ヘスティア・ファミリアのエセシスター 作:カラスガラス
ウィーネは仲間の所へ送り届けた。ひとまず喫緊の
「とりあえず例の鍵複製出来たから、はい人数分」
「もうできたのか。流石だぜ」
「さすがはユイね!」
私は【アストレア・ファミリア】のホームで対
「ここ数日
「ああ。奴らの影すら見えん」
私が別件に首を突っ込んでいた間も【アストレア・ファミリア】のみんなは調査をしてくれていた。
分かった事は多くない。ただ、元【イシュタル・ファミリア】襲撃事件以降、全くといって良いほど動きを見せていないという事が分かっただけだった。
「うーん、どうしましょうか。仕掛けるなら一網打尽よね。出来るだけ人手は多い方が良いし、色んなファミリアとも協力したいわね」
「そろそろ【ロキ・ファミリア】にも声かけとくか? それならアタシが行ってきてやるが」
【ロキ・ファミリア】に何か用があるときは大抵ライラが行ってくれる。フィンさんが目的という面もあるだろうが、最近は以前と比べて押しが弱いような気がする。
行こうとするライラにこっそり親指を立てておく。すぐにどうにかなる事はないと思うが、心の中では応援しているのだ。
「迷宮モドキの突入メンバーだけじゃなくて万が一取り逃したときのために外を警備してもらう必要もあるし、【ガネーシャ・ファミリア】にも頼んだ方が良いよね?」
「では、【ガネーシャ・ファミリア】の方には私が行ってきましょう」
「それじゃ、お願いね! ライラ、リオン!」
私の提案にリオンが名乗りをあげ、アリーゼの決定により【ロキ・ファミリア】にはライラが、【ガネーシャ・ファミリア】にはリオンが向かう事になった。
残りのメンバーは、ノインやネーゼたちLv.4組はダンジョン側から迷宮モドキの出入り口の捜索、私とアリーゼ、輝夜の3人は迷宮モドキの内側からマッピングを進める事になった。
出入り口に関しては、何百もあるわけではなかった。多ければそれだけ
直感持ちの私や、直接スキルには現れていなくても直感に類するものを持つアリーゼが揃っているのだ。もう何度か潜入しているし、網羅するのにそう時間はかからなかった。
「これは……」
「なんだ、この、不気味な……」
出入り口が存在する迷宮モドキの比較的辺縁域を調べ終えたから、中心部へ進んでいこうという話になった。
透明ローブ他隠密用の
アリーゼと輝夜がかろうじて全体像を見える程度の距離を保ったまま呆然と眺めているのは、形容し難い何かだった。
私はそれと似たものを知っていた。
「まさか、59階層の……」
【ロキ・ファミリア】の遠征に同行したときに59階層で戦った精霊モドキ。
「知ってるの、ユイ?」
「うん。この前話した、59階層にいた精霊モドキ」
「私はそんな話聞いてないが」
「輝夜には話してなかったかも。実はこの前【ロキ・ファミリア】の遠征についていったときに……」
恐らく
「つまり、なんだ。奴らは【ロキ・ファミリア】が壊滅しかけたような化け物を飼っていると、そういう話か?」
「全く同じではなさそうなんだけど、たぶん強さ的には似たような感じか、それ以上に強いかも。勘だけど」
「ならそうと仮定して動くしかあるまいな。しかし、どうする団長。アレが一体とは限らん。というか、迷宮モドキの全体像を考えるに他にも複数あると考えた方が自然だ。人手があれば、とは思っていたが、あのようなものが放し飼いにでもされたら大抵の者では足手まといにしかならん」
「ええ。マズイわね。
「たぶんね。Lv.7になった今なら余裕で倒せるとは思う。アリーゼも。でも、アレ超長文の高速詠唱で結構な火力の魔法使ってくるから、相手より早く相当な瞬間火力出せる人じゃないと単騎は難しいかな。【ロキ・ファミリア】幹部陣でも複数人でかからないと」
「なら、突入のときに最初は私とユイだけ先行して、アレ片付けてからみんなにも突入してもらうっていうのは? 最初は出入り口を固めておいてもらって」
「たったの2人だけで突入させるのが結果一番犠牲も少なく攻略も早くなりそうなのが笑えんな」
「まぁでも、ほら。実際私とアリーゼが一番強くなるのって2人で戦ったときだし。ね、アリーゼ?」
「ええ、当然ね」
「はぁ……惚気けられるこっちの身にもなってほしいものだ」
予想外の事態ではあるが、攻勢に出る前に知れたのは大きい。もし知らないまま大勢で突入していたら多くの犠牲が出ていたかもしれない。それだけあの精霊モドキは厄介だ。
まぁ、それはそれとして。
「べつにちょっとぐらい聞いてくれても良いでしょ? この前の質の悪い嘘吐いたの忘れてないから」
「わ、悪かった。反省してるから、落ち着け」
私は根に持つタイプだから、【イシュタル・ファミリア】問題のときに輝夜がした事は昨日の事のように覚えている。あのとき私が一体どんな気持ちになったか。
「ひとまずライラたちと共有しましょう。作戦を考え直す必要があるわ」
その日の調査はそこまでに、【アストレア・ファミリア】のホームに戻ってライラやリオンたちも含めて情報を交換し合った。
【ロキ・ファミリア】とは交渉初回である事もあって迷宮モドキに関する情報交換と、攻略協力の打診。まだこっちが鍵を持っていて、しかも私が複製出来る事は伏せて。鍵を持っている事だけは匂わせたらしいけど、向こうがどう出るか分からない現時点では慎重な姿勢だ。大きな事ではないが、あの迷宮モドキはクノッソスという名前らしい。
【ガネーシャ・ファミリア】とは普段から協力する事が多い事もあって【ロキ・ファミリア】よりも踏み込んだ交渉をしてきたようだ。大きな枠組みで見れば【ガネーシャ・ファミリア】も【アストレア・ファミリア】と同じ治安維持に務める派閥だ。これまでに培った信頼関係も厚い。
「これは、まだフィンたちに具体的な話をしなくて良かったな。その情報があるとないとじゃ攻め方が変わってくる。というか、結局こういう場面になったらアリーゼとユイの2人を突っ込ませるって結論に落ち着くのな」
「ああ、その話はもうやったから話を進めるぞ」
「そか」
ライラの言葉を輝夜が強引に軌道修正した。
「【ガネーシャ・ファミリア】であれば協力してくれるでしょうが、【ロキ・ファミリア】は出入り口を押さえるだけの役割を請け負ってくれるでしょうか」
「まぁ、力で解決するしかない問題をウチのLv.7コンビに任せるってのはフィンの超賢い頭脳を使うまでもなく合理的だろ。その辺りアイツなら上手く説得してくれるとは思うけどな」
「最悪59階層の件を持ち出して言ってやれば良い。足手まといだからすっこんでいろ、とな」
「輝夜……【ロキ・ファミリア】と喧嘩でもするつもりですか」
そうして暫定的な作戦として、まず出入り口の数だけ私が鍵を複製し、それを持った小隊が各扉の内側に陣取って
把握後、他の冒険者は出入り口まで下がらせ、私とアリーゼが最速で精霊モドキを潰す。
それが済み次第、人海戦術で
仮にクノッソス内に敵主神がいた場合は
私には、この世界生まれの者と違って下界で許された程度の神威は効かない。
そうして対
フェルズ曰く
そして私たちは計画を変更した。
武装したモンスターの件で【ガネーシャ・ファミリア】は忙しい。【ロキ・ファミリア】も【ロキ・ファミリア】で何かに当たりをつけたのか、ダイダロス通りに出張って何かをやっている。
クノッソスへ侵入したときに見た精霊モドキ。アレはそう放置していて良い存在ではないだろう。そういう確信があった。便宜上武装したモンスターとは言っているが、そちらは
だから、
そもそも考えていた作戦は私とアリーゼが2人で突入して精霊モドキや他に何かあればそれらを破壊、その後人海戦術でクノッソスの全てを押さえるというような感じ。【ガネーシャ・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】に任せようとしていたのは最初に私とアリーゼが突入するときに
人海戦術に移行する頃には多少時間が掛かっても大丈夫になっているだろうし、逃げられないようにするのも最悪大人数がいなくても何とかなる。というか、その方法をさっき思い付いた。みんなには脳筋過ぎると言われたが。
そして、武装したモンスター討伐隊と打ち出された【ガネーシャ・ファミリア】を除き、ギルドは全てのファミリアに一律で待機命令を出したが、実はその裏で【アストレア・ファミリア】と【ヘスティア・ファミリア】には動いて良いというお達しが来ていた。恐らく、私がフェルズを通して伝えた
【ガネーシャ・ファミリア】と共に行動しているベルは一旦置いておいて、他の【ヘスティア・ファミリア】メンバーには、有事の際にはヘファイストス様のところに駆け込むように言っている。元々は何人か残った【アストレア・ファミリア】に保護してもらう予定だったが、こうなったら【アストレア・ファミリア】のメンバーは総動員する必要があるからだ。
「ライラもリオンもせっかく話を持って行ってくれたのにごめんね?」
「構わねぇさ。フィンも分かってくれるだろ」
「ええ。こうなってしまっては仕方ありません」
準備も大詰め、【アストレア・ファミリア】のホームで必要なアイテムなどを配りながら話す。
「むしろ余計な思惑も入らない分、やりやすい事を喜ぶべきだな。途中で揉めでもしたらかなわん」
「それは輝夜が喧嘩吹っ掛けるからだよね?」
「そんな事するわけがないだろう。私は事実を言うだけだ」
「ほらぁ」
まぁ、身内だけでやった方がやりやすいというのは事実だ。
作戦を確認し、必要なアイテムも持って、私たちはダンジョンへ向かった。
○主人公
・クノッソスの鍵は完全な再現に成功しており、その気になれば何十何百個と量産出来る
・周囲の状況を鑑みて、
・少ない人員でも