秘密結社ラビリンスのアジト、重傷を負ったユウキは調査と治療のためここに運び込まれていた。
「ユウキ君!!」「主様!!!」
「っ!?やあ、少年なら奥で寝てるよ」
扉を勢いよく開けて入ってきたペコリーヌとコッコロに、驚きながらラビリスタがそう案内する。
「しーっ、起きちゃうから静かにね」
「し、失礼致しました」
「すみません、お邪魔しま~す」
シズルに注意され、二人は小声になりながら忍び足でユウキが寝ている寝室の方に向かった。
「あっ、お二人ともいらしてたんですね。お兄ちゃんはもう大丈夫ですよ。手当もすんでますし、後は起きるのを待つだけです」
「そうですか、良かった~」
「とりあえず一安心ですね、コッコロちゃん」
眠っているユウキの横で看病をしていたリノの言葉で、先程まで慌てていたコッコロはほっと胸をなで下ろした。
その様子を見て、ペコリーヌが彼女の肩をさすって微笑む。コッコロを気遣ってはいるものの、ペコリーヌも先程の張り詰めた様子からいつものような明るい表情に戻っていた。
「それで、どうしてこんな事に・・・」
「それは僕から説明するよ」
「っ!?」
「あなたは!?」
痛ましい主の姿を見てそう呟くコッコロに、後ろから聞き慣れた声がそう答える。驚いてコッコロ達が振り返ると、そこにいたのはくたびれたシャツと古ぼけたゴーグルを頭にかけたユウキとそっくりな少年だった。
「えっ!?ユウキ君が二人!?」
「まさか!?貴方が主様のおっしゃっていた」
「君たちにはユースって名前で伝わってるかな?」
コッコロの言葉にうなずきながら、少年が笑顔でそう言う。その笑顔は表情だけでなく優しい雰囲気も、まるでユウキそのもののようだとコッコロとペコリーヌは感じた。
「・・・さぁ、ここは狭いですから外で話そう」
余りにユウキに似ていた事に驚いて黙ってしまう二人を見て何やら複雑そうな表情を見せながら、少年は彼女達に外に出るように促した。
「それで、ユウ・・・ユースくん、改めて彼女達にも説明してくれないか」
「えぇ、ではまずキャルさんの現状について」
少年に説明を促そうと何か別の言葉を口走ろうとして、少年に睨み付けられたラビリスタが、若干言い淀んだ後咳払いをして改めて少年にそういう。
それに対して少年は少し呆れたようにラビリスタを見つめた後、咳払いをした後に語り始めた。
「ラビリスタさんに聞いたところ、こちらの世界で皇帝が自身のシャドウを取り込んで暴走した事があるとか、恐らく今の彼女にはその時に近い事が起こっているみたいなんだ」
「それはつまり、キャル様が暴走しつつあると言う認識でよろしいですか?」
「ああ、今の彼女はとても危険な状態で、時折、周りを見境なく攻撃してしまうこともあるようだ。しかも、時間が経てば立つほど力が強くなっていた。このまま放っておくと、大きな被害が出てしまう」
コッコロの質問に頷きながら、少年は現状とこれからの危険性について険しい表情で語った。その言葉を聞いたシズルが、遠慮がちにペコリーヌとコッコロの方を見た後、少年の方を向いて重々しく口を開いた。
「じゃあ・・・被害が出る前に対処しないとって事だよね・・・」
「あぁ、最悪の場合は」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!もしかしてユースさんキャルちゃんをっ!」
「それはあくまで最悪の場合だ。今ラビリスタさんがキャルさんを助ける方法を探してる」
少年の言葉から彼が行おうとしていることを察したペコリーヌが慌てて声を上げるが、少年は落ち着いた、しかしどこか不満そうな様子でラビリスタに視線を向ける。
それに対してラビリスタは強く頷くと、不安そうな表情をするペコリーヌに向かって笑いかけて見せた。
「ユース君達と現場からキャルちゃんの体に蔓延ってるエネルギーを採取して分析も完了してる、私の仮説が正しければキャルちゃんを助ける事は出来るはずだ」
「ホントですか!?良かったぁ」
「ただ、あの子を助ける為にはユウキ君が体を張る必要があるんですよね、今の彼に出来るんですか?」
ペコリーヌに希望を持たせるようにそう言うラビリスタに、少年が険しい目を向けながら鋭い指摘をする。
「う~ん、そこは五分五分って所かな、それにペコリーヌちゃんやコッコロちゃんに協力して貰わないといけないし、キャルちゃんが助かるかどうかは最後はあの子自身にかかってるから」
「勿論私も協力します!!」
「私も、キャル様の為でしたらこの身も辞さない所存です」
複雑そうな表情をするラビリスタに身を乗り出してそう進言するペコリーヌとコッコロを、少年はどこか悲しそうな表情をして見つめていた。
そして、ため息をつくと不意に立ち上がると少年はアジトの入り口に向かった。
「どこに行くんだい?」
「少し外の空気を吸ってくるだけです」
少年の突然の行動にラビリスタそれを制止するように彼の肩に手を置きながらそう尋ねるが、彼は背を向けたまま肩を軽く揺すってその手を振り払うと、短く答えてアジトから出て行った。
「・・・すみません、ちょっと私も出てきます」
それを見て少し考えた後、ペコリーヌも彼の後を追ってアジトを後にする。
彼女がアジトを出て行き、扉が閉まりきったのをしっかり見届けたコッコロはラビリスタの方を向いて遠慮気味に口を開いた。
「あの、ラビリスタ様」
「ん?どうしたんだい?」
「もしかりに、ラビリスタ様の考えが上手くいかずキャル様を助けられなかった場合は・・・」
「その時は、彼が始末を付けると言っていたよ」
コッコロの問いかけに、ラビリスタは苦しそうな表情をしながら入り口の方に目を向けた。
「ユース様が、ですか?」
「あぁ、これはここにいるメンバーの中の秘密にして欲しいんだけど、彼最初はキャルちゃんは倒そうとしてたんだよ」
「えっ!?」
ラビリスタの口から語られた言葉にコッコロは驚いた。魔物にさらわれたユウキを助けてはくれたが、それ以外では自分たちとは接点のない。良い方は悪いが部外者の彼がどうしてそこまで今回の事件に積極的なのか、そう疑問に思った彼女の心中を察したのかラビリスタが口を開いた。
「なんでも、彼が普段住んでいる世界は、こちらの世界の出来事に大きく左右されるらしい。だから、皇帝と同じ力を持つものが暴れるって言う大きな出来事は早めに対処したいんじゃないかな?」
「なるほど・・・」
「マスターっ!」
その言葉に納得して頷こうとしたコッコロの横で、突然リノが口を開く。彼女の表情は、どこか悲しげで、そして何かを言いたげに見えた。
「どうかなさったんですか?」
「ううん、何でもないよ。さあコッコロちゃん、弟君の看病手伝ってくれない」
そう問いかけるコッコロに、答えたのはリノではなくシズルだった。彼女は強引に話題を逸らすと、まるで自分をここから遠ざけるようなユウキの寝室に行くように促す。
「えっと・・・」
余りにも不自然な彼女達の様子を見て、コッコロは戸惑ってしまう。二人が何かを隠しているのは明らかだ。しかし、それをここで問い詰めても良いのだろうか。
(なんでしょう、この胸の内の嫌な予感は)
彼女達の隠し事は恐らくユースに関連している。別の世界にいたというユウキに瓜二つな少年、やけにボロボロな衣服とどこかくたびれたような彼の表情、上手くは言えないが踏み入ってはいけないような雰囲気を感じさせる。
彼女達の隠し事が、もし自分たちに取って辛い真実だとしたら、このまま聞かない方が良いのではなのだろうか?
「皆様・・・ユース様のこと、私に詳しくお聞かせ願えないでしょうか」
しかし、コッコロはラビリンスのメンバーにそう尋ねた。
真実を知るのが怖くはあるが、今からキャルを救おうと言うときに胸の中に雑念があると肝心なときにしくじってしまうと考えたからだ。
コッコロの言葉に、ラビリスタは少し困ったような、しかし納得したような表情をしてため息を吐くと、コッコロに向かって苦笑をして見せた。
「流石に鋭いねコッコロちゃん、わかった、私達が聞いたことを話すよ」
「良いのマスター!?彼には口止めされたのに」
「ああ、責任は私が取るよ。コッコロちゃん、辛い話になっちゃうけどいいかな?」
「はい」
力強く頷くコッコロにラビリスタは「そうか」と短く言い、言うのを躊躇うように少し口をモゴつかせた後、意を決したような表情をして開いた。
「彼は、ユースなんて名前じゃない。本当は・・・全てが滅びた別の世界に存在する少年、ユウキ本人なんだよ」
「なっ!」
ラビリスタの言葉に、コッコロは瞳を大きく開いて唖然とした。
明日の投稿は17時の予定です(もしかしたら遅くなるかも)
それではまた!!
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