プリンセスコネクト:Daybreak   作:五十嵐レイト

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ep:3 真実は畑の中に?

全身に感じる柔らかな感触、何やら耳元で話し声が聞こえてくる。

 

「ぅん?」

 

「カスミちゃぁぁん!!!」

 

「むぐっ!!か、カオリさん!?」

 

カスミが目を開けると褐色肌の獣人の少女、カオリが勢いよく抱きついてきた。

涙ぐむ彼女をなんとか引き離しながら辺りを見回す。どうやらここはカウォンの休憩室のようだった。

一体何故こんなところにいるのか、昨日の夜辺りから記憶をたぐり寄せる。

 

(そうか、私誰かに助けられて)

 

「カスミちゃん?大丈夫?どこか苦しくない?」

 

「あの、苦しいからひっつかないでくれ!」

 

心配そうな表情で再び詰め寄ってきたカオリをもう一度押しのける。

 

「ようカスミ、なんか災難だったみたいだな」

 

「ホント、カスミはんが彼に運び込まれた時は驚いてしもおて、心臓が止まるかと思ったわぁ」

 

カオリとじゃれ合っていると、休憩室の扉を開けてマホともう一人紫髪のがたいの良い獣人の少女が入ってくる。

 

「マホさん、マコトさん。面倒をかけてしまって面目ない」

 

「カスミはんが謝る事あらへん、うちの方こそ無理して依頼受けさせてしもて申し訳ないわ」

 

「いや、依頼をこなすのが探偵の仕事だ。今回は私の準備不足だったよ」

 

謝ってくれたマホに首を振ってカスミがそう返す。今回は立ち回りが対人用に寄せすぎていた。襲われるといった事も予想は出来たはずなので、今回は間違えなくこちらの落ち度だ、とカスミが脳内で反省していると

 

「ともかく、カスミちゃんが無事で良かったさ~」

 

「だな、あんたもありがとよ」

 

「いえ、何とか助けられたみたいで僕も安心しました」

 

突如、どこかで聞いたような男性の声が会話に入ってくる。カスミが少し身を乗り出して見てみると、マコトの後ろに昨晩みたボロボロのコートを羽織った少年が立っているのが見えた。

 

「あなたは・・・」

 

「失礼、挨拶が遅れました。僕はユースといいます。見た目の通りしがない放浪者です」

 

その存在に気がついたカスミに。ユースは物腰柔らかにそう挨拶をする。

 

「えっと、ありがとうございます」

 

「いえいえ、お気になさらずたまたま貴女を見つけられて良かった」

 

ユースに対してぎこちなくお礼をいうカスミ、それに対してユースは額部分にかけている古びたゴーグルを直しながら笑顔で答えた。

 

「・・・」

 

「えっと、どうかなさいましたか?」

 

ある事が気に掛かり、カスミは無意識にユースをじっと見つめる。それに困惑した彼が何かあったのか気になって声を掛けて来たことで、カスミは我に返った。

 

「あっ、失礼!!ちょっと知り合いに似ていたもので」

 

「分かるぜ、この人あいつにそっくりだよな」

 

「ほんと、ユウキ君そっくりさ~」

 

失礼を働いてしまった事を謝るカスミに、彼女の思っていた事を察したマコトとカオリがそう頷く。

 

「えっと・・・」

 

「こっちの話をしてしもて申し訳ないわ、お兄さんにようけ似とる知り合いの子がおるんよ」

 

「へぇ~それは偶然ですね」

 

若干話に置いていかれ気味で気まずそうなユースにマホが助け船を出す。

 

「ほんま、なんや雰囲気も似とるし兄さんは他人の気がせえへんわ~」

 

「あははは、えっと、そう親しく接して貰えるとうれしいです」

 

しかし、今度はマホのペースに飲み込まれて気圧され始めたユースを見て今度はカスミが二人の会話に割り込んだ。

 

「あぁ~盛りあがっているところ申し訳ないんだが、その後状況がどうなってのか分かるかな?」

 

「ああ、奴等に関しては僕が対処しますよ。元々奴等は僕の住んでた地域の魔物なので、

落とし前はこっちでつけます」

 

「落とし前って、あんた一人でか?」

 

「ええ、奴等の同種とは何度か戦った事もありますし」

 

問いかけに対してユースがそう答える。確かに昨晩の彼の動きは、明らかに手慣れていたが、故郷で同種族の魔物を相手取っていたとなればそれも説明が付く。

それに、剣術に明るくないカスミから見ても彼の動きは洗練されており、玄人の風格を感じさせていた。

彼なら、一人でも魔物の対処事態は十分可能であろうとカスミは思った。

 

「だが、奴等が次にどこに現われるのか、君には分かるのか?」

 

「まあ、奴等の気配は何となく感じ取れますから、後は情報を集めればなんとか~」

カスミの問いかけに、今度は少し自信なさげにユースは答える。

 

「わかった、なら奴等の次の出没地点の特定は私に協力させてくれないか」

 

「えっ、いいんですか?」

 

「カスミはん、そんな体で大丈夫なんか?」

 

「カスミちゃん、あんまり無茶は良くないさ~」

 

カスミの提案にユースが驚きながらそう尋ねる。同じくマホとカオリも彼女の言葉を聞いて驚くと共に心配から難色を示した。

だが、カスミは引き下がらない。

 

「好き勝手やられたまま終わるのは私も釈然としない、それに助けて貰った借りはしっかり返したいんだ」

 

「へっ!いいじゃねぇか!リーダーここはカスミの顔を立ててやらねえか?」

 

その言葉を聞いて、カスミの心意気を気に入ったマコトがマホにそう促す。

それに対してマホは「う~ん」と考えた後

 

「仕方無い、出来るだけ無理はさせられへんけど、それでもかまわへんか?」

 

と渋々ながら頷いた。

 

「ああ、与えられた条件でなんとかしてみるさ」

 

マホの承諾を得たカスミは、活き活きとした顔でそう答えた。

 

 

 

マホに課せられた条件は2つ、まずこの休憩室内からは出ないかとそしてもう一つは

 

「巻き込んでしまって済まないね、ユースさん」

 

「気にしないで下さい。奴等の動向が掴めるならこっちも有り難いことですから」

 

抜け出さないように近くに見張りを置くことだった。今は魔物の情報を聞くためユースに聴取をしているため、彼がその役目を担っている。

 

「にしても、情報をまとめて見てもあまり共通点は見つかりませんね」

 

「ええ、そう簡単にはいかないみたいだ」

 

聴取をしながらこれまでの被害状況をまとめた資料を眺めていたユースが、唸りながら首を傾げる。

 

「ユースさんは何か奴等の習性などは分からないですか?」

 

「いやぁ~早く動き回る位しか、すみませんお役に立てなくて」

 

「いえ、あれだけのスピードで動き回っていると言うことは消費するエネルギーも高いは

ずです。それだけでも十分奴等の出現範囲は絞れますよ」

 

申し訳なさそうにするユースをそう励ましながら、カスミは自信のまとめた資料に目を通した。

被害範囲と頻度、そしてカスミは自身が実際に目撃した事からこの推測は間違っていないように思えた。後はどこが狙われるのか、エネルギー補給が目的なら栄養価の高いものを求めているはずだ。

その中で野菜となると、それなりにかぎられてくるはずだ。

そうして、推理を元にまだ被害に遭っていない畑を抜粋していくと5つ程に絞ることが出来た。

 

「凄いですね!ここまで絞れるなんて!」

 

「いや、もう少し何か次に狙われる場所を特定できる手がかりがあるハズだ」

 

感嘆の声を上げるユースを尻目にカスミは今まで得られた情報や推理を整理する。

狙われているのは野菜畑、狙われるのは夜、相手は複数で行動している、高速で動き回るのでエネルギー消費が激しい、別の地域から現われた魔物・・・。

 

「ん~やはり難しいな、人相手だとこれだけ情報があれば絞れるものなんだが」

 

「ここまで絞れるだけでも十分凄いと思いますけど、人と魔物だとやっぱり勝手が違うんですか?」

 

「ああ、人が相手だと犯人の立場になって考えたりも出来るんだが、魔物だとそうもいかなくてね」

 

「あぁ~成る程」

 

カスミの説明にユースが納得したように頷く。

 

「確かに、魔物の気持ちになるのは難しいですからね~」

 

「ああ、しかもあまり情報がない魔物となるとなおさらだ」

 

そんな感じで、考えが煮詰まってしまい二人が唸っていると

 

「カスミちゃ~ん、ちょっと休憩するさ~」

 

明るい声と共に、カオリが勢いよく休憩室に入ってきた。

 

「っ!カオリさん、もっと静かに入ってきてくれないか?」

 

「ごめんごめん、けど、ほらぁ紅茶とクッキー持ってきたから、ユースさんもどうぞ」

 

そう言いながらカオリはトレーに乗せられたクッキーとティーカップを休憩室のテーブルに置いた。

 

「それはありがとう、じゃあ少し休憩にするよ」

 

そう言ってカスミがテーブルの上に置かれたティーカップを手に取ろうとした時

 

「あぁ~ごめんなさい!僕これ食べられないんです」

 

とユースが申し訳なさそうにそう言った。

 

「ほへ?なしてなんですか?」

 

「あぁ~っと、ちょっと食事制限と言うか、生活スタイルと言うか、とにかく最近は何も

口に入れないようにしてて」

 

首を傾げるカオリに、ユースがぎこちなく告げる。

 

「ほえぇぇ!!ユースさんは変わった生活してるんさなぁ」

 

「まあ、ベジタリアンとか一日一食しか食べないとか、世の中食に対しては色々な考え方

があるからね、最近は一部偏食な人たちに配慮したレストランや商品も・・・」

 

カオリに解説をしようとそこまで言いかけて、カスミは何か頭の中に違和感覚えて言葉を止めた。

 

「うん?カスミン?」

 

「カスミさん?」

 

彼女の様子を不思議に思った二人が首を傾げるが、カスミはそんな事はお構いなしに今感じた違和感がなんなのか、必死に脳内の情報を整理する。

 

「一体何が・・・」

 

ふと視線を手元に置いてあった資料に降ろす。その時

 

「もしかして!!」

 

先程感じた違和感の尻尾のようなものを見つけたカスミは、慌てて他の資料のある情報を確かめ始めた。

やがて、全ての資料に目を通し終えるとカスミはフッと不敵に微笑んだ。

 

「成る程、そういうことか」

 

「・・・何がそういうことなんでしょう」

 

「さぁ~」

 

その様子をずっと見ていたユースとカオリは、突然ほくそ笑んだカスミを困惑した様子で見つめていた。

 

 

 




次回の投稿も遅めの23時の予定です!!
それではまた!!

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