ヘスティア・ファミリアのエセシスター   作:カラスガラス

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迷宮モドキ探索作戦

 

 

【イシュタル・ファミリア】関連の問題から少し時間が経過し、オラリオは大陸西部に位置するラキア王国からの侵攻を受ける事となった。と言っても、ラキア王国の兵士は神の恩恵(ファルナ)を授かってはいるが、兵士が成長する場としてダンジョンがないためステイタスは軒並み低い。

 そのためオラリオの冒険者からすれば、数だけは多い事もあって悪く言うと烏合の衆である。冒険者たちもそれほど重く受け止めていなかった。

 私やアリーゼたち【アストレア・ファミリア】も一応召集されてはいるが、それも半日交代の当番のような感じで、私なんてほとんど役目のない医療班に回されていた。ただ、脅威がないとは言ってもそのせいで集まりにくくなっていたのは事実。こっちからラキア王国に攻め込んでやろうかと思ったりもしたが、何故かオラリオにほとんど護衛もつけずに敵主神アレスがいたので捕まえてギルドに引き渡した。

 

 そうしてラキア王国関連がある程度落ち着き、私やアリーゼたちが出る必要もなくなってきた朝。私は【アストレア・ファミリア】のホームを訪れた。

 

「明日辺り試作品の鍵が使えるか試してくるつもりなんだけどさ、多分使えないからもっと正確に作るためにもう1個欲しいんだよね。ちょっと闇派閥(イヴィルス)しばいて取ってきてくれない?」

「おい、これツッコんだ方が良いのか?」

「放っておけ。どうせ反応したところで変わらん」

 

 そこで私は今後の闇派閥(イヴィルス)について話していた。ソファーに座るアリーゼに膝枕されながら。

 

闇派閥(イヴィルス)の残党がどこにいるかなんて分からないし、あの迷宮モドキの内部調査も進めなきゃよね」

「そうなんだよね。鍵を奪うなら迷宮モドキの外で、が良いんだけどいつになるか分からないし。あれを放置するのは良くない気がするから闇派閥(イヴィルス)の捜索と迷宮モドキの調査、同時に進めないと」

 

 アリーゼに頭を撫でられる。私も頬でスリスリしておいた。

 

「上まで続いてるっぽかったからマッピングと照らし合わせて18階層よりも上の層で出入り口がないか一応探してきたが、いくつかそれっぽいの見つけたぞ」

「そうなんだ。やっぱり上層にも出入り口あるよね」

「私は闇派閥(イヴィルス)の残党共がいないか探してみたが、見事に見つからんかったな」

 

 ライラと輝夜はそれぞれ調査をしてくれていたらしい。迷宮モドキについては少しだけ進展あり。しかし、闇派閥(イヴィルス)そのものに目ぼしい情報はない、と。

 

「私は地上でそれとなく聞き込みをしてみましたが、闇派閥(イヴィルス)の情報はありませんでした。しかし、少し気になる情報が」

「気になる情報?」

「ええ。ダイダロス通りで【ロキ・ファミリア】が何かを探しているようだった、と」

「ダイダロス通りか……」

 

 リオンからの情報はダイダロス通りに関するもの。

 ダイダロス通りは無法に建築された建物が並んだ場所で、迷路のように入り組んでいる。そういう立地の関係上、怪しい取り引きの現場となる事もある。他の場所に比べて、いわゆる怪しい人間が出入りする頻度は高い。

 つまり、怪しい人影があったとしても、闇派閥(イヴィルス)と判断する事は出来ない。むしろ、それ以外の可能性の方が高い。

 しかし、【ロキ・ファミリア】がそんな有象無象に構うとは思えない。

 

「【ロキ・ファミリア】か。そいつは只事じゃないな……」

「ねぇ、今思い付いたんだけど、ちょっと良い?」

 

 ライラが呟くところへアリーゼが手を挙げて言った。

 

「どうした?」

「ほら、あの迷宮モドキって闇派閥(イヴィルス)の秘密基地なわけじゃない? しかも、闇派閥(イヴィルス)がダンジョンに入るには色んな目を掻い潜る必要がある。という事はあるんじゃない? 地上に入り口」

「……そういや、そうだな。暗黒期もバベルは厳重に監視してるはずなのに連中がダンジョンに湧いて出た事が何度もあった」

 

 あの迷宮モドキがどこまで繋がっているかはまだ確認出来ていないが、確かによくよく考えてみれば、地上に繋がっていると考えた方が自然だ。

 あんな最上級の鉱石を加工するためには様々なものが必要となるが、あれを1からダンジョンの中だけで製作から完結まで出来るとは考えにくい。地上から材料を運び込むにも、あの規模だ。そんな事があれば絶対に何らかの記録に残っているはず。

 それに、ライラの言った通りダンジョンの出入り口であるバベルに監視の目を光らせていても、闇派閥(イヴィルス)がダンジョンに現れた事があった。となれば、あの迷宮モドキは地上とダンジョンを繋ぐ第2の出入り口と考える事も出来る。

 

「じゃあ、二手に分かれる? 私とアリーゼは試作品を試すついでに18階層の入り口から地上目指してみるから、他のみんなでダイダロス通りを中心に闇派閥(イヴィルス)を探すついでに地上の入り口を探すみたいな」

「当然のようにアリーゼと組もうとしてるのはもう置いておくとして、まぁ、現状だとそれが良いかもな。全員で下から攻めても良いが、何があるか分からない以上、万が一に対応しやすいお前ら2人だけで行くってのが……」

「あ、マッピング出来ないからライラにはついて来てほしいかも」

「おい」

 

 という事で私とアリーゼ、ライラは18階層から迷宮モドキに入って地上を目指し、それ以外のメンバーでダイダロス通りを中心に地上の出入り口を探すという事になった。

 ライラが見つけたもっと上層から入るのではなく18階層からスタートするのは既にマッピング済でスムーズにスタート出来るからだ。

 

 

 

 ところ変わって18階層。

 

「うーん……反応しそうで反応しない……」

「大丈夫よ! 今回が駄目でも次があるもの!」

「こんな大層なモン、一発で再現されたら敵さんもたまったもんじゃないだろうしな。何回も試していけよ」

「大丈夫。次で完璧に作るから」

 

 案の定というべきか、鍵の試作品は失敗作だった。魔道具製作者(アイテムメーカー)としては納得のいかない結果だったが、今回のメインはこれではない。

 

「じゃあ行こう。はい、透明ローブ」

 

 本物の鍵を用いて迷宮モドキへの入り口を開く。

 アリーゼとライラが透明化したのを確認し、私も透明ローブを纏って迷宮モドキへ足を踏み入れた。

 

「行くぞ。こっちだ」

 

 既にマッピング済の場所はライラの先導に従って進み、上を目指す。

 今回も前回と同じように目的は闇派閥(イヴィルス)の討伐ではなく迷宮モドキの把握だ。こちらから人間を探す事はせず、考えられる最短ルートで上に登っていく。

 

「多分こっち」

 

 マッピングが済んでいない未知の領域は私の直感を頼りに進んでいく。右か左か、あるいは真っ直ぐのどの方向に進めば上に繋がる階段に辿り着けるか。私の直感はこういう二択三択を選ぶときは特に強く力を発揮する。私は転生してからババ抜きでジョーカーを引いた事がない。

 

「こっちに何かありそうよね」

「あ、私も思った」

「そういうのは次だ。マップに印は付けとくから今は上を目指すぞ」

 

 今回は地上を目指すのが最優先事項であり、敵に見つかるような事は避ける必要がある。もちろん、痕跡を残すのも望ましくない。

 今はまだ闇派閥(イヴィルス)には攻め込まれているという事を知られなくない。あくまで可能性の話ではあるが、扉を開くための鍵が別のものに変更でもされたら最悪だからだ。

 途中で闇派閥(イヴィルス)の人間の気配を感じたが、手を出さずにやり過ごした。

 

「おい、見てみろ」

「これは……血痕?」

「そうだろうね。仲間割れでもしたのかな……ちょっと待ってね」

 

 感覚的に地上が近くなってきた辺りで、大量の血痕が残っているのを発見した。

 誰の血痕かは分からない。私たちのように侵入した他の人間がやられた跡かもしれないし、闇派閥(イヴィルス)の仲間割れの可能性もある。私としては仲間割れの方が嬉しいのだが。

 

 簡単な検査でこの血が付着してから大体どれぐらいの時間が経過したかは分かる。アリーゼとライラに待ってもらって、簡易検査をしてみる。

 

「これ、結構最近のやつみたい。多分1週間も経ってない」

「仲間割れなら万々歳だが、色んな情報を省みると【ロキ・ファミリア】の仕業の可能性もあるな」

 

 連携が取れてない中でバラバラに仕掛けるのはやめてほしいが、【ロキ・ファミリア】の可能性も十分にある。

 

「これが終わったら確認してみましょう」

「うん、そうしよ」

 

 とにかく、今は地上を目指すのが先決だ。その現場には手を出さずに離れた。地上は近い。

 

 それから少しして、私たちは地下水道を通って地上に出る事が出来た。

 

「やっぱダイダロス通りか」

「この辺りなら目立たないものね」

「うん。【ロキ・ファミリア】の怪しさもちょっと増したよね。あんまり今の段階で刺激するような事はやめてほしいけど……」

 

 その後、地上班のリオンや輝夜たちと合流。リオンたちは【ロキ・ファミリア】が怪我人を抱えていたという情報を得られたという。

 私たちは【ロキ・ファミリア】への対応も含めて本格的に闇派閥(イヴィルス)対策会議を執り行う事になった。

 

 しかし、そのときの私は知らなかった。闇派閥(イヴィルス)の残党と同じぐらいの厄介事をベルたちが持ち帰って来ていたという事を。

 

 




○アレスによるヘスティア誘拐
・実行に移す前に主人公によって阻止された
・アレスはギルドに連行された

○【アストレア・ファミリア】のホーム
・本当に今更だが、主人公は我が家のように入り浸っている
・入館許可などいちいち取っていないし、誰も気にしていない

次回は少し暗めの過去編を挟みます
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