ヘスティア・ファミリアのエセシスター   作:カラスガラス

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 感想でも言及されていましたが、このままではヘスティアのベル贔屓が過ぎると思ったので、本話にて少しだけフォローを入れました。



サポーター

 

 

 せっかく魔法で作った魔導書(グリモア)が結局突き返される事などがあったが、【ロキ・ファミリア】の遠征に同行するまでの少しの間は暇となった私は仮ホームのベッドで本を読みながらゴロゴロして過ごしていた。あと数日もこのまま過ごす予定だったのだが、ヘスティア様に連れられてとあるカフェを訪れる事になった。

 ヘスティア様に座るのを促された席には既に2人の人物が座っていた。1人は私もよく知る後輩、ベル。しかし、もう1人は全く知らない小人族(パルゥム)の少女だった。

 

「えっと、どういうアレです?」

 

 本気でどういう状況か分からなかったため、私はヘスティア様に説明を求めた。すると、ヘスティア様は語ってくれた。

 この小人族(パルゥム)の少女はベルのサポーターとして一緒にダンジョンに潜っていたらしいのだが、ベルを騙してお金をちょろまかしたり物を奪ったりしていたらしい。そして最終的にはモンスターの群れの中に置き去りにしてサヨナラしたはいいが、その後に他の冒険者にやられて死にかけたところをベルに助けられた、と。

 これは結構タチが悪い。まだベルが無事だったから良いものの、最悪ベルが死んでいた可能性もある。もちろんベル単体でも危険性はあるが、後ろから刺される形で死ぬのは意味合いが変わってくる。

 

「それで? 【ガネーシャ・ファミリア】に連れていけって話ですか? 確かに私は【ガネーシャ・ファミリア】とも親しいですけど、それぐらいベルかヘスティア様だけでも大丈夫だと思うんですけど」

「待ってください! 違うんです! リリはもうそんな事……」

 

 ベルが私の言葉を否定した。

 そのリリという名のサポーターは心を入れ替えて、これからは正真正銘の相棒としてベルのダンジョン探索のお供としてやっていくらしい。

 

「ふーん? ヘスティア様はどう思ってるんですか?」

「ひじょーに癪だけどね。嘘はついてないみたいだし、色々と危なっかしいところもあるベル君の事を頼もうかなと思ってるよ」

「ヘスティア様がそう言うなら、まぁ私も文句はないですけど」

 

 下界の住民は神に嘘をつく事が出来ない。普段はぐーたらでも、れっきとした神であるヘスティア様が言うならそうなのだろう。

 

「ベル君と組むんだ。ユイ君とも顔を合せておいた方が良いだろう?」

「なるほど……」

 

 私は当事者ではないし、被害に合ったベルが許しているというならそれ以上言う事はない。

 確かに顔合わせはしておいても良いかもしれないが、当の本人がずっと下を向いていて私と目を合わせようとしないのだが。心なしか震えているようにすら見える。

 

「えぇと、自己紹介でもしてもらっていい?」

「は、はい……り、リリルカ・アーデと申します……」

 

 薄々分かってはいたけど、めちゃくちゃにビビられてない? 確かに事情を聞いてちょっとぐらい睨んでしまったかもしれないけど。

 いや、分かる。Lv.1の彼女からすれはLv.6の私はレベルが5も上の存在だ。私からすればLv.11の人間が目の前にいるようなものである。ゼウス・ヘラ時代の最高でもLv.9と聞いたのだが、化け物すぎて逆に笑えるレベルだ。

 そんな相手が、状況的に自分に対して怒りを向けるかもしれない。そりゃあ、ビビる。

 

「そんなに怖がらなくても、取って食ったりしないよ」

 

 傷付くか傷付かないかでいえば傷付くが。これでも正義のファミリアとよくしてもらっているし、恥ずかしいが三大治療師の名目で『銀の聖女』や『黄金の魔女』と並んで『漆黒の天使』なんて呼ばれる事もあるのだ。粗暴な者が多い冒険者の中ではまだ印象の良い方なのではないだろうか。まぁ、ただの天使ならともかく黒い天使は怖いかもしれないが。

 

 ところで、そんなにビビるなら何故ベルを狙ったのだろうか。相手のファミリアも把握せずに組む事はないだろうし、ベルの所属ファミリアを聞いたなら身内に化け物冒険者がいる事ぐらい分かったはず。

 

「それは……ファミリアがベル様と2人だけなのに、ソロでダンジョンに行かせて……どうなっても興味がないのかと……」

「あっ……いや、興味がないとかそういうわけでは……」

 

 ぐうの音も出ないとはこの事か。

 確かに駆け出しの後輩を1人でダンジョンに潜らせたりしていれば興味がないと思われても仕方ないかもしれない。でも、言い訳はある。私だってついていくときはついていくのに、ベルは毎日ダンジョンに行き過ぎ。それは抜きにしても、成長早すぎるしリオンが鍛えてくれてるみたいだし。アドバイザーの言う事を聞いていればそうそうやられる事はないだろう。

 

「……分かった。明日行くから。私も」

 

 とはいえ嫌な印象を持たれたままなのも困る。ここは先輩冒険者らしく良いところを見せなければ。

 

 

 

 そして、夜。教会に戻ってから少し。

 ヘスティア様がコソコソと出掛けたかと思えば、すぐに帰って来た。

 

「ユイ君、ユイ君。こっち、こっち」

 

 何かを持ってきたのだろう。片手で私を呼ぶジェスチャーをし、もう片方の手は背後に隠れている。

 

「どこ行ってたんですか?」

「ヘファイストスのところにちょっとね」

「ヘファイストス様のところに?」

 

 ホームを追い出されて以降、私はヘファイストス様のところには行っていない。ヘスティア様はバイトでよく行っているらしいが、こんな時間にバイトはないだろう。結構短時間だったし。

 

「勿体ぶってもしょうがないね。ジャジャーン!」

 

 そう言ってヘスティア様が背後から正面へ掲げたのは、鍛冶で使うような槌だった。

 

「ほら、ベル君にナイフをあげただろう? ベル君にあげてユイ君には何もないというのもアレだから、ヘファイストスに相談してたんだ」

「へ、へぇ……」

 

 何だか嫌な予感がしてきた。

 

「ユイ君は戦い方が特殊だからベル君みたいに武器を贈るのも難しいし、という事で武器を打つときに使える道具をヘファイストスにお願いしたんだ。何にしようか考えててちょっと遅くなったけど、これすごいから是非使ってみてほしいんだ。なんでも、ベル君のナイフみたいに神の恩恵(ファルナ)に反応するらしくて、ユイ君の鍛冶に働くスキルとかの効果を100%発揮出来るようになるんだって」

「で、お値段は」

「……3億ヴァリス」

 

 思わず顔を手で覆う。

 ベルのナイフと合わせて5億ヴァリス。ここまで来るともはやヘファイストス様が悪いのではないかという気がしなくもない。

 

「でも、ベル君のときに言ったみたいにボクの責任で何年掛かっても払うから、ユイ君がお金を出す必要はないからね?」

「せっかくなので使わせてはもらいますけど。5億ってバイトで稼ぐのに何年ぐらい掛かります?」

「さ、さぁ……何十年、いや、何百年ぐらい……?」

 

 なんだか可哀想になってきた。

 

「私の治療院のバイトに助手として入ります? 普通のバイトよりはお金入ると思いますけど」

「でも、それだとユイ君の取り分が減ってしまうんじゃないかい?」

「面倒くさい書類とか代わりに書いてくれるだけで楽さが全然違うのでそこはwin-winって事で。別に私は今のところお金いっぱいほしいとかないですし」

「じゃあ……お願いしようかな……」

 

 新しく眷族が増える毎にこんな事していたらそのうち破滅すると思うのだが、大丈夫だろうか。

 

「まぁ、とりあえず。はい、ユイ君。これからも活躍を期待してるぜ」

「そうですね。ありがとうございます。期待に応えられるように頑張ります」

 

 この前は別に良いと思ってはいたものの、こうして実際にプレゼントを貰うと嬉しくなってしまうのも事実。まぁ、ここまでくるとさすがに心配の方が勝ってくるが。

 ヘファイストス様のところにいた頃は好きに空いている炉を使えたのですぐに試し打ちが出来たのだが、今は出来ないのがもどかしい。ヘファイストス様に頼みに行けば、少しぐらい使わせてもらえるだろうか。

 ヘファイストス様が直々に作った槌という事にも少し年甲斐もなく興奮してしまった。

 

 

 

 翌日、朝。

 

「……てください! ユイさん! 起きてください!」

 

 私の眠りを邪魔する声。

 

「うぅん……あと5分……いや、10分、15分……」

「早くしないと置いていきますよ」

「生意気になりおってぇ……」

 

 仕方ないので、寝惚け眼を擦りながら身体を起こす。はぁ……ねむ。昨日ちょっと夜ふかししてしまった。

 私を起こしたベルは既に戦闘衣で準備万端といった様子。出来る限り早く準備を進めた。出来る限り。

 

「おはようございます、ベル様! 今日はいつもより遅かったですね?」

「おはよう、リリ。えっと、今日はね……」

「はいはい、さっさと行くよ。時間は有限だからね」

 

 おのれ、リリルカ・アーデ。こんな早朝に集合時間を決めおって……。

 

 前衛にベル、後衛にリリルカ、さらにその後ろに露店で買ったサンドイッチを食べる私というフォーメーションでダンジョンを進んでいく。今のところ危ない場面もない。

 どうでもいい話だけど、サポーターのバックパックって人が1人乗れそうなぐらい大きいよね。

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

 

「ちょっと上で寝させてもらってもいい?」

「はい?」

 

 それを聞いたときのリリの心情といったら、もう。

 バックパックが重くないのか、とか。あとどれぐらい重くても大丈夫なのか、とか。何やら聞いてくるなぁと思っていたら、次に言ってきた言葉はこれですよ。

 

「よっと」

「あの、リリは了承していませんが……?」

「ん……」

「え、ホントに寝ました? ホントに寝たんですか!?」

 

 首だけ振り向いて後ろを見ると、ユイ様がバックパックの上にうつ伏せで、ぐでーんと被さっていた。

 いや、そんな事ありますか? 飛び乗った衝撃から1秒も経っていなかったような気がするのですが! 

 

「ベル様? この方はいつもこんな感じなんですか?」

「あー……うん。たぶんそうかも。いつも僕がホームを出るときは寝てるし、帰って来てからも神様と一緒にゴロゴロしてるときが多いから」

「なんだか、思っていたのと全然違いました。わざわざついてくると言うので何をするつもりかと思えば」

「あはは……ちゃんとしてるときは頼りになる人なんだけど」

 

 オラリオに数えるほどしかいないLv.6の冒険者がこれでいいんですかね。ダンジョン探索はちゃんとするときだとリリは思うのですが! 

 もしかしたらベル様の代わりに報復されるのでは、なんて考えて身構えていたのに。当のご本人様は既にすぅすぅと寝息を立てています。

 

「はぁ、仕方ありません。とりあえずはいつも通り探索を進めましょう」

「うん、そうしよっか」

 

 そうしてユイ様を乗せたままリリたちはダンジョン探索を進めました。いつもより重いバックパックを背負ったので本当なら『力』のアビリティが伸びたかもしれません。ステイタスの更新が出来ないリリには関係ありませんが。

 結局、地上に戻ってくるまでユイ様は眠ったまま。戦闘音とか結構あったと思うのですが、この図太さが第一級冒険者たる所以なのでしょうか。

 いつまでも乗られていては邪魔なので、ギルドの床に降ろしました。

 

「いたっ……よし。ちょっと寝てスッキリしたし、さぁ行こうか」

「…………」

 

 たった今地上に帰って来たばかりなのですが。

 

「あの、ユイさん」

「うん? どうしたの?」

「もう地上まで戻って来てます」

「……あれぇ?」

 

 まさか本気でここまで眠っていたわけでもないでしょうし、もしかしてアレですか。敵意がないという事を主張しているのでしょうか? 

 確かにリリは身構えていましたし、毒気が抜かれたのは事実ですが。かなりの冒険者の目に触れてましたし、奇異な目でも見られていました。

 なんというか、評判的な意味でも他のやり方があったと思います。

 

「じゃ、じゃあ、夜ご飯食べに行こう! 豊穣の女主人とか! 奢るから!」

 

 わざとですよね? 

 あんなに眠りこけていたのって、わざとですよね!? 

 




○主人公
・三大治療師の名目で『銀の聖女』や『黄金の魔女』と並んで『漆黒の天使』と呼ばれる事もある
・ファンは多い
・バックパックの上で寝たのはもちろん緊張をほぐすためであって、もちろんちゃんとした作戦であるので、もちろんただ眠かったからではない

○ヘファイストス作最高級火造槌
・銘はヘスティア・ハンマー
・制作にはヘスティアの神の血(イコル)が使われており、ヘスティア・ナイフと兄弟のようなもの
・主人公のステイタスに反応し、鍛冶を行う際にスキルなどの効果が無駄なく100%発揮出来るようになる
・お値段は3億ヴァリス

○リリルカ・アーデの主人公への印象
・知らない者はいない強者
・都市の憲兵と繋がりがある
・怖い

・ご飯を奢ってくれた。これからも奢ってくれるらしい
・お金をいっぱい持っている
・おバカ
・他の冒険者とは違うかも

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