塩昆布の優雅な日常   作:numatti

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パートD

 ここで、少しこの世界と僕と僕の幼馴染達について説明しておこう。

 この世界は誰もが一人一つ能力を持つ世界。多種多様な能力の存在する世界。ちなみに僕こと羽田雅尚の能力は“flag”といい、物事のフラグを立てたり折ったりすることができる能力。そして先程、僕を襲った能力は空羊夢の睡眠を妨害するものを排除する“sleep”、そこから僕を助けたのは深さを操る瀬尾孫左衛門ことタマちゃんの“deep”、そして、僕にトドメをさした能力は何が起こるか分からない笹田光の能力“happen”これらが僕ら幼馴染男子グループの能力である。

 さて、僕の愛しの幼馴染女子たちの能力はというと、愛川明莉の能力“love”に篠宮真衣の“steam”,不知火優子の“heal”、高瀬美歩の“fantasy”である。説明はまた後日にすることにする。

 何故かというと僕は今、嫌な予感がしているからだ。

 そう思った瞬間、ものすごい衝撃が僕の右頬に与えられた。

 そして、目を覚ます。ぼんやりといつもの教室の光景と幼馴染達の顔が目に入り、そして外から登校し始めてきた他生徒の声が聞こえる。

「あっ、目、覚めたナオ?」

 疑問符が立ちそうな声で言っていて可愛いはずの真衣に何故か恐怖を覚える。

「もう、そんな起こし方したら、ナオが死んじゃうでしょ」

 意識の遠くの方で真衣に向かってそう怒る明莉の声が聞こえる。

「お~い、大丈夫か」

 光が、一応の意識確認してくれているようだ。

「うん、大丈夫、ナレーションやらされたけど」

「はあ?何言ってんのナオ、まだ寝ぼけてんの」

 そう言って近づいてくる真衣の右手は蒸気を帯びていた。

 そして、僕の右頬には激痛が甦り、謎の恐怖の謎が解ける。

「待ってくれ、お…いや真衣…大丈夫だから、殺さないで」

 真衣の右手の蒸気は、真衣の蒸気を操るスキル“steam”によるものであり、好戦的な真衣が使うと、冗談ですまなくなるスキルである。

 なぜなら、そのスキル“steam”の乗った真衣の拳はフルスピードの蒸気機関車並みの一撃を持つ。つまり、能力発動中の真衣に殴られる=蒸気機関車に轢かれる=死という方程式が成り立つ。いやそうでなくとも、朝から、能力無しで鉄板にその拳の跡を残した真衣なのだ、方程式を考えなくとも死んでしまうことは明らかだ。

そもそも、小さいのに女の子と思えない力を持つ真衣にこの能力を与えたのは誰だと心から叫びたい。

「…お…何て?」

 一度止まりかけた殺気と言う名の蒸気を再び帯び、ゆっくりと笑顔でこちらに向かってくる。

 まずい、真衣のことを、鬼と言いかけたことに気付かれてる。こういう時、真衣は感がよくなるから困ってしまう。

 朝と同じかわし方をしようとしても、雅尚の能力の問題として、言葉や行動でフラグを操る間接方と、触れる事で発動する直接方があるのだが、国語に難のある雅尚が間接方を使うと更なる地雷を踏みかねないし、直接方にしても助けてくれる仲間は真衣の向こう側で、真衣に触れるのもありだが、その前に殴られるのは分かりきっている。

 最終的に、自分に触れて絶対的回避フラグを立てるという結論に達し、それを決行しようとした瞬間、雅尚の視界と感覚がスローになる。

「ナオ、危ない!」

「馬鹿ナオ、乙」

「これはこれで、見ていて面白いな」

「あ~ぁ、お疲れ様です。」

「怒ってるマイちゃんも可愛い!」

「zz……」

 幼馴染達のそんな声(一人寝てる)が聞こえてくる中、僕は当初の自分の考えとは違い、目を閉じ自分の生を紙祈りながら、腕でガードをしようとした。

ただ、雅尚の腕はガード体制に入りきれず、代わりに両手で何かをつかむ。

なんだ、これと僕は思った。正直に言ってそれが何か、目を閉じている僕には分からない。分かる事は、それが平らで微かに柔らかい何かであることだけだった。

恐る恐る僕は目を開ける。そして僕は絶望することになる。

「………」

「………」

僕が掴んでしまっていた物は、そうそれは、真衣の控えめの胸だった。 

青ざめていく僕の顔とは正反対に、見る見るうちに、赤面する真衣。

駄目だ、完全にフラグが立った。そう思った瞬間、僕は真衣より、早く行動しようとした。

「こんなときこそ死亡フラグをあっ…折…れない!?」

 なぜなら、僕がそのフラグを折るよりも早く、真衣のビンタが僕の頬に達していたからだ。

バッチィーーーーーーーーーーーン

 そんな乾いた音が、すがすがしい朝の学校に響き渡った。

そして、僕はそのまま教室の後ろまで吹き飛び、壁に全身を打ちつけ、再び意識を失った。

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