ループ経験してそうな少し痛くて不思議ちゃんなキャラで……あれ?なんか…皆の反応、変じゃないです?   作:クレナイハルハ

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本当の想いと愛、喪う悲しさを知った瞳は、愛に溢れて。



第6話

私にとって人間は、全く興味のない存在だった。

 

堕天使として、上から与えられた任務である『危険な神器』を持って生まれた人間が暴走して多くの被害を出す前に消す。

上司であるアザゼル様のお役に立つためと、ただひたすらに、それだけを繰り返す毎日。

かつての私なら………正確には、仕えるべき主である()()()()()()()()ならきっとそんな日々が続いていただろう。

 

「…そんな、そんなバカな!?そんなはずは、何故……何故だ……どうして」

 

そう、続いていた筈だった。

 

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  調  査  結  果  報  告

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【調査依頼対象】シオン・タツナミーナ

【 種 族 】人間、女

【 神 器 】所持の可能性あり

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【調査結果】

・対象と思われる人物、確認できず。

・様々な情報機関での検索結果にも該当せず。

・対象の名称に関わる過去の任務についての

 情報なし。

・提供情報の一つであるタツナミーナ財閥グループの存在を確認できず

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部下に調べさせていた内容の報告に目を通し、自分でも調べた内容である結果に、私は自室で一人大声をあげながら天を扇ぐ。

 

私には上司であるアザゼルや仲間に話すことのできない秘密がある、それは私が人生を……正確には堕天使生?をやり直していることだ。

少し前に思い出した、前世。

今から考えるのであれば、少し先の未来で私……レイナーレは死んだ。

とある神器の保有者だと思われる一人の人間の少女の殺害、排除を命じられた私はターゲットの家にメイドとして潜入した。

その人間の家は財閥と呼ばれる裕福な家であり、メイドがいることに違和感は無かった為に潜入は簡単であった。

そんな場所で出会ったのが排除を命じられたターゲットであるお嬢様、シオン・タツナミーナ様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レナー、今日のおやつは何なのです~?」

 

「はい、ミルクレープと先日届いた新しい茶葉を使った紅茶です。お嬢様」

 

「まぁ!それは素晴らしいのです!!所でお茶はレナが?」

 

「はい、僭越ながら淹れさせて頂きます」

 

「レナの淹れてくれるお茶は本当に美味しいのです、レナが来てからの毎日の楽しみなのですよー?」

 

「ふふ、光栄ですお嬢様」

 

少し前まで人間の言うことを聞くだなんてあり得ない、堕天使は人間より上の存在だと豪語していた私が、こんなにも人間に対して奉仕の感情を抱いていることに私自身驚いていた。

彼女に出会った私は、気が付けば命じられた排除期間以内に彼女を殺すことはなかった。

二人きりにもなった、食事に毒をいれられる時もあったし、お風呂等の他人に見られず殺せる状況はいくらでもあった。

でもできなかった、気が付けば彼女に私は絆され、本気でこの方に仕えたい、側で支えたいと思うようになった。

 

でも、そんな私の願いは叶わなかった。

 

現実は無慈悲で、幸せは続かないのだと知ったのは()()()だ。

 

私はお嬢に頼まれ、ある物を贔屓にしている店へ受け取りに出掛けていた。小さな、ポケットに入るような包みを持ち、屋敷に帰っていると屋敷には、人払いの結界らしきものが張られているのが見えた。

 

「あれは………!?」

 

急ぎ屋敷へと戻り玄関の扉をあける、恐ろしい程に静かな雰囲気が私をより不安にさせた。

早く、早くお嬢様の元へと焦りつつも走りお嬢様の部屋へと向かい、その扉をガチャッと乱暴になりつつも開ける。

 

「お嬢様!!」

 

目の前に広がっていた現実は自分の願っていた平穏とは違い、お嬢様のお側でと願っていた先程までの私を嘲笑うかのようだった。

 

窓ガラスは割れ、床にガラスの破片が散乱し。

 

「……あ」

 

壊れ床を転がる椅子、散らばる雑貨品。

 

「ぁあ」

 

床についた赤く、見慣れたはずのその液体の上で横たわった、胸にぽっかりと穴の空いた少女。

 

「ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"あ"!!」

 

喉から出たのは、叫びだった。

だが、そんな叫びも次第に小さくなり私は崩れ落ちた。

微かな希望を求めて少女の元へと歩む、まだ生きているのではないか?息があるのではないかと、ありえない希望にすがりながら、私は血の水溜まりに沈む彼女に抱き起こす。

 

「お嬢様ッ……お嬢様ぁ……」

 

目の前にいる少女は、私の言葉に反応しない。

 

いつもならふんわりと優しくも儚さを感じさせてくる微笑みを浮かべず、お嬢様はその瞼を閉じたまま動かない。

目から流れ頬をいくつもの涙が伝い、お嬢様の体へと落ちて赤く汚れた服を更に汚していく。

この部屋を、お嬢様の傷を見れば、誰がこのような真似をしたのか理解できた。

 

きっと上は私が任務を遂行できないと判断し他の堕天使に任務を任せ、お嬢様の事を殺させた。

 

人間の命は短く、脆くて脆弱だと知っていた。 

 

だって、私はこれまでそうしてきたのだから。

 

初めて、人間に対して奉仕したいと感じた。

 

初めて、人間と共に心から笑った。

 

初めて、側にいたいと……護りたいと願った。

 

初めて、私は人間に対して愛を覚えた。

 

初めて、私は人間に仕えると誓った。

 

なのに、私のせいで……私が殺さなかったから、私が来たから私のせいでお嬢様は死んだ。

 

暫くの間、涙を流し続けていた私はその体勢からかポケットからお嬢様に頼まれていた荷物がこぼれ落ちていたことに気付いてお嬢様をそっと床へ寝かせると荷物を拾い上げる。

荷物が転がったからか、それとも走っている途中で何かに引っ掛かったのか荷物を包む紙が少し破けていた。

破れた隙間から見える『レナ』の文字に私は、思わずその荷物を包む紙を剥がした。

 

「あぁ……」

 

そこには先程見えた『レナ』の文字が描かれていた箱だった、箱を開けるとそこには独特な波のような花形で紫や青の色合いが特徴的な花がついたデザインのヘアピンがあった。

そしてそんなヘアピンの下に折り畳まれた小さな紙が挟まっており、手紙らしきそれを広げた私は目を見開いた。

 

『レナへ、貴女が私の元に勤めて1ヶ月が経つのですね。お疲れさまなのです、勤めて1ヶ月の記念にこれを送ろうと思うのです、喜んでくれたら嬉しいのですよ。どうかこれからもずっと、一緒にいてね』

 

お嬢様が描いたらしき小さな手紙だった。

 

悲しみ、罪悪感、喪失感など上げたらきりのない感情の波が私の心の中を暴れまわる。

 

「お嬢様、私は……」

 

「随分と、遊んでいた様子だったなレイナーレ」

 

聞こえてきた聞き覚えの無い声と、その話の内容から私は先程までの感情の波が一瞬で静かになっていく。

涙を流していることを気にせず話しかけてくる、部屋の惨状を見ても動揺しないばかりか、私の名前を知っている事から後ろにいるのがどんな存在なのか、直ぐに理解できた。

そして理解したと同時に、胸を何かが貫き突き出てきた光の槍に身体中の力が抜けて地面に座り込む。

 

「ゴボッ」

 

喉から競り上がってきたなにかが口から漏れる、赤い液体が……血が私の口から流れ出た。

 

ああ、お嬢様がくれた手紙とプレゼントが……汚れて。

 

「このような小娘、1ヶ月かかっても殺せないとは堕天使とは思えん」

 

そういって私の背後に立っていた堕天使は手に持った光の槍を此方へと向ける。

ソイツから聞こえてくる声に、私の胸の中で膨らむ感情を表現するならまるで、真っ黒な炎のようだ。

 

「貴様が、貴様がお嬢様をッ!!」

 

「何を!?」 

 

手に精製した光の槍を後ろに立つ堕天使へと振り返りながら突き出す、その槍は後ろに立っていた堕天使の胸を貫く。

驚きからか、痛みからか目の前にいる堕天使は顔を歪ませ膝をつく。

一方で私は先程まで感じていた身体の痛みが消え、立ち上がっていた。

 

「お嬢様の、仇ィイイイイッ!!」

 

光の槍を振り下ろす、次の瞬間にソイツの首と体が離れた。

先程まで聞こえてきたソイツのうるさい声ももう、なにも聞こえない。

手の中の光の槍が消滅すると同時に私は地面へと倒れこむ、なんとかお嬢様の仇は討った。

 

これが、今目の前にいるお嬢様に出来る最大の奉仕だと思う。だんだんと体に力が入りづらくなり、瞼が重くなっていく感覚に終わりが近いのだと感じる。

なんとか、残るちからを使って床を這いずり彼女の……お嬢様の隣で彼女の手を握った。既に冷たいはずのその手が、なぜか暖かく感じたのは死ぬ寸前に感じた自分の体温なのだろうか。

 

「おじょ、さま……わた、しも──」

 

すぐに、私も一緒にいきます。

 

あぁ、もし生まれ変わり……まだお嬢様に出会えるならもう一度会いたい。

 

もう二度と……お嬢様を失いたくはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして私は死に、何故かお嬢様と私が死ぬ筈であった前に、正確にはお嬢様の屋敷に潜入する任務を受ける前にまで戻っていた。

これなら、お嬢様を助けられるのではないかとそう感じた私はさっそくお嬢様について調べたのだが結果は驚きと悲しみだけだった。

 

お嬢様、そしてお嬢様の屋敷や財閥すら存在しないのだ。

 

その悲しみにくれているなか、新しい任務が入った。その知らせは奇しくもお嬢様の殺害任務が私へと任された日であり、任務の内容は『神器を持っている人間、兵藤一誠を排除しろ』という全く違う別のものだった。

私は、即座に他の堕天使数名と共に兵藤一誠の殺害をするため駒王町へと派遣された。

 

「なぜ、私だけなの……」

 

そして兵藤一誠を殺した数日後に、駒王町を人間のフリをして歩いていた私は思わずそう呟いた。

なぜ、やり直すチャンスだったのにお嬢様がいないの?

私がこうして記憶を持っているから、前と違う世界になってしまったの?

そもそも、私は本当にやり直しているのか?

この世界は、前の世界とは別の世界なんじゃないのか?

 

そんな疑問ばかりが脳に浮かびため息をつく。

 

ふと、向かいの道路を歩いている駒王学園の生徒と思われる制服を着たある人物を見つけて私の心臓は大きく跳ねた。

その人物は、少女は綺麗な黒髪をサイドテールにしており、シオンお嬢様とそっくりだった。

雰囲気も、歩き方も、笑顔もなにもかもが。

 

「あぁ、きっと」

 

あの少女は、お嬢様の生まれ変わりだ。

 

私はこうしてまたレイナーレとして生まれ直したが、彼女は違ったのだろう。

だが、そんな違いは私にとってはどうでもいい。

 

「もう一度、貴方に仕えることが出来るんですね……お嬢様。」

 

 

今度こそ、今度こそ私はお嬢様を護り側で仕え続けます。

 

待っていてくださいね、お嬢様。

 

 

 





ヘアピン→贈る意味は「一緒にいたい」。
タツナミソウ→花言葉は「命を捧げる」「忘却」「精神の安定」


ご愛読ありがとうございました。

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