コズミックアーカイブ(仮面ライダーフォーゼ×ブルーアーカイブ)   作:炙り中トロ

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マジでお久しぶりです!亀投稿も良いところですけどね…
さて、今まで何してたんだ、と言うと大学受験でございます。何も言ってなくてすんません!!
受かってたら再来週も投稿します!って昨日まで書いてたんですけど、昨日、無事合格しました!よって再来週も出します!


第17話 普・通・生・徒

「ライダーロケットドリルキーック!」

「ぐぅわぁあぁぁ!!」

 

キヴォトスが誇るマンモス校の一角、トリニティ総合学園。おひとやかな生徒が多いこの学園にそぐわない怒号と爆発音が響いた。

 

「よし!」

「最近トリニティで窃盗を繰り返していたのはこいつで間違いなさそうっすね。」  

 

トリニティの治安を守る組織、正義実現委員会の副委員長、ハスミとメンバーの一人、イチカ。そして今まさにゾディアーツに引導を渡した仮面ライダーフォーゼこと如月弦太朗が変身が解けて地面を伏している男を見下ろしていた。

 

「見たところ生徒じゃなさそうすけど…」

「…その風貌に傷跡……ブラックマーケットから流れてここまで来た可能性が高いですね。」

「うーん…ブラックマーケット絡みの疑惑がかかっている犯罪者はこれで今月13人目…何か探ったほうが良さそうっすね…」

「後は我々が調査と尋問を行いますので。先生はティーパーティーにこの事を報告しておいて頂きたいです。まだナギサ様とは顔を合わせていませんし、この機会に。」 

「おう、任せとけ。」

 

ハスミに連れて行かれた男はどうやらカメレオンゾディアーツの力でトリニティ内で窃盗を働いていたようだ。

とはいえ、何故正義実現委員会の存在だけではなく、シャーレとのつながりがあるトリニティを選んだのか…

何にせよよくないことが起こる前兆であることに違いはなさそうだ。弦太朗はティーパーティーのホストが集うテラスへと足を運ぶ。

 

「ティーパーティー…ここの生徒会か。」

 

ティーパーティーはトリニティの生徒会。その強い権力は他の学校や企業も警戒していると言う。確かに、そんな力を持った組織ならブラックマーケットにも圧力をかけられそうだ。それに、権力だとか関係なく、是非ともダチになりたい。そう考えてティーパーティーのホストがいる建物へ向かったは良いものの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホストの桐藤ナギサ様はミレニアムでの会談のため、本日席を外しております。」

「え!?」

 

陰陽部といい、大事な時に限ってその学園の権力者は留守である。自分の不幸っぷりをちょっぴり呪いながら、弦太朗は建物を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「どうすっかなぁ…」

 

ティーパーティーのホストとは会えず、正義実現委員会は今は多忙。トリニティ自警団はあくまでトリニティ内の自警団で、トリニティ自治区の外の状況には疎いと聞く。

結局、ハスミと連絡が取れる時間になるか、ティーパーティーホストが帰って来る時間まで待つしかない。何をしようかと考えながら、門を曲がろうとしたときだった。

 

「ペッロロ様♪ペッロロ様〜♪」

「ん?」

 

ご機嫌な声が弦太朗の耳のすぐ横で聞こえたかと思うと、次の瞬間には「ゴツン!」という音と共に空を見上げていた。

 

「いてて…わりい、大丈夫か…?」

「あうぅ…すみません…大丈夫で…す……」

 

お互い転んでしまった体を起こしながら、ぶつかってしまった相手に謝罪をしようと目の前の顔を見る。

お互いに少しだけ不意を突かれたような表情になる。なにせ、弦太朗がぶつかった相手は…

 

「先生!?」

「ヒフミ!しばらくぶりだな!」

 

阿慈谷ヒフミ。アビドスでブラックマーケットを案内してもらったり、ホシノを救出したあの時に手助けをしてくれた生徒だったのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トリニティに来てたんですね。」

「ちょっと用があってな。」

 

立ち話もなんだということで、弦太朗とヒフミは近くのカフェにやってきた。

放課後スイーツ部に教えてもらったトリニティの名店である。ヒフミの前にはショートケーキと紅茶、弦太朗の前にはチーズケーキとオレンジジュースが置かれている。まだおやつには早いが、先程の戦いの疲れを癒すにはこれくらいがちょうどいい。

 

「あの時はありがとな。ヒフミがいなかったら間に合わなかったかもしれねぇ。」

「いえ…そんな大したことは……私たちができることを精一杯やっただけですから。それに、皆さんでホシノさんを助けられたようで、良かったです!」

 

スイーツを食べながら雑談をする二人。思えば、関わりこそあったものの、こうやってじっくりと話すのは初めてであった。

 

「そういや、さっきはすげぇ喜んでたけど、なんか良いことあったのか?」

「…あっ!そうなんです!そうなんですよ先生!!これを見てください!!」

「えーっとどれどれ…って……」

 

興奮冷めぬ様子でヒフミがカバンから取り出したのは、舌を出したニワトリのような生物のぬいぐるみであった。釣り合っていない目のバランスやよだれが絶妙に気味悪さを出している。

 

「え、えっと、なんだっけそれ……」

「ペロロ様!ペロロ様ですよ先生!!可愛いですよね!」

 

ヒフミは目を輝かせながらペロロのぬいぐるみを弦太朗の顔面に近づける。「そういえば、ブラックマーケットでも似たようなのを出していたな…」と、弦太朗は思い出した。

 

「そうだペロロ様だ!確かモモフレンズだっけか?」

「はいそうです!そしてこれは今ではペロロジラに次いで手に入らないと言われている代物!友達戦隊モモフレンジャーのリーダーペロロレッドのぬいぐるみなんですよ!!」

 

どうやらヒフミはモモフレンズの限定商品を手に入れて大はしゃぎしていたらしい。だからあの時周りがよく見えずに弦太朗とぶつかってしまったのだろう。

ノノミと喋っていた時もそうだが、ヒフミにはモモフレンズのことに関しては誰にも負けず、劣らず、譲らないという気概があると弦太朗は感じていた。

 

「ペロロ様の魅力…先生にも是非知ってほしいんです!…というわけで、これが終わったら、一緒にお散歩しませんか?」

 

と、午後の散歩を誘ってくるヒフミ。今は騒動も落ち着いているし、時間もある。それに、イチカが言っていた、ブラックマーケット絡みの犯罪者が増えているという発言的にも、ヒフミのような気の弱い女の子を一人にさせるのも不安だ。

何より、ヒフミとはまだダチになっていない。弦太朗に迷いはなかった。

 

「おう分かった。トリニティのこともペロロ様のことも、いっぱい教えてくれよな!」

 

弦太朗のその言葉を聞いて、ヒフミの顔がぱあっと明るくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

一方その頃、正義実現委員会の本部では、ハスミが廊下を歩きながら考え事をしていた。それはブラックマーケット絡みの犯罪者が増加していること。これまでにないケースだ。ブラックマーケット側に看過できない何かがあったに違いないがそれは何なのか…と思考を張り巡らせるが何も出てこない。そうやって悩んでいると…… 

 

「ハスミ副委員長!!」

「…?どうかしたのですか?」

 

正義実現委員会の生徒の一人が慌てた様子で走ってきた。

 

「先ほど捕らえた男に尋問をしていたのですが、その…このような証言が……」

「うん…?」

「なっ…!?」

 

差し出された報告書に目を通すハスミ。その驚くべき内容に、ハスミは言葉を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました!特製ペロロアイスです!」

「うわぁ~美味しそうです!先生、本当に奢ってもらって良いんですか?」

「おうよ。すっごく目が光ってたからな。」

「ありがとうございます!」

 

弦太朗とヒフミはというと、カフェを後にしたあと、そこら辺を散歩していた……のだが、たまたま来ていたモモフレンズとコラボ中のアイス屋を見つけて目を輝かせたヒフミ。そんなヒフミの眼差しに圧倒されてしまい、弦太朗は二人分のペロロアイス購入に踏み込んでいた。

 

「幸せです〜♪」

「うーん……あっ!!先生!今度はあっちに!!」

「へっ?ってうわぁっ!?」

 

ヒフミがアイスを食べて満足気な顔をしたのも束の間。ヒフミはアイスをよく味わって食べ終えると、その瞬間に弦太朗の感覚と視界を置き去りにする速さで手を引き、走り出した。 

 

「ペロロ様のアクリルスタンドです!!」

「あっ!あっちにはマグカップが!!ウェーブキャットの抱き枕まで!!」

「ちょっ…ちょっと待っ……」

 

あっちに行けばこっちにも行き……ペロロにヒフミが振り回され、弦太朗はヒフミに振り回されっぱなしである。

 

「はぁ…はぁ…疲れたぁ…」

「こんなにもペロロ様に囲まれて…幸せです…♪」

 

あちこち走り、息を切らしている弦太朗とモモフレンズグッズに囲まれて笑顔満点なヒフミ。とても同じ距離を走り、同じ場所を行き来したとは思えない。不意にヒフミが弦太朗の方を向く。しかし、姿が見当たらずに左右上下を見回すヒフミ。目線を下げると、汗を流して地面に座り込んでいる弦太朗が目に止まった。

 

「う、うわぁ!大丈夫ですか先生!?」

「お、おう。大丈夫……」

「ごめんなさい!つい熱くなってしまって…」

 

ここに来て弦太朗のことを考えずに走りっぱなしになっていたヒフミは、ようやく彼のことを振り回していたことに気づいて慌てながら手を差し伸べた。その手をとって立ち上がる弦太朗。言葉に詰まってしまってもじもじとするヒフミを安心させようと、弦太朗は口を開く。

 

「わり、気にしなくても大丈夫だぜ。」

「にしても、ヒフミは本当にモモフレンズが好きなんだな。」

「は、はい。モモフレンズのキャラクターはみんな普通ではない個性を持ってる…そこが素敵なんです!個性も何もない、平凡な私はついつい憧れちゃうんです。」

「何言ってんだ!なんだろうと全力で打ち込んで追いかけるのは立派な個性だぜ!モモフレンズグッズを見てる時のヒフミの笑顔!青春をバチバチ感じたぜ!!」

 

「え…そ、そうですか…?」

 

「おう。だから俺はヒフミに何にもないとは思わねぇぜ。もしバカにしてくる奴がいたら、俺がソイツを叱ってやる!」

 

自分の好きなモノ…モモフレンズが関わると前が見えなくなることに自責の念を覚えると同時に自分には何もないと感じていたヒフミ。だったのだが、弦太朗の励ましを受けて、徐々に顔から曇りが消え、自分自身に新たな発見が生まれた。

 

「好きなものに打ち込む姿が個性…あはは…今までそうやって褒められたことがないのでなんだか照れくさいですが………ありがとうございます。」

「その好きなものは絶対に譲らない姿勢!大事にするんだぞ!好きなもんは全力で好きって言い続けりゃいいんだ。好きを貫いて好きを守る!俺で良けりゃ好きなだけ振り回してくれ。」

 

と、弦太朗はヒフミに手を差し出し、ヒフミもその手を握り返す。ドタバタしていたせいでアビドスではできなかった友情のシルシをここで交わした。

 

「はい!では、お言葉に甘えて、次は……」

 

弦太朗はヒフミのモモフレンズに夢中になる気持ちを立派であるそれは個性だと言った。そして、自分を振り回していいとも。

…なら、先生には少しだけ甘えてみよう。

今まで中々理解をしてくれる人が出てこなかったヒフミは嬉しくなって、また遊びに出かけようとする。

しかし、平穏は呆気なく崩れることになった。

 

「……え?」

 

ヒフミの鼻と耳に、いつものトリニティ学園内では聞かない臭いと音が入り込んできた。臭いは煙の臭い、耳に入ってきたのは、パチパチと火花が散る音と……ジーッと導火線を伝う音だった。しかも、それは一本に留まらず……

 

「……!!!危ない!!」

 

ざっと数えて十はある爆薬が突然放り込まれた。弦太朗の反応は早かった。すぐさまフォーゼへと変身し、ジェット噴射でヒフミを爆発に巻き込まれるより前に救出した。

途端に爆発する爆薬の数々。まともに受けたら気絶は間違いなかったはずだ。

周りを歩いてトリニティの生徒が

 

「え、何、喧嘩?」

「それにしては爆弾の威力高くない?」

 

と話しているのがかすかに耳に入る。異常事態故に多少強引にヒフミを救出しまっていた。どこかケガはないかを確かめるフォーゼ。

 

「うっ…ううっ……」

「ヒフミ…大丈夫か?」

「は、はい先生……ってうわぁっ!?」

 

幸いケガはないようだ。先ほどまでずっと聞いていた先生の声にヒフミは安心し、弦太朗の方を見るのだが、前にいたのはロケットのような頭をした謎の生命体。ヒフミは仰天してしまう。

 

「え?あ、そっか。ヒフミに見せるのは初めてだもんな。」

「あ、いやその……SNSだと有名人なので先生が仮面ライダーだってことは知ってたんですけど……」

「え、そなの!?」

「実際に見ると、迫力があったので…」

 

どうやらヒフミはSNSで写真から見るのと実際に見るのとのギャップを感じていたらしい。フォーゼはというと、SNSではすっかり有名人だということが意外だったようだ。よく耳を傾けると、現にパシャパシャとフォーゼをカメラに収めようとシャッターを切る音が聞こえる。既にキヴォトス中の人が状態を知っているというのは不思議なものである…と弦太朗は心の中で呟いた。

 

「そうなのか…っていや、それより……!」

「ヒフミ、俺の側を離れるんじゃねぇぞ。」

 

フォーゼは立ち上がると、360°全てに警戒を張り巡らせた。明らかな悪意と殺意を持った攻撃。今もどこからか攻撃する隙を狙っているはずだ。

必ず見つけ出してとっ捕まえてやると息巻くフォーゼ。だが、犯人は自ら現れた。

 

「変身って結構早くすることもできるんだねぇ?」

 

そう言いながら現れたのは、高級そうな服に身を包んだ中柄の男だった。ただ、服で隠れていない生身の部分は硬い鉄で形成されている。カイザーの理事と同じ、機械生命体だ。

突如現れたソイツはニヤニヤと悪い笑みを浮かべながらフォーゼとヒフミを眺めている。

 

「お前…何モンだ…?」

「おっと、申し遅れた。私はブラックマーケットを牛耳る闇銀行の会長をやっているものでね。」

「……!!」

 

男が名乗りを上げた瞬間、フォーゼとヒフミの背中にゾクッと悪寒が走った。不正に闇銀行へと流れていたアビドスの集金確認の書類を手に入れるために強行したあの銀行強盗。覆面で顔を隠したはずだが、まさか正体がバレたのかと二人は身構えた。

 

「会長…なんだが、最近ウチの銀行に強盗が入る事件が発生してねえ。まんまと金を奪われてウチの信用はガタ落ち、従業員も役員も頭取もみーんな辞めて夜逃げしちまった。」

 

どうやらあの後、闇銀行は倒産寸前にまで追い込まれたらしい。カイザーと手を組み、悪巧みと実行を繰り返していた悪徳銀行など潰れたほうがいい。しかし、潰れたからこそ残された従業員……特に銀行のトップたる会長は何を起こすか分からない。

フォーゼはヒフミを守りながら会長を警戒する。

 

「それで、わざわざトリニティに何の用だよ?」

「……ファウスト。ウチを襲った銀行強盗団のリーダー名らしい。従業員の証言を集めると、そこの生徒が着ている服はファウストが来ていたものと似ている気がしてね。」

「……!!」

 

ドクンッと心臓が大きく跳ねる音がする。今はまだ推測の話をしているだけで真相は分からない。しかし、もし奴がファウストの正体を嗅ぎつけていたとしたら……ヒフミはもう、まともな学校生活を送れなくなってしまう。そんな恐怖がヒフミを包み、焦燥がフォーゼを支配する。

 

「ファウスト…?」

「あれじゃない?前にちょっとだけ話題になってたやつ…」

「あー、確かブラックマーケットを襲ったっていう……」

「トリニティの生徒って噂だったよね?まさかあの子…?」  

 

周りのヒソヒソ話がやけに大きく聞こえた。しかし、彼の反応は確信ではなかった。黙ったまま何かしらのデータが入ったスマホとヒフミの顔を見比べている。

 

「……だが、データも所詮曖昧なものな上にその怯えきった様子では報告にあったファウストには程遠い。宛が外れたか?」

 

と、闇銀行の会長は既に泣きそうになっているヒフミを見て嘆息した。しかし、機械生命体であろうとはっきりと分かる、彼の瞳の奥の光からは何かしらの謀略が読み取れた。

 

「だが、立て続けにトリニティに荒くれ者共を送り込み、暴れさせておけばいずれファウストも顔を出すだろう。それに貴様がファウストでなくとも、関係している可能性はあるんだ、一緒に来てもらう。」

 

ブラックマーケットの元大物が何の考えを知略もなく現れるわけがなかった。闇銀行の会長はそう言うと懐から憎しみのエナジーから既にラストワンとなったゾディアーツスイッチを取り出し、そのスイッチに押す力を加えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラックマーケットにある闇銀行の会長から依頼を…!?」

 

部下から貰った報告書に目を通したハスミは思わず声を漏らした。報告書に書いてあることはハスミが口にしたことそのまま。だが、闇銀行の会長が何故このようなことを……ハスミは混乱で頭を押さえてしまう。

 

「……他の拘置者の証言は何かありますか?」

「はっ、はい!ここ最近、窃盗や強盗で捕らえた者たちの殆どに共有している証言があります。」

「……その共通の証言とは?」

 

息を呑みながら部下の発言を待つハスミ。そして、部下は無意識のうちに発せられているハスミの威圧感に耐えながら口を開いた。

 

「……全員、ブラックマーケット闇銀行の会長から頼まれた…とのことです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、かかってきな?」

 

怪物の出現に気付き、逃げ惑う生徒たち。そんな生徒の中、ヒフミとフォーゼの前に悠然と立っていたのは、らしんばん座の刻印を刻んだカミキリムシを思わせる外見のゾディアーツ、ピクシスゾディアーツであった。全身がカミソリのように鋭く、油断をしていたら首根っこを掻っ切られそうだ。

 

「ヒフミ、安全な場所に隠れてろ。」

 

だが、それで怯むフォーゼではない。

 

「上等だ。タイマン張らせてもらうぜ!」

 

フォーゼは怯むことなくピクシスへと飛びかかり、パンチを叩き込もうと拳を繰り出す。ピクシスはそれを後ろに下がりながらのらりくらりと交わしていく。フォーゼのパンチは掠りもしていない。

逆にピクシスは腕を振り上げ、鎌のような形状をした腕の刃物でフォーゼの腹を切りつけた。

 

「こんにゃろ…ちょこまかしやがって…!」

「教師がそんな言葉を吐いていいのかい?可愛い生徒の前だろう?」

「ほっとけ!」

 

『ステルス・クローオン』

 

フォーゼはあらゆる物体を切り裂く強度と鋭さを兼ねそろえるクローモジュールと5秒の間、姿を消すことができるステルスモジュールを装備して姿を消した。

ピクシスには、フォーゼにとっても、キヴォトスの生徒にとっても厄介極まりない能力がある。それを使われる前にセンサーを破壊しなければならない。…両腕の鎌……それがセンサーだ。

フォーゼは後ろから狙いを定め、クローモジュールでセンサーを狙う─────

 

「ハァッ!」

 

手応えはあった。クローモジュールは間違いなく目の前のソレを切り裂いた。しかし、それはピクシスのセンサーではなかった。

ズドンと力を失って落ちたのは、引っこ抜かれた木であった。しかも1本ではない。大小様々な木がピクシスを守るかのように360度、四方八方を防いでいたのだ。

 

「くっ…!」

「えっ…?」

 

遠目から戦いを見ていたヒフミには、植えられていた何本もの木がひとりでに動いてフォーゼの攻撃を防いだように見えた。それは決して目の錯覚などではない。ピクシスの能力…それは……

 

「便利なものだろう?この両腕のセンサーがあれば、どんな物体でも自由に動かすことができる。」

 

センサーを使い、物体を自由に誘導する能力だ。先ほど植えられている木を誘導し、フォーゼの斬撃を防いだように、周辺の物体を武器や防御壁にすることもできれば、並の銃弾程度であれば軌道事態を変えることも容易い。より精度を上げれば、ビルのような大型建造物や人体すらある程度、操れるようになってしまう。

 

「にしても、姿を消して後ろから攻撃とは無粋じゃあないか。どうやら、このスイッチの力を知っているらしいな?」

「くっ…だったらコイツで…!」

「させるか!」

 

ピクシスの攻撃を掻い潜ろうとエレキスイッチを出したその時、先ほどの木の幹がフォーゼを横から突き飛ばした。

その反動で持っていたエレキスイッチはフォーゼの手から離れて地に落ちてしまう。

 

「仮面ライダーがスイッチを駆使して戦うことなど分かっている。そうやすやすと使わせるわけがないだろう。ほら、お前は触れることすら出来ないぞ!」

 

ピクシスはその鎌で木をバラバラに切り裂き、幾本もの槍を形成した。鋭利な凶器となった木がフォーゼを狙う。フォーゼは急いでシールドモジュールを装備して防ぐのだが、ピクシスは槍を防ぐので精一杯のフォーゼの隙を突いて背後から攻撃する。

 

「がはっ…!」

 

体勢を崩され、結果的に槍の攻撃まで喰らう羽目になったフォーゼ。疲れ果てて膝をつくフォーゼと対象的に、ピクシスは悠然とそこに立っていた。

 

「せ、先生…」

 

固唾を飲んで戦いを見ていたヒフミから、思わず声が漏れる。誰の目から見ても、フォーゼの大劣勢は明らかだった。

 

「牧瀬のピクシスよりも更につえぇ…なんて野郎だ…!」

 

天校に出現したピクシスに勝てた理由…それは、フォーゼの力に加えて頭がキレる参謀の存在があったこと、そしてピクシスのスイッチャー自体の戦闘力がそこまで高くなかったことにある。しかし、裏社会を生き抜いてきた闇銀行の会長は頭がキレるだけでなく、ある程度の武術の心得もあるようだ。そんな者が誘導能力を秘めたピクシスに変身してしまえば、それは大きな脅威となる。

 

「噂に聞く仮面ライダーもその程度か。蝋燭の火にもならん強さだな?」

 

ピクシスはフォーゼの精神を舐め回すように屈辱の言葉を吐いた。弦太朗の先生としての心映えすらも否定するつもりだ。

 

「いや、まだだ!大好きなモンを守る時の先生を舐めんなよ!!」

 

しかし、それくらいの屈辱が彼の心を折るわけがなかった。

フォーゼは地面に付いた手を離し、闘志を燃やして立ち上がる。

 

「大好きなものを…あっ…!」

 

フォーゼが言い放った「大好きなモン」という言葉。ヒフミは何故か無意識に無意識にフォーゼが放った言葉を小声で繰り返す。すると、何か考えついたのか、リュックをおろして中身を漁り始めた。一方のフォーゼは拳を強く握りしめると、隙を突いてピクシスに殴りかかった。

 

「なにっ!?」

 

気づいた頃にはフォーゼの拳がピクシスの頬をぶち抜いていた。ピクシスは殴り飛ばされ、校舎外装の柱まで一気に吹っ飛ばされる。初めてその身で感じたフォーゼの重い一撃は、ピクシスに衝撃を与えるには十分すぎた。

 

「生意気を…!串刺しにしてくれる!!」

 

能力を強く使い、完全優勢に戦いを進めたにも関わらず、怯むどころか頬に重いパンチをぶつけてきた相手を前に舌打ちをしたピクシス。苛立ちを隠すつもりなどさらさらなく、フォーゼを怒鳴りながら木の矢でフォーゼを囲んだ。ピクシスの光る目が捉えているのは……フォーゼドライバーだ。

 

「ペロロ様!お願いします!」

 

フォーゼを囲った木の矢が今にも彼を貫きそうになった時、安全な柱の陰に隠れていたヒフミが、柱の陰から飛び出し、何かを投げた。それが地面に着弾したかと思うと、それは大きなペロロのデコイとなった。

 

「あれは…?…なっ、なんだ…!?体が勝手に…!?」

 

それを直視したピクシスはすぐに異変に気づいた。フォーゼに向けて飛ばすはずだった木の矢を、なぜかペロロのデコイに向けて飛ばしていたのだ。

 

「先生!今です!!」

「…!分かった!」

 

『クローオン』

 

ペロロの出現にポカンとしていたフォーゼだったが、ヒフミの声にハッとすると、クローモジュールをもう一度装備してピクシスに飛びかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ…!どうしてこんなマスコットに…!!」

 

殴りながら、ピクシスは愕然としていた。心では敵は仮面ライダーフォーゼだということも、今が絶好のチャンスだということも分かっている。しかし、今殴っているのは眼前にある等身大のペロロである。

 

『クローオン』

 

「…!しまっ…!!」

 

出来た隙間を、フォーゼのクローモジュールが寸分の狂いもなく通した。狙いは当然、ピクシスの強さの根幹であるセンサーだ。

クローモジュールはセンサーを切り裂き、完全にピクシスの能力は無力化された。

 

「サンキューヒフミ!ナイスだぜ!!」

 

勇気を出して救い船を出してくれたヒフミに勢いよくグッドポーズをするフォーゼ。ヒフミはそれに照れくさそうにしながらも、同じように力強いグッドポーズを返した。

 

「ぐっ…!」

 

今までゾディアーツのパワーと規格外の能力に頼りっきりでいた彼。しかし、頼みのセンサーはもうない。だが、彼はまだ勝ちを得るために脳をフル回転させる。

 

(落ち着け…銀行を経営していた時にも、この程度の窮地はあの手この手で乗り越えてきている……考えろ……いや、これは…まずいのか!?まずいよな…!?)

 

しかし、彼は冷静になる事で自分が置かれている状況を却ってより詳しく理解する羽目になってしまったのだ。

そして、それが引き起こすのはパニックに他ならない。

 

「まずいまずいまずいまずいまずい!!」

 

「これで終わりだぜ。」

『エレキオン』

 

だが、フォーゼは追い詰められた相手にも加減をするつもりはなかった。落ちているエレキスイッチを拾い、エレキステイツになると、生徒の学び舎を破壊しようとした目の前の怪物に、容赦なく帯電しきったビリーザロッドを向ける。ピクシスには、そんなフォーゼが慈悲などない、ただ刑を執行するだけの冷たい処刑人に見えた。

 

「ま…まずい!!逃げなければ…!遠くに…ずっと遠くに!」

 

センサーを切られた時点で勝機はすでになくなっている。横たわっている自分の身体を気にしている時間はない。ピクシスは微かに残っている理性に震えながらしがみつき、逃走を開始した。

 

「逃がすかよ!!」

 

瞬間、フォーゼの複眼が輝いた。

 

「──────は??」

 

雷の如きスピードを発揮したフォーゼは一瞬でピクシスの前へと回り込んだ。

かなりの距離…鬼ごっこなら、「これは逃げ切れるだろう」と言える距離を死に物狂いで稼いだはずだ。それが一瞬で詰められた。現実的にあり得ない、どんな生き方をしていても遭遇しないような現象を目の当たりにしたピクシスが発した第一声は、純粋な困惑を声に乗せたものであった。

 

『リミットブレイク』

 

そして、既にビリーザロッドに装填されているエレキスイッチに、差し替えてあるプラグ…何をしても…いや、もう何も出来ることはない。

 

「ライダー100億ボルトブレーーイクッ!!」

 

何かを思う暇もなく、100億ボルトの電流をおびた武器がピクシスに叩きつけられた。

 

「……ガハッ…!?ぐあぁ…」

 

ゾディアーツの皮膚を黒焦げにする威力を受け、ピクシスはわけの分からぬままに爆散することになったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご協力感謝します、先生。ブラックマーケット入り口の対処で精一杯だったもので……」

 

倒され、ピクシススイッチも消されて目を覚ました後に、闇銀行の会長は正義実現委員会によって逮捕された。ハスミらの制服の埃を払ったり、絆創膏をつけている姿を見るに、ブラックマーケットの入り口で他の連中と戦いを繰り広げていたようだ。

 

「どうやら、あの男は残った権力をフル活用してブラックマーケットの入り口に部下を結集し、トリニティと抗争を起こそうとしていたようです。ファウストという人物を探しているらしいのですが、ブラックマーケットの闇銀行を壊滅させ、我々の監視網もすり抜けるとは、そのファウストという人物は一体何者なのでしょうか…?とにかく、先生もお気を付けを。」

 

そう言って、ハスミたちは取り調べへと戻って行った。その場に残ったのは、弦太朗とヒフミの二人である。

 

「はあぁぁ〜〜疲れましたぁ〜…」

 

緊迫した雰囲気から解放されたヒフミは安堵とともに、溜まった疲労をため息に乗せて放出した。しかし、まだ忙しいことは終わっていない。

 

「でも、まだ3時なんだな。」

「えっ?あっ、本当ですね…てっきりもう夕方かと……」

 

弦太朗がそう、今はまだ昼の3時。中断されてしまった忙しくも楽しい時間を過ごすには十分な時間があるのだから。

 

「先生、せっかくですし、また遊びに行きませんか?一緒におやつでも…いえ、もちろん先生さえ良ければなのですけど…」

「おう、もちろんだぜ!ちょうど俺も言おうと思ってた。」

 

解決したとは言え、戦いで1日を締めたくないという気持ちは2人とも同じであった。

 

「うっし!じゃあ疲れをぶっ飛ばすぞ!!」

「はい!ペロロ様グッズもまだまだありますし、紹介しますね!!」

 

二人は先ほどまでの戦いの疲れを感じさせない勢いで街へ飛び出して行った。その後はおやつ、劇場版モモフレンズ、夕食と、ヒフミとの一日を楽しむのであった。

 

 

 

 

 

「…なるほど、ご報告感謝します。」

 

その日の夕方、ミレニアムから帰校したナギサはブラックマーケットからの刺客のこと、弦太朗の活躍のことの報告を部下から受

けていた。

 

「では、まずトリニティから距離が近い順に、計10箇所のブラックマーケットへの出入り口の封鎖と見張りの強化を。次いでシャーレへの礼状をお願いします。」

「はい、かしこまりました。」

 

自治区内で問題が起きた際、最終的にはその首脳部へ連絡が行く。ナギサとしては慣れていることである。テキパキと指示を出し、事後処理の指示済ませていった。そしてそのまま、部屋から退出していく部下を笑顔で見送った。

 

「…さて。」

 

終始笑顔を絶やさなかったナギサであったが、一人になった途端に、着けていたお面を取ったかのようにスッと顔から笑顔が抜けていった。紅茶が入ったティーカップを置くと、机の上で手を組み、残っている最後の書類に目を落とした。

 

「あまり信じたくはありませんが…流石にこれは無視できませんね…」

 

【あくまで今回の事件の黒幕の男の発言が発端ですので確証はありませんが、阿慈谷ヒフミが先日ブラックマーケットで暴れたという銀行強盗集団のリーダーである可能性があります。】

 

ナギサが見ていたのは、闇銀行の会長が発し、それが噂となって少しだけ話題に───と言っても数日も経てば忘れられていそうな───なっている、『ヒフミが覆面水着団のリーダーなのではないか』という報告であった。

 

「所詮は噂…しかし、火のないところに煙は立ちません。心苦しくはありますが……ヒフミさんも例の部活に入れることを視野に入れておきましょうか…」

 

そうボヤくナギサの顔は確かに苦虫を噛み潰したような心苦しい表情をしていた。しかし同時に、誰が何を言おうとも変わらなさそうなほどの覚悟に満ちた顔でもあった。

 

トリニティを巻き込む大きな事件は、まだまだ起こりそうだ。

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