食禍の妖精   作:根本芳樹

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タイパ金融

 初めまして、お世話になります。私、担当のデカラビアと申します。本日は改めましてよろしくお願いいたします。

 はい、時間窓口に関しましては特別でして。人間のお客様の場合でもこうして別室にて個別にご説明させて頂いております。

 ええ、では改めてですね、こちらパンフレットになりますので、当行のサービスである「時間売買」に関してご説明させていただきます。

 初めにお断りしますが、我々のサービスは海外のほうで一時期話題になっていたような互助サービスとは別になります。

 我々の「時間銀行」は、我々が提供する、我々のための……失礼、時間を有効活用したい人間のためのサービスです。

 

 え?

 他の人は契約に「時間」なんて求めてこない?

 申し訳ありません、私ちょっと世間の流れには疎くてですね、他の者はなんと?

 ほう、魂? 生命? 血肉?

 ぷっ、ふふ……人類の九割にはそんな価値な……いや失礼、たしかにそういうものを欲する同族もいるでしょうね。

 ですが、我々は違うのです。

 ……そうですね、これは先ほど私の同僚がやってきた仕事になるのですが、考えてみてください。一生働かずぼんやりと過ごしてきた者と、明後日娘が結婚式を挙げる余命数時間の父親。この二人では、『三日間』の価値が異なります。

 そう、残された時間の価値。

 端的に言ってしまえば、時間というものは人間が唯一あらゆる価値と引き換えにできる、ほぼ平等な『貨幣』なのですよ。

 我々が行っているのは、前者の方からの三日間の時間の買い上げ、そして後者の父親への売却。

 どうです、立派な善行、社会貢献でしょう? 他の者の「契約」とは全く異なるのですよ。安心安全です。証拠に、この国の法律でも我々は営業を認可されていますし、国のいくつかの機関や省庁とも節度を以て取引をさせていただいているんですよ。

 ああ、もちろんですが、残り寿命全部ですとかそういったことはしませんよ。きちんと審査をしてこちらに利がないと……いや失礼、とにかくそんな、人間側の命に関わるとか、法に触れるような融資はできません。

 それで、本日は確か……。

 

 ……ほう、ええ。

 ええ。人生で無駄にしたと感じていらっしゃる時間の買い取りは可能です。

 ただ、こちらのパンフレットにもありますように、こういったデメリットが……。

 

 ふむ?

 

 ……なるほどね。

 

 ええ、ええ、可能ですよ。可能ですとも。

 では、何年分を?

 

 ほうほうほう。ええ、ええ、ええ!

 よいでしょう。よいでしょう。よいでしょうとも!

 それではそのように。

 お見積りとしては……はい、このくらいでしょうかね。

 

 ええ、では、こちらにサインを。

 

 間違いなく。

 それでは、契約成立です。

 

 こちらこそ。

 今後も機会がありましたら何卒よろしくお願いいたします。

 

 ええ。

 機会がありましたら、ね。ぜひね。

 

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