さて、このエピソードも今回でラストとなります。どんな展開になるのか、お楽しみ下さい!!
「うわぁぁぁぁ!!!」
爆発に巻き込まれたユウキの体が宙に放りなげられ、地面に叩きつけられる。
その様子を見ながら爆発を引き起こした張本人、ハイドは不気味な高笑いをしていた。
「ヒャヒャヒャッ!!ど~したぁ、もう終わっちまうぞ」
「くっ、がはっ!!」
小気味よくステップを刻みながらよろよろと立ち上がるユウキに近づいたハイドは、腹部を乱暴に殴りつける。
攻撃を受けたユウキが呻き声をあげると共に、衝撃で体が地面から少し離れる。
「はぁ、はぁ」
「よっと、さてさて愛しのキャルちゃん怖じ気づいて動けないみたいだし、そろそろ終わらせちまうか」
度重なる攻撃で蓄積したダメージで言葉を発することも出来ず、苦しそうに息を荒げるユウキの頭を鷲づかみして、ハイドがそう話しかける。
そんな危機的な状況の中、キャルは突如襲い掛かってきた胸の動悸に苦しめられ、動けずにいた。
「やめ・・・てっ」
激しく鳴り続ける心臓を抑えながら、キャルはそう声を絞り出す。しかしハイドは、その様子をあざ笑いユウキの顔を彼女の方に向けて煽り始めた。
「ホラホラ、キャルちゃんが悲しそうだし助けてやらねぇと」
「もう、やめて、うぐぅっ!はぁ、はぁ、あんたの目的はあたしでしょ!!」
必死に叫ぶキャルを鼻で笑いながら、ハイドは彼女を見下した様子で答えた。
「お前ごときよりこいつの方がよっぽどムカついたんでな、それにこいつを殺せばお前の絶望した顔も見られるトオモッテナァァ」
言葉の後半もはや彼とはかけ離れた声色になりながら、ハイドは邪悪な笑い声をあげ始めた。
「そんな事・・・絶対に許さないっ」
「はぁ?怖くなって縮こまってるお前に何が出来るって言うんだ!?」
「あんたにユウキは殺させない・・・絶対に私が止める!!」
「へっ、あっそ、やれるもんならやって見れば」
ハイドが嘲笑するのにも耳を貸さず、キャルは静かに怒りをあらわにしながら拳をにぎしりめてそう叫んだ。
その様子を見て、いい加減キャルをいじめるのに飽きたハイドはユウキにトドメを察すべき腕を天高く振り上げる。
だが
「ん?」
突如異様な気配を感じ取り、振り下ろそうとした腕を止めてその気配が放たれた方に視線を移した。
「・・・おいおい、ここで来んのかよ」
異様な気配の正体をその目で見たハイドが、驚きから思わずそう呟く。
「はぁ、ハァ、やめロォ」
まるで獣のように表情を歪ませて、しわがれた声になったキャルがそう呟く。彼女の周りは黒い異様なオーラに覆われ、背中から何本もの触手を蠢かせる。
まるで、かつて彼女がかつて仕えた皇帝 マナのような姿になっていた。
「やめロォォォォォォォ!!!!!」
「おいおいっ!!」「うわぁ!!!」
キャルがそう叫ぶと共に周りの衝撃波が飛び、拘束されていたユウキもろともハイドを吹き飛ばし、それ同時に背中に生えた黒い触手が彼女の体を包み込み、花のつぼみのような形状になる。
「ウワァァァァァァ!!!」
やがて耳を劈くほどの悲鳴と共につぼみが破裂し、中にいたキャルの姿があらわになる。
「キャル・・・ちゃん?」
「おいおい、よりにもよってな姿で出てきやがって」
その姿を見たユウキは絶句し、ハイドは嫌悪を感じさせる声でそう呟いた。
そして、変化した自身の姿を目にしたキャルはその特徴的で見覚えのある装備に驚き、狼狽する。
「これ・・・陛下の・・・」
そう、今のキャルはかつて皇帝 カイザーインサイトが自分たちとの最終決戦の際に見せた黒と紫の禍々しい姿そのものだった。
「はぁ、はぁ、くっ!」
「っ!!?そうだ、とりあえずユウキを助けないと」
自身の姿に戸惑っていたキャルだが、苦しむユウキの姿が目に入ったことで咄嗟に彼に駆け寄ろうとするが、すかさずハイドが間に割り込む。
「簡単にいかせるかよ!」
「どけぇぇぇぇ!!!」
自身の前に立ちはだかったハイドに対して、そう叫びながらキャルは左手に装備されていた鋭い爪で彼の体を切りつける。
すると、突き出した爪に魔力が流れ込み怪しい紫色に光輝くと共に巨大な斬撃となってハイドの体を貫き、その巨体を吹き飛ばした。
「ごぼぉぁ!!!」
「っ!?」
余りにもあっけなく吹き飛ばされるハイド、その姿を見てキャルは思わず足を止めて自身の左手に視線を降ろした。
「今のは、一体」
「テめぇ、皇帝サマに力借りパクしといて調子のんなよっ!!」
吹き飛ばされ大きなダメージを受けるも、すぐに立ち上がったハイドがそう叫ぶと共に両腕の間にエネルギー弾を形成してキャルに向かって放つ。
「っ!!まずい!!」
咄嗟に躱そうとするキャルだったが、そうするとエネルギー弾がユウキに当ってしまうことに気がついたキャルは、慌てて魔法でバリアを張りその攻撃をふせいだ。
「ハイド、皇帝の力ってどういうことなの!?」
攻撃を防いだキャルが、困惑した様子でハイドのそう尋ねる。それに対してハイドは心底憤った様子で鼻を鳴らすと、驚愕の真実をキャルに向かって語り始めた。
「気付いてなかったようだがお前もオレと同じ、マナに体をいじられた存在だったんだよ。オレの場合はシャドウだったが、お前はまさかマナの力の一部だったとはな、右腕にするつもりだったのか自分が倒された時の保険だったのかは知らねぇが、今のお前は人を捨てたオレと同等の存在だ、もう後には引けねぇぞ」
「っ!?うそ・・・でしょ」
ハイドの言葉にキャルが言葉を失う。つまり、今のキャルの状態はハイドと同じであり、もう元の自分には戻ることが出来ないと言うことだ。
その事を理解した時、キャルの目からは涙が零れた。
「ごめんユウキ、あたし、もう皆といられないみたい」
「・・・キャルちゃん?」
ハイドと同等と言うことは、完全にヒトという生物から逸脱して化け物に成り下がったと言うことだ。異形の力に体を蝕まれてしまった自分はもはや仲間達といることはできない。
事態が飲み込めていないユウキに、キャルは涙ぐみながらそう謝罪した。
そして、目を閉じて深呼吸をすると彼女は険しい表情になりハイドを睨み付ける。
「例え私がどうなろうと、お前だけはここで倒す」
「はっ、やれるもんならやって見ろよ」
そう言いながらハイドはキャルに向かって突撃する。それに対してキャルは背中から黒い触手を生やしてハイドの方に差し向けた。
「ぐっ!!ナンダと!?」
「はぁっ!!」
触手による攻撃によってハイドの突撃をたやすく受け止めたキャルは、右手を彼の方に受けて無数の魔法陣を展開する。
「っ!?くそっ!!」
「遅いっ」
それに気がついたハイドがその場から飛び退こうとするが、それよりも早くキャルが魔法陣から波状攻撃を浴びせ、ハイドを蜂の巣にする。
そして、ダメージで膝を突いたハイドにスタスタと近づいたキャルは、普段の彼女からは想像出来ないような身のこなしでハイドを圧倒し始めた。
「はぁっ、ふっ、ガラァッ!!」
「ぐっ!!ごぼぁ!!」
なすすべなく殴られ続けるハイドから呻き声が漏れるが、キャルが全く意に介さずむしろ声を荒げてどんどんと攻撃の手を強めていった。
それに比例するように、彼女の周りに立ちこめていた黒いオーラも濃さを増していき、周りが瘴気に包まれていく。
「はぁぁぁ!!!」
「ごはぁっ!!ふざっけんな、俺がこんな奴に・・・」
キャルに突き飛ばされボロボロになりながら苛立ちの言葉を呟くハイドを見下ろし、トドメの一撃を放つため、右手から展開した魔法時に凄まじい量の魔力を込める。
「駄目だキャルちゃん!!!」
トドメを放とうとした瞬間、ユウキがキャルに向けてそう言い放った。
突然自分の名前を呼ばれたことで我に返ったキャルが、ギリギリのところで攻撃を中断する。
「ハァ、はぁ、ユウ・・・キ?」
「もう止めよう、決着はついた」
ボロボロで立ち上がる事さえやっとの状態のハイドを見つめながらユウキは穏やかな口調でキャルにそう告げる。
やがて、キャルもそれに納得したように右手を降ろして頷いた。
「情けを掛けるつもりか、舐めるんじゃねぇ!!」
ユウキの言動に対してハイドが怒号を浴びせるが、それに対して彼は静かに首を横に振った立ち上がった。
「そうじゃない、僕はこれ以上キャルちゃんが誰かを傷つける姿を見たくないだけだ」
そう言いながら、ユウキはハイドに冷たい視線を送った。それに対してハイドは、どこか呆れた様子で「ふっ」と鼻で笑うと
「甘ったるいなぁ、こっちが・・・むせちまい・・・そうだ」
と憎々しげに言い放った。だが、その様子は先程までと違いどこか発作を抑えているような様子で、彼の体の青い光も荒々しく燃える炎のように蠢いていた。
「ん?一体どうしたんだ?」
「はは、ど~やら好き勝手暴れたツケが回ってきたらし グワァァァァ!!!」
ハイドがそう言いかけたところで突然叫び声を上げて地面にうずくまった。
「まさか、ヒトを捨てた代償!?」
「代償って、一体どういうことなの!?」
「ヒトを捨てるって事は凄まじい力を得られる反面、体にかかる負担も大きいの
だから無理して力を行使し続けると」
「うわぁぁぁぁ!!!」
キャルが言い終える前に、ハイドが悲鳴を上げる。そしてそれと同時彼の体の至る所に日々が入り始める。
ハイドの悲鳴とガラスの砕けるような音が入り交じり、不協和音を奏でる。
やがて、彼の体の全身にひびが入り中から光が漏れ出したと同時に
「あっ」
ハイドの言葉はバラバラに砕け散って消滅した。
「はぁ、はぁ、はぁ」
「キャルちゃん大丈夫?」
余りにショッキングな光景を間近で目撃して息を荒げるキャルに言葉をかけながら、ユウキが彼女の肩をさすろうと手を伸ばす。
だが
「っ!?」
「うわっ!?」
キャルの背中から生えた触手によってその手を絡め取られ、投げ飛ばされてしまった。
「っ!?どうして・・・うぐっ!!」
自分の行動が理解出来ずに困惑した様子のキャルだったが、また訪れた動悸によって地面に膝をついてしまう。
そして、再び黒いオーラが彼女の周りに立ちこめ始める。
「はぁ、はぁ、ハァ、あぐアァ!!」
「キャルちゃ、うがぁっ!!」
やがて周囲に膨大な魔力を放ちながら、彼女は頭を抱えて叫びだしてしまう。慌ててユウキが駆け寄ろうとするが、背中から生えた触手を首に巻き付けられ拘束されてしまう。
「来るな、来るなクルナッ!クルナッ!!!」
「うぐぁっ!!」
キャルがそう叫ぶたびに、声色は獣のように荒々しいものとなっていきユウキの首を締め付ける力も強くなる。
「キャル・・・ちゃん」
「クルナ!クルナ!クルナァァァァァァ!!!」
ユウキがキャルに向かって手を伸ばすが、彼女はそれを拒絶するように何度も叫ぶと、魔法陣を展開してユウキに狙いを定めた。
「ウアァァァァァ!!!!」
「くっ!」
キャルの絶叫と共に、放たれた魔法がユウキに迫る。彼はその光景に思わず目を閉じて顔を背けた。
ユウキが顔面への痛みを覚悟したその時
「はぁぁっ!!」
猛々しい声と共に何かが斬られる音がしたかと思うと、ユウキの首を絞めていた触手が突然力を失う。
「うわっ・・・っ!ユー・・・ス」
長い時間首を締め付けられていた事で地面に倒れ伏し気を失う直前、ユウキの目にはかつて自分を救ってくれた見覚えのある背中が映っていた。
「はぁ、はぁ・・・っ!?ユウキが、二人!?」
突然の乱入者によって我に返ったキャルがそう呟く。それに対して、後から現われたボロボロのコートを羽織って古ぼけたゴーグルを頭に掛けた少年は、倒れたユウキに少しの間視線を落とした後、キャルの方に険しい目を向けた。
「君が・・・この世界を滅ぼしかけない脅威か」
「はぁ、ハァ、どう言うコトナノヨっ!?」
唐突に妙な事を言い出す少年に、キャルが語気を強めて尋ねる。それに対して少年はどこか悲しげに目を逸らすと腰に携えていた剣を鞘から引き抜いた。
「君が知る必要はない、世界の脅威は僕がここで倒す」
そう言いながら、少年はキャルに向かって飛びかかった。
ここまでのご愛読ありがとうございました!
さて、ここからは物語に決着を付ける最終章が幕を開けます!
ただいま誠意制作中ですので、是非楽しみにしてお待ちください!!
今週中に投稿スタート予定です!それではまた
投稿する時間について、何時くらいが良いですか?
-
8~10時
-
12~14時
-
15~18時
-
19~21時
-
22時~
-
それ以外