消失!タップダンスシチー海賊団   作:アテル

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前回のあらすじ

クッソ…badな目覚めだ…ヘアバンドが言ってたネタバレってやつか?ったく、アタシは夢になんか頼らなくてもトレーナーを手に入れるっての


Strike~獣の世界へ~

「…帰ってきた…のか?」

 

 空気が嫌に澄んでる。夢の中の圧迫された気配もない。気持ち悪い位のびのびしている空間に帰ってきていた。…だが気分は清々しい。背中を後押し…というよりは覚悟完了したという言葉が正しいだろうか。とにかく、もう怖がってはいられない。

 

「…絶対返してやるからな」

 

 夢を見る直前に確認していた2つのガスマスクを一つは装着、もう一つはヘアバンドに届けるために拾い上げ甲板へ走り出す。

 この靄を吸った途端意識が薄くなっていった。つまりこの靄には狙いがある。俺たちを眠らせ、『何か』するという狙いが。その狙いも…この船内の様子から大方想像できる。日記にあった船員が次々忽然と消えていく現象。その答えだ。

 甲板に出ると一寸先さえ見えない。薄暗い色に覆われたデッキを、手を伸ばし探り探り進む。

 

「お~い!どこにいる~?」

 

 返事がないことは織り込み済み。本当の目的は声の反響を確認すること。反響が近い。何か物がある…。

 

「冷たっ…鉄?」

 

 手が触れた時の感触で飛び退いてしまったが、恐る恐る確かめるとそれは鉄の感触だった。さらに近づき、雲がかったガスマスク越しに見えるのは傷だらけの紺碧。船の積み荷、コンテナだった。

 ここにいる。担当トレーナーとしての勘が騒いだ。

 

「…ヘアバンド、いるか?」

 

 慎重に、足元に注意して進む。彼女もここに倒れているかもしれない。心の糸を張って足を進める。

 

「………!ヘアバンド!大丈夫か?!」

 

 どうにか彼女を発見した。靄を吸ってしまったようでぐっすり眠ってしまっている。一通り状態を観察して外傷がないことに安心する。

 

「えへへ~タップ~負けないからね~」

 

 夢の中でタップとレースでもしているのだろうか。幸せそうに寝言を呟く彼女に微笑む。

 

「連れてってやるからな。タップと同じ舞台に」

 

 まだまだ発展途上な走り。でも…可能性がないわけじゃない。可能性は…チャンスは平等にあるはずだ。そのチャンスをどうにか実現まで持ってくのが…大人(トレーナー)の責務だろう。

 

「んっしょ…」

 

 ガスマスクを被せておぶる。筋肉引き締まった…ハッキリ言って重い体だが教え子と思えばなんのそのだ。…彼女が背負っている風呂敷には何が入っているのか。緊急時の今そんなの確認する余裕はないため後でたっぷり聞かせてもらおう。がさがさ音が気になって仕方がないし。

 慎重に急いで道標を辿りみんなの船に戻ることにした。

 

 

______

 

 

 

 気分の悪い目覚めだ。中途半端に眠気が残っているせいで頭が重くて仕方がない。頭を一振りして気持ち悪い感触を振り払う。すると何かが抜けていく感触がした。Hhh?これは…なぁるほどなぁ~。

 

「でへへ~もっとちゅーしよ~」

 

 すぐにアタシの横で眠っているツインテを抱き上げ、道標に従って走り出す。こいつ…boyfriendとdateでもしてるのか?

 

「ふぅ~っ!ふぅ~っ!」

 

 必死に息を吐きながら走る。吐いて、吐いて、吐きまくって空気を吐き出し続けて走る。いつもより滅茶苦茶な走りだ。勝つためじゃない生きるためのがむしゃらな走り。今ある酸素がlimitだ。補給は出来ない。吸わない様、吐いて走る。

 風を切る感触がいつもより鈍い。遅い。だがアタシはめげない。こいつを、アジトで待ってくれてるアイツらを、アタシらを信じて情報を集めに言ってくれてる仲間たちを守る為、走り続ける。

 霧を吸うな。この中に、何かいる。アタシらを夢に落とし込む、daemonが潜んでいやがる!

 

 

______

 

 

 

 ガスマスクをつけて走るのは結構キツイらしい。呼吸が苦しく酸素の吸引が万全にできない。吸引口がどんどん狭くなっているそんな錯覚を覚えながら、どうにか俺は靄を抜け出せた。

 

「はあぁっ…はあぁっ…クソっ…息苦しくて仕方がない…!」

 

 流石に苦しくてガスマスクを取っ払った。その辺に投げ捨てる。するとマスクの吸引口から何かが舞ったのが見えた。微細だが見えない訳じゃない。ホコリのように舞い散るそれらに、脳が過敏な反応をした。

 

「お前か!!」

 

 これがさっきの寝落ちの犯人だと直感する。検証をする余裕はない。そう、断定するしかない。今は熟考なんてしていられない。即断即決。靄が追ってくる今、求められているのはそっちだ。

 

「っ!!ヘアバンド!起きてくれ!」

 

 彼女のガスマスクを取っ払って少し体を揺らす。すると体の各所から小さな何かが落ちるのが見えた。それに伴ってヘアバンドの目がゆっくり開いていく。

 

「トレー…ナー…さん?」

「呼吸は正常にできるか?体に違和感はないか?記憶は飛んでないか?いきなりで悪いが、すぐ走れそうか?」

「ん…大丈夫大丈夫…ここは?」

 

 簡易的な確認を彼女に取る。返答がおおざっぱだが、それでも正常な状態だと分かれば構わない。起き上がる彼女に手を添え補助を行う。起きて数秒、まだ完璧な目覚めではないのかぼやけた反応だがすぐに頭を軽く振ってキチンと覚醒する。

 その様子をじっと見つめていると、俺の雰囲気を感じ取ったのかヘアバンドは神妙な面持ちで頷いた。その時、首を撫でるような冷気と湿気、そして恐怖を感じ取った。冷汗が伝う間もなく振り返ると靄がすぐそこまで追いかけてきている。

 

「顔を覆うんだ!」

 

 咄嗟にガスマスクを渡し再び装着させる。動揺する事無くヘアバンドが応じてくれる。…肝っ玉が強くなったな。

 感心も他所に自分の分も拾って装着したと同時に靄は再び俺たちを覆った。ガスマスクも相まって視界は悪いが、何とか方向は分かる。手を引きつつアジトの方角を目指そうとする。

 

「待って!」

 

 するとヘアバンドが険しい声色で俺を制止する。何かいる。そう続けた彼女の耳は激しく動いていた。担当がそういうなら、そうなのだろう。日々の忙しさで耳掃除をサボった為か、すこぶる悪い自分の耳に嫌気を覚えながらもじっとヘアバンドが見ている方を睨む。

 すると奥で何かが動いているのが、靄の動きから読み取れた。空気を掻き分け、何か来る。

 

 

______

 

 

 

 FOOOO~!!Fogよりアタシの足の方が速い!3分もすればもう霧を抜け出し見えなくなるまで追い越せてしまう。安心のせいか足が速度を緩め、息を大きく吸い始める。澄んだ美味しい酸素が肺の中に入ってきて熟成され切った二酸化炭素を外に押し出す。

 princess抱きをしていたツインテを地面に置き、軽く肩を揺する。すると彼女の口と鼻から何かが漏れ出し目を覚ます。

 

「んん…あれ?かーくんは…?」

「boyfriendに会いたいなら頑張って帰ることさ」

「タップ…あ、そっか。なんか急にモヤモヤ来て眠くなって…」

 

 HA!寝坊助もようやくお目覚めみたいだなぁ!頭を軽く揺さぶり現状を確かめていくツインテに背を向けしゃがむ。何をアタシがしようとしてるのか、説明せずとも分かった彼女はすぐにおぶられてくれた。Ah~こっちの方が走りやすくて助かる!

 

「行くぞツインテ!」

「おっけ~任せたタップ!」

 

 風を切ってまた走り出す。さっきの緊迫感と違って随分気楽なランニングが心地いい。たまにはおぶって走るのも楽しいな。YOHO!今度トレーナーを乗せてみるか!

 

Fear me you lords and lady preachers!(恐れろ神々女伝道師たち!)I descend upon your earth from the skies.(アタシは空から舞い降りた)I command your very souls you unbelievers.(不信心者よ命令だ!)Bring before me what is mine The seven seas of Rhye!(ライの七つの海をアタシに差し出せ!)

「物騒な歌詞!」

 

 城はもうすぐそこさ!

 

 

______

 

 

 

 ピリついた空気。ヘアバンドが耳をせわしなく動かし何かの動きを追いかける。間違いなく近づいてきている…。靄の中に動く黒い影…いる…来るっ!

 

「トレーナーさんっ!」

 

 彼女に抱きかかえられながら横に飛び何かを避ける。こいつ、素早いっ!

 

「逃げるぞっ!」

 

 生半可な対応じゃどうにもできないことを悟り撤退を指示する。立ち上がり走り出そうとした瞬間、頭が急激に重くなり足がふらつく感覚を覚えた。

 まずいこれ…たおれるっ…。

 

「トレーナーさん!?」

「っ…早く…逃げ…」

 

 体に上手く力が入らず、地面にへばりついてしまう。舌も何か変なようで言葉が途切れ途切れになる。俺の体に何か異変…なんだ…?何が原因だ?不摂生な生活だがこのタイミングで病気が発症するほど進行していたか?いやでもこの前の健康診断は大丈夫…。というかもっと別の要因だろう。

 この空間で……っ!もしかしてさっきのホコリが何かっ!

 

「っ!いっっっっ…」

 

 何かが足から伸びてくる!素早く巻き付いてきたそれが、先の黒い影の正体なのだと瞬時に悟れた。悟れはしたがどうにもならない俺の体。これ以上の巻き込まれはまずい。全滅だけは…全滅だけは防がなきゃならない!

 

「早く行け…行ってくれ…」

「ダメだよ!トレーナーさんも一緒!タップに任されてるんだから…」

 

 ぐいぐいと腕を引っ張るが、引きずられることもなく不動のまま。足に巻き付いた何かの感触におびえ、精魂がどんどん抜けていく脱力感に苛まれる。舌が回らない、どこも動けない、無い物尽くしの現状から何かが抜き取られていく。

 ヘアバンドにはそれがキチンと視認できているようで、彼女の腕の力が増し動きが焦る。痛覚が鈍って来たのか、引き裂かれそうなはずなのに痛みはあまり感じない。ただ不思議と…安心感は…感じていた。大丈夫。何とかなる。だから今は…この子を信じる…!

 

「俺を…叩き…つけてっ!」

「えっ!?」

「上…半身…だけでいい…からっ!持ちあげて…地面にっ!」

「う…うん!…えいっ!」

 

 何を狙っているか意図が読めないだろうに彼女は実行してくれた。掴んでいる手を作用点に、波の要領でふわりと上半身を跳ねさせ、地面にたたきつける。肋骨に鈍く痛みが広がり肺の空気が乾いた咳として外に吐き出される。頭部は激しく揺れ視界が回る。

 乾いた咳の後、ガスマスク内に息苦しさがした。ビンゴ、これを吐き出したかった。

 

「ぶぅっへぇ!…ぐへぇ」

 

 俺たちを眠りに落としそして俺の不自由を奪った張本人。ヘアバンドの体から出ていったあのホコリ。それがない今、俺の体は自由だ。

 

「ヘアバンド、その落ちたやつ…本物だね?!」

 

 さっき俺を叩きつけた時、衝撃で彼女の風呂敷から何かが零れ落ちたのは見えていた。意識が明瞭な今ならそれがハッキリ見える。銃だ。やけに金属の重厚感が生々しい。トイガンやエアガンのようなちゃちい物じゃない。希望的観測も相まってか、そう判断し手を伸ばす。

 持ち上げれば1キロにも満たない命の重み。咄嗟にスライドを動かし残弾を確認する。0。新品か?

 

「マガジン頂戴。細長いの!」

 

 上体を捻り足に巻き付く物を確認する。蔦…いや、根か?植物の根っこのようなものが足に絡みついていた。太さは…多分3㎝ほど。…この距離ならまだ狙えるはず…はずだ。銃なんて初めてだけど、やるしかない。

 後ろに差し出していた手にブツが乗る。やっぱり回収していてくれたようだ。マガジンを込めないで持ち運びとは…銃拾ったことだけはお叱りだけどそこのフォローしてやらないとな。

 すぐにマガジンを装填。スライドを動かして弾を込める。

 

「ヘアバンド耳塞ぐっ!…当たれっ!!」

 

 捻っている関係上狙いは少し震える。頑張れ俺の体幹。最悪足をぶち抜いてもいい。その心構えで二回トリガーを引く。覚悟?違う決意だ。今更覚悟なんているもんか。…ようやく見つけたタップへの気持ち、無念で終えたくないんだよ!

 弾はそれぞれ芯を捉えることなく根の両端を少し削ってどこかに消える。だが十分だ。次で芯をぶち抜けば…あるいは。

 

「これで…ラストっ!」




怪奇データベース

細菌怪獣 フォテリアグ
身長:0.5㎜
体重:500㎎
細菌状の小さな怪獣。暖かく湿った環境を好み、最適の環境は生物の体内。脳に侵入すると都合の良い夢を見せ覚醒の阻害を行い、プレッピーと宿主の結合を感知すると結合箇所からタンパク質分解を開始する。粘膜を介して人の体内に侵入をしてくる。普段は霧の中で生活をしており、その外に出ると湿度が足りず死滅してしまう。

植物大怪獣 プレッピー
身長:54m
体重:7万4千トン
胸から腹にかけて巨大なポピーのような花が咲いている怪獣。右腕は根のような形状をしており、鞭のように操ったり、獲物に巻き付けて栄養を吸収する。右腕はポピーのつぼみのような形状をしており種子型の弾丸を発射し外敵を攻撃することができる。目は無く、フォテリアグの香りで獲物を見ている。特に捕食対象はフォテリアグがタンパク質と結合する時発するフェロモンで判断している。胸の花から催眠性の霧を噴射でき、大抵霧の中でフォテリアグと共に生息している。

Q.なんでトレーナーとかタップはフォテリアグの睡眠耐えたん?
A.愛はね、万物に勝るんだよ
 マジレスするならみんなも夢見てる最中起きなきゃって思ったら何とか起きれるでしょ?レム睡眠なんてそんなもんよ

これにウマ娘タグをつけていいんですか!?
SF(少し不思議)要素が増えてきましたねぇ~。ウルトラQをみんなも見よう!!
ご拝読ありがとうございます。お気に入り登録評価感想お待ちしております!
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