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「私達もそろそろ出るわよ」
「うん、準備オッケイ!」
朝食を済ませたユウキ達は出勤するための支度を済ませていた。二人の職場は殆ど同じ場所だ、最近ではこうして二人でギルドハウスを出るのが日課になりつつあった。
「りょーかい、それじゃあ出発!」
右手の親指を立ててこちらに向けてくるユウキに頷きながら、キャルは少し楽しそうにしながらギルドハウスの扉を開けた。
(悩み事とかあったらこのタイミングで聞けたりするし、単純にこいつと話すの嫌いじゃないから二人には悪いけど気に入ってるのよね)
尻尾をご機嫌な様子で振りながら、キャルはほくそ笑む。先程自分の気持ちは墓場まで持って行くと行っていたが、それとこれとは話が別だ。こういう役得なものは全力で堪能させて貰う。
(まぁ、私は奉仕活動って事だから色々と厳しい目も向けられるし、しかもメンタルケアとか頼める立場でもないし、しっかり仕事こなすためにもそこら辺は目をつぶって欲しいわね)
別に誰に責められているわけではないが、心の中でそう釈明をしながら晴れ渡る青空の元軽やかな気持ちでキャルは町に向かった。
「あれ、何かあったのかな?」
「さぁ、なにかしら?」
町に着くと、何やら路地裏の辺りに人だかりが出来ていた。よく見るとナイトメアの団員も周りに集まってきている。
どうやら、あまり良いことではなさそうだと感じつつ、気になったユウキ達は野次馬の方に向かった。
「あの、なにかあったんですか?」
「あぁ、どうやら兵士が襲われたらしいぜ、俺も現場はちらっと見たがあんまり酷いもんだったから、兄ちゃんたちは止めといた方が良いぜ」
野次馬の一人の男に、ユウキが尋ねる。
男は苦々しい表情をしながらそう説明すると共にユウキ達に向かってそう警告した。
成る程、殺人事件がとくれば人だかりが出来るのも納得だし、確かに見てて気分が良くなるものではないだろう。
何やら壁に赤い色で文字らしきものが書かれているように見えるが、もしかして血で書かれたものなのか?
「あまり良いものじゃないみたいだし、行こうかキャルちゃん・・・キャルちゃん?」
呼びかけても返事がないのでユウキが横にいるキャルの方を見ると、彼女は目を大きく見開いて絶句していた。
「キャルちゃん!?大丈夫!?」
明らかに普通ではない彼女の様子に、ユウキは思わず彼女の肩を強く揺る。事件現場に釘付けになっていた彼女は、ふと我に返ったようにユウキに視線をうつし「えっ?」と驚いたような表情を見せた。
「大丈夫?」
「え、えぇ、大丈夫、私は大丈夫だから」
口ではそう言っているが、明らかに動揺しているし顔色は目に見えて悪くなっている。
獣人はヒューマンより五感が鋭い、もしかしたら自分には見えない何かかが見えてしまったのかも知れない。
「とにかく、ここから離れよう」
そう思ったユウキは、とりあえず彼女を現場から話す事にした。
「何か見ちゃったの?」
「・・・」
ユウキがそう問いかけるがキャルは何も答えない。様子がおかしいのは明らかなのであの現場でキャルが何かに嫌なものを見てしまったのは確かだろう。
その証拠に彼女の体は小刻みに震えていた。
「・・・今日は休もう、話せば分かって貰えるよ」
「だめ!」
キャルの様子を見てそう提案するユウキだが、それに対してキャルは突然大声を出してそれに反発した。
「私のは、あくまで罰なんだから・・・自分の都合で休むなんてしちゃ駄目なの」
「けど・・・」
「私は大丈夫だから、行きましょう」
そう言いながら、キャルはユウキの手を強く握る。彼にすがるようなその様子を見て、ユウキは彼女の言っている事を否定することが出来なかった。
それから数時間後、奉仕活動を終えたキャルは職場を後にして今朝野次馬が集まっていた場所に再び訪れていた。
こんな日に限って早く作業が終わってしまったのは幸か不幸か、憂鬱な気持ちのままキャルの足は自然とこの場所に向いていた。
「はい、下がって下がって!!」
現場を覗こうと近寄ってくる野次馬をナイトメアの団員がおしとどめている。
その後ろでは、他の団員が様々な機材を使って現場を調べていた。
「・・・」
その後ろで、現場を遠目から見つめていたキャルは少し周りを確認し終えるとその場を後にした。
(流石に、昨日の今日で現場に現われるなんてことはしないか)
「くっ!!」
その時、突然胸がドクンとうねり、脳裏にかつての主の後ろ姿が浮かんできた。
「今のは、なに?」
胸の奥で何かが蠢くような感覚がする。これは何か体に異変が起きているのか、それとも何か過去への恐怖が見せる幻惑なのか・・・
(まあ、あんなの見たら無理もないか)
自身に起こった異変に、そう理由を付けて納得するとキャルはその場を離れた。
今朝路地裏の壁、そこにはとある文字が堂々と書かれていた。
『次はお前だ』その言葉と共にその隣に記されていた十時のマークキャルには見覚えのある。
かつて、自分と同じく皇帝に遣えておりその余りの罪と皇帝失脚後も罪を重ねたことで今もなお追われる身にあるかつての同僚、ハイドが使っていたサインだ。
次はお前だ。誰に送ったメッセージだったのか、まだ分からないがキャルはあれが自分に向けられたものであると確信していた。
そもそも、あのマークを知る人物というのは限られてくる。その上、皇帝から直接依頼を受けて仕事をこなしていた彼とそれなりに交流がある人物は、自分しかいなかったからだ。
(たぶん、怨まれてるんだろうな)
同じ陣営にいながらも、運良く大きな処罰を逃れた自分と今も直追われているハイド、彼の性格からして自分が怨まれていることはキャル自身も理解はしていた。
「覚悟はしてたけど、いざその時になると結構来るわね」
彼の存在は認知してはいたが、それでも今の平和な生活に浸りたくてどこか記憶の片隅に追いやっていたのかも知れない。無意識に震える自分の手に視線を下ろしながら、キャルは苦笑いをした。
「ったく、なんでこんな日に限ってあいつは鋭いのよ」
彼との決着は自分の過去への落とし前だ。そんな個人的な都合の為に、ペコリーヌ達他の仲間を巻き込みたくはない。だからこそキャルは今朝ユウキに問いかけられた時も何も答えずいたのだった。
「来るなら来なさい」
震えを手を握りながら、誰に聞かせるでもなくキャルはそう小声で呟く。
「へぇ~覚悟は出来てるって訳か・・・」
「っ!!?」
突然、彼女の耳元で低い囁き声が聞こえたと思うと背中に何か鋭いものが当てられる。
「騒ぐなよ、キャルちゃん」
「ハイド・・・やっぱり来たわね」
背中を向けながら声の主に向かってそう語りかけるキャル、それに対して声の主、ハイドはフッと鼻を鳴らすと
「ああ来たぜ、お前を終わらせな」
と冷たい声で言い放った。
「そう、やるならやりなさいよ。今私を殺したらあんたも終わりだけど」
「それも悪くねぇな」
脅しのつもりでそう言うキャルに、ハイドはなんともないと言った様子でそう返す。
「けどまあ、そう簡単に終わらせるのはもったいねぇ。お前とはガチでやり合って決着付けてやるよ」
そう言うと共に、ハイドはキャルの手に小さなメモを握らせる。
「他の奴に言ったら・・・お前は言わなくても分かるか、じゃあそういうことで」
その言葉と共に、キャルの後ろにぴったりとくっついていた気配はすっと消えていった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
突然襲ってきた余りの緊張感の影響でキャルは息を荒げながら地面に膝を突いた。
背中に当てられた鋭い感触と、ハイドの冷たい言葉が今でもまだ体の中に残り、キャルの心にべったりとした恐怖を残し続けている。
「あれっ?はは、立てないな」
震えが止まらず、立ち上がれなくなった自分に気がついて、キャルはそう苦笑を漏らした。
正直このまま逃げ出してしまいたい、しかしそうすれば自分の周りに被害が出てしまうし、例え隠れてもハイドは必ず探し出してくる。
ここでやるしかない。ずっと考えてきて、覚悟もしてきた。しかし、いざとなると死への恐怖で立ち上がることすら出来ない自分がどうしようもなく情けなく、キャルは涙ぐみながら乾いた笑い声を漏らした。
「ははっ」
その時
「キャルちゃん!!」
「っ!?あ、んた、なんで?」
どこからか現われたユウキがキャルの元に駆け寄り、心配そうな表情をして彼女の肩を優しく抱き留めた。
明日の投稿は23時を予定しています!!
それではまたあした!!
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