ただ、今の状態では人の事を気楽に心配できる状況でもない。
こうしている間にも、少しずつ脅威は僕に近づいてきている。早く何か考えないと死ぬ。
自分のスキル使おうにも今の立ち位置はまずい。他に方法もあるが更なる不幸が起きる危険性があるので容易には使えない。
ここはアレしかないかと心の中で決心し、まさにそれを決行しようとしたその時・・・
「さすがのナオもこれで終わりだな、鬼の一撃を受けて死ぬがよいわ!!」
あまりに僕の追い詰められ方が愉快で面白く油断していたのだろうか。
光はその言葉を本当にはっきりと口にしてしまっていたのだ。
その瞬間、この場にいる皆が、あっ、と思った。あの美歩でさえもが。
そして、その刹那、真衣の無言の拳が光の腹部に見事に入った。
「ぐはぁっぁぁぁあぁ。」
そして、あまりの苦痛のためか光が倒れる。
「ピカルンーーー」
思わず、僕は光の愛称を叫んでしまった。
「なんてな、なんとか助かったぜ」
倒れていたはずの光が立ち上がった。
光が立ち上がった事に対して本人と真衣を除く全員が驚きを隠せなかった。
「どうして!?」
一番、最初にその驚きを言葉に出したのは僕だった。
「説明してやろうか、ナオ」
光は、僕の疑問の声を聞いてなのか少し機嫌がよさそうだ。
普段なら何があったかを僕だけじゃなく光と真衣以外も分かったのだろうが、僕たちは光の地雷発言の方に衝撃を受けすぎていて反応が遅れたのだ。
悔しいが光に聞くしかない、どうせ真衣は自分で解説しないだろうからと思い聞こうとした。
「悔しいけど、教え・・」
だが、僕の質問は最後まで言い切ることなく中断されるタマちゃんの一言で。
「そうか、完全にわかったぞ!」
唐突なタマちゃんの声で光・真衣以外の誰もがタマちゃんの方を見る。
「聞きたいかね?」
タマちゃんはそんな風に訪ねてくる。だが光の言い方よりはイラッとしないという意味で、マシな言い方だったので、僕はタマちゃんの方に訪ねることにした。
「聞きたい、聞きたい」
僕が訪ねる前に、僕よりタマちゃんの近くに居た美歩が訪ねているのが聞こえてきた。
「私もちょっと気になる。」
「確かに少し気になるよね。」
美歩に続いて優子も興味があるように言い、それに明莉も同意する。
そして、最後に僕が、真衣と光の向こうに居るタマちゃんに対して畳み掛ける。
「見抜けなかったことは悔しいが、僕も気になる。教えてくれタマちゃん!」
その声を聴いて、十分に満足したのかタマちゃんは説明をし始めた。
「では、説明しよう。よく聞きたまえ。確かにあの時、我々は驚きのせいで唖然としていた。そうピカルンさえも、だがさすがはピカルンだと思うのがその状態からでもバックステップ回避をしたことだな。どうかな。」
タマちゃんが満足したように説明をし終えると、僕達は光・真衣の方を確認するように見る。
意外なことに、僕達の答えを確認する視線に答えたのは光でなく怪訝そうな顔をした真衣だった。
「確かに微かに避けられた、でもそれでも倒れているはずなんだけど、そこが不思議なのよね。一つおかしく思ったのは光が固かったことなのよね。あの感触、どっかで殴ったことはあるんだけど・・・。」
その瞬間、光が反応した。
「ふっ、確かにタマちゃんが言ったことは大体合っている。だが、一つだけ分からなかったようだな。答えを教えてやんよ。」
そう言って、光が自分の服の下から出したものは真衣の拳の形に抉られた鉄板だった。
その鉄板に対して光以外の誰もが驚愕した。
だがここで、どうして光は鉄板なんかを仕込んでいたのだろうかという疑問が僕の頭の中によぎった。他の皆も同様だろう。
そして、その答えは、僕らが聞き出す前に光自身が喋った。
「いや~まさか、ナオをぶん殴ろうと仕込んでおいた鉄板がこんな風に役に立つとはな。」
笑いながら、言ったことは本当に最低だった。
「・・・って、おいピカルン、おかしいだろう、それは」
僕を鉄板で殴るだと、何を馬鹿な事を考えていたのだ。しかもその鉄板はかなりの質量をもっていそうなものだった。
「なるほど、そういう事だったのか。」
「なるほど、そういう事だったの。でも、もう防げないよね。というわけで光、ナオ準備はいい?」
僕の抗議はタマちゃんの納得と真衣の不気味な納得にかき消された。
その奥では、優子と明莉が呆れた様な顔をしていた。そして、美歩はその二人を見て呆れてる顔の二人も可愛いとか、何とか言っているようだ。
「ナオ、今は鉄板の事は考えず、二人で協力して逃げるぞ。」
そうだった、今は、あの鉄板に能力無しで深い拳の跡を残した真衣から逃げる事の方が先だ。光の処刑は後でもいい。
「わかったよ、ピカルン。で、どうすればいい」
「そうだな、まずは、お前が真衣を引き付けて、俺が逃げる。」
そんな風に言ってくる光。
「その後は、どうするの。」
僕は嫌な予感がしたので、そう聞く。
「もちろん、後はお前が逃げて俺は安全になる、以上。」
何を考えているんだあいつは本当に最低だなと思いつつ、僕は、その役割を全力で光にさせようとする。
「何をバカなことを言っているんだピカルン、普通は逆だろう。」
「いや、お前だろうナオ」
光も、僕と同じように僕に役割をなすりつけようとしている。
だが、これが間違いだった。そんなことをやっている間に真衣が光に近づき、光を投げたのだ。勿論、他の皆に迷惑をかけないため、僕の方向に向かってである。怒ってても冷静だね。
「これなら、大丈夫だよね。」
そんな風に言って迫ってくる真衣。
「「まずい、こうなったら一緒に逃げよう(逃げるぞ)」」
僕たちの意見はハモるように一致した。
だが、その瞬間、この騒動は収まった。
「もぉう、みんな早く行くよ。」
この明莉の一言で。
よく見ると向こうも美歩がいつも通り暴走していて大変そうだった。面白がっているのはタマちゃんぐらいだった。
結局、明莉のおかげで色々と助かった僕達だった。
そして、僕たち幼馴染仲良し(?)集団は、学生寮から学校まで登校し始めた。