コズミックアーカイブ(仮面ライダーフォーゼ×ブルーアーカイブ)   作:炙り中トロ

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先週投稿バックれた上に今日この時間に投稿した私を誰かしばいてください…


第15話 部・活・広・報

百花繚乱紛争調停委員会……かつて百鬼夜行連合学院に存在した、争いやトラブルを止めることに特化した、ゲヘナの風紀委員会やトリニティの正義実現委員会のような存在。

そんな百花繚乱紛争調停委員会が、突如として活動停止となった。仕事を引き継いだはずの陰陽部もろくな働きをせず、このまま百鬼夜行は衰退の一途を辿る─────はずだった。

正式に依頼されたわけでも、はたまた誰かに頼られたわけでもない、自ら自主的に百鬼夜行の平和を守らんと立ち上がった部活がある。

それは修行部。先日、シャーレとお祭り運営委員会と共闘したこの部活は、それぞれがそれぞれの目標のため、修行をする部活である。その一環として、街の治安を守っているのだ。奇人変人と罵られようともめげないその姿はまさに百鬼夜行の生命線の一つ。だが、そんな部活にも大きな問題がある。それは……

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部員が全然こないよ〜!!」

 

修行部の部室で駄々をこねるようにカエデが叫んだ。そう、この修行部という部活、奇人変人の集まりという噂が祟ったのか部員が全然入ってこず、未だに3人だけなのである。

 

「まぁまぁカエデちゃん、落ち着いてください…」

「いっぱい来たら騒がしくなるし、私はこれくらいで十分なんだけどなぁ〜……」

「いいやダメだよ!このままじゃ、あたしたちが卒業したら、修行部の存在そのものが無くなっちゃう!というか、ツバキ先輩とミモリ先輩が卒業した時点であたし一人になっちゃうんだから!」

「う~ん…でもどうするの?」

 

修行部は世間から変わり者扱いされている。故に、入部希望はほとんどない。仮に入部しても、すぐに辞めてしまうことが続いているのだ。

 

「だったら…う~ん……」

 

カエデの頭の中に色んな作戦が浮かんでくる。

ハチマキを巻き、太鼓を叩きながら広報活動をする、シズコみたいに不良をおびき寄せて成敗する、誰かしらを無理やり入部させる……

───────碌な作戦がない。カエデは考えた、考えに考え続け、そして……

  

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺のとこに来たと。」

「そうなんだよ〜!助けて先生!」

「まぁそうですね、部員の少なさには正直、私も頭を抱えていましたから。」

「大人の知恵を借りようと思ってね〜。ふあぁ……」

 

結局何も思い浮かばなかった修行部一同、大人を頼ってシャーレまで来ていた。

仕事が忙しい弦太朗だが、当番のユウカとノアの協力もあり、今は丁度空きが出来ている。彼は快く承諾する。桜花祭から数日後…二度目の百鬼夜行訪問だ。

 

「じゃ、行くか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「百鬼夜行…来るのは久しぶりね。」

「ユウカちゃんは普段からセミナーの業務ばかりで、たまの休日も寝ていますからね。」

「まったくよ!私だってたまにはこうやって目新しいところに行ったりしたいのに!」 

 

当番で居合わせたユウカとノアと一緒に百鬼夜行までやってきた弦太朗と修行部。

まだ桜花祭の面影が少し残っている百鬼夜行は物をしまう段ボールや残った調味料や食材の匂いで溢れていた。

セミナーの二人、特にユウカは百鬼夜行の景観をまじまじと眺めており、修行部の部室まで歩いた時間が短く感じられた。

カエデが「あそこあそこ!」と指差す先に修行部の部室があり、みんなは部室に入っていった。

   

 

 

 

 

 

 

「で、部員を増やしたいんだっけか?」

「うん、今のところ3人しかいないからね〜」

「3人…ミレニアムだと結果を出せてないとお取り潰しのレベルね。」

 

と、サラッと恐ろしいことを口走るユウカ。ミレニアムが恐ろしいと、カエデがゾクッとしたように背筋を震わせる。

 

「と、とにかく!どうにかして部員を増やしたいの!活動広報にもなるし、後継者もほしいし!」

「……うし!」

 

部員の増員に躍起になるカエデ。そんなカエデを見た弦太朗は何かを決めたように立ち上がると、部室を出ていこうとする。

 

「ちょちょちょ!?どこ行くんですか先生!?」

「こういうのは当たって砕けんだ!行くぞカエデ!」

「えっと…?あっ、そういうことね!よし行こう!」

 

当たって砕けるという言葉の意味をなんとなく感じたカエデは弦太朗と肩を組み、盛り上がってスキップをしながら部室から出ていった。

「何だか不安ですが……」

「……念の為追ってみましょう。」

 

「修行部は最高だぞー!!」

「入部入部!入部して素敵なレディーになろう!!」

 

2人が始めた部員募集、それは、街に出て大声で勧誘することだった。2人は自信を持って勧誘をするのだが、周りの人々は「何あの人たち…」、「修行部だよね?また変なことを…」、「え?しかもあの人ってシャーレの先生じゃない…?」などと煙たがって避けてしまっている。

 

「誰も来ないね?」

「まぁ、なんだ、やっぱり直接言うのが一番いいからな。大っぴらに言うんじゃなくて、一人ひとりに言ってくのはどうだ?」

「よし!そうと決まれば早速…!」

 

げ ん こ つ

 

 

「もうっ!なにやってるんですか!」

「追いかけてきて、正解でしたね……」

 

意気込んで勧誘をし、今度は個人個人を当たっていこうとした2人だったが、そんな二人にユウカとミモリのげんこつが炸裂!二人は目を回しながらユウカとミモリに引きずられていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を始めるかと思えば、なんですかあの迷惑な勧誘は!?」

「部員募集にはもっと色々方法がありますから、探しましょ?」

「「はい…」」

 

部室に戻された二人はユウカとミモリから説教を受けていた。特にユウカの声は大きく、今にも耳を貫いてしまいそうだ。

 

「さて、どうする〜?」

「そうですね…。というか、ツバキさんは部員の募集に対してあまり、積極的ではないように見えますが……」

「まぁ、私はお昼寝ができたらそれでいいからね〜。ふわぁ…」

「それで、次の作戦なんだけど…」

 

いつの間にか説教を終えていたユウカとミモリは二人の会話に入ってくる。ユウカは自信アリとでも言わんばかりに指を一本立てると、口を開く。

 

「PR動画を作るのはどう?修行部のコンセプトとか、活動とかをまとめたやつ。」

「おっ!それいいね!やろうやろう!!」

「いつの間にか復活してる…」

「では、次は修行部のPR動画撮影と洒落込みましょうか♪」 

 

次の計画が決まった。PRをして修行部を広めるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

修行部の部室にいるのは弦太朗とカエデ、そしてセミナーの二人だけだ。

修行の紹介という名目であるため、ツバキとミモリはそれぞれの修行に出かけている。

まずは冒頭の挨拶を撮影しているのである。ユウカとノアのサポートの下、慣れない手つきで撮影用カメラを起動させ、セットする。

 

「これでいいのかな…?」

「うん、大丈夫そう。それじゃあ改めて!修行部のカエデだよ!今日は初投稿!修行部の活動を紹介だーッ!!」

「普段はなんか変なことばっかしてる変わり者の集まりなんて言われてるみたいだけど、そんなんじゃないから!みんなそれぞれの目標のために毎日頑張ってるの!ここはそういう部活!修行部ならそれができる!」

「今回はなんと初回にしてスーパーゲストの、シャーレの如月弦太朗先生とミレニアムのセミナーのユウカさんとノアさんに来てもらったの!!」

「よ、よろしく〜」

「ふふっ、どうも。」

「修行部のいいとこ、観てってくれよな!」

 

冒頭の挨拶を快活に済ませるカエデ。弦太朗とノアは落ち着いた様子だったが、ユウカはこういうことが初めてなのか、ソワソワしながらぎこちない様子で手を振っていた。

 

「じゃあ早速紹介するね!まずはあたしから!」

 

と、カエデはフンと鼻息を鳴らすと懐からカードのデッキのようなものを取り出して床に並べ始めた。

ムシのようなクリーチャーが描かれた色鮮やかなカードが手際よく並べるカエデ。それは見事なものなのだが、果たしてこれは修行と呼べるのかと、3人は首を傾げる。

 

「んーっと、これはなんの修行してるんだ?」

「ムシクイーンだよ。超有名なカードゲーム!」

「か、カードゲームの修行…?」

「そう!他には街の平和のために不良を懲らしめたりしてるの!」

「なるほど、それは理に適って……」

そしてあたしは、素敵なレディーになる!」

「……はい?」

「だから、カードゲームと治安維持を極めて、素敵なレディーになるの!!」

「??????」

 

言葉を失い、唖然とする一同。素敵なレディーになるためにカードゲームを極めたり、百鬼夜行の不良を退治するなど、非合理的過ぎる。語彙力と表現力に富んだノアですら、その意味も、返す言葉も全く浮かんでこなかった。

 

「カードゲームと治安維持で素敵なレディーに…?どんな方程式を並べればそんな……」

「ま、まぁ!修行のやり方は人それぞれだからな!次行くか!」

「ほえ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

カエデの修行は、PRになりそうにない上に、なんの意味があるのかよくわからないまま終わってしまったが、修行部には2人の先輩がいる。

カエデ曰く、そのうちの一人、部長の春日ツバキはこの河原にいるらしいが……

 

「部長さん、どのような修行をされているのでしょうか?」

「そうねぇ…部長ってほどだし、案外、絵に書いたような古典的な修行をしているのかも。」

「ここ川だしな、確か盾持ってたから、その体と盾一つで流れに逆らってたり……とか。」

 

弦太朗、ユウカ、ノアによる様々な憶測が飛び交い、その様子を嬉々として撮影するカエデ。そんなことをしている間に、現場に到着したようだ。周辺は暖かい空気と涼しいそよ風が気持ちよく、寝っ転がれば今にもポカポカとお昼寝ができそうだ。

そして、川を見てみると、猛々しく盾を構え、波を押し分けながら流れに逆らって川を進んでいく人物────────の姿などなかった。あったのは、河原の草の上で、盾を枕にしながらスヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立てているツバキの姿だった。

 

「えっと…これも修行……?」

「そう!ツバキ先輩の修行は寝ること!究極の睡眠を求め、寝具、場所、睡眠の仕方!ありとあらゆる睡眠を研究して実践してるの!食べながら寝て寝ながらでも戦う…その異名は眠り姫!!」

 

またもや開いた口が塞がらなかった。寝る修行とはもはや修行と呼べるのか?それはただの睡眠研究ではないか。そんな3人の疑問が、眠りという本能の壁に守られているツバキと、カメラを回して夢中になっているカエデに届くはずもなく……

そんな時、草の影から一匹の猫が静かに出てきたかと思うと、寝ているツバキの傍らに寝転がって寝息を立て始めた。

 

「あれ?ツバキ先輩の側に猫がもう一匹来た!?」

「犬に兎に鳩に猿に…あら、鹿や猪までいますね。」

「な、なんかどんどん増えてない!?」

「なるほど!きっとみんなツバキ先輩の美しい寝姿に魅了されたに違いない!」

「じゃあたしも失礼して……」

 

ツバキの周りに絶えず集まってくる動物たちに驚嘆する3人を余所目に、カエデはツバキの横に寝っ転がって空を見上げた。視界いっぱいに広がる青い空を見ていると、だんだん眠くなってきて、浮遊感を感じる。

 

「これがツバキ先輩がいつも見てる景色……」

「コレを続けることできっと、なにかすごい効果があるに違いない…!あたしにはまだよく分からないけど……」

「やってればあたしも素敵なレディーになれるはず…じゃあそろそろ目を瞑って……」

 

と、ツバキの修行から何かを見出そうとするカエデ。そんなカエデの顔を、一匹の犬がペロリと舐める。生暖かい感触とくすぐったさがカエデの思考を邪魔する。犬に便乗するかのように、猫、ハムスター、兎……次から次へとカエデによってたかる。

 

「ひゃっ!?あはっ!あははっ!くすぐったいってばー!!」

「あひゃっ!あひゃひゃ!?もう〜!!」

 

眠ろうにも舐められ、踏まれ続けたカエデは痺れを切らして起き上がると、ツバキを指差す。

 

「全くもう〜!ほら、修行って意味でも爪の垢的な意味でも舐めるならこっちにツバキ先輩がいるから!」

 

カエデの指の先にあるツバキの寝姿を見た動物たちはまた目の色を変え、我先にとツバキに近寄り、身体を舐め回す。その様子を気の毒そうに見守る3人。元凶のカエデはというと、満足そうな笑みを浮かべ、クルリと3人の方を向いた。

 

「良い授業になった!次に行こ!」

「いやあれでいいのかよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次にやってきたのは、修行部の部室の一部屋。修行部の部室は寮になっており、生活も可能になっている。冒頭の挨拶を撮っていた部屋の隣の部屋は台所。そこから、肉とスパイスの香ばしい香りと野菜の優しい匂いが漂ってくる。

 

「美味そうな匂いだな。」

「これはミモリ先輩だね!副部長のミモリ先輩は誰もが認める素敵なレディー!キヴォトス1の大和撫子目指して、今は夕食を作ってくれてるんだ。」

「やっとまともな部員が出てきたわね…」

 

カエデの元気な声と、ユウカのつぶやきでこちらに気づいたのか、障子に一つの中柄な影が写ったかと思うと、障子が開いてミモリが姿を見せた。同時に、僅かに漂っていた料理の匂いが部屋いっぱいに広がった。香ばしいその匂いは食事を欲さんと腹の音で主張していた胃の本能を更に掻き立てる。

 

「あら、カエデちゃんに皆さん。撮影は順調ですか?」

「うん!もちろん!」

「ま、まぁ、順調っちゃ順調…なのか?」

「と、とりあえずツバキさんのことは黙っておきましょう……」

 

脳裏に犬や猫に体中を舐め回されるツバキの光景が蘇る。まだ寝ているのか、それとも…

なんとなく怖かったので、弦太朗とユウカは一旦忘れることにした。

 

「ミモリ先輩はね!素敵な大和撫子、そして素敵なお嫁さんになるために修行をしてるの!だから、ご飯をはじめとして、私たちの色んな面倒を見てくれてるんだよ!私たちをまとめてくれるような人で、ミモリ先輩なくして修行部はなし!だね!」

「そんな風に紹介をされると少し照れてしまいますが…そうですね。立派なお嫁さんになることが私の夢でもあるので、そのための修行は欠かしません。」

 

カエデの仰々しい解説に少し頬を赤らめて照れながらも、自分のすることに確かな自信があるミモリは真っ直ぐな目でカメラを見た。とはいえ、こういった撮影には慣れていないようで、次の言葉選びに戸惑っている様子だ。

 

「えと…それでは私は洗濯物を取り入れてきますので、カエデちゃん、少しの間カレーの面倒を見ていてもらえますか?」

「もちろんだよ!任せて!」

「では、頼みますね。」

 

ミモリはそう言い残すと、部屋を出て縁側の方へと向かっていった。カエデは言われた通りにキッチンに入ると、お玉を持ってカレーをグルグルとかき混ぜ始めた。

 

「すごく美味しそうな匂い…ミモリ先輩は毎日これを作ってくれてるんだ…」

「羨ましい限りよ……ミレニアムの学食にもこれだけ美味しそうなのがあればいいのに…」

「他校のお偉いさんが羨ましがるほどのカレーを作るミモリ先輩すごい…!よし!私も修行をする身として貢献しないと!」

 

と、カエデはカレーの面倒を見るだけでなく、何かしらのサポートをしようと決め込んだ。台を使って後ろにある戸棚に顔を突っ込んで何かを探しだした。

しばらくずっと戸棚を漁っていたカエデだったが、やがて戸棚から手と顔を出した。その腕に握られていたのは……

 

「お砂糖…ですか?」

「そう!ミモリ先輩のカレーはすごく美味しいんだけど、ちょっと甘さが足りない気がして。だからアレンジを加えるの!これで小さい子供でも食べるようなマイルドな味に……ってうわっ!?」

 

砂糖を少しだけカレーに投入しようと台からジャンプするカエデ。……なのだが、足を滑らせてしまい、砂糖はそのまま宙を舞った。そして砂糖は輪ゴムが外れた袋から出て、カレーの中へと……

 

「あぁあぁーーーーーっ!!!!」

 

カエデの悲しい叫び声が部屋中に響き渡った。砂糖はどんどんカレーに溶けていき、もはや取り出すことも、砂糖が混ざった一部分だけを取り除くことも不可能だ。

 

「この量の砂糖が混ざったとなると……相当甘ったるくなってるわよ…」

「というか、マイルドにするなら牛乳の方が良かったのではないですか?」

「うわあぁあー!まずい!どうしよう!?」

 

どうしようもない…それが分かりながらもカエデは何か打開策がないかと泣きっ面で周りを見る。

すると、開いたままの戸棚から顔を覗かせている塩が目に止まった。

カエデは「これだ!!」と言わんばかりにポンと手を叩くジャンプして塩を手に取った。無論、弦太朗とユウカとノアは嫌な予感がしっぱなしである。

 

「えっと…カエデ?その塩をどうすんだ?」

「決まってるじゃん!砂糖と同じくらいの量を入れるんだよ!こうすればお互いの味が相殺されて元に戻るはず!カードゲームでもそうしてるからね!」

「いや、それは……」

「それーっ!!」

 

制止の声も虚しく、カエデは塩をカレーに大量投入してしまった。

甘さとしょっぱさと辛さが一つの鍋の中で喧嘩をしてカオスに混ざり合った、ある意味ゾディアーツよりも厄介な代物が完成してしまったのだ。

 

「よーっし!これで良し!」

「何も良くない気がするんだけど?」

「これ…食べても大丈夫なのですかね…?」

「ち、ちょっと食ってみる……」

 

一応の試食……もはや毒見のようなものであるが、弦太朗はスプーンを拝借すると、カレー鍋にそれを突っ込んだ。

そして勇気を出してカレーを口に運ぶ……と、弦太朗の口中で色々な味が争い始めた。それが順繰りに、あるいは同時に舌を刺激し、今にも声が出そうになる。加えて、まだ溶け切っていなかった砂糖と塩が歯にこすれ、ジャリジャリと音を立てる。腹痛を起こし、吐き気を催すには十分すぎた。

 

「うっぷ…えっぷ……と、トイレ……!!トイレえぇぇ!!!」

「せ、先生!?大丈夫です……!?」

 

ユウカの心配を気にしている余裕はなかった。弦太朗は蜘蛛の子を散らす勢いでキッチンを出ると、そのままトイレへと直行していった。

 

「あれ?先生どうしたんだろ?ここ来る前にアイスクリーム食べすぎたのかな?」

 

そして、それに気づかない愚鈍なカエデなのであった。

そうして残された3人のもとに、洗濯物を取り入れ終えたミモリが帰ってきた…のだが、さっきと比べて明らかに人がひとり減っていることに首を傾げた。

 

「すみません…少しお時間がかかってしまって……あら?先生はどちらへ?」

「先生はさっきすごい勢いで走ってっちゃったよ。トイレー!って言ってたし、トイレじゃない?」

「あらら…そうでしたか……お手洗いの場所、教えておくべきでしたね……」

「…何はともあれ、カレーの面倒を見ていただいたのは助かりました。後は私がやっておくので、夕飯までには戻ってきてくださいね?」

「はーい!じゃあ次行こー!!」

 

と、カエデは軽く返事をすると、先程まではスパイシーなカレーだったゲテモノについての言及などせず、さっさと外へ出ていってしまった。

 

「えっ!?ちょっと待ちな…あぁもう!」

「ミモリさん、忠告ですが、そのカレーは口にせずに捨てることをお勧めしておきますね。」

 

 

先程のツバキへのあの仕打ちといい今回といい、暴走列車と化したカエデもそうだが、あれを食べた弦太朗が心配である。ユウカは急いで部屋を出ていき、ノアは第二の被害者が出ないように忠告だけ残して部屋から出ていった。

残されたミモリは頭に疑問符を浮かべたままカレーが入った鍋を見る。

 

「そんなにおかしいところがあるとは思いませんが……うーん……」

「……いえ、やはり大和撫子を志す者として、食事の安全性も確かめないと…!」

 

少しだけ悩んでいたミモリだったが、意を決し、小皿にカレーを移して口にするミモリ。

 

「……!!?!?!?」

 

口にした瞬間、弦太朗が経験したあの感覚がミモリを襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな風に!修行部には魅力が盛り沢山!これを見たらチャンネル登録よりも高評価よりも入部届をよろしくね!さよならー!!」

 

しばらくして、締めの挨拶もそこそこにカエデは近くの公園で動画撮影を終えていた。

自信満々にカメラを閉じ、ドヤ顔で追ってきたユウカとノアにそれを見せる。

 

「どう?これに修行部の全てが詰まってる!」

「全て…ねぇ……」

 

ツバキへのあんなことやミモリへのこんなことがあった以上、安心はできないというのが本音のユウカとノア。

しかし、カエデのポジティブさは止まらない。なんならこの動画がバズる前提で話しているようで…

 

「この動画を公開したら、人気が急上昇して修行部員が急増するんだね…!よーっし!私が後輩たちを率いる素敵なレディーになる!」

 

と、このように取らぬ狸の皮算用をしっぱなしである。それをいつもの変わらぬ表情で見ているノアに対し、カエデにどんな言葉をかけようか…と考えていたユウカだったが、カエデの後ろから迫る影を見て、息を呑むことになった。

 

「えへへ…後輩から慕われて、陰陽部すら手玉に取る未来の私…」

「カエデ?」

「いずれ百鬼夜行を超えてキヴォトス中に私の名が轟くなんて日も遠くないはず!」

「カエデちゃん?」

「そしてゆくゆくは…!」

「カエデ〜?」

「カエデちゃん?」

「もう何!今まさに私の伝説が始まっ…て……」

 

意気込んでいるカエデを後ろから叩く2本の腕…それに嫌気が差したのか、振り返って注意しようとするカエデ。だが、その後ろにいたのは…

 

「犬…猫……ペロペロ地獄……」

「カエデ〜?」

「キッチンのカレー、念の為味見をしたらお砂糖とお塩の味をとても強く感じたのですが……」

「カエデちゃん?勝手に入れましたね?」

「せ、せせせっせせ先輩!?」

 

そこにいたのはどれだけの時間動物たちに舐められてきたのだろうか…唾液まみれのツバキと、この世のものとは思えない味にさぞかし悶絶したのだろう、服にはカレーとシワが付き、髪の毛が若干荒れているミモリがそれはもうニコニコと笑いながらカエデの眼の前に立っていたのである。

 

「え、えと…」

「カエデちゃん?」

「はっ、はひ!?」

「着いてきてください?今の私、少し本気で怒っていますので。」

 

ミモリの目は全く笑っていなかった。それはツバキも同じこと。この2つの眼差しに突き刺されているだけでも気絶してしまいそうだ。

 

「え、えっと……助けてユウカさん!ノアさん!」

「カエデちゃん、こればかりは自業自得なので自分でどうにかしてください。」

「そ、そんな……うわあぁぁぁーーーっ!」

 

抵抗虚しく、カエデはミモリとカエデに引きずられ、公園を後にしていった。そんなカエデを眺めながら、ユウカはため息をついて一言。

 

「動画広報作戦も失敗ね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…もう生きた心地がしないよぉ……」

 

5時間後、カエデはようやく二人からの説教を終え……いや、まだ終わっていない。

というのも、先程ミモリから……

 

 

 

『カエデちゃんはしばらく外で頭を冷やしてきてください!反省するまでここには出入り禁止です!』

 

 

 

と、言われて、追い出されてしまったのである。そんなわけで、百鬼夜行をトボトボと歩いているカエデ。そうして歩を進めていると、カエデの足に何かが当たって『カン』と音を立てた。見ると、それはポイ捨てされた空の缶のようだった。

 

「こんなとこにポイ捨てなんて…百鬼夜行は町が綺麗だからこんなに賑わってるってことを理解してほしいよ全く!」

 

と、カエデは愚痴をこぼしながら缶を拾い上げると、近くのゴミ箱に向かって投げ飛ばした。缶は見事にゴミ箱の中へと入っていき、ゴミ箱の中の缶に当たってリズミカルな音を響かせる。

 

「お、カエデ。」

「ん?あ、先生……」

 

缶をゴミ箱に投げ入れながらため息をつくカエデの前に、どうにかしてあのゲテモノカレーでピーピーになった腹を収めてきた弦太朗が歩いてきた。

 

「えっと…その……」

「?元気ないな?どうしたんだ?」

「それが…その……」

 

と、カエデは事の経緯を話し始めた。

 

「そっか、怒られちまったんだな。」

「うん…悪気はなかったんだけど……」

 

先程までの陽気なカエデとは違い、今のカエデはひどく落ち込んでいた。

自分は善意からやったことなのだが、結果として2人に迷惑をかけ、怒られてしまったことへの負い目が彼女にはあった。

 

「俺も着いてくし、謝りに行くか?」

 

こういう時は謝ることが一番。そう思って弦太朗はカエデに話しかけるのだが、カエデは違った。目を閉じて深呼吸をし、口を開く。

 

「ううん。今のままの私が戻っても、多分2人は許してくれないと思う。だから先生…その、私の修行を手伝ってほしい!お願い!」

「…分かった。」

 

カエデは今、反省を言葉ではなく行動で示そうとしている。本人のやる気は申し分ない。そして弦太朗はそういう人間が大好きだ。断る理由などなかった。

 

「ただ、何をやるかはカエデが決めるんだぞ。俺は手伝うだけだ。」

「うん!もちろんだよ!行こう!」

 

そうして、二人は意気揚々と出掛けた。そんな二人がやったのは、なんでもないただのゴミ拾いや人助けだった。

街の平和や豊かさを守ることもまた修行の一つであるらしい。

 

「はーい!おばあちゃんこっちだよー!ってこんなところに空のペットボトルが!もうホントに良くないよ!!」

 

「大丈夫か?お母さん、一緒に探そうな。」

 

ふたり共汗を流し、大変そうにしていたが、皆の感謝の顔を見たら笑顔になる。そんな温かい町が出来上がろうとしていた。

そして、そんな二人を草陰から見守る影が4つ…

 

 

 

 

 

 

「心配になって着いてきましたが……」

「うん、これなら大丈夫そう。」

 

ミモリとツバキ、ユウカにノアだった。説教をして追い出したものの不安になってつけてきたようだが、真面目に笑顔に人助け…という名の修行を行う二人を見て一息つく。

 

「それにしても先生はすごいですね…あの破天荒なカエデちゃんをあんなにもすぐに変えてしまうなんて…」

「…いいえ、それは違うわ。」

「…?」

 

かなり無茶苦茶だったカエデを弦太朗が変えた…そう思ったミモリは感嘆するのだが、ユウカはその言葉を否定する。

あのときの、弦太朗が初めてミレニアムに来たときのことを思い出しながらユウカは言葉を続ける。

 

「先生は考えるキッカケを作るだけ。そこからは私たち自身が考えて、思い直して変わっていくの。そうして自分の力で変われた生徒を見て、友達になるのが先生にとっての喜びなのよ。」

「ええ、かくいうユウカちゃんも変わりましたからね。」

「うっ…と、とにかく!先生がいたから変わったんじゃない。カエデちゃん自身の力で、変わろうとしているんだと思うわ。」

「もし変わらなかったとしても受け入れて寄り添って、また別の道を私たちの立場になって考える……それが如月弦太朗先生という人間…らしいですよ。」

「……」

 

 

 

 

「いやー!この辺りも綺麗になって!」

「困ってる人もいなくなったな!」

「うん!これで後は謝るだけ!」

「うっし…それじゃあ部室に…」

 

やれるだけのことはやった。後はミモリとツバキに誠心誠意謝るだけである。そうして戻ろうとする2人の前に、1人の生徒がふらっと歩いてくる。

 

「?なんだ…?」

「どうしたの?迷子?」

「あんた…シャーレの如月弦太朗先生だな?」

 

その生徒はカエデは眼中にないのか、弦太朗を睨む。別に恨まれるようなことなどしていないのだが…そう思いながら弦太朗は問いかけてみる。

 

「えっと…あんたは…?」

「……魑魅一座の残党だよ。」

「なに?」

『ラストワン』

 

聞き返したのも束の間。魑魅一座の残党を名乗った生徒はゾディアーツスイッチを所持していた。しかもラストワンである。

ゾディアーツスイッチを押し込むと、彼女の体はオリオンゾディアーツへとなり、体は排出された。

魑魅一座の残党と名乗った生徒…おそらくマサムニェの手先の一人だろう。

 

「なんでスイッチを…!?いや…それよりどういうことだ!」

「そうだよ!あの時ぶっ飛ばした猫男の敵討ちかなにか!?」

「そんなんじゃない。そもそもあんな会長のことなんてどうでも良い!私はただ…この前ボコられたことがムカつくだけだよ!憂さ晴らしさ!」

 

オリオンはそう言いながら二人に襲いかかり、その巨大な腕を振り下ろす。二人は何とか転がってかわしたが、オリオンの拳が作った巨大な穴を見て真っ青になる。

あんなものを喰らったら…!思う暇も多くなく、オリオンは続けざまに拳を振るう。

 

「変身する暇なんか与えねぇよ!先生なんて変身しなけりゃ虫とおんなじだ!!」

「クソっ…!」

 

変身には多少の時間を要する。その間、怒りに身を任せたオリオンの攻撃を躱し続けることは至難の業だ。そしてオリオンの言ったように、変身していない弦太朗ではオリオンと戦ってもすぐにその命を散らすことになる。

 

「アンタ言ったよな!やりたいことを突き詰めりゃそれは青春だって!じゃあ私の夢が百鬼夜行を荒らし回ることでも、お前たちをぶっ飛ばすことだとしてもそれは青春だよなァ!?」

 

弦太朗は身体能力は高い。パワー型のオリオンの攻撃をある程度躱し続けることは可能だ。しかし、オリオン…もといスイッチャーは短気である。痺れを切らし、地面に二本の拳を叩きつけた。

 

「おわっ!?」

「うわわっ!?」

 

まるで地震でも起こったような衝撃が2人を襲う。グラグラと地響きを立てながら揺れる地面の上で二人は姿勢を保てず、尻餅をついてしまう。

そしてオリオンはゆっくりと弦太朗に近づくと、彼を見下ろして拳を振り上げた。

 

「ちょこまか逃げやがって…けど、これでもう逃げられないだろ?」

「くっ…」

「先生から離れろー!!」

 

と、カエデは持っている小型の銃を連射するが、オリオンの強靭な肉体を前に銃弾は銃弾としての役割を果たせずに弾かれていく。

 

「くっ…!」

「先生ぇっ!」

 

普通の人なら、逃げ出すか動けないかの二択。だが、カエデは違った。身軽さを武器にオリオンにすぐさま近づくと、オリオンの前に手を広げて立ちふさがった。

 

「死にたいのか?どけよ。」

「どかない!まだ先生に見てもらってないもん!私が先輩たちに謝るところも、私が成長したところも!私の修行を手伝ってくれた先生を、あなたみたいなよく分かんない奴に倒させてたまるかー!」

 

カエデはオリオンに張り付き、全身全霊で押し出さんとする。

しかし、オリオンは止まらなかった。カエデの頭を掴んで投げ飛ばすと、再び弦太朗に近づく。

 

「カエデ…!」

「ここまで来て人の心配する余裕があるなんて……うざいな。」

 

ひたすらに、如月弦太朗一人に殺意を持った怪物はその拳を彼に向かって振り下ろした。ぐちゃぐちゃになった死体を見ることの恐怖感から、本能的にオリオンの目が閉じた。

……一瞬…いや、それよりももう少しだけ長い間は満悦が勝った。自分の邪魔をした大人を、自分を苛つかせた大人を潰せたという満悦感が心を満たした。しかし、それはやがて疑問へと変わる。

─────人間の体にしては硬すぎる。

ゆっくりと目を開けてみる。するとそこには……

 

「…なっ…!?」

「ふあぁ…」

 

あくびをしながら悠々と盾で拳を受け止めるツバキと、すごい顔で歯ぎしりしながら盾を押すユウカがいた。

 

「ちょっとツバキさん!?あくびしてる暇なんてないでしょ!?」

「大丈夫、大丈夫〜」

「…よいしょっ!」

 

最初こそ眠たそうに盾で防御していたツバキだったが、カッと目を開いて力を込めたかと思うと、あのオリオンの拳が盾の前に弾かれた。

 

「ツバキ先輩!?」

「ユウカ!?」

「はぁ…間一髪だったわ…」

「お二人共、お怪我はありませんか?」

 

ツバキとユウカだけではない。駆け寄ってきたミモリとノアが追い詰められていた二人を助け出す。

ミモリは持ち前の面倒見の良さと観察力で二人の身体を観察すると、カエデの右足に擦りむいた傷を見つける。

 

「カエデちゃん、怪我が…!今はこれくらいしかないですけど、我慢してくださいね。」

 

と、ミモリは絆創膏を取り出してカエデの怪我の上に貼っつけた。

カエデは立ち上がると、軽くジャンプをしてみせる。

 

「よいしょっと…ありがと!ミモリ先輩!」

「無事で何よりです…先生がどうにかしてくれる、と様子を見ていたのですが…ごめんなさい。結果としてお二人を危険な目に遭わせてしまいまして…」

「ううん、こっちこそごめんなさい…自分勝手なことばっかりして…」

「いいよいいよ~カエデが反省して人のために修行をしてたの、ずっと見てたから〜」

 

お互いに謝罪をする中で、オリオンを相手取っていたツバキとユウカも合流した。

まだ足りないところも、成長していくべきところもある。まだ修行の途中ではあるが……

 

「これで仲直りだな。」

 

弦太朗のその言葉で十分だ。カエデの思いも、それを示す行動も伝わったし、謝罪も受け取った。二人はそれを認めたのだ。これで残りは、あのゾディアーツを倒すことだけだ。

 

「あのゾディアーツって…」

「ええ。先生が赴任した日、最初に戦ったゾディアーツですね。ユウカちゃんの報告書にも載っていました。」

「記録内容は、とにかく強いパワー型。パワーが凄まじい分、スピードは速いものの、従来のワカモほどではなかった…とのことです。そこを意識して戦っていきましょう。」

「了解です。」

「うっし!気合マックスだぜ!!」

 

暗い空気が失せ、深呼吸をし、気持ちを高めた弦太朗。フォーゼドライブを取り出し、腰に装着する。

 

『3・2・1』

 

「変身!」

「宇宙キターッ!」

 

コズミックエナジーのスモッグが弦太朗を包み、フォーゼへと変身した弦太朗。エナジーが高まったフォーゼの複眼がオリオンに向かって照らすように向けられた。

 

「クッソ…!変身なんて関係あるか!叩き潰す!」

 

フォーゼを前にオリオンはやけを起こしたのか、雄叫びを上げて死に物狂いで向かってくる。そんな相手にも怯むことなく、フォーゼたちは構えを取った。 

 

「さぁ!行こう!!」

 

カエデのその声を合図に、皆は走り出した。オリオンは雄叫びを上げたまま、身体中から熱線を放出した。

熱戦はオリオンの前にあるあらゆるものを貫き焼き尽くす。しかし、明らかに立っている者が二つもあった。

 

「痛くな〜い痛くな〜い」

「あなたの攻撃は効かない。私の計算にミスなんてないわよ。」

「…それにしても、ツバキさんとはなんだか相性が良いっていうか…」

「ちょっと分かるかも。安心する感じだね〜」

 

ツバキの盾とユウカのバリアがオリオンの攻撃をいとも簡単に防ぎ、何事もないように会話をしている二人の後ろからロケットモジュールを装備したフォーゼが飛び出し、ロケットパンチをオリオンにお見舞いした。

 

「クソ…!こんなことで終わって……おぉっ!?」

 

オリオンは仰け反ってもなお向かってくるが、何かに足を取られ、前のめりに転んでしまった。いくら巨体と言えどバランスを崩す要素はないはず…そう思いながら荒々しく足元を見ると、白い紐があった。もう少し視界を広げると、そこにはロープの両端を持っているカエデとノアの姿が。

 

「短気そうなあなたのことですし、猪突猛進をしてくると思いました。」

 

これはミモリの作戦だった。ミモリは読心術を得意とする。この短時間で相手の性格や心情を読み取り、その足元を掬ったのだ。普段はこんな使い方はしないのだが…有事だから仕方ない。

 

「舐めやがってよ…!」

 

『ハンマーオン』

 

「…!!」

「おりゃあっ!!」

 

オリオンが起き上がったタイミングでフォーゼのハンマーモジュールの打撃が炸裂した。ミモリがこうして隙を作ったおかげで、他と比べて隙が出来るハンマーの攻撃がより安全に、強力に炸裂したのだ。

オリオンは吹き飛び、後ろの塀に激突する。そんなオリオンに、フォーゼは話しかけた。

 

「さっき、あんたは言ったよな。自分の夢が町を荒らして俺たちを倒すことなら、それも青春だろって。」

「それがどうしたってんだよ…」

「青春ってのはな、みんなで作るから青春なんだ。それだけじゃねぇ。イズナだって、お祭り運営委員会だって、修行部だって、本気でやりたい夢を突き詰めて、夢に繋げるから青春なんだ。アンタには本当にやりたいことがまだあるはずだ。なんの信念もなく暴れるだけのそれは青春じゃねぇ。」

「だったらなんだよ…じゃあ私は青春を諦めろって言うのかよ!?」

「違う!やり直して考えて見つけりゃいい。まだ高校生なんだ。何回だって失敗する。でも、誰かがくじけりゃ誰かが支える…そうやってぐるぐると、人の想いが渦を巻いていく。それが青春銀河だ!本当の青春、見つけようぜ。」

「何が青春だよ!こうなった私にはもう、未来なんてないんだよ!!」

 

最早、自暴自棄も同じだ。言葉にならない言葉を吐きながら突進してくる。

そんなオリオンを見て、カエデはフォーゼに一言。

 

「先生!バチコーンッ!って決めちゃって!」

「任せろ!」

 

『ロケット・ドリルオン』

 

フォーゼは気合マックスで言葉を返すと、ロケットとドリルのスイッチをオン。突進してくるオリオンを前にロケットエンジンを噴射させて飛び上がった。

 

『リミットブレイク』

 

「ライダーロケットドリルキーック!」

 

炸裂したのは突進してくるオリオンの勢いすらも利用したカウンター型のライダーロケットドリルキックだ。

しばらくはその強靭な肉体と感情で耐えていたオリオンだったが、それも限界に達し、爆発して爆ぜた。

ラストワンのゾディアーツスイッチだけが地面に落ちる。フォーゼはそれを拾い上げ、スイッチを押し込んで消滅させた。

後ろから、カエデたちの歓声が聞こえていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、魑魅一座の残党を名乗った生徒は矯正局へと変更されていった。ヴァルキューレの生徒たちに挟まれ、車に乗せられる直前に、弦太朗は彼女に向かって叫ぶ。

 

「反省しきったら、ダチも連れてシャーレに来い!一緒に青春、見つけっからさ。」

 

彼女が返事をすることはなかった。ただ、照れ隠しだろうか。意識しないと気付けないようなスピードで一瞬だけサムズアップを下…様に見えた。

そのまま車に乗せられ、彼女は百鬼夜行から消えていった。

 

「ふぅ…これで解決ですね。」

「結局、部活広報作戦はどっか行っちゃったけどね〜」

「まぁ、仕方ないよ!これからゆっくりとやってもいいし、こんなこと言ったらあれだけど、3人だけでも楽しいしさ!」

 

事態は解決したが、ツバキの言う通り、部活広報作戦は何も成し遂げられていない。

ただ、今回の件でより修行部の絆はより一層深まったに違いない。それにどうやら成果はそれだけではなさそうだ。

 

「す…すげぇ…!」

「修行部って本気出したらあんなにすごいんだ…!」

「かっこよかったぞー!!」

 

ここは一体は民家もある。ゾディアーツの出現に家で震えていた住民たちが、先の戦いの活躍を見ていたのだ。

 

「へっ?なになに!?」

「どうやら、かなり目立ってしまっていたようですね…」

「まぁそれは元々でしょ。悪い意味で。」

「と、とにかく!これなら修行部のいいところ!伝わったんじゃないかな!?」

「それは確かに。私たちの良いところを見せる機会だったかもしれませんね。」

「わーい!みんなー!!修行部に入ればみんなもこうなれるよー!!」

 

と、狂喜乱舞するカエデと、静かに微笑むミモリ、そしていつも通り眠たそうにあくびをするツバキ……

自分たちも一緒になって喜びたいところだが、生憎喜ぶ時間はもうなさそうだ。今はもう夕暮れ時。遠くから豆腐屋の音が聞こえてくる。そろそろ帰らなくてはならない。

 

「あら、もうこんな時間なの?」

「では名残惜しいですが、私たちはそろそろ…」

「あら、もうそんな時間なのですね…」

「色々あったけど、今日は楽しかったよ!」

「もちろんこっちもな!今度は一緒に修行しようぜ!」

「…うん!!」

 

修行部の仲だけでなく、学園を超えて修行部とセミナー、そして弦太朗との絆も深まったようだ。

弦太朗はツバキ、ミモリ、そしてカエデと友情の印を交わした。

周りから、小さな歓声が上がって、空に響いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以来、修行部に興味を持つ生徒が続出。ミモリには読心術を学ぶたくさんの弟子が出来、ツバキの周りには彼女を信じて昼寝をする生徒たちがたくさん…カエデは教官として大忙しな日々が………………

 

「うわぁーん!なんで一つも入部届が来ないのー!?」

 

やってこなかった。修行部を見直しこそすれど、奇人変人三人衆というイメージは健在で、何より『怪物と戦うのはちょっと…』『応援はするけど…』というメッセージがとても多い。

 

「やっぱりこれからも三人体制が続きそうですね……」

「まぁ私は良いんだけどね。あ、お昼寝してくる〜」

「なんでこうなるの〜〜〜〜〜!?」

 

カエデの悲痛な叫びが、今日も今日とて百鬼夜行に木魂すのだった。




一つの部活のメイン回に違うところ所属の生徒を混ぜて書くのって相当難しいって分からせられました。まだまだ鍛えないとなぁ〜〜
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