それでお楽しみ下さい
ep1:主の異変
揺れるココロ
美食殿のキッチン、鍋からコトコトと音と共にが湯気が立ちこめる横で、少年 ユウキは鼻歌交じりに野菜を切っていた。
「ハッピーエンドのふふふ~ん」
「おや、主様、既にお目覚めでしたか」
「おはよ~コッコロちゃん、そろそろ出来るから待っててね」
階段から降りてきたコッコロに気がついたユウキが、手を止めて笑顔で振り帰る。反対にコッコロは少し不満そうな様子だった。
「どうかした?」
「いえ、何と言いますか最近主様が変わられたといいますか、しっかりされたといいましか」
「そう?だったら良いんだけど、いつまでも皆に迷惑掛けてられないからねぇ」
コッコロにそう言われ、ユウキは少し得意げに微笑みながら料理に戻った。
「いえ!!決して迷惑などでは!!」
「そんなに慌てないで、迷惑かれられないってのはあくまで、言葉の綾ってっていうか~まぁ、コッコロちゃんがそう思ってるっていってるわけじゃないから」
迷惑という言葉を聞いて必死で否定するコッコロに対して背中を向けながら飄々とした様子でそう返す。
少し気まずさを感じてしまったコッコロは、ユウキの手助けに入ることもできず口をもごもごさせながら席に着いた。
(やはり、調子が狂ってしまいます)
ユウキの背中を眺めながら、コッコロは表情で難色を示していた。
彼の性格が昔の素直で幼いようなものから変わったのは、ペコリーヌが王族に戻ってからだ。その頃からユウキは優しくはあるもののどちらかと言うと物静かで皆を後ろから見守るようなものに変わっていった。
これに関してはぐいぐいと前に出て行くタイプのペコリーヌと同じ位置で仲間を引っ張っていくキャルがいたので、自然と仲間の中では後ろの立ち位置になることが多かったことが由来しているのだろう。
(後、少しおこがましいですが、私の影響もあるかも知れませんね)
それ自体、コッコロはまるで息子の成長を見守る母親のような穏やかな心持ちでいられたのだが、事態が急変したのは彼が謎の魔物によってどこかに連れ去られてしまった後だ。
「別の世界で僕に顔が似た人に助けて貰った!!」
帰ってきたユウキはそう言っていたが、そのユースという彼に似た人物と出会ったことで、何かしら彼の精神に影響を及ぼしたのだろうか、いやにしてもこの短期間で成長しすぎではないか?
「ふぁぁ~おはよぉ~」
そんな事を考えていると、大きな欠伸をしながらキャルが階段を降りてくる。その目の下にはうっすらとクマのようなものが、浮かんでいた。
「キャルちゃん寝不足?」
キャルの欠伸を聞いたユウキが背中ごしにそう尋ねる。キャルはそれに対して頷きながら自身の胸をさすりながら少し苦しそうな表情をした。
「ええ、なんか最近動悸が酷くて夜あんまり眠れないのよね~」
「酷くなる前に病院行ったようが良いんじゃない?あっ、ムツキさん達の所とか」
「なっ!?行くわけないでしょあんな所、全く朝から嫌な事思い出させないで」
「ははは、ごめんごめん」
からかわれ少し口を尖らせた後、キャルはコッコロの向かい側の席について彼女に小声で話しかけてきた。
「ねぇねぇ、何かあいつ変わったよね、さっきのからかい方も何かペコリーヌっぽかったし」
「やはり、キャル様もお気づきでしたか。主様、成長期というやつでしょうか」
「いやそれは・・・記憶喪失だしそういうのもあるのかもね」
キャルの言葉に頷きながら、コッコロはどこか残念そうな顔をユウキに向けた。
「もっとお世話して差し上げたいのに・・・しかし主様が成長されるのは嬉しくもあり、複雑です」
「あんたまた母親みたいなこと言ってるわよ」
何かを憂うような表情でそう呟くコッコロを呆れた様子でキャルは見つていた。
そうこうしているあいだに、料理を完成させたユウキが食器にご飯等をよそって机の縫えにおく。
「お待たせ~今日はシンプル、ご飯に漬物に野菜のお味噌汁」
「おぉ~助かるわ」
「じゃあ手を合せて」
「「「頂きます!!」」」
その後、朝食を食べ終えると、今日は予定のないユウキとコッコロは洗い物のため台所に、キャルは奉仕活動の為にギルドハウスを出るための支度をしていた。
「それじゃあ行ってくるわね、あっそうだコロ助!」
「はい、何でしょうキャル様」
外に出ようとしたキャルだったが、ふと何かに気がついてコッコロにこちらに来るように手招きをする。
「ねぇ、今私が働いてる職場で職員の相談に乗ったり改善した方が良いこと調べたりするカウンセラー募集やってるんだけど、あいつに話しといてくれない?」
「それは構いませんが、キャル様が説明された方がよろしいのでは?」
そう尋ねるコッコロに、キャルや少し難しい表情をしながら頭を掻くと、ご機嫌な様子で洗い物を続けているユウキに目を向けた。
「一応ペコリーヌには話通してあるんだけど、あいつが働き出すとますます集まりづらくなると思って、それにあいつ私から聞いたら断らないでしょ」
「それは、確かに」
今のユウキは、性格が変わったとは言え根本は出会った頃と同じだ。頼まれた事は基本何でも引き受けてしまうだろう。それに美食殿として集まりづらくなるというのはコッコロとしても避けたいし、ユウキも良い反応は示さないだろう。
「実を言うと今回の話、あいつから行ってきたことなのよ。仕事してみたいって」
「主様がですか?」
そう考えていたコッコロに、キャルが驚きの事実を伝えてくる。まさか彼がそんな事を考えていたとは、コッコロは夢にも思っていなかった。
「ええ、なんか皆が頑張ってるから少しでも手助けしたいって」
「全く・・・気がつきませんでした」
「まああいつからも隠すよう言われてたし、それで私から提案しちゃうとわざわざ仕事探してきてくれたんだって、今のあいつなら余計な事考えそうだし、そこら辺上手い具合にあんたがしといてくれない?」
「上手くですか・・・私に出来るでしょうか?」
隠していたとは言え、自分の主の本心を察することが出来なかった事で、コッコロは少し従者としての自信をなくしてしまっていた。
そんな自分にキャルの要望を上手くこなすことが出来るのだろうか・・・そう不安がるコッコロの肩をキャルはポンポンと叩く
「まああんたの方であいつに会わないって思ったんなら言わないでおいても良いわよ。そこは1番付き合い長い任せるわ」
「・・・かしこまりました」
「それじゃあね、行ってきま~す」
「気をつけてねキャルちゃん」
そう言い終わるとキャルはユウキの見送る声を背に、ギルドハウスを出て職場に向かった。
「さて、どう致しましょうか」
玄関前に一人取り残されたコッコロは、こめかみを押さえて唸りながら、これからどうするべきかユウキの方を見つめながら唸っていた。
明日も19時投稿の予定です。
そして、明後日からは物語が劇的に動く新章がスタートします!!
その主人公は誰か、どんなキャラクターが登場するのか、是非ご期待下さい!!
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