中小国家の艦娘は如何にして戦っていったのか   作:ノリで始めた、反省も後悔もしとらんが?

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バルト海:主力がお留守のバルト戦域、荒れ狂う極寒の蒼き地獄にて
第1話:機雷戦。バルト海の守りはわたくし達にお任せあれ………なんて大言壮語を中小国家の艦娘が言えるとでもお思いですの?


 

 

 

 

 

 初めまして、皆様ご機嫌よう。

 わたくしリトアニア海軍の艦娘艦隊にて旗艦を務めております、“Prezidentas Smetona(プレジデンタス・スメトナ)“と申し上げます。

 元はドイツ帝国の1掃海艇に過ぎなかったわたくしが、所属を変えて小国とは言えど艦隊の旗艦を務め上げられるなんて、どれほど素晴らしい成り上がり物語か!そう思った方は是非ともこの座をわたくしと変わっていただけます?

 そもそも立派な軍用艦艇の艦娘がわたくしだけの時点でリトアニアと云う国は非常に、非っ常にひっじょーうに海の守りが脆弱としか言い表せない状態にあるのですから。

 一応わたくしのリトアニアよりもマシな状況にある北の隣人ラトビア、更にお隣さんのエストニアですらほんのわずかなまともな艦艇を持ち合わせておらず。

 西の隣人ポーランドはわたくしの所属するリトアニアやラトビア、エストニアより随分と立派でピカピカな艦隊を保有しておりますが、それでも最強艦は駆逐艦と旧式の軽巡洋艦2隻。ポーランド海軍が有する一応の大型艦艇である防護巡洋艦*1Bałtyk(バウティク)“は主砲が75mm砲しかない時点で、誰もがその戦力的価値をお分かりになるでしょう。

 そしてバルト海の対岸にいるフィンランドは航続距離がとにかく短い海防戦艦2隻以外は水雷艇が幾らかとその程度。

 

 

そう、揃いも揃って、どこもかしこも海軍艦艇が、少ない!!

しかもまともな艦艇に関してはもっと少ない!!
 

 

 

 更に付け加えるのでしたら、バルト海で頼れる海軍戦力を持つスウェーデンは主力級が揃って大規模作戦で損傷し、その修理と休養の真っ最中。

 油断ならぬご近所さんのロシアと、それからなんだかんだで陸軍国家の割には強力な艦隊を持つドイツは揃いも揃ってなぜかわたくしたちにバルト海の守りを放任して他の戦域へ艦隊を動かすなんて頭の悪い行動をしやがりましたの。

 

 

 

そう、バルト海に出てくる“深海棲艦“の対処を我々に放り投げて!!
 

 

 

ど う し て
 

 

 

 これはバルト海に面している国々にとっては共通認識と言えるでしょう、何せ戦力が足りていないのだから!なのでみんなで仲良く合意のもとバルト海へ機雷をばら撒いたりしているわけですが………

 

 

そ れ で も ダ メ で し た
 

 

 

 数が足りません、艦娘の数が足りませんの。せめてスウェーデン海軍の巡洋艦娘だけでも残っていてくれればどうにかなったのかもしれないでしょうが………

 その頼みの綱のスウェーデン艦隊が動かせず、ドイツやロシアの艦隊はどこかに行ってしまった以上、わたくし達のような頼りない戦力でなんとかバルト海を守り抜く必要が出てくるわけですの。

 

 ただし現状はラトビア海軍の掃海艇“Virsaitis(ヴィルサイティス)“が水上機を搭載しており、その水上機を用いて航空偵察はできているので、数が足りないなりに上手く立ち回れてはおります。

 それに、頼れる我らがバルト海の暫定親分、ポーランド共和国。そのポーランド空軍部隊が駐屯する基地の基地航空隊から得られる空中援護もありますし。*2

 ですが、どれだけ悪足掻きをしたところで数の問題には敵うわけもないのですが………それでもわたくしたちは懸命に戦っております、それだけは覚えていただけないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 ………さて、気を取り直し、現実逃避をやめて現実をしっかりと見据えることにいたしましょう。

 現在わたくしはラトビア海軍の掃海艇“Virsaitis(ヴィルサイティス)“とエストニア海軍のカレフ級潜水艦“Kalev(カレフ)“と“Lembit(レンビット)“の2隻に、わたくしたちの頼れる暫定バルト海の親分、ポーランド海軍所属の機雷敷設艦“Gryf(グルィフ)“で臨時の「バルト海機雷戦小艦隊」を編成し、エストニア沿岸防衛の為にせっせと機雷を敷設………している“Virsaitis(ヴィルサイティス)“と“Gryf(グルィフ)“を護衛しているところですの。“Kalev(カレフ)“と“Lembit(レンビット)“はわたくしたちと別の区域で潜水しながら機雷を敷設しておりますので、ご安心くださいませ。

 

 なおこの小艦隊の護衛は他にポーランド海軍の駆逐艦“Burza(ブルザ)“と“Wicher(ヴィヘル)“が近くにいますし、ポーランド海軍の駆逐艦が合流中ですので、十分(比較的に)な撤退時の援護も受けられますの。

 ですがそれでもこの仕事は早く終わって欲しいものです、“Virsaitis(ヴィルサイティス)“は機雷が30発しかないので敷設がすぐに終わりましたが、“Gryf(グルィフ)“はそもそも機雷敷設を本業と致しますが故に600発も機雷を積んでおり、それの敷設に時間がかかってしまっているのです。

 

 ですが彼女に機雷敷設を急かすことはできません。機雷原の敷設に失敗すればエストニアが陥落してしまいかねないですし、そうなって仕舞えば連鎖的にラトビアも陥落し、その次にわたくしのリトアニアも後を追う羽目になってしまうでしょうから。ポーランドは深海棲艦の侵攻を持ち堪えるでしょう、少なくとも1920年に「ヴィスワ川の奇跡」を起こしたように、上手く持ち堪えるどころか叩きのめすでしょうから。

 

 ああいや、そんなことはどうでもいいでしょう。今はとにかく目の前のことに集中しなければ。

 7.62mmの小銃弾を放つ3挺の機関銃に空を睨ませて頼りない空の守りを固め、主砲の76.2mm単装砲を構えて砲戦に備え。“Virsaitis(ヴィルサイティス)“も同じように4挺の小銃弾を放つ頼りない機関銃に空を睨ませ、主砲のチェコスロバキア製83.5mm両用砲と副砲の57mm砲を構え、戦闘に備えております。

 そんな中で、警戒をしながら機雷敷設の終わりを待っていたわたくしたちに“Gryf(グルィフ)“から報告が入りましたの。

 

「申し訳ない、後少しで機雷の敷設が完了する!それまでどうか私の援護をしてもらえないだろうか?」

「了解、今のところ潜水艦や水上艦艇も私の水上機は見つけていないよ」 

「あら、今日は落ち着けそうですわね?」

「多分ね、多分。もしかしたらまた戦う羽目になるかも」

「そうなったら私がうまいこと砲撃で追っ払ってやる、頼りにしてくれよ?」

「ええ、ええ!もちろんわたくし達は貴女の火力を一番の頼りにいたしますの、ですからその立派な大砲をちゃんと役立ててくださいまし?」

「そうだぞー?我々の中じゃ“Gryf(グルィフ)“のボフォース砲だけが頼れるんだから!それ以外はもうダメだね、ないよりマシ程度でしかないよ!」

 

 どうやら敷設の様子を見るに後少しで根拠地のラトビアのリガに帰れるらしく、それに加えて敵も視認されていないとも。現状において、今日は一度も接敵はしていないので一安心といったところでしょうか?どうかこのまま無事に終わってくれると喜ばしいのですが。

 まあこんな吹けばすぐに消えてしまうような小艦隊にとって一番頼りになるのは“Gryf(グルィフ)“の変則的な配置をしたボフォース製120mm砲と同じくボフォース製の40mm対空機関砲だけなのはご愛嬌と言ったところですわね。

 ………小国の艦艇に立派な装備など期待しないでくださいまし、これでもわたくしや“Virsaitis(ヴィルサイティス)“はそれなりの装備をしている方なのですよ。

 

〔こちらリエパーヤ司令部、ラトビア海軍のArhibalds Spāde(アルヒバルズ・スパーデ)大佐だ、機雷の敷設状況はどうなっている?〕

「こちらは掃海艇“Virsaitis(ヴィルサイティス)“、現在は機雷敷設艦“Gryf(グルィフ)“の機雷敷設終了待ちですが、残り数分で敷設が完了すると見られます」

〔了解、敷設が終わり次第、機雷原に注意してリガへ帰投せよ。以上、リエパーヤ司令部、交信を終了する〕

 

 あらあら、リエパーヤのラトビア海軍司令部から進捗確認も入ったようでして?

 報告は“Virsaitis(ヴィルサイティス)“がやってくださるので彼女に一任して、わたくしは機雷原の情報が書き込まれた海図を使って帰投ルートを考えるとしましょう、仕事は分業にするのが大事でしてよ?

 この辺りは既に機雷原が構築されており、無事に通り抜けるには細心の注意と落ち着きが大事ですの。それを周知させておくのは、軍の規定に記述されているというのもありますが、それ以上に同じ小国の艦娘仲間が轟沈するところを見たくないというのもありますわ。

 ポーランド艦娘を除いたわたくし達は、吹けばあっという間に消え去ってしまうような小国の艦娘ですが、だからこそ大国の艦娘とは違う強みがある………はずだと思いますの。

 わたくし達は“前世“では祖国の艦船として戦う機会などありませんでしたが、“今世“ではしっかりと祖国の為戦う機会が与えられたのは喜ばしいことなのか、喜ばしくないことなのやら………

 それから、大国に併呑されるなんてことだけはもう二度と起こってほしくないものですわ。二度も祖国の危機に何もできず、無力な傍観者で居続けたくはありませんの。

 

「はぁ………後は無事に母港へ帰るだけですわ、気は抜かないようにしてくださいまし?」

「Tak, 完璧にそのことは理解しているさ、もう二度と何もできずに沈んでたまるか………!」

「それはこの場にいるわたくしたち全員に言えることでなくて?もちろん、海中にいる“Kalev(カレフ)“と“Lembit(レンビット)“も同じ気持ちでしょう?」

『それはそう』

『また大国に併呑される、なんてことは何がなんでも勘弁願いたいよねー』

『ほんと、今度こそはあの熊に故郷を踏み荒らされたくないものだよ』

「同胞を遠くへ強制的に連行されて、極寒の土地で殺されるなんてことはもう二度と起こらないで欲しいね」

「あれは本当に胸糞が悪いものだ、クソッタレのモスカーリ共め………」

 

 おや、どうやらいつの間にか“Gryf(グルィフ)“の機雷敷設が終わったようですね、でしたらこれ以上ここに止まる必要も消えましたし、早いところリガへ帰投いたしましょう。

 被雷することのない安全な帰投ルートも出来ましたし、潜水艦娘の2人が合流するのを待ってから帰投致しましょう。今日は平和に仕事を終えられそうですわね?

 

「“Gryf(グルィフ)“、機雷の敷設は終わりましたね?」

「ああ、完璧に終わったよ。後は無事に帰るだけ、だろう?」

「当然だけど、機雷には気をつける、でしょ。“Smetona(スメトナ)“、帰投ルートは出来てる?」

「もちろん、わたくしはこの艦隊の旗艦ですので完璧で安全なルートを立てましたの!わたくしを褒め称えてもよろしくてよ?」

『お仕事終わりかー、それじゃあ急ぎで合流するねー!』

『“Lembit(レンビット)“!機雷には注意すること!』

『はいはい、わかってまーすよーっと』

「報告しておくけど、深海棲艦もロシアの艦娘も今のところの航空偵察じゃ見つかっていないから、追撃を受けずに帰れるよー!」

 

 エストニア潜水艦の合流を待つ間、警戒をしながら待っておりましょう。接敵しないことを祈って、装備の確認をしながら。

 おそらくあの2人は敵がいない場合、浮上して最大速力で合流してくれるはずでしょうが、敵がいた場合は厄介ですわ。

 こんな吹けば飛ぶような小艦隊、駆逐艦の一隻の襲来ですら致命傷になりかねない状況で、頼れない主砲に頼るしかないのはちっぽけな小国の艦娘の悲哀としか言いようが無いでしょう。でも河川砲艦とか旧式の艦艇持ち合わせていないところよりはマシだと思いますの。

 何せ、自由の風に吹かれながらこの美しきバルト海を航行することができるのですから!

 

 

 

 あら、どうやらエストニア潜水艦の2人も無事にこちらと合流できたようですわね。でしたらわたくし達はこのまま母港のリガへ帰投すると致しましょう。機雷の敷設が終わった以上、ここに留まる理由もないのですから。

 合流したお2人に潜航時の航行に必要な電力が溜まっているかを聞いて、援護を任せ。わたくし達はリガへ帰投し始めましたの。

 

「こちら“Prezidentas Smetona(プレジデンタス・スメトナ)“、“Kalev(カレフ)“と“Lembit(レンビット)“の合流を確認しましたわ。ところでお二方、充電はちゃんとできましたの?」

「もちろん、ある程度攻撃を凌いで逃げ切れるくらいには充電できてるよー」

「なら大丈夫ですわね、攻撃があると見られた場合、貴女達は潜航して魚雷を発射しての援護を一任いたしますの、よろしくて?」

「よろしくて、大丈夫だよ。魚雷発射管は注水さえして終えばいつでも射てるから、安心してね」

「それでは皆様。わたくし達の母港、リガへ急ぎ帰投しますわよ!準備はよろしくて?」

 

 わたくしが帰投前に一言添えると、皆様それぞれの言葉で答えてくださったので、わたくしもわたくしの愛する言葉、リトアニア語で命令を一つ。

 目的も命令も内容はただ一つ。わたくし達の母港、リガへ無事に帰投すること。ただそれだけですの。

 ですがそれさえできれば十分ですわ、何せわたくし達にとっては駆逐艦の1隻ですら大きな脅威なのですから!

 

Tas ir ideāls(完璧だよ)!」

Nie ma problemu, wracamy wkrótce do Rygi(問題はなし、早くリガへ帰ろうぜ).」

Vaenlasi pole, nii et tõmbame kiiresti üles.(敵もなし、早く引き上げよう).」

Ma jätan selle juhtimise sinu hooleks(先導は任せるよ).」

Flotilė pajuda Rygos link(小艦隊、針路リガへ). Misija yra „Grįžk saugiai“(任務内容は“無事に帰投せよ“) Štai ir viskas(以上ですの)!」

 

 

 

 

 

 

 

 さて、この任務の結末ですが、先に申し上げますとわたくし達は無事にリガへ帰投できましたの。

 帰り道は護衛のポーランド駆逐艦“Burza(ブルザ)“と“Wicher(ヴィヘル)“に加え、同じくポーランドの駆逐艦にして武勲と幸運に満ちた“Błyskawica(ブウィスカヴィツァ)“とその姉の“Grom(グロム)“が後衛についてくださったので、彼女らを頼りに安心してリガへ帰投できましたの。

 ………やはり、ポーランドのように予算がある国の艦隊は羨ましいですわね。ポーランドも決して海軍大国とは言い難いですが、リトアニアやラトビア、エストニアのような小国に比べれば、やはり強力な艦隊であるのには変わりありませんから。

 

 ………言ってて悲しくなりますわね、これ。どうしてこうなってしまったのでしょう?わたくしにはとんと分かりませぬが、とにかく早期にスウェーデン艦娘だけでもバルト海に戻ってきていただきたいですわ。ドイツもロシアも、どちらも信用できぬ存在であるが故に。

 

 

 

 

 

*1
そう、軽巡洋艦や重巡洋艦などではなく、お古のフランス製防護巡洋艦ですの!

*2
他のバルト海に面する国の航空戦力はどうなのか、ですって?  ………バルト三国と呼ばれる国々ではどこも一応航空機の国産化自体はできていますの、数も性能も足りておりませんが。そしてフィンランドは戦闘機こそ数はありますが、爆撃機が足りておりません。そしてそれ以外の国についてはもうとっくにお分かりでしょう?他のところへ出張っています、スウェーデン以外は

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