ドン…と
兄の部屋から鈍い音が聞こえてきた。
リビングまで響く大きな音に苛立ちを覚える。
兄の部屋を思い切り叩く。
「ねぇ!うっさい!静かにしろよデブ!」
中から反応は無く兄ごときが無視しているだろう事実に余計に腹が立つ。
「へー、無視するんだ。パパとママにも言っておくから」
そういい部屋を後にして、ある事ない事を両親に吹き込んでおく。兄が言われのない事で動揺する姿を思い浮かべると、つい笑みが零れる。
やはり兄を虐めるのは気持ちいい。
えもいえない快感が頭の中に湧き出してくるのが分かる。いい趣味では無いかもしれないが、気持ちいいのだからやめる気は無い。
むしろ最近は部屋にこもるようになり、ボロを中々出さない兄にイライラしていた。小癪な知恵ではあるが確かに効果はあった。加えて就職活動により家に居る時間が減ったのもあり苛立ちをぶつける隙が少なくストレスが溜まるのだ。
しかし明日はママとパパが家に来る。そうすれば部屋から出ない訳にはいかないだろう。家賃を払って貰ってる身なのだから当然だ。2人は事あるごとに兄を詰めるので見ていて面白い。
パパとママは私だけには優しいから気にしないが、兄からしたらそれだけで苦痛だろう。
「パパとママが来るの楽しみだなぁ…なんて言ってやろうかな…」
そう思いながら目を閉じた。
外からカラスの鳴き声が大量に聞こえてきて目を覚ます。時計を確認すると時刻は午前5時となっていた。目覚ましにしては最悪のそれに眉をひそめながら学校へ行く準備を整えて予習をしておく。
予習が終わり、午前6時半になった所で兄がまだ起きてこない事に苛立ちを覚える。いつもこの時間には台所に立って朝ごはんを作っているはずだ。冷蔵庫を開けても朝食どころか昼食さえ見当たらない。何も食べずに行けというか。これは妹に対しての立派な虐待と言えるだろう。何より兄という自分よりも下等な人間が楯突いて来た事に腹が立つ。
勇み足で兄の部屋まで行き扉を思い切り蹴る
「おい!早く起きろよクズ!昨日正論言われた事への仕返しとかガキすぎるから!早く出てきてご飯作れよ!」
返事が来るまで何度も扉を蹴り続ける。
返事がない事も加わり蹴る力はどんどん増していく。しばらくして扉の一部が凹むほど蹴っても反応が無いため一旦止める。
「…もしかして泣いてんの?いい歳した男が笑えるよね、妹に泣かされる兄とか死ぬほど恥ずかしいよ?それと今日パパとママ来るからこの事全部伝えるね。」
そう言っても反応すらない事に腹が立った。
何度かこういった事はあった。兄いわく体の震えと涙が止まらないのだというが、そんなものただの方弁だろう。こっちを心配させて罪悪感を感じてもらおうとしてるのがバレバレである。
まぁコレの後の兄はいつもより従順になるから許してやる。自分でも甘すぎる気がするが何事も飴と鞭だろう。鞭を打ちすぎて自暴自棄になられては堪らない。
「…とりあえずは許してあげるけど、今度同じことあったらパパに部屋没収してもらうから。」
そう優しく言っても反応すら見せない事にまたもイラつくが我慢しながら靴を履く。朝食をコンビニで済ませるため少し早めに家を出る。
いい事を思いついた。今日学校から帰ったらパパに全部話してしまえばいい。兄の裏切られたような顔が目に浮かぶ。
いい気味だ、私に逆らうのが悪い。