ループ経験してそうな少し痛くて不思議ちゃんなキャラで……あれ?なんか…皆の反応、変じゃないです?   作:クレナイハルハ

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第5話

 

『せーんぱい、わたしはクレープの買い食いを提案するのです』

 

学校の帰り道、特徴的なサイドテールとスカートをふわりと浮かせながら振り向きいつもの笑顔を浮かべる彼女に俺は、少し呆れて返事を返した。

 

「お前、そう言って昨日は肉まんの買い食いしたじゃねぇか……太るぞ」

 

『なんくるないさーなのです!わたしの完璧ボディは買い食い程度では変化しないのですよー?』

 

「はは、なんだそりゃ……下手したら神器より神秘的じゃねぇかよ」

 

謎の理論で体重の変化がないと話す彼女、何故か懐かれたのか分からない後輩。

特徴的なサイドテール、そして学校の男子生徒からの人気もある可愛い仕草と程よく実り、この手に納めればもにゅりとしそうな胸。

 

『だから先輩、クレープ!とにかくクレープなのですよせんぱい!』

 

両手をぐっと胸元に寄せてクレープと連呼する彼女に思わず口角が緩む、両手をぐっと寄せたことで彼女の胸がより強調される。

俺が一緒に行くのを躊躇っているのかと思われたのか、後輩の彼女は頬をぷくりと膨らませて「聞いてるのです先輩」と話しかけてくる。

そんな彼女の頬を指でつけば、ぷひゅうと口の中の空気が漏れ膨らんでいた頬が元に戻る。

そんな後輩に思わず俺は笑いながら彼女の横を通り抜け前を歩くながら振り返る。

 

「ったく、わかったよ。さっさといくぞ」

 

『ふふふ、荒っぽく言ってますがちゃんと一緒にクレープ屋さんに行こうとしてくれるせんぱいにはーちゃんの好感度が上昇したのです!』

 

「なんだよソレ、新手のギャルゲーじゃねぇか」

 

『勿論せんぱいの奢りなのです!』

 

「会計俺がもつのかよ!?」

 

昔、俺には掛け替えのない後輩がいた。

 

アイツは、いつも笑っていて何処か不思議な感じのする奴だった。

いつも「せんぱい」「せんぱい」と慕ってくれていて、いつもアイツと買い食いに行ったり学校の外でも共に遊んでいた。

本当にずっと笑っている後輩の、その笑顔がえらく特徴的だった。

話していて、笑っているはずなのに、目の前にいるのにふと目を離せば消えてしまいそうだと感じさせてくる。そんなアイツとの日常に終わりが来たのは、突然だった。

大型台風の影響で、開催が間近となっていた学園祭が中止するかもしれないという噂がたった。

物が吹き飛ばされるぐらいの風も吹き、傘に降り注ぐ雨は大きな音をたてる程に強かった。

アイツが楽しみにしてた文化祭、できないのか……とそんな事を考えていた。

携帯が鳴り響き、見れば後輩であるアイツの名前がそこに表示されている。

 

すぐに電話に出ると、すぐにアイツの声が聞こえた。

 

『もしもし?せんぱい、わたしです』

 

「どうした急に、寂しくなったりでもしたか?」

 

ふざけて、からかうつもりでそう声をかけたが、返ってきた後輩の返答は予想外なものだった。

 

『ふふふ、既に好感度がMAXなせんぱいにそう言われるとわたしは納得してしまう気がするのです。』

 

返ってきたのは、いつもの可愛い雰囲気の言葉ではなく、まるで蝋燭の火のように吹けば消えてしまいそうなほどに小さく、震えた言葉だった。

 

何か様子が変だと首をかしげ、気付いた。

なぜ、後輩の電話からビュービューと風が吹く音と雨が降り注ぐザーザーという音が聞こえる?

 

『わたし、先輩に会えて良かったです』

 

「は?急にどうした」

 

『……やっと、決心できました。わたしはせんぱいと生きたかったです……ずっと』

 

「なにを、言って」

 

こんなに天気が荒れているのだとしても、建物の中なら多少は外の音が弱まるはず……。

まさか、彼女は()で電話している!?

 

「お前、こんな状況で外にいるのか!?」

 

『やっぱり、せんぱいは凄いです。私のこと、なんでもわかっちゃうなんて……』

 

「おまっ!?バカ、早く家に入れ!こんな状況で外に出るなんてなに考えてるんだよ!お前、風に吹き飛ばされたらどうするつもりだ!」

 

『ふふ、やっぱりせんぱいは優しいですね……せんぱい、私せんぱいと学園祭、回りたかったです。でもごめんなさい、わたしは先輩が、大人になってもずっとこの世界で暮らせるように出来るように頑張ります……だから』

 

『お願いです、どうか私を────。』

 

その言葉と共に後輩との電話が途切れた。

いつもの後輩とは思えない、そんな電話の内容に固まっているとテレビで先程まで地球に向かっていた隕石が、突如として地球に衝突せずに通りすぎるよう変化したとニュースが発表された。

 

そして次の日、後輩は俺の前から消えた。

 

昼休み、いつものように俺のところに来なかった。彼女のクラスで話を聞けば、後輩は学校に来ていないらしい。

何処か胸騒ぎがするが、きっと気のせいだ。

酷い風邪やインフルエンザにでもかかったのだろう、そう自分を納得させその日は後輩と会うことなく一日を終えた。

 

そして次の日も、その次の日も……一週間、1ヶ月、一年、後輩は現れなった。

調べたところ、家に帰っておらず行方不明らしい。

 

『私を、忘れないで』

 

忘れるわけないだろ、ひょっこり出てこいよ。

学園祭の出し物でメイド喫茶やるって言ってただろ、コスプレでメイド服着るの楽しみだって言ってただろうが。

 

なんで、なんで消えちまったんだよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませなのです、お疲れ様でよろしいですか?」

 

色々とあり、駒王町をブラついていた俺は適当に入ったファミレスでそんな可笑しな挨拶が聞こえた。

誰が『お疲れ様』、だよ……そんな疲れたような顔をしてねぇわ。

そう思いながらも、何処か聞き覚えのあるような気がする先程の言葉を口にした店員を一目見ようと視線を聞こえてきた声の方へと向けた。

 

次の瞬間、俺はまるで時が止まったような錯覚がした。

 

「お前……」

 

目の前にいる店員の少女は、突然行方不明となった時の後輩と瓜二つの姿をしていた。

まるで彼女の生き写しのように、その場所にいて俺を見つめていた。

 

「あの、好きなお席に───」

『せんぱい?どうかしたのですか?』

 

首をかしげ、こちらに話しかけてくる彼女の姿に後輩の面影が脳裏に過る。

取りあえず彼女に言われた通り、近くで空いている適当な席に座る。

 

「ご注文が決まりましたら、呼んでくださいなのです。」

 

そう言って俺の座ったテーブルから歩き去る彼女の口調や仕草の一つ一つが、彼女とそっくりで……アイツと結婚したらこんな娘がいたのだろうか、と。

そんな今更な、実現しない夢の光景が脳裏に浮かぶ。

テーブルに置かれたメニューを手にとって中を確認する、こういう喫茶店は何がうまいのか分からない、だが絶対に当たりメニューという物があるのだと今までの経験上は理解している。

取りあえず飲み物でコーヒー、あとは適当にオムライスでも頼むか。

 

先程の少女に見えるように片手をあげる、すると声をかける前に「はいなのですー」という声と共に近寄ってくる。

 

「ご注文は何なのですー?」

 

「このコーヒーとオムライスを頼むわ」

 

「はいなのです!」

 

「あと、その……。お前は……瑆崋(セイカ)の娘なのか?」

 

先程まで笑顔を浮かべていた彼女が目を見開き、一歩後退りする。

少し踏み込みすぎただろうか?だが、もしこいつが、本当にアイツの娘なら俺は知りたい。

アイツが、瑆崋が今どうしているのか、なんであの日突然姿を眩ませたのか。

 

「え……なんで、知って」

 

「俺は、アイツの学生時代の先輩で結構仲良かったんだ。だがある日、アイツ急に行方不明になっちまって、ずっと心配だったんだ。お前を見て、瑆崋の姿が重なって見えてな」

 

そう言うと、彼女は先程後退りした分此方へと近づくと少し目を下へ伏せながら口を開いた。

 

「母は……私が小さい頃に亡くなりました」

 

「………辛いことを聞くようで悪いが死因は」

 

「事故、なのです。私が幼稚園に預けられている時に交通事故で亡くなりました……なのです」

 

「そう、なのか……」

 

先程まで自然に彼女の口から出ていた「なのです」という語尾が、まるで無理にとって付けたような物へと変わっていた。

今まではわざとその語尾を付けていたかのようで、先程までの彼女と似た雰囲気が少し鳴りを潜めた気がした。

 

「……母は、記憶喪失で倒れていたところを父に助けられる形で出会い、結婚したらしいです。」

 

その言葉に俺は、アイツが無事生きていたことともう会えないこと。

この二つの事実を受け止め、どうにか俺は彼女に言葉を返した。

 

「そう、か……悪いな。色々と不用意に聞いちまって。」

 

「大丈夫、なのです。それでは……」

 

そう言いながら彼女は頭を下げると、俺に背を向けておそらくは厨房と思われる場所へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの喫茶店での出会いから数日後、俺はまた駒王町へとやってきていた。後輩……瑆崋の墓の場所を調べて何とか見つけ出した俺は、色々と道具を揃えて瑆崋の墓のある寺へと来た。

瑆崋の墓の場所を住職に事情を伝え訪ねると、すぐに瑆崋の墓へと案内してくれた。

 

「ここです」

 

瑆崋の墓、正確には夢乃家の墓は大切に手入れされており汚れが殆ど見当たらなかった。

 

「寺へと墓参りに来る若者がいる、それは良いことです」

 

そう言いながら住職は、目を閉じるとゆっくりと振り返って俺を見つめる。

 

「今でも、思い出す事が出来ます。彼女は、葬儀で多くの人が涙を流す中、一度も泣かなかった。それどころか、ずっと笑っていた」

 

「泣いていない?」

 

当時、幼稚園に通う幼い彼女が、人の死について理解する事は難しいだろう。

だが、周りが涙を流す中で、なんで笑っていたんだ?

 

「えぇ、きっと人の死という概念がまだ理解する事の出来ない。現実を理解するのが難しいのだろうと、そう思っていました。そんな彼女に対して恐らくは怒りを覚えたのでしょう、一人の老人が少女の頬を叩きました。『人が、親が死んでいるのに笑うなど不敬にもほどがあるッ!お前のような子が生まれ、さぞかし両親は悔やんだだろうな』と」

 

「ッ……それが、親を失った子にすることかよ」

 

その老人の行った事に対しての感情を抑えられず、手に持った柄杓の入った手桶がピシリと音を立てる。

慌てて力を抜けば住職は続けて口を開く。

 

「それでも、彼女は()()()いました」

 

「は?」

 

「彼女はずっと変わらず、張り付けたような笑顔で言ったのです。『私が泣いてたら、きっとお父さんもお母さんも心配して、安心して逝けないから。』と。」

 

それが、幼い子供の言葉なのか。

いくらなんでも可笑しすぎる、そんなの幼い頃のアイツが考えるなんて大人びているじゃあすませられねぇ。

いくらなんでも早熟しすぎている。

 

「彼女は大人びていた、早熟していた。いや、きっとそうなることでしか、()()()()()()()()()。これまで幾度もの葬儀を行ってきましたがずっと彼女のように笑って、人の死を受け入れていた幼い少女を、私は知らない」

 

「……」

 

口から言葉が出なかった。

 

「彼女は、必ず週に一度……ここへ来ます。それは彼女が葬儀の日から欠かさないことです」

 

「つまり、ずっと……」

 

「えぇ、幼稚園から高校生である今日までずっと……一度も欠かさず彼女は拝みにここへ来るのです」

 

声にもならない声が口から漏れる、ただ、呆然と夢乃家の墓を見つめていた。

 

「んん、少し長話がすぎましたな。では私はこれで」

 

そう言って離れていく住職を見送り、姿が見えなくなったのを確認して俺は目の前の墓へと近付き、持ってきていた花。

瑆崋の名前の元でもあるキンセンカを花立てに入れて、持ってきた菓子。

アイツが好きだった店の和菓子と京都で買った八つ橋を墓へと供え、蝋燭と線香に火をつける。平日だからか、今いる墓の近くには人一人として姿が見えなかった。

手桶に入れた水を柄杓で墓石に流しかける、水がかけられ濡れた墓石が太陽光に少し反射して光る。

 

「よお、覚えてるか瑆崋……いけね。記憶喪失だったなお前……まぁ俺はお前が通っていた学校で結構仲が良かった先輩だ。たく、急に姿を眩ましたと思ったら記憶喪失になってて、更には結婚してて娘がいるだなんてよ、本当に驚いたぜ」

 

目の前にいるわけがない、亡くなった人は返ってこない。

分かっていても、こうして話しかけずにはいられなかった。

 

「お前の娘、本当にお前そっくりで最初はお前かと勘違いしちまった」

 

自然と、自分でも驚く程に穏やかな声でそう呟く。周りには誰にもいない、俺の口から出た言葉だけが静寂な寺に響いているように感じられる。

 

「今でも思い出せるぜ、お前との最後の会話。『私を忘れないで』とか、急に言われてよ。」

 

忘れるわけがねぇだろ、お前は俺にとって大切な後輩で───。

 

気が付けば、自然と頬を涙が伝っていた。

おもわず目を瞑り、目蓋を抑える。

 

『わたしは先輩が、()()になっても()()()()()()()で暮らせるように出来るように頑張ります』

 

【───────】、自身の記憶を代償として捧げることで現実を自分の望む世界へ上書きする力を持つ、ここ数百万年現れてないという神滅具(ロンギヌス)

恐らくは、瑆崋がきっとこの神器の持ち主だったんだろう。

じゃなきゃ、確実に地球へとあたる軌道であった隕石が外れるなんてあり得ない。

 

アイツが自分の大切な記憶を犠牲にして作った未来、そんな未来を生きる俺とアイツの一人娘か。

どれだけ悔やんだだろう、どれだけの悲しみを抱えていたのだろう。

きっともっと娘と過ごしたかったに、甘やかしたくて、一緒に居たかったに決まってる。

 

暫くして俺は目元を覆うようにしていた片手を下ろした。

 

「瑆崋、決めたぜ。何がなんでも、お前の娘が心から笑っていられるようにする。安心しろとはいえねぇが、あの世で旦那と元気でな。お前らがアイツにしてやれなかった分まで、俺はアイツを甘やかしてやるさ」

 

じゃあな、瑆崋。

 

俺は、お前を一生忘れねぇからよ。

 

例えば何年、何十年、何百年経ったとしても。

 






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