コズミックアーカイブ(仮面ライダーフォーゼ×ブルーアーカイブ)   作:炙り中トロ

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さぁて、対策委員会に続いてパヴァーヌ編が始まり…ません!まだ始まらないです!
大体ここから10話ほど、イベントストーリーはもちろんのこと、本編ではあまり出番のない生徒とのお話や、本編で絆を深めた生徒とのその後、本編では関わりのない生徒同士のお話など……色々と書いていく……そんな章になります!
とはいえ無理矢理イベストを1話に詰め込んだ結果とんでもない文字数になってしまった……
流石に次からは2話に分けようかなぁ…



閑話
第14話 桜・花・爛・漫


アビドスでの一件が一段落した後、弦太朗の噂は更に広まり、毎日が大忙しだ。

数千の学園を行き来し、様々な問題を解決する。当然、ゾディアーツとの戦闘もあったし、カイテンジャーと戦ったこともあった。

そんな大変な日々の、ちょっとした休憩中のことだった。

 

プルルルルル…

 

「?電話か?」

「もしもし?」

「あっ、ホントに出ちゃった!ど、どうしよう…!?」

「落ち着いて委員長、深呼吸デス!」

「う、うん、すぅ…はぁ……」

 

一通の電話が届き、弦太朗は受話器を取る。相手はどうやら生徒のようで、弦太朗を相手に緊張しているようだ。何やら裏でゴソゴソ話していたが、すぐに受話器に戻る。

 

「え、えっと私、河和シズコって言います!シャーレの先生…ですよね?」

「おう、シャーレの如月弦太朗だ。」

「よかった!……じゃなくて!!」

 

と、一人漫才を繰り広げる河和シズコと名乗る少女。どうやらお転婆系のようである。

 

「私、百鬼夜行連合学院のお祭り運営委員会の委員長をやってて、なんと!同時に百夜堂の看板娘だったりします!」

「それでえっと、今回お電話させていただいたのは、先生に今度、百鬼夜行連合学園で開かれる、百夜ノ春ノ桜花祭に参加していただきたくて!」

「桜花祭?」

「ええ!毎年春に行うお祭りでして、新しい試みもあるので是非来てくれるとシズコ嬉しいです!」

「ちょっと先生に相談したいこともありますので、よろしければ!では!」

「え、あの────」

 

と、シズコは弦太朗が返事を返す前に電話を切ってしまった。

 

「お祭りか…」

 

弦太朗はお祭りのような催しが大好きだ。友達や恋人と色んな屋台を巡り、花火や景色を見て楽しむ。そんな青春が大好きなのだ。

とは言え、弦太朗には仕事がある。大人の宿命だ。

 

『──────ピロン』

「お?」

 

悩んでいる時、シッテムの箱に通知が届く。見ると、シャーレ公式モモッターのDMにメッセージが届いていた。

 

──────────────────────────

先程はどうも!百夜堂のシズコです☆

桜花祭の案内役も兼ねているので、桜花祭のポスターをお送りしますね!

では、シズコは先生が来てくれるのをすっごく、す〜っごく楽しみにしてますね!

──────────────────────────

 

送られてきたメッセージには、桜花祭のポスターが添付されていた。

行くかどうか悩んでいた弦太朗だったが、ここまでアプローチされては応えるしかない。まだ仕事が残っているが、幸い数日後に回しても問題ない仕事ばかりだ。それに、リン曰く弦太朗の自由なのだし。

弦太朗は早速荷物をまとめ、百鬼夜行自治区へと出発するのだった。

これは、突如としてキヴォトスに呼び出された仮面ライダーフォーゼこと如月弦太朗と、お祭りのために頑張る生徒たちと、お祭りを邪魔する悪党、そして、小さな忍者の物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが百鬼夜行かぁ…」 

 

百鬼夜行連合学院…キヴォトスの中でも観光業が盛んで、古風な建物や昭和風といったものから、新しいビルなど、様々な年代の建物が混在している。名物として巨大な桜の木がある。今キヴォトスは春、桜の木は満開である。

祭りが近いということで、お祭り独特の熱気や雰囲気が溢れ、それを楽しむ人々の歓声で街が包まれている。そんな中で、弦太朗の耳にふと可愛らしい声が届く。

 

「あ、危ないですーーっっ!?」

「えっ──────」

 

突然、着物を着た狐耳の生徒が慌てながら走ってきた。弦太朗が気付いたときにはもう遅く、二人はぶつかり、物音を立てながら派手に転んでしまう。

 

「いたた…」

「いっつつ…」

「はっ!大丈夫ですか!?お怪我は!?」

「いや、大丈夫。わりぃな」

「そ、それはよかったです…」

 

お互い派手に転んで打撲をしたが、そもそもキヴォトス人は頑丈だし、弦太朗も体はかなり鍛えている。

お互いちょっとは痛いが特に大きな怪我はなく起き上がる。相手は慌てて謝り、怪我を心配するが、弦太朗はもちろん無事。

少女は胸を撫で下ろすが、一息つく暇はない。

 

「待てー!逃さないんだからー!!!」

「カエデちゃん…ちょっと待って…はあ…はあ……は、速すぎます……」

「はっ!?もうこんなところにまで…!?」

 

どうやら誰かに追われているようで、さっきぶつかって転んだせいで相当距離を詰められてしまったようだ。目の前の少女はかなり慌てて、取り乱している。

 

「なんかよく分かんねぇけど、訳ありみてぇだな。」

「よっしゃ、ついてこい!」

「えっ…」

 

顔面崩壊して取り乱す少女を見た弦太朗は、なにか理由があって追われているのだと気付く。

追われる原因は色々ある。泥棒、痴漢、貴重品の所持、狙われ……酷い場合、なにかしらの私怨なんてものも存在する。

色んな原因があるが、少なくとも目の前の少女は、ぶつかって転んだ時、自分よりも弦太朗の心配をした。そんな子が悪いことをするはずがない、と弦太朗は考え、少女の手を引いて走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…ここまで来れば大丈夫そうですね。」

しばらく二人で走り、なんとか逃げ切ることが出来た。少女は一息ついて安心している。

 

「イズナを助けてくれてありがとうございます!」

「イズナ…お前イズナっていうんだな。」

「あ、申し遅れました!百鬼夜行連合学院の久田イズナと申します!」

「イズナか、よろしくな。俺は如月弦太朗。今日からお前も、俺のダチだ!」

「如月弦太朗…ということはあのシャーレの先生ですか!?」

 

久田イズナと名乗った少女は弦太朗の名を聞いた途端に興奮しだした。身を乗り出し、目を輝かせて弦太朗をぐぅっと見る。

そのせいで、弦太朗の友情の手はスルーされてしまったわけだが。

 

「イズナ聞いたことがあります!どこにでも現れてシュバッと事件を解決する……まるで忍者みたいですね!!」

「忍者」

 

忍者ではないんだけどなぁ…と思う弦太朗。どうやらイズナは忍者に憧れがあるようだ。

 

「まさか先生にお会いできるなんて……。でも、アナタほどのお方がなぜ百鬼夜行へ?」

「百夜ノ春ノ桜花祭を見に来ててな。」

「なるほど…あ!では、イズナが桜花祭を案内します!」

 

と、フンと鼻息を出して自信満々に言うイズナ。対する弦太朗だが、彼は百夜堂に行かねばならない。確か来る時間が決まっているはずだが……と、時計をチェックする。

 

「…まだ大丈夫そうだな。よし、じゃあ任せたぜ!イズナ!」

 

幸いにも1時間ほど時間があり、弦太朗はイズナに百鬼夜行の案内をしてもらうことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てくださいあそこ!百鬼夜行名物のキツネせんべいが売ってます!あそこには桜花祭には欠かせないタヌキ印のお好み焼きも売ってます!是非ご賞味あれ!」

「うめえぇっ!身体に青春と宇宙が染み渡るぜえぇっ!」

 

イズナに案内されながら、弦太朗はイズナが紹介する食べ物を頬張る。どれも絶品揃いで、こんなに賑わっている理由の一端を知る切っ掛けになった。

 

「喜んでくれて何よりです!あ、そうです!」

「百夜ノ春ノ桜花祭といえばあそこに行かないと!着いてきてください!」

 

ここまででも楽しい祭りになっているのに、もっと凄いものがあるのか、と、弦太朗はワクワクしながらイズナについていく。そしてついた場所は、少し高い建物の屋上。

どうやらここは百鬼夜行連合学院の寮の一つのようだ。

そして目の前には、そこらの建物どころか山よりも高く、天に向かってそびえ立つ桜の木が。

そのあまりの巨大さに、弦太朗は感嘆する。 

 

「すげぇな…でっけぇ……」

「えへへっ、ですよね?ちょうどこの時期に一番キレイに咲く、百鬼夜行自慢の桜の木です!」

「イズナは御神木と百鬼夜行の街並みが同時に見れるこの場所が大好きなんです!あれを見ていると、イズナもまだまだ夢のために頑張らないとって思って…。」

「夢?夢があるのか?」

「はい!イズナには夢があるんです!キヴォトス一の…いや、世界一の忍者になるという夢が!!」

「忍者?」

「はい、そのために今日も今日とて鍛錬を……はっ!?」

 

これまで自慢気に語っていたイズナだったが、弦太朗の疑問口調の声に、ハッとし、表情が曇る。

 

「いや、あの、すみません、いや、あの、すみません、今時こんな夢を掲げる人が少ないということは分かっているのですが……その、変…ですよね……」

 

イズナの表情から察するに、これまで何度も笑われ、バカにされてきたのだろう。忍者になりたいという、自分の夢を。

どうせこの人にも笑われる。そう思ったのだろう。

 

「いや、いい夢なんじゃねぇか。」

「え?」

 

しかし、弦太朗は違った。笑うどころか、イズナの夢を肯定する。予想外の返事に、イズナはぽかんとする。

 

「忍者だってロマンだ!青春してて立派な夢だ。かっこいいと思うぜ!」

「お、応援してくれるんですか…?忍者になりたいなんて、普通の学生は言わなさそうな夢でも……?」

「おう、生徒の夢は俺の願い!叶うとすっげぇ嬉しいんだ!だから頑張れ!」

「……っ!」

 

誰の目から見ても分かる。弦太朗の屈託のない笑顔に嘘はない。イズナは本気で自分の夢を応援してくれていることに少しの間驚くが、すぐにさっきまでの笑顔を取り戻した。

 

「えへへ、そう言っていただけたのは先生が初めてです!」

「イズナの夢を応援してくださるなんて…」

「まだ失敗も多い身ではありますが、イズナ、立派な忍者になれるよう頑張ります!」

「おっしゃ!その意気だ!」

 

と、二人は子供のように「忍者!忍者!」とじゃれる。第三者から見たら完全に不審者だ。

しばらくそれが続いていたわけだが、イズナは不意に思い出したかのような顔をする。 

 

「あっ、依頼主の依頼を終えていないのを思い出しました!」

「依頼?」

「はい!先程の…」

 

と、二本指で走る姿を作るイズナ。どうやら先程逃げていたあれは依頼だったらしい。

 

「では、失礼しますね!依頼を無事終えたらまた、一緒に桜花祭を楽しめたら嬉しいです!では!」

「おう!またな!」

 

そうしてイズナは現れたときと同じく、風のように消えていった。その姿はまるで、忍者のようだった。

 

「あ、こっちもそろそろ時間か。」

 

と、弦太朗は腕時計を見る。見ると、約束の時間まで後5分だ。

マシンマッシグラーに乗れば焦る時間でもないが、今は祭りの準備もあって自動車の類には制限がかかっている。走るしかない。

 

「やっべぇ!?急げ急げ!アロナァ!百夜堂までのナビ頼む!」

『ええっ!?ナビですか!?』

「頼む!!」

『……建物を出て右300m先の十字路を左折後、2km先を右折、目的地周辺です。』

「遠いな!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、間に合った……」

 

全力疾走した弦太朗はどうにか約束の時間の1分前に百夜堂に着くことができた。

汗を拭き、息を整えると、いよいよ扉を開けた。同時に、約束の時間へと時計の針が動く。

 

「わりぃ、ギリギリになっちまっ…て…?」

 

と、百夜堂に入った弦太朗の前には、着物を着た金髪のポニーテールの少女が立っていた。

 

「お頭ァァ!ようこそいらっしゃいマシタ!!わざわざシャーレ組からお越しになると聞いてお待ちしておりましたァァァ!」

「シャ、シャーレ組……?」

 

いきなりその生徒はとんでもない大声で弦太朗を出迎える。それは、ヤクザの組長が帰ってきたときのような勢いで、弦太朗は困惑する。

そんな中、店の奥から聞き覚えのある声が響く。

 

「ちょっとフィーナ!先生が困ってるでしょ!」

 

その声は弦太朗に電話をかけてきた河和シズコと同じ声だった。先程弦太朗を派手に出迎えた生徒はフィーナというらしい。

シズコは冷や汗を流し、慌てながらフィーナに注意する。

 

「エ?でも先生がビックリする盛大なお出迎えをしろと委員長が……」

「いやいやいや!!それはあくまで百夜堂で働く従業員の第一印象的な話だから!!」

「そう、第一印象…最初にとびきり可愛いという印象を植え付けることで、最初から先生の好感度MAXでいこうというこの……」

 

と、シズコは弦太朗そっちのけで自分の考えた作戦を自慢気に提案する。

それだけ聞くと、あの態度も全て演技だったかのようだ。まぁ、ぶっきらぼうな対応をされるよりはマシだが。

 

「うーんと…」

「……はっ!?」

「う、うーんとその…えっと……」 

 

待ち疲れた弦太朗に話しかけられ、シズコはまた慌てて弦太朗を見る。目はグルグルと回っている。どうやら何を言えばいいか考えているようだ。その内、その慌て顔は取って付けたような笑顔になる。

 

「いらっしゃいませ!!百夜堂へようこそ!にゃんにゃん!」

「に、にゃんにゃん…?」

「1名様、ご案内!フィーナ!」

「はいっ!不肖フィーナ!お頭を全力でおもてなししマスッッ!!」

「だからそういうのじゃなくって!」

「……(汗)」

 

シズコのぶりっ子っぷりと二人の漫才のような勢いにはさしもの弦太朗もついていけず、二人の勢いに弦太朗はただ流されるのだった。

 

 

 

数分後、少し落ち着いた3人は机に座り、話をしようと言う雰囲気になっている。

弦太朗の前には百夜堂特製の抹茶が出されており、その風味にはなかなかの風情がある。

 

「それにしても本当に来てくれたんですね!」

「あぁ、あんなにアプローチされたら応えるしかねぇからな。」

「えへへっ、では改めて自己紹介を。」

 

如月弦太朗という有名人に対して、自分のアプローチが成功したことがよほど嬉しかったのか、シズコは上機嫌で話を続ける。

 

「私は河和シズコ。百鬼夜行連合学院所属、お祭り運営委員会の委員長であり、この百鬼夜行の伝統的な喫茶店、百夜堂のオーナー!同時に百夜堂の看板娘でもあって……つまりみんなのアイドルなんです!」

「そしてワタシは百夜堂の従業員!任侠を究めんとするフィーナと申しマス!」

 

と、二人は自己紹介をする。自分で作り上げたであろうキャラを徹底して貫き通す二人の様子から、その本気っぷりが伺える。

 

「俺は如月弦太朗。キヴォトスの生徒全員と友達になる男だ!よろしくな!」

「全員と友達に…とても立派ですね!では是非……!」

「おおっ!ではワタシも!」

 

二人は差し出された弦太朗の手を取り、友情のシルシを交わす。これは友だちになったのと同時に、困ったときにはいつでも相談してくれという弦太朗の心の表れでもある。

 

「では、お祭り運営委員会のPRも兼ねまして、百鬼夜行連合学院とはどういうところなのか、説明をしますね!」

 

イズナに多少案内してもらったとは言え、弦太朗が百鬼夜行のことをほとんど知らないことも視野に入れていたシズコは、百鬼夜行についての説明をはじめるのだった。

 

「百鬼夜行連合学院は、昔から観光業を中心に発展してきた自治区です。ですからやっぱり様々な娯楽が沢山あるのですが、一番はなんといってもグルメ!」

「いろんな文化と生徒が交わって息づいている…そんな場所なんです!」

 

なぜイズナが桜花祭巡りで食べ物の話ばかりしていたのか分かる。観光業が盛んな百鬼夜行の中でも、特にグルメがオススメなのだ。

あの香ばしい食べ物の匂い……思い出しただけで涎が出そうだ。

 

「そして私たちお祭り運営委員会はその名の通り!百鬼夜行のお祭りを担当してるんです!企画や運営、全体を通しての管理までしている凄い委員会なんですよ!」

「そして、ここ百夜堂はお祭り運営委員会のCooolなアジトでもありマス!」

 

と、自慢気に語るシズコとフィーナ。確かに、高校生だけでこの規模の委員会を纏められるのは凄いことだ。

ゲヘナやトリニティやミレニアムにいたらセミナーや生徒会の大変な仕事もこなせるかもしれない。

 

「今はまさに私たちが準備してきた百夜ノ春ノ桜花祭が開催中!これが私たちお祭り運営委員会の力です!!」

「祭りは青春の花畑だ!いいことじゃねぇか!」

 

先程も言ったとおり、弦太朗はお祭りの類が大好きだ。そこで新たな友情や恋が花のように芽生えるのだから。

だから、桜花祭を楽しむつもりできたし、弦太朗の称賛を聞いてシズコとフィーナの顔も晴れやかになる……のだが、シズコは突然思い出したかのように顔が曇ってしまう。

 

「…ですが最近、邪魔をしてくる奴らが現れまして…今朝もあちこち荒らされたし、本当に……」

 

その言葉を聞き、弦太朗は相談事があると言われたことを思い出した。きっとそのことだろう。

 

「そういや、相談したいことがあるって…」

「はい、楽しんでもらいたくてご招待したのもそうなんですが……」

「…魑魅一座・路上流……という名前を聞いたことはありますか?」

「魑魅……なんだって?」

「……昔からこの百鬼夜行で問題を起こしている奴らです。問題を起こしているのは以前からなのですが、最近は妙に計画性があって…まるで裏で誰かが動いているような……」

 

どうやら、ヘルメット団と似たような集団がお祭りの妨害をしているらしい。

気になるのは、裏で誰かが動いているかもしれないということ。それはカイザー理事のような悪い大人か、それともワカモのような頭の切れる不良生徒か…

何にしても、底知れぬ今回の相手に不気味さが加速する弦太朗。

 

「今までは私たちでなんとかなってたけど、最近は頻度も数も増えてるし…このままお祭りを邪魔されるなんてたまったもんじゃないわよ!なんなのよもう!!」

「だ、大丈夫か…?」

「……あ」

「えっと…シズコ怖〜い……」

「……(汗)」

 

ストレスとイライラからシズコは今にも暴れ回りそうな勢いで捲し立てるが、自分はおちゃめ系キャラで通していることを思い出し、冷や汗をダラダラ流しながらキャラを戻す。間に合っているかはさておき。

 

「フィーナ、理解できません。どうして桜花祭を邪魔しようとするのでショウ?」

「…確かに。四年前はこんなことなかったのに……」

 

何回も桜花祭に邪魔が入っているなら、問題となり、例年何かしらの対策が取られているはずだ。それがないということは、魑魅一座が邪魔してきたのは今回が初めてということ。

だが、その動機は一切不明である。

中々手がかりが掴めず、足踏みしている一同。そんな時、百夜堂のドアが不意に開いた。

 

「知ったこっちゃないが、色々と気に食わなかったんじゃないかい?」

 

ドアを開いた者はそのまま3人の会話の輪に入ってくる。シズコとフィーナはその声に聞き覚えがあったらしく、声がした方を向く。そこには、着物を着た毛むくじゃらの猫人間が立っていた。高級そうな着物からは高級感が感じられる。

 

「あ、会長。」

「会長?」

「どうも、百鬼夜行商店街の会長、ニャン天丸だよ。」

「あぁ、ここの会長さんか。如月弦太朗だ、よろしく。」

 

来たのは百夜堂があるこの商店街の会長だった。生徒の面倒も見てくれているらしい。

会長…というより、彼の先程の発言が気になったのか、シズコは怪訝な顔で口を開く。

 

「連中は桜花祭の何が気に入らないんでしょうか…?」

「さぁね。ただ、強いて言うなら、君が特別に発注したというアレではないか?」

「!まさか…」

「アレ…?」

 

魑魅一座が気に入らない要素かもしれないアレというものが何か分からず、弦太朗は首を傾げる。そんな中、シズコは少ししょんぼりしながら机の上に何かの設計図を広げた。 

 

「こいつは…?」

 

弦太朗が身を乗り出して設計図を除きながらそう言うと、シズコは設計図の説明を始める。 

 

「桜花祭では、フィナーレに大きな花火を打ち上げる伝統があるんです。でも、今回は花火をもっと盛り上げたくて、ミレニアムに依頼をして特注の花火装置を作ってもらったんです。その設計図がこれで…。」

「ホログラムで花火を再現する、SpecialでNiesな機械だと聞きました!」

「百鬼夜行伝統のやり方ではなくなりますが、花火がもっと派手になって、技術的な不安もほとんど払拭される代物です。完成品は私が大切に保管しているのですが…。」

 

ミレニアム特注の機械にその設計図と仕組み…それを見たニャン天丸は手を顎に当て、ただ一言。

 

「金がかかってそうな機械だな…」

 

その一言には、これまで以上の重さがあった。会長ということもあり、予算に悩まされることはあるだろうが、にしても不自然なほどに。

 

「……まぁなんにせよ、急な変化を受け入れられない懐古的な者もいる。それだけだろうさ。」

「そんな…私はただ桜花祭を成功させたくて…」

「あくまで推測だ。儂だって、この話を蒸し返したいわけじゃない。ただ気に食わんと思う者もいるというだけだよ。」

 

と、ニャン天丸はあくまで理論的に話す。だが、シズコの祭りに対する思いは理論や正論では揺るがない。

弦太朗、シズコ、フィーナはまるで身体から炎が出ているかのような気力が感じられる。

 

「……でも、私たちだって遊びでやっているわけじゃありません!お祭り運営委員会の委員長として、断言します!!」

「ハイ!お祭りというのは、どんどん楽しくなっていくべきなのデス!」

「みんなで作るのが祭りだ。俺も協力する。絶対に成功させてみせる。」

「……なら、そうなるように頑張りたまえ。」

 

そんな三人を前にしても、ニャン天丸の落ち着いた口調は変わらないが、そんな彼の秘密も知っていると言わんばかりにシズコはニヤける。

 

「そうやってぶっきらぼうですが、会長はいつも活動を手伝ってくれるし、今回の桜花祭でも、色々と心配してくれてますもんね。」

「これはツンデレというやつデスネ!」

「違うわい!」

「……オッホン……それでどうするんだい?そろそろあいつらを止めないと、桜花祭が目茶苦茶になっちまう。」

 

弱いところを言われ、ニャン天丸は少し声が大きくなるが、ハッとして少し間を置き、口調を戻す。

ニャン天丸の言う通り、時間がないのは確かだ。桜花祭まで、残り一週間もないのだ。

 

「誰かに助けを求めるってのは…」

「うーん…助けを求められる部活がないわけじゃないんですが、どこもかしくも真っ当に協力してくれるかどうか…何せ変わり者しかいないので…」

「マジかよ…」

 

どうやら、百鬼夜行の部活や委員会はどこもこういうときに限っては悪い意味で一癖二癖あるらしく、協力は望めるかわからないらしい。弦太朗も百鬼夜行ではまだお祭り運営委員会以外とは関わりがない以上、協力の要請は望み薄だ。

 

「うーん…でも背に腹は代えられません。心当たりはありますし、そこを当たってみましょう。」

「先生、お願いしてもいいですか?」

「おう、任せろ。」

 

とはいえ、ここにも生徒会的な組織はあるらしく、取り敢えずそこを尋ねることとなった。フィーナに留守番を任せ、二人は出発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「着きました。」 

 

二人がやってきたのは、まるで日本の城のようにそびえ立つ大きな建物の前だった。

 

「ここは陰陽部。百鬼夜行の実質的な生徒会です。」

 

と、シズコは弦太朗に陰陽部について説明するのだが、その顔はどうも胃が痛いとでも言いたげだ。

 

「シズコ、顔色悪いけど…大丈夫か?」

「え?あ、いや、その……本当ならこういった問題は百花繚乱紛争調停委員会という委員会に頼むのですが、生憎、百花繚乱は今、メンバーが誰もいないらしく、その代わりに陰陽部が担当しているのですが…」

 

呆れと不安が混ざったシズコの顔に、徐々に怒りが付きまとい始める。どうやら、陰陽部とやらも一癖あるようだ。

 

「陰陽部は腰が重いことで有名で、こっちが相談しても中々動いてくれないんです。」

「特にあの部長!話に行っても『私たちにはそういう権限はないので〜』だの『重要な案件は書面でお願いします』だの…!書面じゃ遅いんだってば!書類が通る頃には良くも悪くも解決してるっての!!」

 

と、顔を真っ赤にして喚き散らすシズコ。不満たらたらといった様子だが、何か考えがあるようだ。

 

「…フフッ、でもそれも今日までの話。今こっちには、シャーレの先生がいるんだから。先生さえいれば、きっとあの陰陽部の部長だって重い腰を上げて協力せざるを得ないはず。そうしたらこちらの思うまま顎で使って…くふふっ……」

 

と、シズコは陰陽部の部長を尻に敷き、扇子をそよぎ、見下している自分の姿を想像する。

だが、弦太朗の困ったような視線に気づき、ハッと表情を取り繕う。

 

「……はっ!?…あーっと……シズコ、お願い聞いてくれるか心配~。」

「えっと…無理に取り次がなくても……」

「と、とにかく!早く中に入りましょう!」

 

再び顔が真っ赤になってしまったシズコ。手をブンブン振って弦太朗の言葉を遮ると、ズカズカと陰陽部の部室の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ先生、待ってた。」

「チセ…ってあれ?今、『待ってた』って言った?」

「俺たちが来るのが分かったのか?」

「うん、部長が言ってた。二人来るって。」

 

チセと呼ばれた少女はゆっくりと喋りながら二人を順番に見ると、「かわいい大人」と弦太朗を指さし、「タヌキさん」とシズコを指さした。「誰がタヌキよ!?」と激昂して地団太を踏むシズコを、チセはどこ吹く風でスルーする。かなりのんびり屋なようで、弦太朗ですらゆらゆら揺れるような彼女の心は読めない。ただまぁ、陰陽部の生徒がいるなら都合がいい。

 

「えっと、ここの部長に用があんだけど…」

「部長は今日はもう、下校しました。また明日」

「は?まだ昼でしょ?」

「…どうしてだと思う?」

「さぁ…じゃなくて!なんであなたが聞いてるの!何もかも、全てが意味不明だけど!?」

「やっぱりタヌキさん」

「違いわい!」

 

部長は下校した、と言うチセ。だが、外はまだ真昼間。陰陽部といえど、勝手に帰るような真似はできないはずだ。意味を聞くシズコだが、適当としか思えない返事を繰り返すチセに、シズコは一回流されかけたものの、声を張り上げる。喧嘩に発展してしまえば、トラブルになってしまう。その前に、チセに事情を説明しようとする弦太朗だったが、チセはスッと手を彼の口の前に出して、声を遮った。

 

「うん、分かってる。桜花祭を邪魔しようとする騒ぎの件、でしょ?」

「えっ!?知ってたの!?」

「部長は言ってた、助けてあげることはできないけど、代わりに『修行部』に行けば何とかなるはず、って。」

「…修行部?」

 

意外な部活の名前を聞き、すっかり静まって目を丸くするシズコ。

 

「修行部からも来たの、クレーム。街がうるさいって。それで部長が、」

 

 

 

 

『一つでダメなら、二つわ合わせればいいんじゃない?』

 

 

 

 

 

「…って。」

「同じ悩みを抱えてる部活があるってことか。」

「ううっ…仕方ない、今度は修行部のほうに…」

「この際、事情は聞かないから、チセ、もし後で部長が帰ってきたらまた連絡してくれる?」

「さぁ先生、行きましょう!」

 

シズコは立ち上がると、入ってきた時よりもさらに勢いよくズカズカと歩いていった。弦太朗もそれに続き、チセは「いってらっしゃ〜い」とのんびりとした声で二人を見送るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、修行部ってどんな生徒がいるんだ?」

 

百鬼夜行の道中、弦太朗はシズコにそう問うた。先ほど修行部の名前が出た時、シズコがなにやら歯ぎしりしていたので、気になったのだ。

 

「修行部は結構変わり者が多くて、修行のためだとか言いながら、色々とよくわからないことをしている部活です。」

「例えば、修行の一環として寝ながらジグソーパズルやる人とか。」

「……え?」

「素敵なレディーになるためとか言いながら、なぜか町のチンピラたちを退治してる人とか。」

「おう…?」

「大和撫子の嗜みとか言って、読心術を使える部員もいるとか。」

「……???」

 

訳が分からなかった。修行の「し」の字もないではないか。まぁ、修行のやり方は人それぞれだろうが、レディーになるためにチンピラを退治することはあまりに方向性が違いすぎる…

 

「まあ私も噂程度でしか聞いたことないので、実際のところは直接確かめてみないとわからないんですけど……」

「そんな変わり者たちに、そもそも協力してもらえるのかどうか…」

 

と、不安げに言うシズコ。上の陰陽部がああも非協力的では、他の場所も不安に感じてしまう。そんなシズコの肩を、弦太朗はポンと叩く。

 

「こういうのは、会って正面からぶつかってみんだ。意外と良いやつかもしれねぇし、同じ悩みがあるんだ。悩みは分け合うのが青春だぜ。」

「……ですね!悲観的に考えるのはもうやめ!さあ!早く修行部のところに行きましょう!」

 

弦太朗の励ましで元気が出たのか、シズコはニヤっと笑って走り出…

──────────そうとした途端に静子の携帯電話に着信が入った。

 

「何よもう、このいい空気に……ってフィーナから?」

「もしもし?どうしたの?」

『委員長!大変デス!』

 

あまり電話をかけてくるような生徒ではないのだが…そんなことを思いながら、シズコが電話に出ると、携帯越しにけたたましい銃声と悲鳴にも似たフィーナの声が聞こえてきた。

 

『魑魅一座デス!お二人がいない間を狙われマシタ!』

「はぁ!?あぁもうあいつら性懲りもなく!!ホントにもうやってらんな…あっ……」

 

どうやら、魑魅一座による継続的な襲撃のようで、シズコは何度にも及ぶ攻撃に癇癪を起こしかけるが、可愛いキャラを作っていることを思い出し、ハッとする。

 

「え、えっと…きゃー!シズコこっわーい…フィーナのことしんぱ〜い…なんちゃって…」

「……(汗)」

「と、とにかく!フィーナがピンチです!行きましょう!」

 

これでもう何度めか…もう誤魔化してもぶっちゃけかなり遅いのだが…。シズコも何となくそれを察したのか─────まぁ諦めてはいないだろうが─────変に言葉を足したりしようとせず、弦太朗を連れて百夜堂へと駆けていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百夜堂に近づく度に爆発の音が大きくなっていき、到着すると、天狗の面を付け、着物を着た何人もの生徒がミニバズーカ片手に暴れまわっていた。

お祭りに来ていた人は悲鳴を上げながら逃げ惑っている。

それを見たシズコは「やめなさい!」と真っ先に走っていくが、爆発にシズコも巻き込まれ、ボールのようにはねながら転がってきた。

 

「シズコ!大丈夫か!?」

「ふははっ!私たちは百鬼夜行の路上に棲まう魑魅魍魎!」

「その名も、魑魅一座・路上流っす!」

「さぁみんな!荒らして荒らして荒らしまくりな!破壊だよ!」

 

と、魑魅一座を名乗る生徒たちは歩いている人を威嚇したり、物を壊したりと暴れ回っている。

そんな魑魅一座を、弦太朗が止めに入る。

 

「待て!なにやってんだ!」

「いっつつ…先生!あいつらですよ!魑魅一座!祭りを邪魔する問題児!!」

「せっかくの桜花祭を邪魔しようなんて許せまセン!!」

 

シズコと応戦していたフィーナは怒り心頭といった様子で魑魅一座を指さし、睨む。相当ストレスが溜まっていたようだ。 

 

「桜花祭なんて潰してやる!!」

「待てって!お前らも生徒なんだろ!?なんでこんなことを…!」

「生徒全員が桜花祭を楽しみにしてるわけじゃない。」

「え…?」

「!それって……」

 

笑いながら破壊行為を続ける魑魅一座に弦太朗が質問を投げかければ、一人の生徒が答を返す。

その回答は、弦太朗が高校3年生のときの春、とある生徒から言われたことと似ていた。

 

「先生!変な言葉に惑わされないでください!とにかく今はこいつらを追っ払わないと!シャーレのすごい力を見せつけてください!」

「…え?シャーレ!?」

「シャーレって、あのシャーレか!?」

「か、構うな!破壊を続けろ!」

 

昔を思い出し、無理に鎮圧するのもどうかと少しだけ考える弦太朗だったが、シズコの言葉で前を見ると、とても話し合いなどが出来る状況ではなかった。話は後で聞くとして、今はこれを沈めるのが先だ。

シャーレの名を聞いて魑魅一座もタジタジだし都合も良さそうだ。しかし、問題が一つある。

 

「けど、今いるのはお祭り運営委員会とシャーレの先生だけだろ!?生身の先生は私らの中のたった一人でも勝てるって聞いたぞ?」

 

そうなのである。お祭り運営委員会は戦闘をしないことがほとんど。フィーナは戦えこそするが、この数の不良を1人で相手取れるほどではない。弦太朗も戦闘の四季を執れるほどの頭脳は持ち合わせていない。

しかし、この生徒たちにイオリほどの頑丈さはない。デコピンといえどかなりの痛みになるはず。変身して殴りかかるわけには……その時だった。

 

「そこまでだよ!魑魅一座・路上流!」

 

そんな声が聞こえたかと思うと、爆発音が響き、魑魅一座たちが吹っ飛んでいった。

爆煙が晴れ、立っていたのは、何かを言いながら魑魅一座の一人をなぎ倒す少女だった。

 

「だ、誰だ!?」

「なんだ誰だと聞かれたら、答えてやるのが人情ね!」

 

某ロケット組織のような口上を言って放った少女は「勇美カエデ」。活発な勢いで動き回り、魑魅一座を次々となぎ倒していく。その後ろには、さらに二人の生徒がいた。

眠そうにあくびをしながら、敵の軽く攻撃をはじいている生徒は「春日ツバキ」。

優しさを見せながらも、どこか猛々しい姿で戦う可憐な少女は「水羽ミモリ」。全員修行部の生徒である。

 

「派手に!」

「可憐に…」

「う、美しく…!で、合ってます……?」

「バッチリだよミモリ先輩!よし続けるよ!街の平和を守るため、美少女三人組の修行部!」

「ここに参上!」

「参上ー…」

「えと、参上、です……。」

「ふふーん!完璧な登場演出!決まったぁ!!」

「えっと…カエデちゃん、なんだかすごい見られてる気が……」

 

ここまでの会話はすべて戦いながら行われている。元気いっぱいでテンションが高いカエデ、ずっと目が半開きで、周りに興味がなさそうなツバキ、少し恥ずかしいのか、目線が少々下に行っているミモリ。これまた癖がある連中だが、対策委員会ほどではないにしても息はぴったり。次々と魑魅一座を倒してしまっている。

何やらその場にそぐわないコミカルな会話をしながら戦う修行部の面々を指さしたシズコの一言。

 

「…ね、言ったでしょう?変わり者だって。」

 

何も言い返せない弦太朗。確かにこの光景を見ては、彼女らは少し変わっていると誰もが思うだろう。

ただ、弦太朗には別の疑問があった。ミモリと呼ばれた生徒の声…元いた世界にいた誰かと似ているような…。

 

「クソッ…!お前たちは何者だ!?」

「私たちは、素敵なレディーになるために日々修行を続ける「修行部」!」

「それが目的なのはカエデだけでしょ?私は別にそんな修行もしてないし…とにかく寝れればそれで…」

「あはは…でも、目標があるというのはいいことだと思います。」

「そうだよミモリ先輩!素敵なレディーになるための修行のついでに、街の治安も守らなくちゃ!」

「────────ということで、私たち修行部の出番だよ!魑魅一座・路上流、覚悟!」

「うん、覚悟~。」

「そ、それでは覚悟してください!」

 

と、会話の勢いも三人の快進撃も止まらない。修行部の強さに、先ほどまで強気だった魑魅一座の連中もすっかりおびえてしまっている。

…ただ、魑魅一座側にもいるのだ。修行部の一人一人と同等の実力を持つ者が。

 

「イズナ流忍法!四方八方モクモクの術!」

 

何者かの声と同時に、ドカーン!と爆発が起こった四方八方が白い煙に包まれ、辺りが見えなくなる。

 

「ば、爆発!?」

「ですがこの程度なら、どうということは…!」

 

シズコや修行部からすれば大した問題でもないが、問題は弦太朗である。キヴォトスの生徒からすれば、変身していない彼など小動物に等しい。生身の状態で襲われたら軽くひねられてやられてしまう。そんな彼の前に、一人の少女が颯爽と降り立った。

 

「イズナ、只今参上……って先生!?」

「げほっげほっ…ってイズナ!?」

 

お互い一瞬脳がバグったが、まさかと思ってもう一度見ると、弦太朗の目にはイズナが、イズナの目には弦太朗がハッキリといたのだ。

 

「イズナ!?なんでイズナが…!?」

「それはこちらのセリフです!どうして先生が…!?」

「はっ!?もしかして全て仕組まれていた!?イズナの夢を応援してくれると言ったのに、本当は悪い大人だったのですか!?」

 

と、捲し立てるように話すイズナ。謂れのないことを言われ、弦太朗は理由がわからずに頭を掻く。そもそも、何故イズナと魑魅一座が一緒にいるのか……

 

「なんで魑魅一座といるんだよ?だってイズナの夢は忍者なんだろ?」

「い、イズナは忍びとして命令に従っているだけです!」

「命令?」

 

どうやら、誰かしらから命令を受けて行動しているらしい。イズナは自信アリという様子で鼻から息をフンと出す。

だが、祭りを邪魔するなんて命令をする者など、ろくな人間ではない。弦太朗は探りを入れようとするが、それより前に……

 

「おんどりゃああああああああああああ!!!」

「きゃいん!?」

 

カエデのドロップキックがイズナの脇腹に炸裂!イズナは途端に体制を崩され、そのまま近くの建物の壁まで吹っ飛んでいった。

 

「よーっし!黒幕撃破ー!!」

「あれ?っていうか今の子!朝に屋台に使う素材、盗んだ子!やっぱり魑魅一座だったんだ!」

「あっ、イズナ…」

 

少しの間、茫然としていた弦太朗だったが、ふと我に返ると、イズナが飛んで行った壁まで走り、イズナの様子を見た。イズナはすっかり伸びてしまっていたが、割とすぐに目を覚ますと、サササッ…っと弦太朗から遠ざかる。

そこに、負傷した魑魅一座の一人が駆け寄ってきた。

 

「イズナ!一旦引くよ!!」

「引く…?ですが……」

「出来る忍びは引き際を弁えるものだよ!どっかの本で読んだ気がする!!」

「…そういうことなら……分かりました!」

 

撤退すると聞き、イズナは少し顔が曇るが、忍びを目指していることはあり、魑魅一座の忍び文句を信じて撤退を決め込んだ。

 

「まさかイズナの夢を応援してくださる先生が敵として立ちはだかるなんて…なんという運命の悪戯…!ですが、望まぬ戦いに巻き込まれるのもまた運命……先生!イズナは負けませんので!!では、ドロン!」

「あっちょっ…行っちまった……」

 

弦太朗がイズナを止める暇はなかった。

ヒュッと、何かが上に上がっていく音だけが聞こえた時間が一瞬だけあった。その一瞬が終わった時、もうそこにイズナはいなかった。どうやら他の魑魅一座も逃げ出したようで、その場は先ほどの戦いなどなかったかのように静まり返る。

 

「ああっ、逃げられた…」

 

響いたのは、そう悔しげに言い放つカエデの声だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁもうまた!!」

 

百夜堂に戻って来るやいなや、シズコは机を叩いて、つばを吐いて喚き散らした。

何度も邪魔をされてストレスが溜まっているのもあり、かなり疲れた様子だ。

そんなシズコを「頑張ったな」と励ましつつ、弦太朗は修行部の生徒たちと向き合う。

 

「わり、助かった。お前らが修行部か。」

「そう!パトロールをしてたら見かけてさ、放っておけなくて。」

「パトロール?」

「修行の一環で街を守ろう…ってことで。それもうちの部活の趣旨の一つだから。」

「皆さんで楽しめてこその桜花祭ですからね。」

 

百夜堂野中央の大きな机越しに互いに対面している6人。弦太朗がシャーレの先生であると知ったときは少し驚いていた修行部の三人だが、普段からいろいろと破天荒だったりする彼女らの呑み込みは早かった。

三人の正義感にあふれた声と眼差しを見るに、変わり者であることにちがいはないが、ただ変わっているだけではないようだ。

 

「急にあちこちで魑魅一座・路上流が暴れだして困っていたところでした。ですから、陰陽部に掛け合ってみたのですが…」

「ま、あそこが動くわけないよねぇ…」

「そうなの!権限がどうとか意味わかんないことばっか言い出すんだもん!やってらんない!」

 

どうやら修行部も陰陽部にはお祭り運営委員会と同じような不満を持っていたようで、次々と愚痴をこぼす。主にカエデが。

 

「にしても、急に暴れだしたなんて、なんかきっかけとかねぇのか…?」

「うーん…そういえば、最近ある噂があって。今までばらばらだった魑魅一座を、統率して動かしてる「雇い主」みたいな人がいるとかなんとか。」

「雇い主って…あの問題児たちにわざわざお金を払ってるの?それまたどうして……」

「みんなが楽しそうに笑ってるのが気に食わないとか、そんな理由だよきっと!絶対に悪いやつ!」

「ともかく、この桜花祭を邪魔しようとしている人がいることは事実のようですね。このまま防衛を続けるよりは、元凶を叩いてしまったほうが早いと思います。」

「それは賛成~、でもその元凶、どうやって探そうか?」

 

どうやら裏に黒幕がいることはほぼ確実のようだが、如何せん尻尾がつかめない。カイザーの理事といい、こういう時の相手は慎重だ。滅多なことではその全貌を明かさないだろう。

どうしたものか…と考える一同。

 

「元凶…元凶か……私たちの桜花祭を守るためだし、断腸の思いだけど仕方ない。」

「シンプルに行きましょう。魑魅一座を誘拐してから脅して、雇い主が誰なのか聞きだす!必要なら多少過激な行為もやむなし!」

「サスガ委員長!悪党たちには小指ザクリの刑デスね!」

 

断腸の思いと言いながら、一ミリの葛藤も罪悪感も感じさせない勢いと速さでのシズコの発言。これには周りもドン引きである。 

加えて繰り出されたフィーナの爆弾発言に、一同あんぐりと口を開ける。

 

「うわっ…」

「あら…」

 

その空気を感じ取ったのか、フィーナは焦った様子で口を開く。

 

「えっと…よく考えると、フィーナもそれはちょっとやり過ぎだと思いマスよ、委員長…」

「なんで私の発案みたいになってるの!?」

 

その後も会議は続き、様々な案が出たが、どれも実行には至らず、会議は難航していた。そんな中で、ふとシズコの脳裏にもう一つの作戦が浮かんだ。

 

「待って!もう一つ思いついた!ちょっと先生に無理させるかもしれないけど……」 

 

そう前置くと、シズコはゆっくりと口を開き始めるのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

百鬼夜行某所、ここは普段から魑魅一座の溜まり場となっている場所だ。

荒廃し、ボロボロの建物の壁は傷だらけだしネズミの気配がする。

そんな建物で、フードを深く被った人物が魑魅一座とイズナを見下していた。どうやら、イズナの言う依頼主のようだ。

 

「失敗の理由を聞かせてもらおうか魑魅一座?大金払って聞きたいのは、失敗したなんて言葉じゃないぞ?」

「そ、それはその…」

「だって、シャーレがいたし…」

 

どうやら、先程の任務失敗を問い詰められているらしく、ある者は言葉に詰まり、ある者は小声で言い訳をする。

依頼主はあまり話を聞いていない様子だったが、シャーレという言葉に、彼はピクリと反応した。尤も、先の戦いにおいて弦太朗の干渉がない以上、負けたことの理由にはならないのだが、依頼主もシャーレの噂は聞いているらしく、警戒対象には入っているようだ。

 

「……シャーレだと?」

「はい!シャーレの先生です!」

「イズナ殿まで…何を言っているのだ?」

 

だが、ネットや巷で聞くのは、どんな法律も権限も無効化される超法規的権限を持っている、先生は生身だと銃弾一発でも瀕死に陥る、先生はキヴォトスの何よりも強い超人に変身できる………など、現実味のないものばかり。依頼主は正直半信半疑だ。

 

「この前言ってましたよね?イズナが頑張って命令を遂行していれば、いずれ立派な忍びとなり、生涯使えるべき、運命の主殿に出会えるって!」

「…確かに言ったような気もするが……」

「イズナは出会ったのです!運命の主殿…先生に!先生は気高く、イズナの夢を応援してくださる優しさも備えておりました!」

「…それで?」

「しかし!そんな先生が敵として立ちはだかりました!これ一体何故なのでしょう…」

「それh」

「ズバリ!先生は騙されているのではないでしょうか!」

「そう!先生はお祭りを邪魔する企てをする奴らに、まるでイズナたちが邪魔する側だというように…」

 

依頼主にとって、自分の利益や身分以外のことなどどうでもいい。だから、適当な言葉で人を言いくるめる。そんな彼がイズナに言った言葉も言われた言葉も良くてうろ覚えだ。だが、先程の裏切ろうとしかねない発言は少し鼻につく。

だが、その問題も杞憂で、イズナはあくまで依頼主が正しいと思いこんでいる。

だが、ある種、自分の核心に迫る疑問は覚えていたようで、依頼主はそれについて答えようとするが、イズナは依頼主の言葉を待たぬマシンガントークを放つ。

依頼主はうるさそうにフード奥の顔をしかめる。幸い勘違いはしていたようで、弦太朗が騙されていると思っているらしい。

 

「もういいもういい!それはどうでもいいが、イズナ殿までそう言うのなら、その先生という者は油断ならぬ相手なのだろう。」

「……それに免じて、今回は大目に見よう。だが、払った金銭通りの仕事はしてもらうぞ。次に失敗したら、分かっているな?」

「お任せを!」

「今度こそ、祭りをぶっ壊してやるよ!」 

 

依頼主の言葉に掻き立てられ、魑魅一座の面々は獰猛な雄叫びを上げる。

そんな悪意が渦巻くこの場で、イズナだけは純粋な気持ちでピースサインをしながら宣言する。

 

「ご心配なく!イズナも騙されている先生を倒し、真実を教えてあげます!!」

「そ、そうか…」

 

イズナの純粋すぎるが故の勢いに、冷静な依頼主も勢いを砕かれ、言葉が乱れる。

 

「イズナが勝てば、先生も目を覚ましてくれるはず!」

「そうか…まぁいい。信じよう、イズナ殿。」

「はい、お任せください!ニンニン!」

「……あいつ、本当に大丈夫か?」

 

イズナは自信満々で部屋から出ていく。依頼主はイラッとしたように手を握りしめ、イズナの背中を見ながらそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつらいっつも呼ばなくても来るくせに、なんでいざ探そうとすると出てこないわけ!?」 

「フィーナ、分かった気がしマス!リモコンと同じデス!」

「分かる分かる!確かマフィンの法則だっけ?」

「おいしそうな法則だね、なんか違う気がするけど~。」

 

作戦も固まり、魑魅一座退治に乗り出した一同だったが、こんな時に限ってちっとも目標が現れない。

シズコにはもはや取り繕う気がないらしい。看板娘らしからぬ大声で叫びながら、ズカズカと歩いて行く。

幸か不幸か、そのおかげですでに祭りは始まっており、街は賑わいと活気であふれていた。フィナーレの花火は明日……もう時間も無くなってきている。

 

「ううっ…なんで出てこないのこんな時に限って!」

「う~ん…手分けして探してみるのはどうでしょうか?」

「手分け?」

「ええ、時間もないですし、すぐに連絡が取れる状態にして手分けをして魑魅一座を探すんです。見つけたら無理に戦おうとはせず、皆さんに連絡すれば、作戦通りに行けるかと。」

 

調査が難航しているところに提案されたミモリの案。時間がない以上、これくらいしか手はない。 

 

「……うし、それでいくか。」

「では、見魑魅一座を見つけ次第、全員その人のところに集まるということで!」

「了解しまシタ!」

 

一同はその場で別れ、それぞれ別の方向に進んでいくのだった。

 

一分ほど歩いたところで、弦太朗の視界に見覚えのあるシルエットが入った。

イズナはキョロキョロと周りを見回し、サササッと忍者走りで移動しながら何やらブツブツ呟いている。その様子は丸見えなのだが…

 

「イズナは今、闇に紛れて暗躍せんとする熟練の忍び…!」

「先生は、きっとこの辺にいるはず…」

 

どうやら彼女にその自覚はないらしく、脇目も振らずに弦太朗を探し回っている。その弦太朗はイズナのすぐ後ろにいるのだが……

 

「イズナ、こんなとこで何やってんだ?」

「あっ、えっとですね、イズナは今先生を探して…って先生!?いたのですか!?」

「まぁな。」

「背後を取られるとは不覚…!ですが!先生の周りに誰もいないことが運の尽き!さあお覚悟です、先生!」

 

完全に慌てているイズナ。構えを取り、弦太朗と戦おうとしている彼女に対し、弦太朗は落ち着き払っていた。

 

「まぁまぁまぁ、一緒に屋台で飯でも食うか?」

「喜んで!」

「……ではなく!で、ですからイズナは、先生を倒しn」

 

 

 

「えへへっ、この焼きそば美味しいです!あっ、先生も一口いかがですか?」

 

イズナはあっさりと落とされて、広場の片隅で焼きそばをほおばっていた。幸せそうにソースと海鮮でたっぷりの焼きそばを口に流し込み、口の周りを汚すその様は、一人の純粋な少女のそれだった。

 

「えへへっ…コンコン!」

「百夜ノ春ノ桜花祭、イズナ本当に大好きなんです!ですので、こうやって先生と一緒に楽しむことができて、イズナは今すごく嬉しいです!」 

「だな。今の百鬼夜行はこんなに楽しくて、青春であふれてる。」

 

と、弦太朗は少しだけイズナから目を離して、周りを見る。そこには、様々な光景があった。子供が子供らしく追いかけっこをして遊んでいたり、友達同士でご飯を食べていたり、射的や金魚すくいで遊んでいたり、勇気を出して好きな人に告白していたりと様々だ。

 

「祭りは青春のライブステージだ。誰だって楽しめて、誰だって輝ける。そんな祭りを、中止にさせるわけにはいけねぇ。」

「え…?」

 

『中止』という言葉を聞いた途端、イズナの表情が少しだけ怪訝に曇った。先生は騙されている…ずっと揺るがなかったその考えの炎が少し揺らぐ。

 

「ちゅ、中止?急にどうされたんですか…?」

「桜花祭を台無しにしようとしてる奴がいるんだ。多分、そいつはイズナの雇い主だ。」

「桜花祭を台無しに…?そんな、イズナはただ、事業を邪魔する奴らがいるから、その者たちを倒せと……」

 

やはり、イズナに悪意はなかった。悪意の根源がいる、純粋な少女を騙し、利用する存在が。

 

「イズナ、雇い主のこと、聞かせてもらえるか?」

「そ、それは…」

 

弦太朗に問われたとき、彼女の中には大きな葛藤があった。雇い主への疑問と弦太朗への疑問に板挟みにされていたはずだ。それでも尚、彼女の忍びとしての決意は固かった。

 

「…いえ!雇い主の名を口にするなんて、いくら先生だとしても……!」

「…そっか、分かった。」

「…へ?」

 

てっきり戦いになると身構えていたイズナだったが、弦太朗からの思わぬ返しに素っ頓狂な声を上げた。目をぱちくりさせながら弦太朗を見る。

 

「イズナが立派な忍者になりたいって自分で考えて決めたことなんだ。話したくないなら、無理に話せとは言わねぇ。」

「けど、みんなの邪魔をするってなら、放っておくわけにはいかねぇ。だから、俺は絶対にイズナを止める。」

「……っ!先生とイズナはやはりそういう宿命…!」

「イ、イズナ、この場はお先に失礼します!今回はなぜだかこうして、一緒にお祭りを楽しんでしまいましたが…次は違います!次こそは!」

「おう。またな、イズナ。」

「……!!」

「……はい。では先生、また!」

 

弦太朗もイズナも、それ相応の覚悟を持ってやってきている。だからこそ、互い譲らないのだ。

風の音とともにイズナが消えると、弦太朗の耳に聞こえてくるのは、にぎやかな祭りの音と、人々の声だけだった。

 

(やっぱり、イズナは…)

「大人しくして、声を上げんようにしな。」

(……来たか。)

 

イズナの雇い主について思考を巡らせていた弦太朗の背中に、突如として銃口が突き付けられる。それは、魑魅一座だった。

 

「死にたくなけりゃ、指示する方に進みな。」

 

魑魅一座に脅された弦太朗は大人しく手を挙げて、指示だけを聞いて何も言わずに歩き出した。その先にあるのは、路地裏へと続く道だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぅぅ…またしても先生に太刀打ちできず…」

 

弦太朗と別れた後、イズナは彼とともに来た寮の屋上に来ていた。ここから桜花祭の景色を見ることは、イズナにとって至福の時間なのである。いつか立派な忍者となり、この百鬼夜行の平和を見守り続けていきたい。そんな夢が、ここで生まれたのだ。

 

「…でも、先生と一緒に食べた焼きそば、おいしかった。えへへっ……」

「それに最後に「またな」って…、」

「…先生のためにも、イズナは負けません!次こそ必ずこの手で先生を……!」

 

と、何度目かもわからない決意を再びし直そうとしたところで、ふと視界に気になるものが入った。先ほどまで弦太朗と座っていた場所。そこには……

 

「あんなところに魑魅一座?それに、前にいるのは…」

「…先生?」

 

背筋が凍るような嫌な予感がイズナを襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなところに先生を連れてきて、いったい何を…?」

「!あそこから声が!ササッ!」

 

いやな予感の正体がただの思い過ごしか確かめるべく、魑魅一座を尾行してきたイズナ。そこは、イズナの雇い主がいる場所。声がしたほうに顔をやり、天井へと身を潜める。そして、下を覗いた時、イズナの目にはとんでもない光景が映るのだった。

 

「やぁ。シャーレの…如月弦太朗先生……だったかな?」

 

廃墟の一室で弦太朗と対面しているのは、高級感のある着物に身を包み、眼帯をまいた二本足の猫。弦太朗にとって、見覚えのある人物だ。

 

「えっとあんたは……商店街会長のニャン天丸さん?」

「ふん、儂の本名はニャン天丸じゃない!」

「儂の名はマサムニェ……。路地裏の独眼竜!ニャテ・マサムニェとは儂ことじゃ!」

 

ニャテ・マサムニェ……自信満々にそう名乗った彼だが、その場に流れたのは何ともまぁ微妙な空気。まぁこんな廃墟でチンピラを雇っているような、しかもいい歳をした人物が堂々と『路地裏の独眼竜』などと名乗ってもリアクションに困るのはそうであるが。

 

「おほん…百夜堂で会って以来だな。」

「…」

「…あくまで無言を貫くか……教師の意地というやつか?それともほかに手があるのか?まぁいい、私はコミックの悪役とは違う。通信器具の類は没収させてもらおう。」

 

と、マサムニェは弦太朗の持つスマホと、シッテムの箱、更にはフォーゼドライバーすらも奪い取ってしまった。もうこれで、弦太朗に助けを呼ぶ手段も、対抗手段もなくなった。まさに、孤立無援であり、飛んで火にいる夏の虫状態だ。弦太朗の顔も、流石に強張る。

 

「…なんでこんなことするんだ?百夜堂であんたが言ってた伝統ってのを守るためか?」

「伝統…?あぁ、花火のことか?違うわい。全部が全部口から出まかせってわけじゃあないが、本当に気にしているのはそこじゃない。」

「───至ってシンプル、金だよ。」

「金?」

「百夜ノ春ノ桜花祭…この祭りが開かれるたびに、莫大な金が動く。それをお祭り運営委員会などというガキどもが「祭りを素敵なものに」だの「花火のホログラム制作をミレニアムに依頼したい」だのと青い考えで使っておるのが気に食わん。」

「…そんな考えで、みんなを邪魔したのか?」

「そうさ。桜花祭が中止になれば、お祭り運営委員会は責任を取って運営を下りるしかない。そうなれば、次に任命されるのはこの私だ。これでも会長なのでね。」

 

子供の夢を馬鹿にする悪い大人。弦太朗が大嫌いな人間の一種だ。弦太朗の怒気が強まり、声も表情も険しくなっていく。

 

「そのために、イズナも…」

「イズナ…あぁ、あの自称忍者のガキか。大した金もかけていないのに、忍者ごっこのお遊びにちょっと付き合っただけで、よく働いてくれたよ。任務だなんだといえば泥棒だろうとしてくれてねぇ。」

「お遊び?」

「ああ、幼稚な子供のごっこ遊びだろう?あいつの言う魔法のような「忍者」なんて、ファンタジー世界の話だ。」

「「雇い主としてご命令を」だとか「ご命令とあらば何でもこなすのが忍びの道」だとか、笑わないようにするのが大変だったくらいだ。ただ、やる気満々で「忍びとして全力を尽くします!」なんて言った時には、いくら儂でも笑いが止まらなかったさ!」

「今なら言えるけど、あの歳で忍者とか笑わせるよな!小学生かってのw」

「正直、隣で見てるだけでも笑いをこらえるのが大変だったっすw」

「ああ、本当に便利な奴だ。実にバカでこちとら大助かりだよ!ふはははっ!」

 

イズナの夢を罵倒し、あざ笑う三人。弦太朗はそんな三人を睨みながら声を出す。

 

「金のために、イズナの夢を利用したのか?」

「…夢?あんな夢想とすらいえないバカの妄想を、夢だと?君は先生とは言えど、大したお人よしだよ。」

「……っ!!!」

 

マサムニェの声は、当然ながらイズナにも聞こえている。夢を馬鹿にされ、否定され、笑われたイズナの頬に涙が伝う。自分の考えのなさに対しては、怒りすら湧いてくる。

 

(イズナに忍者として活躍してほしいって、信じてるって言ってくれたのに、全部、イズナを騙すための嘘だった…?)

(じゃあ先生は…本気でイズナの夢を応援してくれた先生は、イズナのせいで……)

 

イズナはその場にうずくまり、涙を流し続ける。心が黒く、悲しく染まっていく。心が、身体が恐怖で埋め尽くされそうになるほどに。

 

「…忍者ごっこ、だっけか?」

「……?」

 

ふと、弦太朗が口を開いた。目元は暗くて見えないが、その心は何となく読み取れる。

 

「……ん?ああそうだ。存外その「ごっこ遊び」も役に立ったがな。それがどうした?」

「……忍者だって…」

「忍者だってでっけぇ青春なんだぞ!!」

「!!?」

「…へ?」

「…はい?」

「き、急に何を…?」

 

弦太朗から放たれたのは、怒りでも、苦言でもない、忍者の肯定だった。一同唖然となり、弦太朗に注目が集まる。

 

「せ、先生…?」

「いくら幼稚とかごっこ遊びとか言っても、やりたいことを突き詰めりゃ、それは青春だ!生徒が青春って夢を追いかけるのに、なんか文句あるかよ!!」

 

バァンッ!と勢いよく言う弦太朗。しばらく呆気に取られていたマサムニェだったが、やがて「これは傑作だ!」と大笑いしだす。

 

「シャーレの先生だというから、もう少しくらい話が通じる奴だと思っていたんだがな!何を言ってるかわからないやつにこれ以上付き合う時間はない!」

「じゃあな、シャーレの先生。儂の計画を邪魔したことが運の尽きだ。やれ、魑魅一座!」

 

マサムニェは弦太朗を笑い飛ばし、魑魅一座に銃口を向けさせる。弦太朗を始末するつもりだ。

そして銃の引き金が引かれるより前に、彼女は動き出していた。天井を突き破り、弦太朗に銃を向けていた魑魅一座を蹴り飛ばし、華麗に着地する。

 

「なに!?」

「……!」

「─────キヴォトス最強を目指す忍び!真の主君の窮地を救うため、今ここに参りました!」

「イズナ!?」

「イズナ!どうして天井から…!?」

「…全部聞いていました。雇い主の話も……どんな時もイズナの夢を笑わない、先生の気持ちも。」

「イズナはついに見つけました。」

「最初からずっとイズナの夢を応援してくれた、先生の隣でなら……イズナは、これから先もずっと、夢を見続け、追い続けることができます!」

「ぐっ、裏切るのか、イズナ!?」

「先生…いえ、主殿!これを!」

 

イズナの覚悟は、完全に固まったようだ。もはやそこに迷いはない。その大きさ、熱さ、弦太朗にも負けていない。

イズナはマサムニェになど目もくれず、弦太朗にスマホ、シッテムの箱、フォーゼドライバーを渡す。着地した時にマサムニェから奪っていたようだ。

 

「なっ…いつの間に……!?」

「ありがと…ん?」

 

三つのアイテムを受け取った弦太朗は、ふと考える。イズナは自分のことを主殿と読んだ。

────────つまり、これが意味することは…

 

「主って俺のことか!?」

「はいっ!今からイズナは、すべてを真の主君たる主殿に捧げ、主殿のために戦います!」

「…いざっ!」

 

イズナは意気込み、銃と手裏剣を構えると、魑魅一座へと突撃していく。

イズナには実力がある。忍者を志していることもあり、忍術を模倣したような攻撃が使えるし、すばしっこく動き回れる。魑魅一座の十人程度なら相手取れる。だが、この場にいる魑魅一座の総勢は120人、流石に分が悪い。

最初こそ魑魅一座を搔き乱していたイズナだったが、徐々に劣勢に追い込まれる。ここまで修行部やお祭り運営委員会を掻き乱してきたイズナといえど、体力や120倍の数の差を覆すことはさすがに厳しい。

 

「う、ぐぅ…」

「どうしたイズナ、啖呵を切った割には大したことないじゃないか!」

 

今この場には、百鬼夜行各地で暴れていた魑魅一座が集結しているのだ。誰のものかもわからない銃弾が連続してイズナに命中する。服には煤や泥が付き、肌には痣ができる。息も切れかけだ。

 

「さあ、この状況でも裏切って先生のほうに付くつもりか?今ならまだ水に流してやらんこともないぞ!しっかり考えたらどうだ、この愚か者め!」

「愚かなどではありません!忍者は…イズナは…!イズナの夢を信じてくれた人のために、主殿のために戦うだけです!それこそが、イズナが信じる忍びの道だから!」

「ふん、口だけは達者じゃないか!やれ、魑魅一座!」

 

マサムニェの指示で、イズナに銃弾が何発も撃ち込まれる。それでもイズナはめげない、弱音は吐かない、諦めない。たった一人の主君を守るために、全力を注ぐ。銃弾の雨を避け、或いは耐えながら、また一人、魑魅一座を叩き伏せた。

 

「頑丈な奴だ、手こずらせてくれる。」

「うっ…イズナがここで、倒れるわけ、には……主殿を、守らなきゃ……」

「イズナ…っ!もう我慢ならねぇ!」

 

とある事情から、変身を堪えていた弦太朗。だが、生徒がここまで傷つけられては、もう感情は抑え込めない。道理や理屈では、抑え込めないものがある。弦太朗はフォーゼドライバーを構える。

迫る魑魅一座。その攻撃を、イズナでも弦太朗でもない何かが防いだ。

 

「やるじゃん、忍者の子!後は私たちに任せて!」

「だ、誰だ!?」

 

マサムニェの声が入場の合図となるかのように、5人の生徒が部屋に入ってきた。シズコ、フィーナ、カエデ、ツバキ、ミモリ……お祭り運営委員会と修行部だ。

 

「犯人はあなただったんですね!会長…いや、ニャン天丸!」

「ニャン天丸じゃない、マサムニェだ!」

「それにしてもどうしてここが…!?連絡手段は絶ったはずだ!」

「ふふっ…先生、作戦大成功ですね!」

「…だな!」

 

万全な対策をしたはずなのに、貫通され、利用していたはずの生徒に睨まれている、困惑するマサムニェ。シズコはそんなマサムニェを出し抜き、嘲笑うように、ポケットからあるものを取り出す。それは発信機だった。

 

「それはまさか…!?」

「ええ!この発信機の通信をたどって来たんですよ!」

 

そう、これこそがシズコが立てた作戦。生身ではか弱い弦太朗がわざと誘拐されたふりをして、黒幕の位置をみんなに知らせようとしたのだ。結果は成功、マサムニェを追い詰めることができた。

弦太朗が変身しなかった理由は、変身して戦った結果、取り逃がすことを防ぐため。ここまで荒らされた以上、自分たちも制裁をしたい、シズコはそう言ったのだ。

 

「チッ…だが、貴様らが来たところで、この人数差を覆せるものか!」

「更に……」

 

追い詰められたかに思えたマサムニェだったが、彼は不気味に笑う。この数に加え、まだ奥の手があるというのか……。マサムニェは着物の懐に手を伸ばすと、ゾディアーツスイッチを取り出した。

 

『!あの人もゾディアーツスイッチを!?』

「お前…どうやってそれを…!?」

「言うものか!ともかく、これでお前たちもおしまいだ!」

 

マサムニェは高笑いしながらゾディアーツスイッチを押す。邪悪なコズミックエナジーに包まれたマサムニェは、ヤマネコ座、リンクスゾディアーツに変貌した。

 

「ふはは!追い詰められていたのはお前たちのほうだ!叩き潰してやるから覚悟しろ!」

 

と、120の魑魅一座を引き連れ、凶暴な雄たけびを上げるリンクス。ミモリは驚き、カエデは若干ビビっていたが、他のみんなは正面からリンクス軍団を見据え、シズコに至っては呆れ顔をしていた。

 

「うーん…どう考えても負けフラグなセリフ。」

「サスガ委員長!いつも通り辛辣デス!」

「ふあぁ、とにかく荒らすのをやめるつもりがないなら…」

「華麗なレディーになるためにも!私たち修行部も相手するよ!」

「皆さん、行きましょう!」

 

戦いが始まった。魑魅一座と5人の生徒がぶつかり合う。戦いの勢いは部屋の中だけに収まらず、5人と魑魅一座たちは戦いながら部屋から出ていった。

その場に残されたのは弦太朗とリンクス、そして満身創痍のイズナのみ。

 

「はぁ…はぁ…主殿は…イズナが……」

 

傷だらけになっても尚、己の信念を果たすためにクナイを構えるイズナ。そんなイズナの肩を、弦太朗は無言で叩くと、彼女を守るようにして前に出た。

 

「主、殿…?」

「ありがとな、イズナ。よく頑張ってくれたな。」

「あとは、俺に任せろ!」

「い、いけません!主殿はイズナが守らないと…!」

「イズナ。」

「……?」

「守られるだけじゃねぇ。主の役目ってのは、ピンチの忍者を守ることだ。」

「……!」

「ふはは!生徒が愚かなら先生も愚かだな!魑魅一座一人にも抑え込まれるような貴様に何ができる?」

 

と、弦太朗に罵倒と屈辱の言葉を浴びせるリンクスこと、マサムニェ。そんな声にも、弦太朗は怯まずに……

 

「大事なダチを、生徒を守ることならできる。」

「俺のダチには、指一本触れさせねぇ。」

 

弦太朗の鋭く、熱い眼差しを受け、リンクスは突き刺さるような悪寒を感じた。

対象的に、イズナには勇ましく立つ弦太朗の姿が、暗闇を照らす太陽のように見えた。

廃墟の埃っぽい空気と、静寂の中、2つの対照的な視線を受けた弦太朗は、フォーゼドライバーを腰につける。

 

「変身!」

「宇宙……キターッ!!!!」

 

フォーゼの叫びは空気を震わせる。それは、イズナの中にあった恐怖心や不安をすべて吹き飛ばした。イズナはパァッと明るくなり、フォーゼを見上げる。 

 

「主殿!」

「おう、タイマン張らせてもらうぜ!」

 

フォーゼはイズナにサムズアップ。

続いてリンクスに挑みかかる。リンクスに何度もパンチで攻撃すると、頭突きで怯ませる。更にリンクスを持ち上げ、投げ飛ばした。

リンクスは高速移動や鉤爪で抵抗してくるが、何度もリンクスと戦ってきたフォーゼにとって、ラストワンですらないリンクスなど相手ではない。

リンクスはフォーゼに蹴り飛ばされ、路地裏の開けた場所まで転がる。

 

「お前がバカにした忍術を味あわせてやる!」

 

言うと、フォーゼはいくつかのスイッチをベルトに装填した。忍術を味あわせるという言葉に、首を傾げているリンクスとイズナを片目に、フォーゼの攻撃が始まった。 

 

『ステルスオン』

 

「行くぜ!忍法隠れ身の術だ!」

 

フォーゼがそう言うと同時に、フォーゼの姿がフッと消えた。どこに隠れたのかと、困惑して探し回るリンクス。

5秒後に姿を現したフォーゼは、リンクスの後ろにいた。スパイクモジュールで蹴られて、悶絶するリンクス。

 

「こいつがトゲトゲの術だ、思い知ったか。」

「ふざけおって…!ただのステルスマシンと棘だろうが!」

 

と、怒り狂って反撃するリンクス。フォーゼは飛び上がって躱しながら、次のスイッチに入れ替え、起動させる。

 

『スコップオン』

 

「忍法土遁の術だ!」

 

フォーゼはスコップモジュールで地面を叩き、潜り込んだ。更に、地中でフォーゼは、エアロモジュールを起動した。

 

「忍法風の術!」

 

地面から声がしたときにはもう手遅れだった。エアロモジュールの暴風に巻き込まれ、リンクスは空中へとその身を追い出された。路地裏周辺の建物から飛び出す、その直前に、ホッピングモジュールでフォーゼがリンクスの上まで飛び上がってきた。右腕には、クローモジュールが取り付けられている。

 

「忍者御用達しのクナイ…みたいなもんだ!ライダークロースラーッシュ!」

「ガハッ……!?」

 

クローに切り捨てられ、リンクスは力なく地面に落ちる。それでもフォーゼの攻撃は止まらない。

 

『ウォーターオン』

『フリーズオン』

 

「忍法水流の術!と冷凍の術だ!」

 

ウォーターモジュールで水をかけたあと、フリーズモジュールで急速冷凍。リンクスの足は凍ってしまって動けない。

 

『ファイヤーオン』

 

そのままファイヤーステイツとなり、フォーゼはヒーハックガンを構えた。

 

「喰らいやがれ!これが火炎の術だぜ!」

 

フォーゼはヒーハックガンから炎を噴射!氷こそ溶けたが、リンクスは火傷するレベルの大ダメージを負った。

イズナはキラキラした憧れるような眼差しでフォーゼを見つめ、リンクスはフォーゼを睨みながら、苦し紛れの言葉を放つ。 

 

「おのれ…!何が忍術だ!全てお前が装着した変な機械によるものじゃないか!」

「だからなんだ!さっきの水も、この炎も、全部水道にもガスにもつながってねぇし、ステルスにも電気なんか通ってねぇ。そっから火とか水が出たり、消えたりできんだ。忍術みたいなもんだろ!」

「そうです!立派な忍術なんです!仮に違うとしても、これを見たら分かるはず!忍術だって、夢物語ではありません!」

「ガキどもが…!」

 

二人の明るさと気力に圧倒されるリンクス。もはや理性も何もなく、雄叫びを上げながら突進してくる。エナジーだけならラストワンに近い。とは言え、この程度ならドリルモジュールだけでも倒せる。

────────だが、フォーゼは容赦しなかった。躊躇なく、ファイヤースイッチを装填したヒーハックガンをリンクスに向ける。

 

「決めてやるぜ。熱い忍術を思い知れ!」

「ライダー爆熱ボンバー!」

 

凄まじい炎の渦がリンクスを襲う─────。ラストワンですらないリンクスでは、この威力の業火に耐えられるわけがなく、呆気なく爆発するのだった。

 

「へへっ、見たか!こいつが忍術だ!」

「あれが主殿の忍術…!イズナ、感激です!」

 

 

 

 

 

 

 

正体がバレ、切り札のゾディアーツも攻略され、スイッチも消されたマサムニェは無様に地面を転がる。ゴンと壁に当たって動きを止めた彼の身体は、まるでここまで来て止まってしまった彼の計画のようだ。

マサムニェは顔をグググと上げると、唸るように声を出す。

 

「魑魅一座、一旦引くぞ…私を助けろ……!」

 

と、マサムニェは魑魅一座が戦っている方向を見る。

 

「こんなの無理無理〜!!」

「解散!解散っす〜!!」

「こんなことなら最初から桜花祭を謳歌するんだった〜!!おうかだけに〜!!」

「あっ!ここで逃げるとかズルでしょ!」

「待〜て〜」

「逃がしませんよ!」

 

彼の目に映ったのは、蜘蛛の子を散らすように逃げていく魑魅一座たちと、それを追いかけていく修行部の姿だった。

そもそも、魑魅一座・路上流自体、祭りを楽しみたい派閥も多く存在する。マサムニェはチョイスをミスしたのだ。

雇った援軍も皆いなくなり、お祭り運営委員会と弦太朗とイズナに睨まれるマサムニェは、孤立無援という言葉がよく似合う。焦ったマサムニェは、汗をダラダラと流しながら眼帯を取った。4人の冷たい視線を浴びながら、マサムニェは穏やかさを取り繕った声で一言。

 

「えっと、その、だな……諸君、全部水に流すというのは…どうだろう?」

「んなことできるかあぁぁっっ!シズコ本気のマジギレ看板娘パーーンチ!」

 

ドガァッ!っと、いい音が路地裏に響き渡り、マサムニェの身体も意識も地に落ちた。

こうして、祭りの裏で画策されていた邪悪な企みは阻止されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、桜花祭は無事に進行した。会長挨拶がないことや、路地裏付近で報告された爆発音など、心配の声もあったが、お祭り運営委員会の説明(誤魔化し)で事なきを得た。

マサムニェは陰陽部に引き渡したが、どうやら気づいたら脱走していたようで、今は行方不明となっている。またどこかで悪巧みをしているだろうし、もしかしたらまたどこかでぶつかることになるかもしれない。とは言え、悪事が公になった今では、派手な動きはできないだろう。

魑魅一座に関しても、暴れていた連中は修行部が完全に成敗してくれたらしい。

修行部が取り逃がした魑魅一座も数人いたらしいが、それも誰かによって捕まえられたようで、街の外れに簀巻き状態で放置されていたそうだ。目撃情報によると、その誰かは赤髪と黒髪&猫耳の生徒のようで、その戦い方や格好はまるで、百花繚乱のようだったとか。

なんやかんやで二日目を迎え、弦太朗は予定通り、桜花祭を満喫していた。

 

「お、いたいた!おーい!!」

 

街は人で溢れ、埋め尽くされてしまいそうだが、それでも彼女はすぐに見つけることが出来た。

 

「あっ、せんせ…いえ、主殿!!」

 

駆け寄ってきたイズナに勢いよく抱きつかれ、倒れそうになる弦太朗。おっとっとと大勢を立て直すと、満面の笑みを浮かべるイズナの頭を撫で、あの場所へと歩いていく。

それは、イズナが気に入っている寮の屋上。ここは巨大な桜の木をバックに花火を見れる、そんなイズナしか知らない……いや、今はイズナと弦太朗しか知らない隠れた名所だ。二人はそこで、輝いては儚く散る花火を見つめていた。 

 

「すっげぇ!たまや~!」

「えへへっ、この景色…主殿と一緒に見れるなんて…」

 

しばらく楽しんでいたイズナだったが、不意に顔が少し曇り、弦太朗の方を見る。

 

「イズナ、あのあとご迷惑をかけた皆さんに謝りに行ったんです。それとお手伝いも……。命令とは言え、悪事を働いてしまいましたから……」

「でも、街のみんなは暖かくて、笑って許してくれたんです。だからイズナは、百鬼夜行が大好きです!」

「それで、えっと……」

「主殿が最後です…ご迷惑をおかけして、申し上げありませんでした……」

 

イズナは頭を下げた。やはり、この一連の騒動について、彼女なりに思うことがあるのだろう。弦太朗は持っている焼きそばをすべて喉に流し込み、イズナをニコッと笑顔で見る。

 

「気にすんなって。イズナは忍者としての役目ってのをしっかりとやった。それで間違ってたら、しっかりと責任を取ったんだ。何も恥じることはねぇ。」

「誰がなんて言おうと、イズナは立派な忍者だ。俺を助けに来てくれたあの時のイズナ、最高にかっこよかったぜ。」

 

花火の灯りに照らされ、弦太朗の人懐っこい笑みがより一層輝く。それを見たイズナは出ていた涙を袖で拭い、負けじと笑い返した。

 

「えへへっ…イズナ、ここに宣言します!主殿はイズナの夢を応援してくださる方!イズナは主殿に忠誠を誓います!」

「ですので、今後ともイズナのことを、末永くお願い致します!!」

「おう、もちろんだぜ!」

 

イズナに差し出された手を、弦太朗は躊躇いなく取った。友情のシルシを交わす音が、花火とともに夜空に響いた。 

 

「えへへっ…頑張ります!ニンニン!」

 

桜花祭から、一週間程の時間が流れたある日、イズナは百鬼夜行の第38旧校舎まで赴いていた。どうやら、ここに忍者研究部とやらがあるという噂を聞いてきたようだ。

しばらく廊下を歩いていると、一つの教室の扉に、張り紙が貼ってあった。

 

【忍者研究部の部室】

【入部希望者募集中!冷やかしお断り!】

 

張り紙を見た途端、イズナの胸が高鳴った。ここでなら、自分の夢を追い求め、彼の立派な忍びとして仕えることができるようになると。

高鳴り、緊張する気持ちを抑え、覚悟を決めると、イズナは忍者研究部の部室の扉に手をかけた。

 

「失礼します…!」

 

ここから、立派な忍者を目指す少女の青春が始まるのだった。




ちなみになんですけど、今日、私の誕生日なんです!そして今日はイズナがメインキャラの一人、加えて今日は水着イズナが復刻される日……
これだけバフが乗ってれば水着イズナ10連確定ですさぁ楽園へレッツラゴ〜♪

追記︰20連で当たったぞーーっ!!!っしゃあぁぁーっ!!!
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