コズミックアーカイブ(仮面ライダーフォーゼ×ブルーアーカイブ)   作:炙り中トロ

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すみません!ちょっと投稿が遅れました!

文章がぎゅうぎゅう詰めで読みにくいという声をいただきましたので、セリフと文章を分けてみました。
過去の話も随時修正したいと思います。


対策委員会編 第二章
第10話 風・紀・襲・来


「おはよー」

「……おはよう」

「うわ、アルちゃん、徹夜でもした?」

「ううん、一応寝たわ…」

 

目をこすり、重い瞼を無理矢理開いてオフィスに入るアル。

びっしりと出来た隈に流石のムツキも心配するが、アルはゲッソリと、とても大丈夫とは思えないような声量で言葉を返した。

 

「社長、なにか悩み事でもあるの?」

「作戦はもう立てたでしょ?バイトを2倍雇って、地の利が生かせる場所にアビドスを誘導する。」

「そのための爆弾はもう、ハルカが仕掛けてる。」

「はい、このボタンを押すだけで、主要ポイントに埋めた爆弾が全て……」

 

計画は完璧。バイトで補えきれない実力差やホシノを潰すのに効率的な作戦をもう既に実行させてある。

なのにも関わらず、アルの顔は虚空を見つめるように暗く、淀んでいた。

 

「なぁに死にそうな顔してんの?それなら最初から手付金貰っとけば良かったのに。」

「……いいえ、手付金はもらわないのがうちの鉄則よ。」

「貰ったらクライアントの命令に従わざるを得なくなるから…って理由だっけ?」

「ええ。私たちで華麗に仕事を終わらせてから依頼料は貰う。そうじゃないと、私たちの追求するビジョンは達成できない。」

「ビジョン?そんなのあったっけ?」

「あるわよ!!法律と規律に縛られないハードボイルドなアウトロー!それが便利屋68のビジョンでしょうが!!」

「あぁ、そういえばそんなんあったね。」

 

アルは唾を散らしながら叫び、その拍子に百均で買った外見だけは豪華な壺が地面に落ちて粉々に割れてしまう。それを見たムツキはからかうように笑い、カヨコは「掃除大変なのに・・・」と頭を抑える。

ハルカは「?」がよく似合う顔をしていた。

どうやら、アル以外は便利屋のモットーだのビジョンだのあまり気にしていないようだ。

 

「とにかく!さっきカヨコが言ったように、クライアントの依頼も同じ。それが私たちを縛る楔になることもある。私たちが望まない行動を強いられるかもしれないのよ。だから、依頼料は絶対に成功報酬として受け取るの!」

「……そんなにプレッシャーを感じてるなら、いっそ荷物まとめてゲヘナに戻るのも手だよ。」

「はあ!?」

「べ、別にプレッシャーなんて感じてないわよ!ただ…ちょっとだけ……」

 

ゲヘナに戻る提案をされ、露骨に動揺するアル。カヨコ自身、もう便利屋としての活動を続けることが少々キツイのではないかと思っているのだろうか?

ただ、ゲヘナに戻ることに関しては、アルだけでなく、ムツキも顔をしかめる。

 

「う〜ん……今帰るのは無謀じゃないかなぁ?風紀委員会が黙ってないだろうし。」

「…風紀委員会……か………」

 

風紀委員会……そのワードを聞いたカヨコの頭に風紀委員会の幹部、そして風紀委員長の姿が思い浮かぶ。その表情からして、あまりいい思い出はないようだ。

 

「ゲヘナどころか、キヴォトスでも最強と言われてるけど、今の私たちはあいつらから逃げてきた訳じゃない。」

「そもそも、うちらの風紀委員会がキヴォトス最強とも噂される一番の理由は────────」

「─────風紀委員長、空崎ヒナの存在があるから。風紀委員長一人で風紀委員会の戦力の大半を担っていると言っても過言じゃない。実力も先生と互角──────まで行くかは分からないけど…」

 

カヨコの脳内に、凄まじい眼力でこちらを睨む風紀委員長、空崎ヒナの姿が浮かぶ。それは他のメンバーも同じようで、アルはおろか、ムツキとハルカですら軽く身震いをする。それほどの威圧感が、記憶だけの情報からでもあるのだ。

 

「……でも、言い換えたらヒナ以外の風紀委員は大したことないってこと。きちんと計算を練れば、勝機は十分ある。」

「へぇ~、カヨコっちそこまで考えてたんだ?」

「…いえ、今更ゲヘナに戻るって選択肢はないわ。」

「かと言って…はぁ……」

 

アルはゲヘナに戻る気はないらしい。その面構えは本気だ。だが、このままだと何も進歩しない。そう思うと、気が抜ける。

 

「一体何が引っ掛かってるの?」

「まぁまぁ、つまんない話はそのくらいにしてご飯食べに行こうよ!柴関ラーメン!」

「……また?」

 

気まずい。カヨコの脳内はその言葉で埋め尽くされた。

そりゃそうだ。仕事とはいえアビドスとはほぼ恩を仇で返す形でバチボコにやり合った仲だ。

しかもポンコツ社長が昨日、あろうことかアビドスに憧れを持ってしまった。勘違いとは言え、このまま会うのは気まずい。

全員がムツキくらいメンタルなり心が強かったらいいのだが、生憎そんなことはない。

 

ムツキ「まーまー、バイトちゃんは午後からしか入らないらしいし、鉢合わせなきゃ大丈夫でしょー。」

カヨコ「まぁ、美味しかったもんね。とにかく、社長を元気づけないと。」

ムツキ「よ~し、じゃあ行こ行こ〜♪」

 

こうして、便利屋一行は再びアビドスの柴関ラーメンに向かうことになるのだった。

 

 

 

 

「おはよ!ホシノ、ノノミ!」

「おはよー、先生」

「先生、おはようございます、今日は早いですね?」

 

弦太朗は今日も今日とてアビドスの教室までやってきた。用事が早めに終わったので、顔を出す時間も早くなったのだが、教室にいたのはノノミと、ノノミに膝枕をしてもらっているホシノだけだった。

 

「お、リラックスしてんだな。」

「ノノミちゃんの膝枕は柔らかくてサイコーなんだよー、私だけの特等席だもんねー。先生はあっちの座り心地悪そうな椅子にでも座ってね〜」

「私の膝は先輩専用じゃないですよう…」

「なはは……ところで、他の皆は?」

 

ノノミの膝は渡さない……!と言わんばかりに籠城体勢に移るホシノと、内心まんざらではないものの、困り顔のノノミ。弦太朗はそんな平和な光景を見て軽く笑いながら、他のメンバーの所在について問うてみる。

 

「そうですね…のんびり出来るのは久しぶりですから、今は皆やりたいことをしているんでしょうね。シロコちゃんはきっとトレーニングでしょうし、アヤネちゃんは多分勉強しに図書館でしょうか?セリカちゃんは…バイト、ですかね……」

「ノノミちゃんは学校の掃除と教室の整頓をしてくれたよね、うへ~、みんな元気で真面目だなぁ。」

「へへっ、ホシノはいつものお昼寝か?」

「御名答〜私はいつもどーり、ダラダラしてただけだよ~」

「先輩も何かはじめてみてはどうでしょう?アルバイトとか、筋トレとか。」

「無理無理ー、おじさんは年齢的に無理がきかない体になっちゃったもんでねー。」

「歳は私とほぼ変わらないですよ?」

 

ホシノは腰を抑えながらその見た目と年齢に合わないことを言うと、「よっこらしょ」っと立ち上がった。

そんなホシノにノノミはツッコミを入れる。いつものことだ。

 

「うへ~、とにかく先生も来たし、みんなもそろそろじゃない?そんじゃ、私はこの辺でドロン。」

「あら、先輩どちらへ?」

「今日のおじさんはオフなんでね、てきとーにサボってるから、何かあったら連絡ちょーだい、ノノミちゃん、先生、またあとでね~」

 

ホシノはそう言い残して、あくびをしながら、何故かこちらに表情を一切見せないまま姿を消した。

とはいえ、ホシノのプライベート事情など二人が知るはずもなく、いつも通りという感じで見送る。

 

「ホシノ先輩、またお昼寝しに行くみたいですね。」

「そろそろみんな来るのに、大丈夫か?」

「う~ん…多分大丈夫じゃないでしょうか?会議はアヤネちゃんが進めてくれますし。」

「それに、ホシノ先輩も以前と比べて大分変わりましたから。」

「変わった?」 

 

変わった…変わったとはどういうことなのだろうか?以前のホシノはちゃらんぽらんな性格ではなかったのか?

疑問符が弦太朗の頭に浮かぶ。

 

「…以前のホシノ先輩は、常に何かに追われている感じだったんです。」 

 

弦太朗が考える暇もなく、言うより前にノノミがそう答えた。ただ、気になるのはこの先、何に追われていたか、である。

 

「何にって言うと、ありとあらゆることに、とでも言いましょうか…」

「ありとあらゆること…」

 

こう言っては何だが、ホシノがナニカに苦悩するなど、想像もつかない。

昔の彼女がそうだとして、ここまで変わったのだとしたら………アビドスにはまだ知らない秘密や、知らない方がいい秘密でもあるのだろうか?

 

「聞いた話ですが、どうやら昔、とある先輩がいたそうで、アビドス最後の生徒会長だったらしいんですがとても頼りない人で、その人がここを去ってからはホシノ先輩がここを引き受けることになったと…」

「ホシノ先輩は当時1年生だったらしいです。私も詳しいことは分からないですけど…今は先生がいますし、他の学園の人との交流もあります。」

 

そう言うノノミの脳裏に、ヒフミや便利屋のみんなが浮かぶ。

ヒフミはともかく、便利屋は敵対者でもあるはずだが、ノノミにとっては全部、大切な思い出なのだ。

 

「以前だったら他の学園の人と関わること自体イヤだったはずが、大分丸くなってます。」

「先生のおかげですね☆」

「そう言ってくれると、俺も嬉しい。ここに来た甲斐があるってもんだ。」

「ふふっ…先生、本当に感謝してます。ですから…」

「?」

「これからも、よろしくお願いしますね。」

 

ノノミはそう言って腕を出してきた。これが意味することは、もう決まっている。

 

「あぁ。俺のダチは全部、俺が守る。」

 

弦太朗はノノミの気持ちに応える。友情のシルシだ。

もうすぐあとの3人も来る。こうして、今日のアビドスの1日が始まっていくのだ。

 

 

 

 

 

「……」

 

学校を出たホシノは、どこかのオフィスの中に来ていた。壁は強化ガラス張りの明るい場。

そんなホシノの前に、この前カイザーPMCの理事と話していた黒服がいた。

ホシノは大人嫌いのためか、それとも黒服という存在そのものに嫌悪感を持っているのか、彼を睨みつけている。

 

「おやおや、これはこれは。」

「お待ちしておりましたよ。暁のホル…いや、ホシノさんでしたね。これは失礼。」

「まだキヴォトスには馴染めていないものでして、まぁこちらへどうぞ。ホシノさん。」

「……黒服の人、今日は何の用なのさ?」

 

弦太朗に対してのものとは明らかに違う、隠す素振りもないホシノの怒気と殺意が黒服に向けられる。それでも尚、黒服は表情を崩さなかった。

 

「色々と状況が変わりましてね、今回は再度、アビドス最高の神秘をお持ちのホシノさんにご提案をと思いまして。」

「提案?ふざけるな!!!それはもう何度も───!」

「まぁまぁ、落ち着いてください。」

「──────!?」

「お気に入りの映画のセリフがありまして、今回はそれを少し変えて引用してみましょう。」

 

黒服はそう言うと、オフィスにある背もたれに腰掛け、机の上で手を組み、そのセリフを言い放つ。 

 

「素晴らしい提案をしましょう。」 

 

 

 

 

 

「お、来た来た!いっただきまーす!」

 

一方その頃、柴関ラーメンでは便利屋がラーメンを啜っていた。4人の麺を啜る音がリズミカルに響き渡る。

そんな彼女らを見て、大将は満足気だ。

 

「ひ、ひとりにつき一杯…こんな贅沢しても良いのですか?」

「こんなに美味しいのにお客さんが居ないなんて。」

「場所が悪いんじゃない?廃校寸前の学校の近くだし。」

「…まぁ、美味しいからいいけど…それじゃ、いただき…」

 

ムツキとカヨコとハルカはあれこれ話しながらラーメンを楽しむ。だが、アルは違う。

ムツキが言っていたように、アルは便利屋へのモチベが高い。

依頼の失敗、それによるクライアントから受けた屈辱、更に覆面水着団を目の当たりにしたこと、そして、柴関ラーメンの大将にアビドスのお友達認定されたことが悔しくてならない。

そして、それに対して心が持つわけがなく……

 

「─────じゃない。」

「ん?」

「友達なんかじゃないわよぉーーーっ!!」 

 

アルはそう言うと、机をダンッと叩いて勢いよく立ち上がった。

 

「わわっ!?」

「やっと分かった!これまで何が引っ掛かってたのかが!この店よ!」

「!?」

「どゆこと!?」

「私たちは仕事しにここに来てるのよ!!ハードボイルドに!!アウトローっぽく!!」

「それがなによこれは!!この店は!お腹いっぱい食べれるし!!温かくて親切で!話しかけてくれて、和気あいあいで、ほんわかしたこの雰囲気!」

「ここにいたら本当に仲良くなっちゃいそうじゃない!!」

「え?それに何か問題ある?」

「問題しかないわよ!私たちが真のアウトローになるためには、こんなほんのり感いらないのよ!必要なのは冷酷さと無慈悲さなの!」

「いや、それは考えすぎなんじゃ……」

 

アルのいきなりの謎の突拍子もない発言にムツキは驚き、カヨコはため息をした。ハルカは何かカバンを漁ってゴソゴソとしている。それに気づいた一同、ハルカを不思議そうに見る。

そして次の瞬間、場は凍りつく。

 

「…つまり、こんなお店は消えてなくなってしまうということですね?」

「…へ?」

「あぁ、ようやくアル様のお役に立てます…!」 

 

ハルカがそう言って取り出したのは、なんと起爆装置。それを見た他の便利屋メンバーは目を丸くする。

 

「起爆装置?なんでそんなのを…」

「!ハルカ!ち、ちょっと、待っ…」

 

カヨコが静止をかけた時にはもう遅かった。ハルカは起爆装置のスイッチを押してしまった。

ピッという音が、終わりを知らせた。

 

「……へ!?」

 

アルが素っ頓狂な声を上げた時にはもう、柴関ラーメンに仕掛けてあった爆弾が大爆発し、便利屋メンバーは白い光に包まれるのだった。

 

 

 

 

 

「前方、半径10km内にて爆発を検知!近いです!」

 

当然、その爆発はアビドスにも知られる。アヤネの声に反応して、弦太朗、シロコ、ノノミ、セリカは椅子から立ち上がった。 

 

「10kmってことは……市街地?まさか襲撃!?」

「衝撃波の形状からすると、C4爆弾の連鎖反応だと思われます。もう少し確認して見るので少々お待ちください!」

「えっと場所は…柴関ラーメン!?柴関ラーメンが跡形もなく消えてしまいました!」

「はあ!?どういうこと!?なんであの店が狙われるのよ!」

 

柴関ラーメンが爆破された、と聞いて、当然そこで働いているセリカは声を荒げた。顔には憤りと対象の安否を心配する不安と焦りがうかがえた。

 

「戦略拠点でもなく、重要な交通網でもないのに。一体誰が…?」

「色々とありそうですが……まずは行かないとです!」

「このまま黙っちゃいられねぇ!出動だ!」

「ホシノ先輩には私が連絡しておきますので、行きましょう!」

「大将…無事でいて……!」

 

弦太朗たちは急いで準備を整える。そして、セリカが汗を垂らしながら真っ先に飛び出していき、他のメンバーもそれに続いて、走って行った。

 

 

 

 

「ゴホッゴホッ…うわぁ…ラーメン屋跡形もないじゃん……」

「うぅっ、何が起こって……」

 

爆発に巻き込まれ、一瞬何が起こったか分からなかった二人は辺りをキョロキョロと見回した。

すると、気まずそうに目を地面に向けるハルカが目に留まる。そうだ、ラーメン屋を爆発させたんだ、と、カヨコは頭を抱えながら思い出した。

 

(な、なにが起こったの!?)

「…アルちゃん、マジで、本当にやっちゃったの?」

「えっ!?」

 

一番状況が飲み込めていないのはアルだ。そんなアルに、ムツキは目を輝かせながら話しかける。アルは当然困惑している。

 

「あんだけ世話になったラーメン屋を容赦なく爆破するなんて…」

「流石アルちゃん!冷酷無比でハードボイルドなアウトローだね!見直したよ!」

「へっ?あっ、あはは!そうよ!これが真のアウトローなんだから!」 

 

と、ニッコニコで答えるアルと凶悪な顔で笑うムツキ。アルは本心でないながらもムツキの言葉に乗ってしまったのだ。それがいけなかった。

 

「そういうことだったのね!」

「?」

 

ふと聞き覚えのある声が聞こえ、一同は声がする方を向く。

カヨコはこの後何が起こるかなんとなく察していたのか、真面目モードに入った。他の三人はまだよく分かっていないようで、頭に?を浮かべる。

そんな4人が振り向いた先には、ホシノを除いた対策委員会と弦太朗が立っていた。

 

「あんたたち、よくもこんな酷いことを…!」

「おい!流石にやり過ぎだぞ!」

 

セリカは怒りを露わにしてドスの効いた声で怒鳴り、弦太朗は大人として4人を叱る。

シロコとノノミは沈黙しているが、4人の睨んでいるその表情から憤りを感じているのは明らかだ。

更にドローン越しにアヤネの顔が映る。やはりその表情は固い。

 

「大将の無事を確認しました!幸い怪我は少なかったので、近くのシェルターに避難させました!」

「……ってことは、大暴れしてもいいってことよね?」

「お仕置きですよー!」

 

今にも便利屋を殺しそうな顔をしているセリカを筆頭に、ノノミ、シロコも武器を構える。

対する便利屋も武器を手に取る。ムツキは獰猛で不敵な笑みを浮かべ、カヨコは一億円の一部を使って手配していた傭兵を呼び、ハルカは怪しく笑う。アルはまだ状況が少し遠慮があったが、アウトローだというのを優先したいのか、「そ、そうよ!如何に私達が悪党なのか思い知ったかしら!?」と見栄を張る。

 

「覚悟しなさい!!」

「こっちのセリフよ!私たちの恐ろしさを思い知らさせてあげるわ!」

 

一触即発の雰囲気の中、両勢力は激突した。こうして、二度目の決闘が幕を開けたのだった。

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

カヨコは前と同じように煙幕弾を撒こうとした。今回はホシノがいない。故に分断すれば勝てるはずなのだ。だが、その前にシロコの銃弾が煙幕弾を遠くに弾き飛ばした。

 

「何度も同じ手を踏むと思わないで。」

「ぐっ……!」

 

 

 

「お仕置きですよ!」

ノノミはシロコの後ろからガトリングガンを連射し、後ろの傭兵を片っ端から片付ける。

「あ、あわわ……」

ノノミは今度は油断せず、ハルカを集中して攻撃する。更にシロコの支援ドローンも合わさり、ハルカに攻撃の隙を与えない。

 

 

 

「絶対に許さないんだから!」

 

そう言ってセリカが出したオーラはいつもの倍デカい。その迫力に、セリカと対峙しているアルとムツキは圧倒される。

 

「うはぁ〜…バイトちゃんヤバそう……」

「ふ、ふん!あんなの見掛け倒しよ!」

 

アルは冷や汗を流しながらも銃を片手にセリカに特攻する。

 

「フンッ!」

「ぐへっ!?」

 

だが、次の瞬間には、アルはセリカに殴り飛ばされていた。

 

(今…な、なにが……?)

 

殴り飛ばされたアルは事態が飲み込めなかった。アルはこれでも実力はある方だ。ゾディアーツになればフォーゼと互角にやり合えるほどには。だが、今のセリカの攻撃はアルに見えなかった。攻撃一つ出来ずにあっさりと殴り飛ばされたのだ。

 

「うっ、うわっ!?」

 

ムツキは爆弾を投げて攻撃しようとするが、セリカは銃弾を撃って爆弾を弾き落とすと、素早くムツキに接近し、首筋を掴んで地面に叩きつけた。

 

「よ、容赦ないねぇ…」

 

「あんたたちに容赦なんていらないわよ!」

 

セリカの怒りから来る半端ない実力と凄まじい気迫と顔に、ムツキでさえも冷や汗を流してたじたじな顔になる。

セリカは容赦なくムツキの顔面を殴りつけようとする。ムツキは流石にマズいと察知し、パンチを躱す。

セリカが放ったパンチは地面に大穴を開け、ムツキの顔も流石に引き攣る。

 

「なによ…これ……」

 

アルはそんなセリカを見て唖然とする。目の前にはムツキと傭兵を纏めて圧倒しているセリカ、その少し奥にはカヨコの作戦を封じ、ドローンとガトリングガンと銃でカヨコとハルカと傭兵を追い詰めるシロコとノノミの姿があった。

体力を消耗してもアヤネが救援物資を持ってくる。弦太朗は戦いこそしていないが、彼の応援は彼女らに元気を与えている。

ホシノがいないから辛うじて全滅は免れているが、このままでは敗戦濃厚だろう。

こんなの、ハードボイルドでもアウトローでもない。ただのポンコツ便利屋だ。

 

──────そんなの、嫌だ。

 

「こんなの…!私が描いてた未来じゃない!絶対に認めないんだからあぁーーっ!」

 

『ラストワン』

 

次の瞬間、アルが持っていたペガサススイッチの形状が変化する。ラストワンだ。

 

「こ、これって……」

 

アルはラストワンのスイッチを取り出して、じっくり眺める。

その禍々しいスイッチは自分に押せと言って引き込もうとしているようだった。

 

「!!待て、そいつを押すと身体が……!」

「…押してやるわよ……!それでアウトローになれるならっ!」

 

弦太朗の声は届かず、アルは叫んでスイッチを押す。すると、他のスイッチャーと同じように、アルの魂はゾディアーツの身体に移り、抜け殻となった肉体は繭に包まれて地面に倒れた。

 

「うわっ!?アルちゃんどうなっちゃったの!?」

「ア、アル様…?」

「…もしかして、スイッチを使いすぎた副作用……!?」

「ふ、ふふふっ…お金さえ貰えればなんでもするのが便利屋のモットー…身体だって手放してやるんだから!」

「ア、アル様……流石です!」

「さぁ、今度こそ依頼を達成させてもらうわ!」

 

ペガサスはそう言って足からエネルギー弾を飛ばして対策委員の皆を一掃しようとする。

そんなペガサスの前に、立ちはだかる影が一つ。

 

「…やっぱり邪魔立てするのね。」

「……先生。」

「アル、こいつはラインオーバーだぜ。」

「お前は俺が止める。」

 

二度目の、しかもラストワンのゾディアーツになって生徒を攻撃しようとしたこともそうだが、便利屋をやるだけならともかく、悪質な組織と繋がっていることは流石に看過できない。

弦太朗はフォーゼドライバーを装着する。

 

「変身!」

「宇宙キターッ!」

 

弦太朗はフォーゼに変身し、ペガサスと対峙する。

ペガサスは大幅に上がったパワーに自信満々になっており、フォーゼは道を外れすぎたアルを引き戻そうと覚悟を決める。 

 

「仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせてもらうぜ!」

「かかって来なさい!返り討ちにしてやるわ!」

 

 

 

「…ってあれ?もしかして私、バイトちゃんを一人で相手する感じ?」

 

取り残されたムツキはそう言いながら、ぶっ倒れた傭兵とその真ん中で殺気立っているセリカを見るのだった。

 

 

 

『スパイク・チェンソー・シールドオン』

 

フォーゼはスパイクモジュールに加え、更にチェンソーモジュールとシールドモジュールも装備してペガサスに立ち向かう。

フォーゼのスパイクモジュールとペガサスゾディアーツの脚がぶつかり合う。これまでならお互い互角、決着がつかないはずだった。

 

「うおっ!?」

 

だが、ラストワンに進化したことにより、全ての身体能力が上がったペガサスはフォーゼを吹っ飛ばした。

ペガサスの猛攻は止まらない。ペガサスは脚から馬蹄形の光弾を放つ。フォーゼはシールドモジュールで防御するが、更にライダーキックを模したペガサスの蹴りが追撃を掛けた。シールドモジュールは耐えきれずに解除されてしまう。

続けざまにキックボクシングの蹴りを仕掛けて来る。その威力はチェンソーモジュールですら刃が立たず、チェンソーが折れる。

 

「うわっ!?折れたァ!?」

「蹴りだけじゃないわよ?」

「おわっ!」

 

ペガサスのスイッチャーである、アルの愛銃の弾丸がフォーゼに命中し、大爆発した。

これがハードボイルドショット。アルの必殺技である。本来ならフォーゼにとっちゃそこまでダメージにはならない。だが、ワカモと同じようにスイッチによって銃の力も底上げされている。

キヴォトス人と地球人の差とアルの元々の戦闘力の高さも相まって、フォーゼを圧倒しているのだ。

 

「ハァッ!!」

 

ペガサスはフォーゼを蹴り飛ばし、フォーゼは吹っ飛んで柴関ラーメンの残骸に突っ込んだ。フォーゼの頭には鍋が被さっており、それを外すと、スープや具に塗れているフォーゼの姿があった。

フォーゼはフラフラになって転ぶ。

 

「あっはっは!醜い姿ね!」

「流石アル様…!」

「強い…もしかして本当にあのまま……!」

 

アビドス側の現在最高戦力であるフォーゼを手玉に取るペガサスを見て、便利屋のメンバーはもしかしたらと期待に胸を膨らませる。

対するアビドスメンバーは絶望…

 

「ちょっと先生!そんなもんじゃないでしょ!」

 

することはなかった。なぜなら、如月弦太朗はこんなところでやられも諦めもしない男だということを知っているから。

「私たちの先生は、こんなところでやられたりはしないよ。」

「うんうん!私たちはそう信じてますから!」

「私がヘルメット団にやられた時も先生は諦めなかったんだから!」

「…なんでそこまで信じられるの?実力の差は明確なのに。」

『友達が友達を信じないと、何も始まりませんから!』

 

弦太朗はアビドスの皆を信じている。信じて頑張ってくれている。そんな弦太朗を、アビドスも信用するのだ。

 

「それに、先生にはまだ──────」

 

そうノノミが言い終わるよりも前に、彼は立ち上がった。

 

「まだまだ、こっからだぜ!」

「先生!」

「!」

「どこにあんな力が…!?」

「でもっ!もう私には敵わない。さっさとトドメを────!」

 

『────エレキ』

 

「う、うん?」

 

フォーゼの異様な気力に困惑する便利屋をよそに、フォーゼはエレキスイッチを装填した。

 

『エレキオン』

 

フォーゼはエレキスイッチを入れる。すると、電気エネルギーがフォーゼに結集し、その勢いでフォーゼについていたラーメンのスープは蒸発し、具は焦げてなくなる。

仮面ライダーフォーゼ エレキステイツ、久しぶりの登場である。

 

「なにあれ…!?」

「まだあんな姿を隠し持っていたなんて……」

 

便利屋はエレキステイツへとなったフォーゼに驚くが、便利屋の相手はフォーゼだけではない。

控えている傭兵に銃弾が放たれる。

 

「うわわっ!?」

「私たちを忘れてもらっちゃ困るわよ!」

「まだまだ!ここからが本番ですよ〜☆」

「くっ…」

 

不意打ちで傭兵を一気に減らされ、状況がまた悪くなる。もう三人に出来ることは、なるべく倒れないように立ち回り、アルの勝利を祈ることだけだった。

 

「フッ!ハァッ!」

「ぐっ!?」

 

エレキステイツになったことで、フォーゼはペガサス相手に優勢に戦えていた。

ビリーザロッドの電撃で相手を怯ませ、その隙にペガサスを蹴り、頭突きを打つ。更に、ビリーザロッドで攻撃するふりをして殴ったりもした。

ビリーザロッドを手に取ったことでリーチが伸び、蹴られるより先に攻撃できているのだ。

だが、ペガサスもやられっぱなしではない。

 

「ぐっ……!?」

 

ペガサスは一瞬の隙を突いてフォーゼを蹴る。電気のコズミックエナジーで防御力が上昇しているとは言え、微々たる差だ。ほぼ変わらないと言って良いだろう。フォーゼは吹っ飛んで地面を転がる。

 

「このままじゃ終わらせないわよ…!」

 

ペガサスは追撃を掛けようとフォーゼに突っ込んでくる。その姿は荒ぶる闘牛のようだ。

 

「なら……!」

 

もちろん、フォーゼに策がないわけがない。フォーゼはビリーザロッドのソケットを右のコンセントに差し替える。

 

「こいつを喰らえ!」 

 

フォーゼはビリーザロッドを振る。ピスケスの動きを拘束したそれは、今度はペガサスの足にいくつも巻き付いた。

 

「!?これって……あだだだだ!?」

 

ペガサスの足に巻き付いた電気の輪はペガサスの蹴りを封じ、すっ転んだ。更に電気がビリビリと流れ、ペガサスは長時間正座した時の痛みと、凄まじい電気が流れる。

 

「決めてやるぜ!」

 

フォーゼはドライバーからエレキスイッチを抜き、ビリーザロッドに挿入する。

 

『リミットブレイク!』

 

ビリーザロッドに100億ボルトもの電気エネルギーが溜まり、バチバチと迸る。

それに反応し、フォーゼの複眼も輝きを放つ。そしてフォーゼはペガサスに向かって走り出した。

 

「……ぐっ!」

 

ペガサスは拘束を強引に解き、馬蹄形の光弾とハードボイルドショットを放つ。

その時、フォーゼの複眼がもう一度光った。そして次の瞬間には、フォーゼはもうペガサスの懐まで接近していた。

 

「なっ!?何が起こって……!?」

 

フォーゼは身体を電気エネルギーに変え、ペガサスの攻撃を全て躱しながら一瞬で接近したのだ。

フォーゼの恐るべき力に、困惑と驚愕の二つが同時にペガサスを襲った。当然、だからといって、フォーゼが加減するはずもなく……

 

「ライダー100億ボルトブレーイク!」

「ぐっ…!?はっ……!?」

 

フォーゼは容赦なくペガサスをビリーザロッドで打ち抜いた。

 

「な、な……」

「なんでこうなるのよおぉぉぉっ!?」

 

エレキステイツの渾身の一撃にはラストワンに到達したペガサスと言えど耐えることは出来ず、ペガサスは悲しい断末魔を上げながら爆散した。

フォーゼは「やったぜ」と言いながらトンガリ頭を撫で、スイッチをキャッチ。スイッチをオフにし、ペガサススイッチを消すのだった。

 

「!うっそー、アルちゃん負けちゃったよー……?」

「ア、アル様……」

「かなりマズいね…最高戦力の社長はやられて、傭兵も全滅…」

 

カヨコは後ろで倒れている傭兵たちを見ながらそう言う。

冷静に振る舞って入るものの、その引きつった顔や震えている声から、内心かなり焦っているはずだ。その証拠に、冷や汗も流れている。

 

「ぐっ…」

 

フォーゼにやられたアルは精神が自分の体に戻り、身体に付いている繭を払いながら起き上がった。

その精神は疲弊しきっており、足はガタガタ、顔も汗ばんでいる。

 

「こいつら…!!どこからそんな力が……!?」

 

アルはなんとか最後の力を振り絞って、敗北の理由を考えながら対策委員会と弦太朗を睨む。

その睨みがこの戦いを──────そして自分たちを───────終わらせる合図だとも知らずに。

 

ドゴーーーーン!

ズガーーーーン!

ドガガガーーン!

ドッガーーーン!

 

対策委員会VS便利屋68の戦いは、突然の爆撃によって幕を閉じた。

アルが立ち上がり、睨んだ瞬間に爆撃が起こり、アルは白目を剥き、砂埃に包まれてやがて見えなくなった。

 

「うっわ、今度は何なのさ……!?」

「…まさか……!?」

「何……?」

「爆撃!?一体どこから……!?」

「ホシノ先輩……!?いや、ホシノ先輩はこんな爆撃ができるモノなんて持ってないし、こんなやり方もしないはず……」

 

いきなりの爆撃は双方にとって想定外だった故、対策委員会も便利屋68も困惑する。そんな中、カヨコだけ正体を勘づいていた。

そして、アヤネのデータ分析によって、その爆撃の正体は明らかになる。

 

『3km先より、第三勢力による50mm迫撃砲を確認!』

『謎の第三勢力の所属を確認!あの紋章に服装…』

『ゲヘナの風紀委員会です!!』

「風紀委員会か…」

 

アヤネの報告を受け、フォーゼは風紀委員会の大群がいる方を見るのだった。

 

「みんな、早く逃げるよ!奴らが来た!」

 

一方の便利屋68の一人、カヨコは歯ぎしりをし、汗を流している。その様子からかなり焦っている。

 

「え?奴らって誰のこと?」

「ウチの風紀委員会だよ!まさかこのタイミングで…!」

「いや、このタイミングだからこそ…!?」

 

カヨコの声にムツキも寄ってくる。カヨコの慌てっぷりに尋常じゃない何かを感じたのだろうか。

だが、その場にはカヨコとムツキしかおらず、既に爆発に巻き込まれたアルと何故かハルカの姿も見えない。

そして、ターゲット二人が固まった場所。狙われないわけがなく、二人の元に強力な迫撃砲が投下された。

 

「くっ…」

「ぐぅっ…」

「あ、流石にこれは無理かも……」

 

いくらキヴォトス人と言えど、迫撃砲の砲撃を正面から喰らっては普通は耐えられない。元々体力を消耗していたカヨコとムツキは地面に倒れた。ヘイローが消えている辺り、気絶しているのだろう。

そして迫撃砲は近くにいた対策委員にも命中した。

 

 

 

「ターゲット、沈黙しました。」

 

ゲヘナの風紀委員会はアビドス自治区の入り口辺りで布陣を敷いていた。

 

「よし。歩兵、第2小隊まで突入。」

 

風紀委員会の幹部2名が前線で風紀委員たちを率いている。

その一人、弦太朗と2度に渡って関わっているチナツはすこしやりすぎたかと思いつつも、指揮を執っている幹部の一人である銀鏡イオリに話しかける。

 

「イオリ、あの方たちはどうします?」

「ん?ここの自治区の奴らか?アビドスだっけ?もちろん、妨害する気なら鎮圧対象に入る。」

「ならば、おとなしくしていてほしいものですね、事情の説明が出来れば楽なのですが……」

「説明なんているか?ただでさえウチの厄介者を捕まえる労力が惜しいんだ。邪魔する気なら部外者だろうと叩き潰す。」

「ま、今の爆発に巻き込まれて気絶してるかもしれないけどな。」

 

イオリはそう言って、アビドス自治区の街から上がる爆炎を眺めた。

その風貌からは余裕と堂々さが感じられた。

 

 

 

そして、その対策委員たちはというと……

「みんな、無事か?」

「うん、ありがと……」

 

フォーゼがシールドモジュールを起動し、間一髪でみんなを爆発から守っていた。

そして、いきなり他の学校の連中から攻撃されたとなれば、真っ先に誰が叫びだすかなど決まっている。

 

「な、何っ!?ゲヘナの風紀委員会が私たちを攻撃してきたってこと!?」

『まだわかりません……しかし、私たちと友好的とは判断しかねます……』

 

ストレスがフルに溜まったセリカは怒号を上げる。こんなに声を出して、喉は大丈夫なのだろうか?

叫ぶセリカに対し、他の面々は困惑が勝っているようで、首を傾げている。

 

「あからさまにこっちを狙ったわけじゃなさそうだけど……」

風紀委員会の狙いはおそらく便利屋68だ。自分たちなど眼中にないだろう。

それに、風紀委員会は便利屋68やそこらの暴力組織とはワケが違う。ここで下手に交戦すれば政治的な問題になりかねない。

こんな時に頼りになるのがホシノなのだが、今はおらず、未だに連絡も取れない。

だが、便利屋68に攻められた挙げ句、破壊目的ではないとは言え風紀委員会に爆撃までされたのだ。ここまでゲヘナに好き勝手にされては黙っていたくはない。

 

「…風紀委員会を阻止する。」

「シロコちゃん…!?」

 

シロコのその言葉にノノミは驚く。なんせ、その発言はキヴォトス屈指のマンモス校であるゲヘナに対しての事実上の宣戦布告になり得るからだ。いくら対策委員会といえど、ゲヘナ学園相手では厳しい。それはホシノがいたとて……

だが、皆、そんなことはどうでもよかった。

 

「ええそうよ!こんなにやられて黙っていられるもんですか!便利屋を裁くのは私たちだし、風紀委員会と言っても、こんなこっちの権利を無視するようなの、見過ごせないわ!」

『…確かに、便利屋は問題を起こしたのは事実です。しかし、他の学園の風紀委員会がなんの許可もなしに私たちの大切な自治区でこんな暴挙を働いたことは見過ごせません!』

「よく言った!」

 

そんなみんなを、フォーゼは称賛する。そしてあと一人、ノノミにも優しく話しかける。

 

「ノノミはどうしたいんだ?」

「…」

 

ノノミは少し悩んだ。なぜなら、ノノミはホシノの過去を知っているから。ゲヘナと争い、政治的な問題にまで発展したと聞いたら、きっと悲しむだろう。

 

でも、後輩が頑張ろうとしているなら、自分だって……

 

「あれこれ考えるのは後です!やりましょう!」

「よし!アビドスの根性!見せてやろうぜ!」

 

 

 

「……アビドスの生徒、臨戦態勢に突入しました。」

 

その様子を風紀委員会はしっかり捉えていた。チナツの報告に、イオリは顔をしかめながら銃を構える。

 

「はぁ…面倒だな……まぁ、たかだか四人だ。すぐに蹴散らしてやる。」

「総員!戦闘準備!」

「ん?イオリ、少し待ってください。」

「どうした?」

「アビドス側に生徒とは別の何者かの存在を感知。確認しますので少々お待ちください。」

 

今にも攻撃を開始しようとするイオリをチナツが止める。どうやらアビドス自治区の攻撃範囲内に民間人が映ったようで、危害を加えないように確認をするようだが……

 

「え…!?」

その人物の姿を確認したと同時に、チナツは絶句する。なぜなら、画面の先にいるのは、ほぼ全てのキヴォトス人を圧倒する実力を持ち、ゲヘナで強大な力を持つ怪物を倒した人物…

 

「あ、あの方は…もしかしてシャーレの如月弦太朗先生!?しかも変身まで……」

「ん?シャーレ?なんだそれ?」

 

だが、イオリはシャーレの存在も知っていない。そういうのは学校の生徒会や行政官、風紀委員会長が管理している。と言っても、ゲヘナの生徒会の方は大して仕事をしないのだが……

 

「待ってください、如月先生が向こうにいるとしたら……」

「この戦闘、行なってはなりません!」

「……どういうこと?」

 

チナツは弦太朗の強さを知っているからこそ、戦いを避けようとしているのだが、イオリにはチナツがあそこまで危惧している理由は分からない。

だからチナツに詳しく話を聞こうとしているのだが、それより前に擲弾兵より、アビドス生徒の接近が伝えられる。

 

「ちっ…仕方がない……行くぞ!」

「あっ…」

 

それを聞いたイオリは銃を構えて飛び出していってしまうのだった。

 

 

 

 

「かかって来なさい!」

「手加減はしませんよ!」

 

対策委員会は風紀委員会の一般兵を蹴散らしながら本陣へ突入していく。

その勢いもあって、一般兵程度では相手にならない。

そんな意気軒昂な対策委員会が進む中、乾いた銃声が響いた。

 

「ぐっ!?」

「!セリカ!?」

 

風紀委員会は一筋縄ではいかない。風紀委員会のスナイパー、瓦礫で出来た高台の上にいるイオリの銃弾がセリカの脳天を正確に貫いた。

 

「本当は目を潰してやってもいいんだが、流石に良心がな…」

 

イオリはそう言いながらシロコとノノミにも狙撃を仕掛ける。正確なヘッドショットである。更にアヤネが運んできた救援物資すらも撃ち落とす。イオリが立っている場所も相まって、その様は狩りをする鷹のようである。

 

「なんだこんな程度か、チナツがあれだけ言うから多少警戒はしたんだが、拍子抜けだな。」

「さて、これでトドメだ。」

 

イオリは3人に標準を合わせ、最後の一撃を撃ち込もうとする。

……その時、空中から何かがイオリを攻撃した。イオリは少し攻撃を喰らったが、即座に跳び下がり、攻撃を躱した。

そしてイオリは攻撃の正体を確認する。

 

「あれは…攻撃用ドローン?仕方ない、アレを先に……」

 

イオリは妙なドローンを撃ち落とそうとするが、そんなイオリのいる高台の下からガトリングガンによる銃弾の嵐がイオリを襲う。

イオリは歯ぎしりをして躱す。

 

「今度はなんだ!?」

「私です☆」

「ん、あのドローンは私の。」

「お前たちはアビドスの…いつの間に!?」

 

撃ち込んだらほぼ戦闘不能になるイオリの狙撃に、ノノミとシロコが耐え、ピンピンして反撃を開始していることにイオリは驚く。

だが、まだ終わらない。

 

「フッ!」

「!?」

 

溜めたオーラを開放したセリカがイオリがいる高台まで一気にジャンプしてきた。

突然の襲撃にイオリは驚愕すると同時に、接近されたことに焦りを感じる。

 

「バカな…どこからそんな力が……!?」

「悪いけど、こんくらいでへこたれてちゃ対策委員は務まらないのッ!」

 

根性だけで狙撃を耐え、ここまで喰らいついて来ている。そのことに、イオリが驚く暇もなく、セリカは思いっきり力を込めてイオリを殴り飛ばした。

イオリはスナイパーとしての腕はあるが、正面きっての戦闘はあまり想定していないため、防御力は低い。イオリは高台から吹っ飛び、岩に激突した。

 

「ぐっ…このままで終わると思うな!」

 

イオリは跳び上がってお返しとばかりにセリカを蹴る。セリカは腕で防御するが、イオリは場慣れしている。すぐさまもう片方の足でセリカを蹴る。

セリカは舌打ちをして一旦跳び退き、高台の下に着地する。

イオリは怒り心頭といった様子で、高台から救援物資で回復をしている三人を見下ろした。

 

「お前たち、許さないぞ…!もう容赦はしない!私の本気を…!」

『イオリ先輩!緊急事態です!』

「?今度はなんだ!?」

『何かが猛スピードで本陣に接近中!正体はつかめません!』

「なに?」

「よっ」

 

通信が終わった次の瞬間には、もうその何者かがイオリの前に来ていた。

その正体はホイールモジュールを装備したフォーゼである。

その異質な雰囲気と、あまりにも自然に現れたフォーゼの姿に、イオリは戦慄を覚えるが、それより先に声が出ていた。

 

「わっ!?何だお前は……!?」

「わり、ちょっとお仕置きだ。」

 

フォーゼはそう言って、イオリにデコピンした。デコピンといえど、フォーゼの力は凄まじい。イオリはおでこを抑えながら転び、高台から転げ落ちた。

 

「いっつぅー…うぅっ……」

 

イオリは涙目になりながらおでこを抑えてのたうち回る。

他の風紀委員も対策委員により鎮圧されつつある。

そして、のたうち回っているイオリの後ろにはチナツが立っている。

フォーゼはチナツに近づいて話しかける。当然良い状況でもないので、チナツは複雑な顔をしている。

 

「……」

「久しぶりだな、チナツ。」

「先生…こんな形で再開することになるだなんて……」

「先生の存在を確認した瞬間、勝ち目がないと確信しました。そこで撤退しなかったのは私の落ち度です。」

「さて、取り敢えず事情を聞かせてくれ。」

 

いきなり爆撃するのは流石に度が過ぎている。それに戦いが長引いて被害が拡大するのもよくない。だからやむを得ずフォーゼが出張ったのだが、出来れば穏便に済ませたい。だからまずは事情を聞くところからだ。

 

『私たちはアビドス対策委員会です。そちらの所属と目的をお願いします。』

『それに関しては私から説明させていただきます。』

 

フォーゼの後ろからホシノ以外の対策委員もやってきて、いざ事情聴取となった次の瞬間、アヤネの通信回線に別の通信が入ってきた。

 

『通信……?』

 

通信の画面が立体化され、独特の服装をして青い髪をした少女が姿を表す。手に持っている電子機器を見る限り、風紀委員会の参謀だろうか。

 

「アコちゃん…?」

「アコ行政官……?」

 

風紀委員会の幹部二人にアコと呼ばれた人物は、笑顔を作り、アビドスとコンタクトを取り始める。

 

「こんにちは、アビドスの皆さん。私はゲヘナ風紀委員会の行政官、天雨アコと申します。この状況について説明を入れたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

 

 

「うっ……」

 

一方その頃、迫撃砲をまともに喰らって気絶していたハルカが起き上がった。最初は状況がよく分からずに周りをキョロキョロと見回していたが、対策委員会と風紀委員会が対面している光景を見て、なんとなく察した……わけではないが、一つの考えに辿り着く。

 

「あ…あぁ、みんな集まってます。」

「……チャンスですね。」

 

何を考えたのか、ハルカは行動を開始した。

 

 

 

『行政官…という事は、風紀委員会のナンバー2……』

『まぁ、実際はそんな大したものではありません、あくまで風紀委員長を補佐する秘書のようなものでして。』

「本当にそうなら、そこの風紀委員たちが、そんな風に緊張するとは思えない」

「だ、誰が緊張してるって!?」

『なるほど、中々の洞察力をお持ちですね。確か、砂狼シロコさん、でしたか?』

 

核心を突いたシロコの一言にもアコは表情を崩さずに褒める。尚、イオリは図星を指されて騒いでいる。

その顔色一つ崩さないアコからは、何か只者でないオーラが感じられた。流石マンモス校の風紀委員会のナンバー2といったところか。

 

『アビドスには生徒会の面々だけが残っていると聞き及んでいましたが、みなさんの事の様ですね。』

『しかし、人数は5名と聞いています。どうやら一名足りない様ですが、今はどちらに?』

『…今は不在です、そして私達は生徒会ではなく対策委員会です。』

『対策委員会…それでは、生徒会の方はいらっしゃらないという事でしょうか?私は、生徒会の方と話がしたいのですが。』

「アビドスの生徒会はずっと前に解散したの!事実上私達が生徒会の代理みたいなものだから言いたいことがあるなら私らに言いなさい!」

「こんな風に戦力を引き連れて、『お話をしましょうか』なんていうのは、お話をする態度としてはどうかと思いますけれどね?」

 

アコは生徒会でないなら、用はないと言うように対策をあしらおうとする。そんな彼女の態度に腹を立てたセリカとノノミはアコに非難の声を浴びせる。

だが、それでもアコは笑みを崩さない。

 

『ふふ、まぁそれもそうですね。』

『失礼しました、風紀委員会各員、武器を下ろしてください。』

 

アコの指示に、風紀委員会の面々は一斉に銃を降ろした。てっきり行政官の指示の元、もっと堅実に攻めてくるようになると踏んでいただけに、これは意外である。

 

『先程までの愚行は、私から謝罪させて頂きます。』

「えっ、私は命令通りにやったんだけど!?アコちゃん!?」

『命令に、『まずは無差別に発砲せよ。』なんて言葉が含まれていましたか?』

「い、いや、状況を鑑みて必要な範囲で火力支援、その後に歩兵の投入、戦術の基本通りにって……」

『ましてや他の学園自治区付近なのだから、その辺りはきちんと注意するのが当然でしょう?反省文のテンプレートは私の机の左引き出しにあるので、書いておいてくださいね?』

 

取り付く島もなく、イオリの反論は軽く流され、イオリは言い返せずに唸ることしかできない。

そんなイオリを知らんぷりし、アコはホログラム越しに対策委員会へと向き直る。

 

『失礼しました、対策委員会の皆さん、私達ゲヘナ風紀委員会はあくまで、私達の学園の校則違反をした方々を逮捕する為に来ました。』

『あまり望ましくない出来事もありましたが、やむを得なかったという事でご理解頂けますと幸いです。』

『風紀委員会としての活動にご協力いただけますか?』

 

アコの発言から察するに、風紀委員会側は対策委員会に敵対する意志はないようだ。

だが、逆を言えば自分たちは便利屋68を連れて帰ってそれで終わり。自分の学校の問題児がアビドスに危害を加えたことの責任は取らないし、裁かせるつもりもないということだ。そんなこと、あれだけ好きにやられたら、許せるはずがない。

 

『そうは行きません!』

『あらっ?』

『他の学校が我が校の敷地内で、堂々と勝手に戦闘行為をするだなんて、自治権の観点からして、明確な違反です!』

『便利屋の処遇は私達が決めます!ゲヘナ程の大きな学園がこのような暴挙に出るとは思ってもみませんでしたが、ここは譲れません。』

 

アヤネはアコを睨みながらそう叫ぶ。他の三人は沈黙しているが、その表情から考えはアヤネと同じである。

 

『…そちらの方々も考えは同じようですね。』

『まさか、この兵力を前にしても怯まないだなんて、これだけ自信に満ちているのはやはり……信頼出来る大人の方がいるからでしょうか?』

『……ねぇ?如月先生』

「さぁ?どうだろうな。」

「ここに俺がいなくても、あいつらは同じことを言ってたと思う。それくらい、あいつらにとってこの街が大切だからな。」

『……シャーレとしても、アビドスと同じご意見ですか?』

「ダチがそう思ってるなら。」

 

つまり、弦太朗の意思も対策委員会と同じ。仮面の奥からはその覚悟が感じられた。

 

『…なるほど。出来れば穏便に済ませたかったのですが……』

『ヤるしかなさそうですね?』

 

このまま戦闘に入れば、連邦生徒会直属のシャーレを敵に回すことになる。とある条約が迫っている時にそれはマズい筈だ。

だが、アコはそんなこと知らんとばかりにニコニコしながら好戦的な発言をする。そしてアコは攻撃開始の合図を出そうとする。

 

「うわぁっ!?」

「えっ!?ぎゃぁっ!?」

 

その時だった。アコの後ろで銃声が響き、風紀委員たちの悲鳴が聞こえてきた。

 

「な、なんだ!?」 

 

そして銃声はどんどん近づいてきて……

「許せない……!」

 

「なっ!?お前は便利屋の……!?」

「許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない許せない!うあああああああああああああ!」

 

騒ぎの主であるハルカはいつの間にかイオリの後ろにまで接近していた。ハルカはイオリの頭に何発も弾丸を撃ち込む。イオリはうめき声を上げていたが、やがて意識が飛び、気絶した。皮肉にも、自分が先程対策委員会に対して放ったヘッドショットで、イオリは地面に伏したのである。

 

「アコ、嘘つかないで。」

「偶然なんかじゃない。最初からあんたはこの状況を狙ってた。」

『……カヨコさん。』

 

暴れ回るハルカの後ろから、ハルカに救出され、包囲網を突破した便利屋が歩いてくる。

どうやらアコとカヨコには面識も因縁もあるようで、カヨコはアコを氷柱のように鋭く睨み、アコの顔も厳しくなる。

 

「……最初はなんで風紀委員会が現れたのか理解できなかった。わざわざ私たちを追って他の自治区まで来るなんて。それに、こんな大人数……風紀委員会長ならこんな非効率なやり方はしない。だからアコ、これはあんたの独断的な行動に違いない。」

『……』

「私たちを捕まえるのが目的だとしても、この人数はおかしい。他の集団…アビドスとの戦闘も視野に入れていたとしても流石に過剰戦力なはず。」

「なら、結論は一つ。アコ、あんたの目的はシャーレ。最初から先生を狙ってここまで来たんでしょ?」

 

カヨコの核心を突いた鋭い指摘が入る。確かに、それなら全ての辻褄が合う。

当然、その場の全員はその事実に驚きを隠せていない。弦太朗ですら困惑している。一体自分が何をしたというのか……

 

『…そういえば、便利屋にはカヨコさんがいましたね。呑気に話している場合ではなかったようです。……それはそれとして、流石カヨコさん。半分は正解です。確かに私はシャーレと激突するという最悪のシチュエーションも想定していました。』

『その発端は…ティーパーティーです。』

「ティーパーティー……」

『えぇ、ティーパーティーに関しては説明する必要もないでしょう。ゲヘナ学園と長きに渡って敵対してきたトリニティ総合学園の生徒会…そのティーパーティーがシャーレに関する報告書を手にしていると、うちの情報部から上がって来まして。』

 

『戻ったらこの事実をティーパーティーに報告します!』 

 

『当初は私もシャーレの事を詳しく知りませんでしたが、ティーパーティーが知っている情報となれば私達も知る必要がある。そこで、チナツさんの連邦生徒会へ訪問した際の報告書と美食研究会が起こした騒動についての報告書を確認しました。』

(確認するの遅くないです…?)

『連邦生徒会長が残した正体不明の組織、大人の先生が率いる超法規的部活…その権限の規模はキヴォトス全体に影響を与えるレベルであり、キヴォトスのどの生徒だろうとシャーレに所属させられる。更にその顧問に当たる如月弦太朗先生は仮面ライダーフォーゼと呼ばれる超人に変身が可能であり、我々を遥かに超越する力を発揮することができる。どう考えても怪しい匂いがしませんか?』

「言われてみりゃ、確かに。」

 

考えればたしかに怪しい。ぽっと出の大人に大きすぎる権力が与えられ、更に超人的な力も持っている。しかも行方不明になった連邦生徒会長が絡んでいるなど、怪しいところしかない。

今、アコはフォーゼという存在を目の当たりにしているのだし、フォーゼシステムについても思うところはあるだろう。

 

『シャーレという組織は私からすると危険な不確定要素に見えます。トリニティとの条約にも、どのような影響を及ぼすか分かったものではありません。』

『ですからせめて、条約が無事締結されるまでは、風紀委員会の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいのです。ついでに居合わせた不良生徒も捕獲する……という感じで。』

 

アコはそう言ってニッコリと笑う。あれは自分の勝利を確信した笑みだ。

つまり、アコは今から弦太朗とついでに便利屋をゲヘナに連れ帰り、監禁する気だ。

だが、対策委員会がそうやすやすとやらせるわけがない。

 

「ん、むしろ状況が分かりやすくなって良いかも。」

「先生を連れて行くって、私達がそれで『はい、そうですか』って言うとでも思った?」

 

もう風紀委員会は敵であると確信した一同は銃を構え、弾を装填する。

だが、この風紀委員の大群を控えるアコは余裕である。

 

『ふふ、やっぱりこういう展開になりますか、では仕方ありませんね、奥空アヤネさん?』

『……?』

『ゲヘナ風紀委員会は、必要ならば戦力を行使する事に一切の遠慮をしません。このようにね。』

 

アコはそう言って指をパチンと鳴らす。すると、その場にいた風紀委員たちが銃の安全装置を外し、戦闘準備を始める。だが、それだけではない。

 

『…!?これは……!?』

「な、なに?どうしたの?」

『3時、6時、9時、0時……あらゆる方向から風紀委員会の反応が感知されました!そ、それに戦術戦車やヘリコプターまで!?』

「なに!?」

「そんな数がアビドスに……!?」

 

とんでもない数の風紀委員……。どうやらアコは本気なようだ。

 

「……」

 

その様子をアルは険しい表情で見つめていた。そんなアルに冷や汗を流したカヨコが話しかける。頭がキレると言っても、この数の風紀委員を相手にするのは厳しいと判断したのか、完全に逃げ腰だ。

「社長、逃げるなら今だよ。風紀委員会はこの後アビドスと先生を相手するから私達への警戒は薄れるはず。その隙に包囲網が薄い場所を突破して……」

「ふっ、ふふふっ……」

 

カヨコの言葉は決して間違ってはいない。それどころか今取るべき行動の中では最善策だ。

だが、一つカヨコの頭から抜け落ちていた事があるとすれば、アルはハードボイルドなアウトロー……を目指していることである。

 

「……ねぇ、カヨコ。あなたならもう私の性格を分かっているんじゃなくて?」

「……?」

「こんな状況で……こんなおまけみたいな扱いをされて、背を向けて逃げる?」

「そんなこと、便利屋がするわけないじゃない!!」

 

アルは珍しく真剣な顔で拳を握りしめながらそう叫んだ。そこには風紀委員会に対する怒りが込められている。その言葉が気に入ったのか、ムツキは獰猛な笑みを浮かべる。

 

「あの生意気な風紀委員会に一発喰らわせてやらないと気が済まないわ!」

「アル様っ……!」

「いいねいいねぇ!よく言ったアルちゃん!」

 

アルの宣言にハルカとムツキは称賛するが、カヨコの頭は冷静だ。少なくとも考えは聞いておかないといけない。

 

「…はぁ、まぁいいけど、あの兵力と真っ向から戦う気?アビドスと組んでもギリギリだと思うけど……。」

「いや、そもそもアビドスが私たちと手を組んでくれるはずがない。だとしたら……」

 

こうなったアルは止められない。それに、対策委員会も相手することになるかもしれない。だから、どうにか風紀委員会に一矢報いながら逃げる方法を考えていると……

 

「よっし便利屋っ!挟み撃ちするわよ!!あの風紀委員会、コテンパンにしてやらないと!!!」

「ん、盾になってもらう。」

「は!?」

「今は一時休戦です!先生を守りますよ!」

「話が早いな……」

 

なんとアビドスの方から共闘を持ちかけられ、カヨコは困惑する気持ちとありがたがる気持ちがゴッチャになるのだった。

 

「よし決まりね!あ、それと柴関ラーメンを爆破したのはわざとじゃないから!こう…アウトローにしか出来ない高度な心理戦と言うか……とにかk」

「よっしゃ!対策委員会と便利屋と仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせてもらうぜ!」

「ちょっと!?まだ私が喋ってるんd」

『先生、これはタイマンって言いませんよ?』

「癖だ。細けぇことは気にすんな!」

 

 

『うーん……これはこれで想定してはいましたが………』

 

アコは目の前でギャーギャー騒ぐ対策委員たちと便利屋を見て少し戸惑う。

 

『まさかここまで意気投合が早いとは…その点は予想外でした。』

『まぁいいでしょう。風紀委員会全員に告げます。攻撃を開始してください。』

 

アコがそう言って指を鳴らすと同時に、風紀委員全員が戦闘の体制を取る。と同時に、気絶していたイオリも目が覚めたようだ。 

 

『目標は対策委員会の鎮圧、並びに先生とついでに便利屋68の捕獲。先生はキヴォトス外部の人間ですが、仮面ライダーに変身した彼の力は驚異的です。十分に警戒してください。』

「よくも頭にショットガンの連射なんて決めてくれたな……!覚悟しろ!」

 

 

『風紀委員会の攻撃開始を確認!皆さん、行きましょう!』

こうして、対策委員会&便利屋68連合とゲヘナ風紀委員会の戦いが幕を開けるのだった。

 

 

 

 

セリカは銃を乱射しながら風紀委員の第一中隊に接近する。

十分に接近したところで、近くにいた風紀委員をぶん殴り、ノックアウトさせる。

更に後方からムツキが爆弾を投げた。だが、当然投げた先にはセリカもいて……

 

「バイトちゃーん、危ないから気をつけてねー!」

「え?今なんか言って…ってうわぁぁっ!?」

 

ムツキが投げ込んだ爆弾を見たセリカは慌ててその場を離れてなんとか爆発から逃れる。

爆発によって第一中隊は全滅させられたが、危うく爆発に巻き込まれていたセリカは鬼の形相でムツキに詰め寄っていく。

 

「ムツキィッ!あんたなにしてくれてんの!」

「まーまー、バイトちゃんならあれくらい避けられると思ってさー。」

「それより、来てるよー?」

「そんなの言われなくても分かってるわよッ!」

 

セリカの勢いにたじたじだったムツキはそのセリカが味方についたことで調子を取り戻し、鬼の形相のセリカにも軽い態度を取る。セリカはそんなムツキにイラつきながらも後ろから不意打ちを仕掛けてこようとする風紀委員をパンチで倒した。更にムツキが銃弾と爆弾で二人を囲い始めた風紀委員を一掃する。

この二人、意外と気が合うのかもしれない。

 

 

 

「さぁ、いきますよー☆」

 

ノノミはガトリングガンを連射しながら振り回し、風紀委員を次々と倒す。

 

「うわあああああああ!」

「うっ!?」

 

そして、ノノミが打ち損じた敵をハルカが片付ける。

ニコニコなノノミと常に落ち着きがないハルカだが、戦略的に見ると相性は抜群だ。

 

「ハルカちゃん、ありがとうございます〜!お陰で助かってます☆」

「こちらこそ、たくさん倒してくれて、ありがとうございます……。」

 

ノノミとハルカが作る、攻撃と防御を両立した鉄壁の要塞。それすら掻い潜ってきても、ノノミがガトリングガンでぶん殴って撃沈させる。そうやすやすと崩せるものではない。

 

 

『シロコ先輩、ここから南東200mの位置に迫撃砲部隊の隊長がいます。ドローンで狙ってください!』

「分かった。目標設定。支援ドローン起動。」

 

ノノミの指示を受けたシロコはドローンを起動。ドローンは南東200m先まで瞬く間に移動し、弾丸を飛ばした。

すると、迫撃砲部隊長の悲鳴が聞こえ、ノックダウンしたことが確認された。

これにより、最初の威力が高い砲撃も無効化された。

 

戦いの様子を後方から見ていたアコ。そんな彼女が目をつけたのは、アヤネのドローンである。

『なるほど……』

『奥空アヤネさんが通信をしているあのドローンを撃ち落としてください。先生はその後、人海戦術で仕留めましょう。』

 

 

「ってアコなら考えるはず…アヤネ!ドローンの高度を下げて!」

『えっ?は、はい、分かりました。』

 

カヨコに指示されたアヤネは言われたとおりにドローンの高度を下げる。すると、先程までドローンがあった場所を銃弾の嵐が掠めた。

 

「やっぱり、厄介な支援源は絶とうとするよね。」

 

 

 

『…今の回避……カヨコさんですか。』

『相変わらず、目障りな人のことで……!』

 

カヨコとアコは長い因縁がある。お互い考えていることは分かるということだろうか。

だが、フッと勝ち気に笑うカヨコと怒りを浮かべて地団駄を踏むアコ。この場を制したのはカヨコだ。

 

 

「アビドスと便利屋め……!さっきの仮は返させてもらう!」

「そう、出来るものならやってみなさい?」

 

イオリはアビドスに翻弄された挙げ句、ハルカのヘッドショットでダウンしたことを根に持っており、確実に仕留めてやろうと瓦礫の高台に登る。

そんなイオリの前に、立ち塞がる影が一つ。

 

「陸八魔アルか……」

「銀鏡イオリね……」

 

銀鏡イオリと陸八魔アル……二人共相当な実力者だ。同時に、油断しやすいことや思いも寄らない奇襲に混乱して対応が遅れることが共通の弱点でもある。

お互い睨み合い、銃口を相手に向ける。

 

「規則違反者め……覚悟しろ!」

「ふふっ……アウトローからすれば風紀やら規則なんて、破るためにあるものなのよ!」

 

アルの言葉を合図に、戦闘が始まった。イオリはスナイパーらしく高台に登って、高所から狙い撃ちしようとする。アルのそうはさせるかと遮蔽物に隠れて銃弾を防ぎながら進む。

アルは隠れながら、銃のトリガーを引く。だが、走りながらの射撃は難易度が高いのか、イオリではなく瓦礫に命中する。

 

「ふん、どうした?禄に私を狙うことも出来ないか?」

「……」

「チッ…ちょこまかと……!」

 

アルはイオリの挑発を無視し、ひたすらに躱し、隠れながら弾丸を放つ。だが、やはり瓦礫にしか当たらない。イオリはそんなアルに苛立ち、銃を撃つ速度を上げる。

 

「どうした!隠れて下手な射撃ばかりじゃ私には勝てないぞ!」

「それはどうかしら……ねッ!」

 

アルはイオリの射撃をスライディングで躱しながら、狙いを定め、銃のトリガーを引く。放たれたのはノワールショットと呼ばれる、アルの技の一つである。

だが、それもイオリに命中することはなく、瓦礫に当たった。  

 

「…結局それか。これでトドメ……!」

「……ん?」

 

何度撃ってもアルの銃撃は命中しない。イオリは楽勝だと考えていた。

──────その油断が、敗北へと繋がるとも知らずに。

地面が揺れたかと思うと、イオリが立っていた瓦礫が崩れた。イオリはバランスを崩し、転倒しながら落下した。

イオリは理由も分からずにキョロキョロと周りを見る。

 

「な、何が起こって…!?」

「…まさか……!?」

 

最初は何がなんだか分からなかったイオリだったが、アルの銃撃でバラバラになった瓦礫を見て気付いた。

 

「ずっと同じところを狙って…!最初からこれが目的だったのか!?」

 

そう。アルはずっとイオリではなく、イオリが立っている高台を崩すことを狙って攻撃していたのである。そして、ノワールショットを引き金に、ついに瓦礫が崩れた。

イオリは瓦礫を崩されて初めてそのことに気づいたが、今更もう遅い。

アルは勝ち誇った顔で、だが、決して油断はせずにイオリに銃口を向けた。

 

「えぇ、そうよ。随分とあっさり引っ掛かってくれたわね?」

「ぐっ……」

「さて、申し訳ないけど、しばらく眠っていてもらうわよ。」

 

アルはそう言って、銃の引き金を2度引いた。

銃声が鳴り響き、地面から上がっていたイオリの上半身が重力に従って地面に付く。

立ったままそれを見下ろすアルの姿は、少しだけハードボイルドかもしれなかった。

 

(やっ、やったー!風紀委員会の幹部倒せたー!最初ミスって瓦礫に当たったときに咄嗟に思いついた作戦だったけど、上手くいって良かったー!!)

 

……前言撤回。心の中はしっかりハーフボイルドだ。

 

 

 

『ホイールオン』

 

フォーゼは再びホイールモジュールを装備し、風紀委員会の大隊に突撃する。

 

『フラッシュ・ハンドオン』

更に、フラッシュ、ハンドのスイッチも起動させる。

先にフラッシュモジュールの光が眩しく輝き、風紀委員たちの視界を遮る。

 

「うわっ!?」

「眩しい……!?」 

 

視界を防いだはいいものの、危害を加えるわけには行かない。フォーゼはホイールで走りながらハンドモジュールで片っ端から風紀委員の武器を奪い取っていく。

 

「武、武器が……!?」

 

フォーゼはものの一分で大隊の武器全てを奪い取った。これがフォーゼのやり方である。別に風紀委員は悪い生徒ではないし、生身だし、何より自分の生徒だ。

倒す必要はない。だから武器を奪い取ることで無力化しているのである。

 

 

「こちら第七大隊!シャーレの先生により隊員全員の武器が奪い取られ、事実上の全滅です!」

『……流石は先生、一筋縄では行きませんね。』

『なら、これを使ってみましょう。』

 

たった一人に大隊が壊滅させられるというのはかなりの異常事態なのだが、アコは余裕を崩さない。────もしかしたら強がっているだけかもしれないが─────アコは指を鳴らす。

 

 

大隊を無力化したフォーゼの前に次に現れたのは戦車と戦術ヘリコプターだ。

戦車とヘリコプター相手では、武器を奪い取る作戦は使えない。

だが、フォーゼのバリエーションはもっと広い。

 

『ロケットオン』

 

フォーゼは4つのスイッチをオフにすると、フラッシュスイッチをロケットスイッチに変え、ロケットモジュールを装備し、飛び上がってヘリコプターの中に侵入した。

 

「おし!ってあれ?」

 

ヘリの操縦士をヘリから連れ出してしまう作戦だったのだが、何故かヘリコプターの中には誰もいない。フォーゼは不思議に思ってヘリコプターの中を散策する。

そんなことをしていると、なんとヘリコプターに風紀委員会の戦車の砲撃が仕掛けられた。

 

「うおっ!?」

 

『ジャイロオン』

 

フォーゼは慌ててジャイロモジュールを装備し、爆発に巻き込まれこそしたものの、落下することはなく無傷で済む。

にしたっておかしい。何故ヘリコプターの中に乗員がおらず、味方が乗っているはずのヘリコプターをフォーゼもろとも撃ち落とそうとしたのか。

 

「もしかして……」

 

フォーゼはテキトウなヘリコプターに乗り込むと、ジャイロスイッチをレーダースイッチに変える。

 

『レーダーオン』

 

「アロナ、風紀委員会の戦車とヘリを解析してくれるか?」

『はい!任せてください!』

『あんな兵器くらい、このスーパーOSアロナちゃんにかかれば……』

『分析完了!先生!あの先生とヘリコプターは無人兵器です!』

「!ってことは……」

『はい!思いっきりぶっ壊しちゃってください!』

「っしゃっ!サンキューアロナ!」

 

操縦士がどこにいるか分からなければ戦車もヘリコプターも破壊できない。

だが、無人機と分かれば話は別だ。

 

『ロケット・ランチャー・ガトリングオン』

 

フォーゼはロケット、ランチャー、ガトリングのスイッチを入れ、ロケットで飛びながらレーダーで狙いを定め、小型ミサイルとガトリングでヘリコプターを次々と破壊していく。更に炎上しながら落ちたヘリコプターが戦車を巻き込み、戦車も数台爆発する。

 

『ジャイアントフットオン』

 

「これでも喰らえ!」

 

ヘリコプターを全滅させ、地面に降りてスイッチをオフにしたフォーゼはジャイアントフットモジュールを装備し、戦車を次々と踏み潰す。

更にチェーンアレイやハンマーも兼用し、戦車をあっという間に全滅させた。

 

 

『なるほど……』

 

戦闘の様子を見ていたアコは少しの間呆然となっていた。風紀委員の隊を次々と蹴散らす対策委員会と便利屋68ももちろんだが、何よりフォーゼだ。強いとは聞いていたが、まさかこの数の戦車とヘリコプターがあっという間に壊滅させられるとは……

入ってくる報告は全部、部隊の全滅や退却の報告である。

これには流石のアコも冷や汗を流すが、すぐに冷静さを取り戻し、表情を戻す。こういったところは流石、風紀委員会の幹部といったところか。

 

『……大体把握しました。シャーレの力、必要となる兵力…予想を遥かに上回っています。素晴らしいですね。』

『決して甘く見ていた訳ではありませんが、もう少し慎重に進めるべきだったかもしれません。』

『あそこまでの力……確かに正面戦闘での勝ち目はないでしょう。ですが、無敵というわけではありません。』

『えぇ、おおよその弱点も見えました。』

 

そう言うアコの視線が捉えているのは、フォーゼが装着しているフォーゼドライバーと戦っているアビドスと便利屋だ。

アコの目がこれまで以上に冷たく、そして鋭くなる。

 

『隙を突いて先生の力の源であるドライバーの奪取、もしくは、あちら側の生徒のいずれかを人質にすれば折れるでしょう。』

『第八中隊、後方待機を辞めて突入してください。』

 

アコの一言で、更に多くの部隊が投入された。

 

 

 

『風紀委員会、更に部隊を投入してきした!』

「はぁ…はぁ……まだいるの!?」

「この状況で更に投入……!?」

 

フォーゼはともかく、連戦続きの生徒たちの体力は限界に近づいてきている。

徐々に足の痛みが強くなっていき、表情も疲労で苦しくなってきた。相手の銃弾を喰らうこともしばしば増えてきた。

 

「ま、まだよ!まだ戦えるんだから!」

「そうだとしても……これはもうアコの権限で動かせる兵力を超えてる。まさかこの兵を動かしてるのアコの独断じゃなくて…」

「……風紀委員長?」

「へっ!?ヒナが来るの!?無理無理無理!?早く逃げるわよ!!」

「そうは言ってないから…落ち着いて社長……」

 

虚勢を張っていたアルだったが、風紀委員長の襲来を仄めかされた瞬間、真っ青になって逃げ腰になる。

やはりゲヘナ生にとって風紀委員長は別格の存在のようだ。

そして、その真相はというと……

 

 

『ふふっ、これ以上は流石に…先生というよりアビドスと便利屋が保たないでしょう。』

『ドライバー奪取ではなく、人質プランになりそうですね。』

『……それにしても、これが委員長に知られてしまったらイオリと仲良く反省文ですね……』

 

どうやらアコが風紀委員長に黙って兵を動かしていたようだ。ゲヘナのほぼ全ての生徒が恐れている風紀委員会長に黙って他の自治区に攻め入っている辺り、相当な賭けに出ているということか。

 

『では、3度目の正直といきましょうか。風紀委員会、攻撃を─────』

 

と、アコが笑みを浮かべながら3度目の指示を出そうとした…その瞬間だった。

 

『おや…?』

 

不意に通信音が鳴り響いた。これはアコが最初にアヤネの通信回線に入ってきたときと同じ。つまり何者かが通信に入ってきたということになる。そしてその者の正体がホログラムとして投影される。

 

『……アコ。』

『…え?』

 

通信に入ってきたのは、紫色の鋭い目をした、白い髪をたなびかせる少女であった。小柄ではあるが、そこからは計り知れない威圧感がある。

その少女の登場に、アコはハルカの襲撃でイオリが倒されたときよりも、フォーゼの無双っぷりを見たときよりも遥かに驚き、動揺していた。

 

『ひ、ひ、ヒナ委員長!?』

 

アコがここまで動揺している理由……それは今まさにアコが言った言葉通り、全てを圧倒するかのような目をしている彼女こそが、ゲヘナの治安が辛うじてここまでで抑えられている理由そのものゲヘナで最強の──────それどころかキヴォトス全体の生徒の中でも最強格──────の存在、ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナであるからだ。

 

「風紀委員長?」

「ってことは、風紀委員会のトップ…!?」

「あいつが……」

「ひっ、ひいぃぃぃぃっ!?」

 

ホログラム越しからでもビリビリと伝わってくる。

ヒナの圧倒的なオーラが、強さが、威圧感が。まるですぐ目の前にいるかのように。

 

『い、委員長がどうしてこんな時間に…?』

『アコ、今どこ?』

 

アコは先程までの余裕はどこへやら、汗をかき、動揺しながら話す。対するヒナは表情一つも崩さず、ただ質問を投げかける。

 

『わ、私は、えぇっと、その…げ、ゲヘナ近郊の市内の辺りです。風紀委員メンバーとパトロールを……』

「思いっきり嘘じゃん!」

「やっぱり、行政官の独断行動だったみたいですね…」

 

アビドス側はアコの情けない様子に呆れながらも糾弾している。アコはそんなアビドスに心のなかでだまらっしゃいと言いながらでっち上げの話を続ける。

だが、それも限界を迎えつつあると判断したのか、話題の転換を狙う。

 

『それより委員長、なぜこの時間に…出張中だったのでは?』

『さっき帰ってきた。』

『そ、そうでしたか……!その、私、今すぐ迅速に処理しなくてはならない用事がありまして、後ほどまたご連絡いたします!い、今はちょっと立て込んでいまして……!』

ヒナ立て込んでいる?パトロールなのに珍しい、何かあったの?』

『えっ?そ、その…それは……』

 

アコは必死に思考を張り巡らせた。確かにただのパトロールで問題が起こったとは考えにくい。風紀委員長相手に下手な言い訳は通用しないことはよく分かっている。

どうしようかと考えていた時、ヒナがその場にいる全員を驚かせる一言を放つ。

 

『「他の学園の自治区で、委員のメンバーを独断で運用しなければならない様な事が?」』

『……え?』

 

通信の電子機器越しの声とその場にいないと聞こえないであろう生声が重なって響いた。

驚いたのはアコだけではない。その場にいる全員が声のする方を向いた。

そこには、ホログラムのヒナと全く同じ顔、体格、服装をした生徒が立っていた。 

 

『……えっ?』

「!」

『……!?』ゾクッ

「っ!?」ゾクッ

「えっ!?あれ!?」ゾクッ

「!?」ゾクッ

「うーん…えっ……!?」

「い、い、委員長!?い、一体いつから!?」

「!!」

 

その場にいる全員の……そして目を覚ましたイオリの視界にヒナの姿が映る。

ゲヘナ風紀委員長、空崎ヒナは全てを察知してアビドスまで来ていたのだ。

その迫力やオーラはホログラム越しで見るのとは格が違う。日頃ヒナと会っている風紀委員会の面々はヒナの存在に驚く。アビドスのみんなは背筋が凍り、絶対に勝てないと思わせるような感覚に包まれる。

フォーゼは他の生徒とは明らかに違うヒナのオーラに少し驚くが、その後は落ち着いた様子でヒナを見ていた。

 

「……アコ、この状況、きちんと説明してもらう。」

冬映画的な番外編でクロスオーバーしてほしい仮面ライダーはどちら?

  • 仮面ライダーディケイド
  • 仮面ライダーオーズ
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