ヘスティア・ファミリアのエセシスター   作:カラスガラス

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冒険者になるために

 

 

 迷宮都市オラリオ。それは世界で唯一の地下迷宮ダンジョンが存在し、ダンジョンに出現するモンスターを討伐する事で採取出来る魔石を利用した産業で栄える都市である。

 ダンジョンへ赴く冒険者たちは皆、天界より降臨した神々から神の恩恵(ファルナ)を授かり、その神を主神としたファミリアに所属する事となる。

 

「これが君のステイタスさ」

「こ、これが……!」

 

 我が【ヘスティア・ファミリア】も例に漏れず。恩恵を刻まれたベルが、ステイタスを記された紙を手に目を輝かせている。刻まれたばかりで力、耐久、器用、敏捷、魔力の基礎的な5つの項目は全て最低の0で、これといったスキルも魔法も発現していない。ありきたりな初期ステイタスだが、初めての恩恵にはそんな事は関係ないようだ。

 私も初めて恩恵を授かったときは興奮したから気持ちは分かる。私のときは最初から魔法やスキルが発現していたため、全く同じというわけではないが。そういえば私は最近ステイタスの更新を行っていないな。この前はバロールタイムアタックとかもあったし、後で更新してもらおう。

 

「さて、冒険者になるならまずはギルドで冒険者登録をする必要があるっていうのは知ってる?」

「はい、知ってます!」

 

 元気があって大変よろしい。元気があり余って無茶をしなければいいのだが。

 

「取り敢えず登録しに行こうか、ベル」

「はい! ユイさん!」

 

 意気込み十分のようなので、私はヘスティア様に軽く手を上げた。

 

「じゃあ、ギルド行ってきます」

「行ってきます!」

「気を付けるんだよー」

 

 気の抜けた返事を背に、教会の隠し部屋から地上へ出た。ベルは意気揚々と私の後ろをついて来ている。

 ソファに寝転がっているヘスティア様はヘファイストス様のところにいた頃と全く様子が変わっていない。ある意味尊敬である。

 

「あの、ユイさん」

「ん? どうしたの」

「ユイさんが着ている服って、ファミリアの制服みたいなものなんですか?」

 

 さすがにギルドまで無言は気まずい。しかし、普段はアリーゼたち同性とばかり一緒にいるため男の子と何を話せば良いのか分からない。年下が相手であればなおさらだ。

 なんて考えていれば、ベルの方から話題を振ってくれた。

 

「特に決めてるわけじゃないんだ。好きで着てるだけで」

「あ、そうなんですか」

「そうそう。制服なんて決めるには団員が少なすぎたし。まぁ、ベルが着たいって言うなら作ってあげるけどね。男の子だから私のとは違う形になるんだけど」

「か、考えておきます」

 

 ファミリアの制服か。決めているファミリアもあるようだが、団員数わずか1人はもはや制服ではなくその個人のファッションである。確かに修道服は一般的に考えると普段着に着るようなものではないので、そう思ったのかもしれない。

 しかし、こちらの世界は前世に比べて宗教という考え方があまり定まっていないとはいえ、修道服を制服にするのはどうなのかという気持ちもあるため、これからも制服として強制する気はない。着たいならそれはそれで歓迎するが。

 

「ああ、でもこれはつけておいた方が様になるかな?」

 

 そう言って私はポーチから聖火を模したペンダントを取り出した。私もつけているもので、聖火は【ヘスティア・ファミリア】のシンボルである。

 

「ありがとうございます!」

 

 と首に掛ける様子は子どものようで微笑ましい。

 そうしてギルドに向かって歩いていると、知っている2人の姿が目に入った。アリーゼたち【アストレア・ファミリア】の面々なら喜んで話しに行くのだが、少し微妙な関係の2人だったため、どうしようか迷った。

 

「おっ、ユイたんやーん! ウチんとこ来る気になったー?」

「おい、ロキ……」

 

 オラリオ最大派閥の1つである【ロキ・ファミリア】の主神ロキ。それと、付き添いと思われる『凶狼(ヴァナルガンド)』の二つ名を持った狼人(ウェアウルフ)の青年。

 

「すうぅぅ、はあぁぁ。相変わらず可愛い顔してるなぁ。あ、おっぱい大きなった?」

 

 私の自慢のヘスティア様とお揃いの黒髪に指を絡ませながら胸を揉んでくるセクハラ女神。マジでどうしてやろうか。

 昔ヘスティア様と喧嘩していたところを仲裁して、ちょっと優しくしてあげただけなのに調子に乗って。

 

「他の子みたいにウチも抱き締めて〜」

 

 何故か、少し前にライラの口から聞いた言葉を思い出した。私がリオンにハグを拒否されるのは下心があるからだと。

 誓って下心などない。ないのだが、もしやリオンには私がロキと同じように見えているのだろうか。

 

「いだだだっ!?」

「ちゃんと躾けといてもらえます?」

 

 私はロキにアイアンクローを食らわせ、『凶狼(ヴァナルガンド)』へと付き返した。

 

「ああ……悪い」

 

 教育に悪そうなので立ち去ろうとすると、いち早く調子の戻ったロキは今度はベルへと視線を移した。

 

「ん〜? 自分、見かけん顔やなぁ。ユイたん、この子は?」

「我らが【ヘスティア・ファミリア】の期待の新人ですよ」

「ドチビんとこの? ほぉ〜、やっと増やす気になったんか」

「ある事情で住所を移す事になったので」

 

 期待の新人という言葉に『凶狼(ヴァナルガンド)』は何かを言おうとしたようだが、私の顔とロキの顔を交互に見て止めた。彼は下級冒険者を見下し、時には罵倒するので大方言おうとした内容は分かる。

 しかし、自身の主神が今まさに迷惑をかけたところであるし、治療師(ヒーラー)として私にお世話になった事もあるし、と恐らくそんな事でも考えたのだろう。

 

「じゃあ、私たちはギルドに行くので失礼します」

 

 ベルは2人にお辞儀をして私の後ろについた。

 

 ギルドまではそれほど離れているわけではないため、2人と別れてすぐに到着した。

 目的はベルの冒険者登録であるので、窓口へ足を向けた。

 

「この子の冒険者登録をお願いしたいのですが」

「『聖火の守人(ウェスタリス)』……レグリース氏!?」

 

 私たちが向かった窓口の担当はハーフエルフの女性だった。私を見て驚いているようだが、どうしてそんなに驚くのだろうか。魔石の換金などでよく顔は出しているのだが。

 いや、これまで10年間新しい団員がいなかったのに、今さら増えたと聞けば驚くのも無理はないのだろうか。

 

「し、失礼しました。冒険者登録というのは、【ヘスティア・ファミリア】の……?」

「ええ。ベル、自己紹介を」

「あ、ユイさん。実は初めて来たときに対応してもらって、もう自己紹介は……」

「そうなの? まぁ、じゃあ、とりあえず冒険者登録してもらおう」

 

 14歳ならここからは自分で出来ると判断し、私は一歩後ろに下がって様子を見る事にした。と言っても、登録に必要な事柄を記し説明を受けるだけで、仮に読み書きが出来なくても代筆してもらえる。最初から私はいらなかったのではないかと思わないでもない。

 

「えっと、希望はエルフの……」

「ダンジョンに関する知識をみっちり詰め込んでくれる人で」

「あの、ユイさん……?」

「知識がないと死ぬよ」

「はい……」

 

 担当アドバイザーの希望については少し口を出したが。

 

 数日後、冒険者登録のときに対応してくれたハーフエルフの職員エイナ・チュールに担当アドバイザーに就いてもらい、ダンジョンについての知識を詰め込まれたベルを連れてダンジョンを訪れた。

 ダンジョン1階層。ゴブリンやコボルトのような雑魚モンスターしか現れないため、初心者には比較的優しい階層だ。

 

「冒険者にとって何より大切なのは生き残ること。そして、そのためには身体の強さ、技術よりも常に冷静でいられる精神が必要になる」

 

 ベルはギルドから支給されたナイフを構えている。そこへちょうど良くゴブリンが現れた。群れではなく1匹だ。

 

「まずはモンスターと相対する事に慣れる。危なくなったら助けるし、怪我しても私の魔法で治してあげるから、思うように戦ってみよっか」

「はい!」

 

 冒険者に必要な素質、というと様々だが、まず第一にモンスターに臆せず立ち向かう気概が挙げられる。モンスターは異形の存在であり、対峙するだけで嫌悪感を少なからず感じる事になる。

 人によっては例え格下のモンスターであっても、まともに戦えないという事もある。こればかりは向き不向きの問題なのでどうしようもない部分でもある。

 そういう意味では、ベルは最低限冒険者の素質はあるようだった。ゴブリン相手に恐る恐るではあるが、ちゃんと戦えている。

 

「やった! ユイさん、勝ちました!」

「いいね。初めてにしては戦えてるし、気持ちでも負けてない。どうする? 今日はここまでにしておく? それとも、もう少し行ってみる?」

「行ってみます!」

 

 そして、まだ元気もあり余っている。

 すごいな。私なんて初めてのときはビビりまくっていたのに。

 

「かすり傷と軽い打撲程度だけど、取り敢えず治しておこっか。【私が願う。響き渡れ、癒しの旋律】──【ラヴィ・ルミエール】」

 

 ベルの足元に魔法陣が現れ、その傷を癒やした。おまけで体力も回復させている。

 

「すごい……! これが魔法……!」

「死んですぐ、ぐらいだったら治してあげるから安心していいよ」

「死んで……え!? 死んでも治せるんですか!?」

「冗談だよ。ヒーラージョーク」

 

 この後、2匹のコボルトを倒して仮ホームに帰還した。ベルは魔石を換金するときにも興奮していた。ファミリアの後輩というのは初めてだったため、私も新鮮な気分を味わえた。




○ベル・クラネル
・好きなタイプは金髪ロングのエルフ
・ファミリアの先輩である主人公の近くに、その条件に一致する人物がいる

○ロキ
・言わずと知れた美男美女好きの女神
・過去に主人公とアリーゼの間に挟まろうとしてぶっ飛ばされた事がある
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