 次に広間でベルと談笑していたヴェルフを呼び出した。

 

「俺だけ呼び出して、一体何の用だ?」

「新しく炉を増築する予定だけど、それまでの間不便でしょ? だから新しいのが出来るまでは私のを使ってくれも良いよ、っていう話をしようと思って」

 

 廊下を歩きながらヴェルフと話す。考えてみるとこうして1対1で話す事はなかったかもしれない。

 目指す場所はもちろん鍛冶場だ。

 

「【ゴブニュ・ファミリア】製だし使い方分からないところとかはないと思うけど、一応この辺のやつを説明しておくと……」

 

 鍛冶師のヴェルフにはわざわざ言われるまでもない事だろうが、一応設備の説明をしておく。

 

「と、こんな感じ。使われて困るようなものは置いてないから、ここにあるものは全部勝手に使ってくれて構わないよ。もし壊れたら壊れたで言ってくれたらそれで良いし」

「そういえばアンタ、椿の弟子だったんだってな」

「ん? あー、昔ちょっとね」

 

 元々私とヘスティア様はヘファイストス様のところに住ませてもらっていた。その縁で、私が鍛冶を始めるときに色々と面倒を見てもらった事がある。

 

「弟子って言って良いのかは分からないけど、色々と鍛冶の基礎は教えてもらったよ」

「元々普通の冒険者だったんだろ? 何で鍛冶を始めようと思ったんだ?」

「それに適したスキルがあったからね」

「スキル……」

「そ。まぁ、鍛冶に限定されるものじゃないんだけど、当時のオラリオで生きるには強い武器も必要だったから」

 

 そういえば、ヴェルフにもそういうスキルがあるんだったか。

 確か、クロッゾの魔剣というオリジナルの魔法を超えるような威力を放てる魔剣を打てるというものだったはず。直接教えてもらったわけではないが、結構有名らしい話だ。以前小耳に挟んだ事がある。

 

「魔剣を打つのは嫌なんだってね。嫌なら良いんだけど、理由を教えてくれない?」

「魔剣は使えば砕ける。使い手を残して壊れていくのが、正しい武器だと言えるのか?」

「なるほどね……」

 

 魔剣を打たないという話は聞いた事があるが、その理由までは知らなかった。

 

「まぁ、私なりの考えだけど。壊れる武器が嫌だっていう話なら、魔剣は武器というより魔道具(マジックアイテム)の1つだと考えれば良い。実際、魔道具製作者(アイテムメーカー)の立場から言わせてもらうと魔剣は回復薬(ポーション)とかのアイテムの方が分類的には近い」

「魔剣が、回復薬(ポーション)……?」

「ちょっと詭弁っぽいかな?」

「いや……何というか、そんな考えの奴に初めて会った」

「だろうね。【ヘファイストス・ファミリア】の人たちはみんな鍛冶一筋のザ・職人って感じだし」

 

 実際、私も刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)みたいな一応魔剣に分類されるものをたまーに使うが、その場限りの魔道具(マジックアイテム)を使うような意識で使っている。

 やはり、普通の武器と魔剣の違いは実際にそれでモンスターを切り裂いたりといわゆる武器の使い方をするかしないかだろう。剣とはいいつつもそれを使って斬る事をしないのであれば、私にとってそれはただのアイテムと大差ない。

 

「とはいえ、ただの考え方で変わる事なんてそうそうない。だったら作れば良いんだよ」

「作るって、一体何を」

「これ使って炉に火を入れてもらっていい?」

 

 そう言って、私はヴェルフに1本の魔剣を手渡した。

 頭の上にクエスチョンマークを浮かべながらその魔剣を手にしたヴェルフだが、使用した瞬間顔が変わった。

 

「これは……」

「分かった? それは君の嫌いなものと同じ魔剣。ただし、使い手の精神力(マインド)を使う事で、何回使っても砕ける事はない」

「壊れない、魔剣……?」

「よく言うでしょ? 下界の可能性は無限大。壊れる魔剣が嫌なら作れば良いんだよ。壊れない魔剣を」

「……!!」

 

 せっかくの才能を腐らせるのは勿体ない。赤の他人ならともかく、ヴェルフは既に同じファミリアの仲間だ。これからもダンジョンに潜るというのなら、持てる力は全て使って挑んでほしい。

 

「ユイ……ユイ・レグリース」

「どうしたの?」

「俺を、弟子にしてくれ」

 

 なるほど、そうなるんだ。

 これまで誰かに鍛冶を教えるという事はなかったが、椿さんやヘファイストス様に教えてもらったものを今度は私が教えるというのもおもしろい。

 

「私は厳しいよ?」

「望むところだ」

 

 実は今ヴェルフに見せた魔剣は、同じものをホーム完成時のバーベキューパーティーでも使っていたのだが、せっかくの空気を台無しにしたくなかったので口には出さなかった。

 

 

 

 軽く設備の説明だけのつもりが、ヴェルフを弟子をする事になって、予定になかった剣を一振り打って汗をかいたので、せっかくなので命をお風呂に誘った。

 我が【ヘスティア・ファミリア】ホームのお風呂は大浴場になっている。他にも多々拘った場所はあるが、元日本人としてお風呂は1、2を争うぐらいには拘った。

 

「どう? 【ヘスティア・ファミリア】には慣れた?」

 

 湯船に浸かりながら、命に話し掛ける。

 

「はい! 皆さんにはよくしてもらっていますし、何よりこのお風呂! 自分、お風呂には少し拘りがあるのですが、このホームのお風呂には大満足です!」

「お、おぅ……」

 

 いきなりハイテンションになったので少し驚いた。

 

「これはユイ殿が!?」

「あぁ、まぁね。ヘスティア様はぐうたらだからホーム建築の依頼とかは全部私がやったし」

「どことなく極東の雰囲気も感じます!」

「昔ちょっと極東に似た文化に触れた事があってね」

 

 触れたというか、十数年どっぷり浸かっていたが。極東は日本に似た雰囲気のある場所だ。日本風のものを作ればそれは極東風と言い換える事も出来る。

 命が極東出身なのは知っていたが、ここまで良い反応をしてくれるとは。

 

「楽しんでくれて良かったよ」

 

 喜んでくれて悪い気はしない。

 それからも少し、私は命と裸の付き合いを続けた。

 

 

 

 そしてお風呂を上がってから少し、リリに声を掛けられた。

 

「ユイ様、少しよろしいですか?」

「うん? 良いよ」

 

 広間のソファーに腰を下ろす。

 手には【デメテル・ファミリア】製のフルーツ牛乳。やっぱり風呂上がりはこれだ。

 

「それで、どうしたの?」

「実は、そろそろボウガンの矢がなくなりそうでして」

「ああ、矢の補充ね。この前渡したやつはどうだった?」

 

 以前リリにボウガンの矢の作製を頼まれてから、何度か作って渡している。ただし、普通のものではない。せっかくだから魔道具作製者(アイテムメーカー)として恥ずかしくないものを渡している。

 

「はい、強化矢と爆破矢は使いやすくて良い感じでした。ただ、やっぱり再照準矢は当たりにくいですし、雷光矢は腕が壊れたかと思いました」

「うーん、なるほどねぇ。やっぱり再照準は黒鍵の告げる(セット)じゃないと難しそうか……」

 

 まぁ、黒鍵の技術の流用ではあるが。

 

「じゃあさ、ボウガンとは別にもう1つ武器増やすのはどう?」

「もう1つ、ですか?」

「そうそう。これ持ってみて」

 

 ポーチからT字の物体を取り出した。

 

「あの、まさかこれは」

「そう、黒鍵。でも安心して? これ昔ライラが使えないかなって作ったやつだから私が使ってるやつより小さいし、私以外の魔力にも反応するようになってるから」

「安心とは……?」

「ほら、刃を生やすようなイメージで精神力(マインド)を込めてみて。魔法使うときに自分の中に向ける意識を黒鍵に向ける感じで」

 

 納得がいかないような顔をしていたものの、リリはすぐに黒鍵の刃の生成に成功した。

 

「いい感じ、いい感じ。じゃあ、外に出てみようか」

 

 既に飲み終わっていたフルーツ牛乳のビンをテーブルに置き、リリを連れて庭に出る。

 

「投げナイフとかやった事ある?」

「ない事はありませんが、リリは得意ではありません。力も弱いですし」

「大丈夫。最初はみんなそうだから。慣れれば勝手に『力』も伸びるようになるよ。私もいつも最初にステイタス最大になるのは『力』だし」

「えぇ……その言い方だと他のアビリティも最大になるというように聞こえますが……」

「ランクアップする前にはアビリティ全部マックスになってるよ」

「普通そこまで上がらないと思うのですが……」

「上がる上がる。とりあえずやってみよう。いい? こうやって……」

 

 リリの後ろに回って黒鍵を持っている方の腕に私の手を添える。

 

「ただ投げるんじゃなくて、こう、抉り込むように射つべしってね」

 

 黒鍵はひょろひょろと飛んだ。

 

「最初は難しいかもしれないけど、慣れればボウガンと違ってステイタスが伸びるに従って威力も上がるし、なんなら『力』も伸びやすくなるし。良い事ずくめでしょ?」

「……そうですね。確かにユイ様のように使えれば戦術の幅も広がるでしょうし、一応貰っておきます。それはそれとして、ボウガンの矢もお願いしますね?」

「任せなさい」

 

 こうして未来の黒鍵使いを1人確保した。

 





○主人公
・様々な人間の血液アンプルを所有している
・他の者の分は1種類だけだが、アリーゼのものは1年ごとに採血して新たなものを作成している
・この度ヴェルフを弟子に取る事になった
・リリルカを黒鍵使いに育てようとしている

○サンジョウノ・春姫
・血を取られた
・ちょっとだけ痛かった

○ヴェルフ・クロッゾ
・この度主人公の弟子となった
・壊れる魔剣が嫌なら壊れない魔剣を作れば良いという主人公の言葉に心を動かされた
・今後修行と称して主人公に様々な雑用を押し付けられる事になる

○ヤマト・命
・風呂に関して主人公と意気投合した

○リリルカ・アーデ
・主人公から色々なアイテムを貰っている
・あの後少し黒鍵の練習をしたら腕が攣った
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