消失!タップダンスシチー海賊団   作:アテル

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前回のあらすじ

トレーナーさんに言われてパラシュート何個も作ってるけど…ねぇ、トレーナーさん!こんな感じで…って寝てるし

そっとしておいてくれ。航海士殿だって、休息は必要さ

ちぇ~、2人でイチャイチャしちゃってさ~


Go home!~未来へ~

 天空に浮かぶ真っ白な大地。雲、なんて可愛いものだったらどれだけいいかと思いながら、トレーナーは自身を見つめる視線らと目を合わせていく。背中に括っているのは皆の力を借りて作ったパラシュート。紐を引いて展開なんて器用な機構は搭載できない。ただ、物理を丁寧に考えれば別アプローチで出来ないこともない。

 食料補給に使った防災リュック。あれを再利用し、パラシュートの展開を手助けさせると同時に身体への括り付け、落下の勢いで展開を補助させる。もう正直危険極まりないガバガバ作戦だが、準備するには無茶が過ぎるんだから仕方がない。

 サバイバルナイフで地面を貫く。勢いよく突き刺せば、奥まで貫通しきった感触が手に伝わる。缶切りの要領でくるっと円を描くように切れば、そこに大きな穴が開いた。

 

「飛び込む!!!」

 

 順々に皆を飛び込ませる。パラシュート展開時に絡まないようにタイミングを開けながら、どんどんダイブさせる。

 

「やああああ!!」

「うぉおおお!」

「ふぉおおおお!!!」

 

 十人十色な悲鳴を散らしながら落下している様を見つめながら全員を見送り自分も飛び込む。雲海の中は黒い雲が辺りに満ちており、嫌な予感が過る。瞬間、雷鳴が鳴った。

 

「みんな大丈夫か~!!」

 

 激しい気流では声も満足に届かない。視界に入る彼女らであろう点に声をかけても反応は帰ってこない。空気の波に体を持っていかれながらもどうにか姿勢制御をし降下していく。

 

「うえっ!」

 

 自分の意識でパラシュートを開くなんて機構は積んでいないため、落下の速度が上がれば勝手にパラシュートが展開される。激しい空気抵抗に体は引っ張られ、ついつい情けない呻き声が零れ落ちる。肋骨がジンジンする…。

 惑わされながらもパラシュートの空気抵抗に身を任せふわふわ漂っていると突然、雲の流れがおかしくなる。先ほどまで辺りをただ漂っていた雲が突如周囲に集まり渦を…竜巻のような形を成していく。竜巻のような…否!これは竜巻だ!!

 

「うわああっ!」

 

 渦を描くように回る突風に釣られ雲が集まりその中を俺たちは振り回される。遠心力とがよくはたらいているお陰か、背中がすごく痛い。リュックからパラシュートがちぎれそうだ。眩しいフラッシュが目をつんざく。何度も繰り返した焚かれるフラッシュに段々目が慣れ、ゆっくりゆっくり目を開くと竜巻の底に景色が見えてきた。

 

「あれは……府中…?」

 

 トレセン学園や東京レース場が見える。あれは間違いなく府中市だろう。靄が掛かっているかのような、ぼやけた景色。フラッシュはその景色から焚かれているように思える。

 帰りたい。その気持ちが逸って手が伸びる。竜巻の底へ。帰りたい景色へ。

 すると手の先に反発が返ってきた。風…いや違う。もっと硬い…壁みたいな…。

 

「ただの高所じゃなかったのか…!ぐっ…届けえっ!帰らせろ…俺たちをっ…帰らせろぉぉ!!」

 

 火事場のバカ力というやつは働くようで、大声を張り上げながら指を食い込ませ、その壁を引き裂いていく。こんな理不尽へ放り込んだことへの怒りを込め。皆を連れて帰るんだという使命感を込め。

 

「trainer!」

「タップ…一緒に、おおおお!」

 

 隣に立ってくれるタップへの感情を込め、壁を引き裂く…!!

 

 

______

 

 

 

 湿り気のある空気が肌を撫でる。窓から微かに光が差し込み、瞼の先を白くぼやけさせる。ふらつく頭を整理し、酸素を深く吸い込み、乾いた口から唸り声を出し体のエンジンスターターをかける。

 先ほどまでの事象を思い出そうとすると、ぼんやりした思考が段々クリアになる。飛び降り、パラシュートを開いたかと思えば再び目がつぶれそうなフラッシュと内臓が飛び出そうな勢いの急回転に巻き込まれ…。ぼんやり周囲を見れば、そこは涙の別れをした後のアジト。なにも倒れていなければ、パラシュートのために取り払ったカーテン類なんかも無事に残されたままだった。

 

「んあ…あれ…どこここ…」

 

 気怠さと軽い混乱に脳が戸惑い、変なことを口走る。最も、それをつついてくれる仲間たちは皆同じように眠りについているが。デジャブを感じながら外の様子を確認しようとした時、尻ポケットに入っている携帯が揺れる。

 

「うおっ…何件連絡来てるんだこれ」

 

 画面にずらっと表示されたショートメッセージの山々に目を丸くしながら、一番上に表示されている人へ慌てて電話をかける。

 数コールの後、聞きなじんだ声が電話口から問いかける。

 

『…!繋がった…!タプトレさん?!ご無事だったんですか?』

 

 激しい口調に思わず気圧されながらも、その迫力の発端を尋ねるべく質問を返す。

 

「無事も何も…えっと…たづなさん、何かあったんですか?」

『何かって…昨日からずっと連絡も着かなかったので…。何より、タップダンスシチーさんらも昨日から連絡が取れないと報告がありました。昨晩のこともありますし、事情はお察ししますが…。とりあえず、生徒らは無事なんですよね?』

「えっ…あっ…はい。一応は…」

 

 何やら随分焦った口調のたづなさんに圧倒されながらも、床に眠る教え子らに視線をやる。キチンと呼吸はしている様だし、これと言って大慌てするような事情は無いように思える。

 そもそもたづなさんが昨晩の何に大きく慌てているのかが分からないし。

 

『良かった…。一先ずは安心しました。詳しい説明は学園で聞きますが…どこでどんな状況だったかは教えていただけますか?』

 

 あの不思議な空間での出来事は夢かとうっすら思っていたが…別にそんなことない…のか?現実だとするとアジトがそのままであることに矛盾が生じるし、夢ならば丸一日以上この場で皆と眠っていたことになる。

 …どっちで説明しようか。突飛な、夢にも思われそうな話で説明するか、それともある意味病院へ行かされそうな話で説明するか。…いや~この時期に睡眠障害とか疑われて病院行け言われたくないしここは馬鹿正直に話そう。

 

「あ~…えっと…その…雲の上にいたというか…急にトレーニング施設が上空に飛ばされちゃって…」

「タプトレさん…お疲れ…なんですか?確かに最近タップダンスシチーさんのレースで忙しそうにしてましたが…」

「違っ…!本当!本当のことなんです!!信じてください!」

 

 呆れ混じり、心配混じりの声色に焦りからかこちらの声が大きくなる。が、既に早合点をしてしまった彼女は学園で話は聞くからと理事長室へ向かう為電話を切ってしまった。くっ…本当なのに…。

 

「uhn…What's happen…?」

 

 びっくりして声を荒げてしまったが為か、タップが目を覚ます。少し苛立った声色を立てながらも目をこすりゆっくりこちらに向かって来る。

 深めに眠っていたのか…?注意が移り変わって呆けている内にタップの腕がこちらに伸び、首をがっちりとホールドする。

 

「タップっ!?」

「ん~」

 

 自身の抱く恋慕を自覚したとて、未だ恋人にはなってない現状。ハグなりの密着行為はそろそろ慣れてきたが『コレ』にはまだ慣れない。というか恋慕を自覚した分よりドキドキするかもしれない。

 顔を朱に染めてあたふたしている内にタップの潤った唇が俺の頬に触れる。

 

「…Good morning、trainer」

「タップ…」

 

 不敵に笑う彼女の瞳に目線が吸い取られる。極限状態じゃそんなの意識する余裕なかったが、こうして間近で見つめられるとその美麗さに心が遠くなっていく。

 そんな視線を感じたのか、タップはわざとらしく顔を横にし頬を見せつけてくる。暖かな白さの肌に視線が釘付けにされる。…ここでやらなきゃ、男が廃れる…ってやつなのだろうか。

 正直もう冷静さの何割かは何処に消え、勢い任せになっている。ごくりと喉ぼとけを鳴らしゆっくり唇を彼女の頬に寄せていく。タップに、頬とは言えキスをするのはこれが初めてだ。…あ~…、あの夢はノーカンで。夢だから。

 緊張して少し体が震えている…かもしれない。自覚できない。

 

「…♪」

 

 ご機嫌そうな彼女を焦らしすぎないように、そっと首に手を回し寄せる。匂いがする。少し籠った、いい匂いが。時折タップが俺の側にわざとらしく近づいてくる理由が、少しわかった気がした。ここまで近づかなければ嗅げないこの甘美な匂いが愛しい。ここまで近づかなくてもこれに似た匂いを堪能できるであろうウマ娘の嗅覚に嫉妬を覚える。

 覚悟を決め視界を閉ざし、首を伸ばしていく。緊張はいつしか、興奮に置き換わっていた。

 

「んっ…」

 

 そっと唇を彼女の頬に落とす。湿気ったリップ音が鳴り、柔らかな肌がプルンと揺れる。どちらの声か。途切れるような声が漏れ出た。

 唇を離し、目を開ければにっこりと笑ったタップが虹彩に飛び込んでくる。時折…というより、何度か見せてくれていたが…改めてその美貌に心がときめく。こんな言葉を使っている時点で何を今更と思うが、どうやら俺は…自分が思っているより深く深く…タップダンスシチーに惹かれているのかも…しれない…。

 

「うっそ…わぁ…」

 

 視界がほんのりぼやけ、頬が緩んでいた時…聴覚がシャッター音と微かな感嘆の声を捕えた。慌てて音の方を振り向けば、そこには顔を赤くした仲間らが視線くぎ付けのままカメラを構えている。

 …見られた上に撮られた!?

 

「皆っ!?何撮ってるのちょっと~!」

「だって~!」

「ダメダメ消して!あっこら逃げない!タップ…!腕解いて!」

 

 

______

 

 

 

 空はいつしか夕暮れに染まり、雲が陽光を浴びて朱を帯びていた。どうやら本当に丸一日、あの場で皆で眠っていたようだ。にしては不思議なのは、全員が同じ夢を見ていたこと。全員があの不思議な空間での大冒険を経験していたのだ。

 こればっかりは偶然で説明をつけれない。ニュースを見れば昨日から。具体的には、昨日の15時くらいから記録的豪雨になっていたそうだ。俺がアジトに行った時にはまるで雨が降る気配のなかったのだが…。

 あれこれ思案しながら空をぽけーっと眺めていると、雲に違和感を覚えた。中央から広がるかのように雨雲が散り散りになっていっている。その中央とは我らの頭上、もっと言うならアジトの真上にあるのだ。そしてそこから東へ西へ、縦に長~く雲が伸びている。これが雨雲だった…のだろう。本当に?

 

「…トレーナーさん?」

 

 急に神妙な面持ちになった俺を案じてか、ヘアバンドが俺の顔を覗く。が、それもお構いなしか。確信の赴くままスマホの検索エンジンをフル稼働さえる。検索をかける言葉は、『TBF Avenger』と『Produced 1941』。この二つだ。

 …おや?当然先の大戦に関する情報が舞い込んできたが、それ以上に目を引く情報があった。

 

「バミューダトライアングル?」

 

 小学生以来耳にするその単語に驚きを出しながらも記事を読み進めていく。どうやら、この『TBF Avenger』という期待が魔の三角地帯…バミューダトライアングルで消息不明になった…とのこと。その機体の製造年が、1941年…のようだ。

 …つまりあの空間はバミューダトライアングル?いやいや、いくら何でも突飛が過ぎる。そもそもここは日本だ。バミューダトライアングルは大西洋じゃないか。

 

「…!」

「あれ?どしたの?」

 

 その時、サングラスの耳がピンと立ち足取りが止まった。この反応がタップ、ヘアバンドとウマ娘組に次々と起こったのだ。

 疑問に思い尋ねれば皆一様にして鳴き声がすると口を揃える。ヒトの聴力じゃ捉えきれないほどの小さな鳴き声?不思議に思い周囲を見渡す。鳥や小動物さえ、見当たらない。雨上がりなのだ。まだ外で活動している生き物もそういるまい。どんな鳴き声だったか、と聞けばそれは地響きを思わせるかのような伸びるような声だったらしい。具体名での例えすらないような特徴的な声。一体何だろうかと唸り顔を天に向ければ…いた。幻視かもしれない。勝手な連想から来ているのかもしれない。でも…。

 

「あれは…?」

 

 雲の先端が、動いた。まるで龍が咆哮を上げるかのように口を大きく開く。…ふと、自身の足に絡みついてきたあの蔦を思い出す。あの時の恐怖感。あの威圧感。それを僅かに感じた。

 ふと、膝を触る。ボコッと凹んだ傷跡の存在が手に伝わってくる。傷は確かにある。つまり現実の出来事だったのだ。

 

「何々?」

「ほら、あの雲の…あそこらへん。頭みたいじゃない?」

 

 指を指せば、皆一様にそこを見る。叫びを轟かせた雲の龍は、雲の真ん中くらいにある大きな亀裂を種として段々と霧散していきその形を空に馴染ませていく。記録的豪雨を産んだ、空に浮かぶ水龍はいつしか橙色の空に溶けて消え去った。

 …死んでしまったのだろうか。科学が発展して、オカルトが心理現象からエンタメへと変わっていくように。摩訶不思議の説明を生き物でなく理論で説明していくように。あれほど巨大な怪物さえも、人の知恵に破れ時の中に埋もれていく。…いや、あれもきっと生きていた。なら、物より獣と称してあげよう。…怪獣と。

 やがて誇らしさと切なさを抱えた胸は、一つの言葉を生み落とす。

 

「バミューダ…」

「What's?なんだいそりゃ」

「…怪獣の名前。さ、帰ろ帰ろ。みんな待ってる人がいるんだし」

 

 僕らをあの空間に飲み込み喰らおうとしていたであろう怪獣ヘ別れを告げ、確かな日常に足を踏み出す。河川敷を離れ、街を歩き…。所々の水たまりを笑顔で跨ぐ。多摩川に架かる橋を渡りゆく。すれ違うまばらな車通りに先刻まで降り注いでいた雨の強さを思わせる。

 前を歩く教え子らの楽しそうな談笑に釣られ笑みが零れる。帰ってこれて良かった。極限状態からの脱却を何度目かの意識付けさせられる。

 

「タップ!」

 

 気づけば声を飛ばしていた。数メートル離れていても、俺の声をキチンと聞き取った耳は大きく動きながら俺の方を向き変える。ふわりと揺れた髪に、俺の心も連動する。

 何故だろうか。いつも以上に美しく見える。おかしいな。君を見ていると心が鳴りやまない。不思議だな。こんな胸のときめき、いつぶりだろう。若いころ抱いて、それっきりで…。

 

「…なんだ、航海士殿♪」

 

 ボーっとしていると呼び止められた。俺はどうしてしまったのだろうか。そもそも今だってどうして彼女を呼び止めたのかもわかっていない。

 言葉が詰まる。どうしようか。早く何か言わねばならない。えっと…俺は…。…少し息を吸って、言葉を紡ぐ。思うがままに。

 

「タップ。今週末空いてる?デートに行かないか」

「What?」

 

 君が欲しい。君の人生を、俺にくれないか。

 

「「トっ、トレーナーさん!?」」

「デートだよデート。二人っきりで出かけようって言ってるだけだよ」

 

 幸せにする。俺の人生をかけても、必ず君を幸せにする。想いが内で燃え上がる。

 

「だけなわけないよねぇ~」

「な」

「AH~いいぜ、トレーナー。アンタに何があったか知らないが、アタシを口説こうって言われてんだ。ノらない方がおかしいさ」

 

 ありがとう、タップ。

 

「タップならそうしてくれるって思ってたよ」

「だがなトレーナー。アタシはアンタのお誘いだから乗ったんだよ。それは、忘れないでくれよ」

「っ!…ああ」

 

 新たな決意を胸に俺は君と一緒に、夕焼けを歩く。

 後日、大西洋上で80年ほど前に行方不明だった戦闘機が、そしてアフリカ沖で60年ほど前の貨物船が発見されたというニュースがひっそりと報じられた。




最終回です。なんで…こんな所まで来てしまったのだろう。当初の予定が2万字行かないくらいの短編は流石に見積もりが甘すぎる

はいっ…え~トレタプはいかがでしたでしょうかもっと世間はトレタプをすこれ。にしてはトレタプの雰囲気がやけに甘くないですかね。そうかも…。こいつこの短時間で甘いって二回使いましたよ甘党がよ
でもよ親父さん、タップが寝起きに頬キスするのは公式設定だぜ?えっっっっっ!!!!

今思えば普通に軍事物資運ぶ船あったんだから空挺部隊用パラシュート拝借すりゃいいのに何故作る段階を…?初期構想だとクソでかパラシュートでアジトごと堕とそうとしてたからですね。頭のねじ外れてたんか?
SFとしての反省点としては、設定を語らせられるキャラが0だったことがまずかったなぁと。察しの良さとかでごり押した部分が多いので多分皆様に上手く話を伝達しきれてない…気がします。超反省

何はともあれ、皆さまこれまでご愛読ありがとうございました!また別の作品でお会い出来たら!

最後の怪奇データベース

雲海怪獣 バミューダ
身長:不明
体重:不明
雲状の巨大な怪獣。普段は世界中を漂っているのみで害はない。しかし気まぐれに標的を定め竜巻を使って体内へ吸収する。体内は異次元空間であり、現実とは隔離されているが竜巻を介して繋がることができる。所謂バミューダトライアングルの正体であり体内に吸収しプレッピーらに与えた人間の数は数知れず。巨大な見た目に反して脆く、タップダンスシチーとそのトレーナーたちの活躍によって霧散し死滅した。
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