コズミックアーカイブ(仮面ライダーフォーゼ×ブルーアーカイブ)   作:炙り中トロ

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タイトルから察せられるように、あのステイツが登場します!
個人的に5話はかなり賛否分かれる展開になってると思うんですが、よろしくお願いします…!!


第5話 電・撃・一・閃

「すまん!ロケットにドリル!俺を許してくれ!」

 

トリニティから帰ってきた翌日、弦太朗はロケットスイッチとドリルスイッチに土下座していた。

そんな彼の前には、エナジーを失ったロケットとドリルのスイッチがある。アロナはそんな2つのスイッチを画面越しにながめる。

 

『あちゃ〜……どうやらスイッチに無理をさせ過ぎたみたいですね……』

『エネルギーが戻るまで、ロケットとドリルは使えなさそうです。』

 

昨日の戦いでフォーゼが放った二段リミットブレイクは威力こそ凄まじいが、その分スイッチに掛かる負担も凄まじく、ロケットとドリルがエネルギーが戻るまで使えなくなってしまったのだ。

 

『まぁスイッチの機能が戻るまで、半日ってところですかね…。

このスーパーアロナちゃんがどうにかしますので!』

 

アロナはそう言いながら、画面越しにロケットとドリルのスイッチに向けて謎のダンスを踊る。

頭の上で腕を合わせ、腰を揺らすそれは、かなりひょうきんなものである。

 

「…うーん……」

 

そんなアロナを横目に、弦太朗は少し考える。この前ミレニアムで戦っていた時にないと気付いたステイツチェンジのスイッチ。元いた場所では、仲間との友情を育むことで覚醒させていたが……

考えていると、シャーレのロビーのドアがノックされた。

 

「失礼します。」

 

するとドアが開き、この前リン、ユウカ、ハスミ、スズミと一緒にいたゲヘナ学園の風紀委員の一人、火宮チナツが入ってきた。

 

「……」

 

チナツは入ってくるなり、神妙な顔をしている弦太朗が目に止まった。

「えっと……先生?」

「?…!チナツ!?」

「えっとその…今日は先生がゲヘナ学園に訪問されると聞き、お迎えに上がったのですが……」

「おぉ、おう!頼むぜ!」

 

弦太朗は一旦考えることをやめ、前もって用意しておいた荷物を持ち、その中にシッテムの箱を仕舞うと、チナツと共に歩いていった。

 

『ちょぉ!?なんかスイッチ見えなくなったんですけどぉ!?』

 

問題があるとすれば、アロナはチナツが入ってきたことに気付いておらず、未だにダンスを踊っていたことだった。

 

 

 

 

 

 

 

「着きました。ここがゲヘナ学園です。」

 

数十分後、弦太朗は車に乗せられてゲヘナ学園まで来ていた。

 

「わりぃな、送ってもらっちまって。」

「いえいえ、気にしないでください。」

「これからゲヘナを案内して回りますね。」

「ゲヘナ学園は『自由と混沌』が校風なんです。ただまぁ、その校風が悪い方向に働いていて、認められていないサークルや騒動が絶えず、治安はお世辞にも良くありません。中には会社と名乗って独立を掲げる集団までいる始末……なのに万魔殿は動かないし……」

「……チナツ?」

「……すみません。少し愚痴ってしまいました。風紀委員会の行政官の癖が移ってしまっていて……」

「説明を続けますね。」

「万魔殿は、ゲヘナ学園の生徒会です。我々風紀委員会より上ではあるのですが、碌に動いてくれないのが実情です……」

 

チナツは行政官が万魔殿に謎の理由で予算を大きく下げられたり何かとバカにされたことを思い出し、ストレスを発散するかの如く叫んでいたことを思い出し、ため息をつく。

 

「……そ、それで、風紀委員ってのは?」

 

「風紀委員は私が所属している委員会で、荒れているゲヘナ自治区の風紀を守ることが役割です。今は私以外任務中で、学園にはいませんが……私達の存在が、まだせめて不良たちの抑止力になってはいます。ただ、中には私たちから逃れるためにゲヘナ自治区から出る輩もいます。この前も一部の不良集団がミレニアムの方に……幸い向こうで無力化されて矯正局送りになったそうですが。」 

 

「あの時の不良はゲヘナから来ていたのか…」と、ミレニアムでの戦いを思い出す弦太朗。その不良は弦太朗とユウカが協力して無力化したのだが、それにチナツが気付くはずもない。

と、無警戒で歩いていたその時だった。向かいの校舎の裏で、ドカーンと爆発音が響いた。

 

「な、なんだ!?ゾディアーツか!?」

「…はぁ……またですか……」

「え?また?」

 

弦太朗はゾディアーツの襲撃を警戒するが、チナツは呆れたようにため息を吐く。 

 

「まぁ百聞は一見に如かずですので、着いてきてください。」

 

チナツはそう言って走り出し、弦太朗もそれに続く。そして爆発源に着くと、そこでは何十人もの生徒がアスファルトを砕き、地面を掘っていた。

その熱気は凄まじく、一種の執念を感じられる。

 

「えっと…これなんなんだ……?」

「温泉開発部、ゲヘナ学園でも一二を争うほど危険な部活です。公認ではありますが……」

「なんだ!聞き捨てならんな!」

 

と、ドデカイ声を上げながら、二人の前に現れたのは温泉開発部の部長の鬼怒川カスミと現場班長、下倉メグだ。

 

「危険だなんて失礼な!あたしたちはただ各地の温泉を求めて開拓してるだけだよ!」

「えっと……あんたは?」

「あたしは下倉メグ。温泉開発部の現場班長だよ!」

「私は鬼怒川カスミ。温泉開発部の部長でな。よろしく頼むぞ、先生?」

 

と言って弦太朗の肩に手を置くカスミ。見ただけで弦太朗が何者であるか見抜いている辺り、温泉開発部は人脈もあるようだ。

 

「あ、それと、温泉開発部は別に悪いとこじゃないからね?」

「はぁ……あなたたちはその温泉開発のためならそこが校内だろうが市街地だろうが他校の自治区だろうが首を突っ込んでは、それを口実とするかのような大規模な破壊活動を行っているじゃないですか……しかも酷いときには二百人規模で破壊活動をして……」

「いいですか?何度も言いますけど、部活はきちんと節度を持って………」

 

温泉開発部の被害の報告書を見ながら次々と罪状を述べていくチナツ。ふと目を離し、チナツは顔を上げると、そこに温泉開発部の面々はいなかった。

 

「え?ん?せ、先生?温泉開発部はどこに?」

「あ、温泉開発部ならさっき……」

 

 

「よし!今日はこの辺りで撤収するぞ!風紀委員長が来る前に、アジトに撤退だ!」

「あ、先生、あたしたちのこと覚えといてね〜!」

 

 

「って言ってどっか行っちまったぞ。」

「……」

 

弦太朗にそう言われ、チナツは暫くプルプルと震える。俯向いていて顔は見えないが、まぁ怒っているだろう。

 

「はぁ〜〜!」

 

チナツは溜めに溜めていたでっかいため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

と、なんやかんやあり、弦太朗とチナツはまたゲヘナの中を歩いていた。

 

「あ、そういえば、先生が赴任されてから3日が経ちますが、その間先生は何を?」

 

そしてチナツは案内しながらも、しっかり先生の情報を仕入れようとする。

 

「あぁ、あん時、お前の他にも、ユウカとハスミとスズミが来てただろ?だからあいつらがいる学校に挨拶してたんだ。当然ダチにもなった。」

「二日前はミレニアムに行ってて、その前はトリニティに……」

(……?)

 

と、そこまで行った時、弦太朗の背中にゾクッと悪寒が走った。

周りを見てみる。殆どの生徒はなにも気にせずに歩いていくのだが、建物の中、木の陰、歩いていた一部の生徒……至るところからの不気味な視線が感じられる。

 

(な…なんなんだ……?)

 

その異様な光景に、弦太朗は動揺する。 

 

「……先生。」

「……?」

 

チナツは弦太朗の名前だけ呼ぶと、手を引いて走り出した。

 

   

 

 

 

 

「先生、大丈夫ですか?」

「あ、あぁ、俺は大丈夫だけど……」

 

近くの建物まで走ってきた二人。弦太朗はゲヘナ生徒たちのあの目が気になった。『トリニティ』という言葉を出した時だろうか。あちこちから突き刺すような視線が彼を襲った。

 

「先生はゲヘナに来るのが初めてですものね……」

「今からあの状況について説明します。」

「あの状況になった原因は、先生がトリニティの名を出したからです。」

「トリニティの名前を出したから?一体なんで……?」

「……このゲヘナ学園と、トリニティ総合学園は、昔からずっと互いを憎しみ合ってるんです。」

「え?」

 

学校間での憎しみ合い……これまで見たことも聞いたこともないワードに、弦太朗の思考が一瞬止まる。

 

「詳しい理由は私には分かりません。思想や気風の違いによるものだと私は考えていますが……」

 

出来るものなら憎しみ合いなんて止めたい。弦太朗はそう考えるが、自分が事情をよく知らない以上勝手に手を出すこともできない。

なら、今自分ができる最善の行動は……

 

「……チナツ。」

「……?」

「ダチになってくれ。」

「……はい!?」

 

弦太朗のその謎の提案に、チナツは目を丸くする。

 

「俺は何も分かんねぇ。だから、ゲヘナとトリニティの問題を今どうにかするのは俺には無理だ。」

「けど、俺はお前らの先生でダチだ。勿論トリニティにもダチはいる。だから、ダチになるのに学校だとか立場なんて関係ねぇ。何かあった時は、俺がゲヘナとトリニティの架け橋になってやる!」

「どうしてそこまで……」

 

チナツには分からなかった。長年憎しみ合っている2つの学園の仲裁を単独で取ることは自殺行為に近い。なのに、そんなリスクを背負ってまで友達を作り、和解させようとするのか、理解できなかった。

 

「お前らは俺のダチだけど、それ以前に生徒だ。生徒には、子供には元気に育ってほしい。もし、昔からの因縁で憎しみ合いが続いて、よく分かんねぇまま終わってったり、一緒に遊んだりできないのなら、それはお前らのせいじゃない。そこをどうにかするのが先生ってもんだ。」

 

「先生……」

 

弦太朗の強い信念に、チナツは少し戸惑うが、やがて受け入れ、手を差し出す。

 

「……では、何かあったときは、よろしくお願いしますね。勿論、私たちも協力は惜しみません。」

「あぁ。頼むぜ。」

 

そして二人は友情のシルシを交わし、笑い合う。

 

「あの〜……」

「?」

 

と、その時、二人の後ろから二人の少女が歩いてくる。

一人はエプロンを着た黒髪ツインテールの角が生えた少女、もう一人は同じく角が生えており、エプロンを着た赤髪ロングヘアーの少女である。

 

「フウカさんにジュリさん……?あぁ、そういえばここは給食部の部室でしたね。」

 

チナツはそう言って、給食部と呼ばれた愛清フウカと牛牧ジュリにこれまでの説明と弦太朗の紹介をした。

 

「へぇ〜あなたが噂のシャーレの先生なんですね!あ、私、牛牧ジュリと言います。よろしくお願いします!」

「なんというかまぁ…災難でしたね……それと私は愛清フウカ。給食部の部長です。」

「よろしくな。俺は如月弦太朗。シャーレの先生だ。」

「あなたが噂の……」

「!ってことは!」

 

フウカは弦太朗がシャーレの先生だと知るやいなや、弦太朗の手を握る。

 

「えっ?」

「助けに来てくれたんですね!」

「え?助け?な、何から……?」

「あっ……」

 

満面の笑みで弦太朗にそう言うフウカと、後ろで感激しているジュリに弦太朗は困惑し、チナツは何かを察した。

と、その時、また爆発が起こった。

 

「うえっ!?」

「うわっ!?」

「今日も…ですか……」

「………」

 

ジュリは驚愕……というよりある種の恐怖のような顔をし、チナツは呆れ顔。フウカに至っては沈黙したままジト目をしている。

そして煙幕の中、四人の前に現れたのは……

 

「フウカさん、今日はこんなものを調達して参りましたわ。」

 

謎の四人組だった。一人は銀色の髪でハンバーガーを食べており、一人は黄色の髪でニコニコ笑っており、一人は赤髪で肩に銃を掛けている。そしてリーダー格と思われる最後の一人の帽子を被った生徒は手にでっかい豚肉の塊を持っていた。

 

「はぁ…来たよ……」

「えーっと、あいつらは?」

「……美食研究会。先程会った温泉開発部と並ぶ、ゲヘナの問題組織です。」

「右から、獅子堂イズミ、鰐渕アカリ、黒舘ハルナ、赤司ジュンコです。」

「美食のためならどんな破壊活動も辞さない姿勢から、ゲヘナに限らず他の学園も警戒してまして……特にここの給食部は被害が凄まじく、毎日のようにこうなってます………」

「あ!風紀委員いるじゃん!」

「ええ。ですが、肝心の彼女は今は不在のはず。大した問題ではありませんわ。」

 

と、ハルナは持っている豚肉の塊をフウカに差し出す。 

 

「え?もう何……」

「ではフウカさん、今日はこれで生姜焼きを作ってくださいな。」

「待てよ。」

 

と、ハルナはフウカに豚肉を調理させようとする。その間に、弦太朗が割って入った。

 

「先生?」

「……なんです?」

「無理矢理やらせようとすんな。嫌がってるだろ。」

 

弦太朗はハルナの手を掴み、フウカから引き離した。

 

「えぇ〜…生姜焼きはなし〜……?」

 

と、後ろでイズミが喚いているが、ハルナはそれを目で制し、弦太朗を見る。

 

「あなた、お名前は?」

「如月弦太朗。シャーレの先生だ。」

「へぇ…あなたが……」

 

ハルナは弦太朗を興味深そうに見つめると、話し始める。

 

「先生……と呼ばせてもらいますわね。」

「先生、私達美食研究会は、美食のためなら例え火の中、水の中、草の中、森の中、誰かの胃袋の中までも向かいます。例えそれがゲヘナの外でも関係ありません。」

「しかし、美食を求め続ける中で、私達が絶対に許さないものがあります。それは……」

「美食の道を妨げる存在ですわ。」

 

ハルナは口の勢いのまま、弦太朗を蹴り飛ばした。弦太朗は吹っ飛んで壁に激突する。

 

「いてて……何すんだ!」

 

弦太朗は頭を押さえながら立ち上がり、ハルナを睨む。

 

「私達の美食道を邪魔する者は容赦しません。それが例え先生、あなただとしても。」

 

ハルナは弦太朗を見下ろしながら、高らかにそう告げる。

 

「……それで、結局これはどうするの?」

 

と、ジュンコはハルナが持っている豚肉を指さしながらそう問う。

 

「当然、調理してもらいますわ。」

「じゃあ早速フウカさんに……」

 

「待ちなさい」

 

重い雰囲気をものともせず、フウカに料理をさせようとする美食研究会をチナツが呼び止める。

その手には携帯が握られていた。

 

「それ以上続けるなら、委員長に連絡して、今すぐここに来てもらいます。」

「今ならまだ間に合いますが、どうしますか?」

「……」

 

チナツのその発言に、美食研究会は流石に押し黙る。それほどまでに、風紀委員長が及ぼす影響は大きいらしい。

 

「どうするの?ただの風紀委員ならいざ知らず、流石に風紀委員長と戦うのは……」

「……仕方ありませんね。ここは一時撤退と行きましょう。」

「覚えてて!絶対戻ってくるからね!」

 

イズミがそう言い残し、美食研究会は給食室から去って行った。

あの美食研究会があっさりと撤退した。それほど風紀委員長というのは規格外の存在なのか?弦太朗はそう考えるのだった。

 

「もう二度と来ないでください……」

 

そして、ジュリはボソッとそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

「先生、大丈夫ですか?」

 

その後、チナツは弦太朗に駆け寄り、弦太朗の手を引いて起こした。

 

「わり。助かった。」

「お気になさらないでください。これも風紀委員としての仕事ですので。」

「……あの!」

「?」

「助けてくれて、ありがとうございました。」

 

そこに給食部の二人も来て、弦太朗とチナツに礼を言う。

 

「気にすんなって。先生として、生徒は絶対に守る!」

 

弦太朗の意志は固い。ミレニアムの時も、トリニティの時もそうだった。ただ、今回は少し違う。それだけでは足りない。

 

「でも、美食研究会のあいつらも生徒だ。」

「だから、絶対あいつらともダチになる。」

「ハルナたちと友達って…大丈夫かなぁ……」

 

フウカは美食研究会が動物園の動物の肉を取ったり、山海経の自治区に侵入したり給食部を襲撃したりした事件を思い出す。

だが、弦太朗なら…この先生なら成し遂げてくれそうな気がする。理由は分からないが、直感でそう感じ取ったのだ。

 

「でも、先生ならなんか行けそうな気がする。応援してますね。」

「あぁ。サンキュ。」

「あっ、そうだ。」

「せっかくですし、今からご馳走しますね!もうすぐお昼時ですし。」

「あぁ、確かにもうそんな時間か。よし、じゃあ頼む。」

「せっかくなので私もお願いします。」

「私も手伝います!」

 

と、もうすぐ昼ご飯の時間だったこともあり、二人は給食部のご飯を食べることにした。

そんな中で、調理を手伝おうとするジュリを必死に止めるフウカに、弦太朗は疑問を抱くのだった。

 

 

 

 

 

「はぁ…生姜焼き食べたかったなぁ……」

 

一方その頃、美食研究会はゲヘナの外れに来ていた。

 

「仕方ないでしょ、風紀委員長と戦うよりはマシよ。」

「それに噂の先生もいましたからね〜あれだけなら大したことなさそうですが、実は奥の手を隠しているとか☆」

「仕方ありませんわ。肉を捨てるなんて言語道断ですし、あまり腕に自信はないですが、ここは私達で調理を……」

 

と、ハルナは調理器具を取り出そうとする。キャンプの要領で調理する気だ。

そんな美食研究会に、迫る影が一つ…… 

 

「どうもこんにちは。」

「?」

 

やって来た影の正体は、ミレニアムでゾディアーツの手助けをした黒服の男だった。

 

「どなたです?」

 

ハルナは異質な見た目の男を警戒し、銃を向ける。

 

「落ち着いてください。私はあなた方の敵ではありません。」

「一つ取り引きを持ちかけに来たのです。」

「取り引き?」

 

困惑する美食研究会を前に、黒服の男は四つのゾディアーツスイッチを取り出した。

 

「?これはなんでしょうか?」

「キヴォトスの『神秘』とはまた違う、宇宙の神秘の力とでも言っておきましょうか。」

「そのスイッチ…特に……」

 

男は四つのゾディアーツスイッチの中でもとびきり大きな力を秘めているスイッチをチラつかせる。

 

「これを使えば、かの風紀委員長ともやりあえるかもしれません。」

「風紀委員長と……!?」

 

風紀委員長と戦えるかもしれない程の力が手に入る。何度も風紀委員会に美食道を邪魔されている美食研究会にとって、そんな代物が手に入るのは願ったり叶ったりだ。だが、突然あらわれた男をそうやすやすと信用することも出来ない。

 

「それほどの力が籠もったモノを私達に渡す理由はなんですの?ただの良心だとは思えませんわ。」

「疑う気持ちも分かります。いい着眼点ですねぇ。」

「クックック…ではお教えしましょう。このスイッチを渡す理由……それは……」

「実験ですよ。」

「実験?」

「ええ。私はあなた方キヴォトスの人々の中に眠る神秘を探求しています。」

「そしてこのスイッチはその神秘と大きな関係を持っています。」

「つまり、私は実験による結果を得られ、あなた方は活動の範囲を広められる。利害の一致というやつです。悪くはないでしょう?」

「………」

 

男の提案を聞いたハルナは顎に手を当てて少し考える。そして一秒もしない間に考えが纏まる。本当に少しだった。

 

「良いでしょう。あなたの提案を受けますわ。」

「美食のためなら例え火の中、水の中……それが美食研究会です。」

「クックック……物分りが良くて助かりますよ。」

 

黒服の男はそう言いながら美食研究会の面々にゾディアーツスイッチを渡していく。

 

「では、この中で一番の神秘を持つあなたには、とびっきりのスイッチを……」

 

そして男は、ハルナに大きな力を秘めているスイッチを手渡した。

 

「クックック…この場に相応しい一言を残しておきましょう。」

「星に願いを……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。おまちどうさまです。」

 

フウカは弦太朗とチナツの前にある机に野菜スープを出す。

 

(野菜スープ……)

 

その野菜スープを見て、弦太朗の頭にとある人物が思い浮かんだ。

 

「……先生、どうかしましたか?」

 

弦太朗から少し物悲しい空気が出ていたのか、チナツが気を遣って話し掛ける。

 

「あっ、いや、ちょっと昔、まだ俺がチナツと同じくらいの年だった時のことを思い出してな……」

(一体何があったんだろうか……?)

(あれだけの力を持ってもいるのにあんな顔をするってことは、とても辛いことがあったんだと思うけど……)

 

チナツは10年ほど前に弦太朗に何があったか気になったが、深入りはしないことにした。

というより、出来る雰囲気ではなかった。

 

「でも、このスープ美味ぇ!お腹に宇宙が染み渡るぜえぇーーっ!」

「お腹に宇宙…はちょっとよく分かりませんけど……」

「満足してもらえたなら良かったです。」

「では、私も疲れていますし、頂き……」

 

と、チナツは温泉開発部と美食研究会とか言うやべー勢力を相手にした疲れを少しでも取ろうと野菜スープに手を付けようとする。

しかし、チナツの休憩時間はやってこなかった。

 

「ぶっ!?」

 

チナツがスプーンを手に取った瞬間、給食室の入り口が爆発を起こした。

思わずスープを吹き出してしまう弦太朗。

 

「ゲホッゴホッ……今度はなんだ!?」

「うふふ……舞い戻ってまいりましたわ。」

 

そこに現れたのは、ハルナを始めとする美食研究会だった。

 

「び、美食研究会……!?」

「また来たんですか!?」

「はい!また来ちゃいました☆」

「はぁ……言ったはずですよ?」

 

チナツはさっきのことなどなかったかのように話す美食研究会相手に、携帯を出す。

 

「それ以上続けるなら、委員長を呼ぶと。」

 

ゲヘナの風紀委員長の戦闘力は恐ろしい。美食研究会ですら手を引くほどに。本来なら脅しとしては十分なはずなのだ。だが、今の美食研究会は違った。

 

「ええ。構いませんわ。」

「は?」

 

チナツにとって………いや、フウカとジュリにとってもハルナのその言葉は衝撃だった。

その発言はゲヘナどころかキヴォトス全体で見ても最強クラスの実力を持つ風紀委員長と正面から戦うことを意味するのだから。

 

「あなたたち、自分が何を言っているのか分かって……!」

「確かに、これまでの私たちなら風紀委員長相手には逃げ出していたでしょう。」

「でもね!もうそうはいかないんだから!」

「そうそう!今の私達にはこれがある!」

 

イズミのその言葉を合図に、美食研究会は黒服から受け取ったゾディアーツスイッチを取り出した。

 

「スイッチ!?」

「あら?先生はこれを知っているのですね?」

「まぁ知っていたところで、私たちの栄光は止められませんわ!」

 

ハルナはそう言うと、ゾディアーツスイッチを押し、続いてイズミ、アカリ、ジュンコもスイッチを押す。

すると、暗黒のコズミックエナジーが美食研究会の体を包み、イズミはカメレオンゾディアーツ、アカリはユニコーンゾディアーツ、ジュンコはアルターゾディアーツに変貌した。

 

「ひぃぃぃっ!?」

「へぇ〜これが……」

「力が湧き出る〜!」

「確かにこれなら風紀委員長とも張り合えるかもですね☆」

 

フウカとジュリは腰を抜かし、三人は湧き出る力に興奮する。そんな中、ハルナだけ様子が違った。

 

(!まさか……!?)

 

ハルナを包んでいるコズミックエナジーから溢れ出すオーラは他のゾディアーツとは比べ物にならない。そして、その圧に覚えのある弦太朗は身震いした。

そして、コズミックエナジーのオーラが晴れる……

 

「ふふふっ…これが風紀委員長にも対抗しうる力ですか……」

 

そこに立っていたのは、マントを羽織い、禍々しいオーラを放つゾディアーツ……。

黄道十二星座、ホロスコープスと呼ばれる上位ゾディアーツの一人、ピスケスゾディアーツだった。 

 

「ピスケス……!?」

「これほどの力…これならもう風紀委員も怖くありません!さぁ、手始めに風紀委員を倒してフウカさんに生姜焼きを作ってもらいますわよ!」

「結局そこは変わらないんだ……」

「くっ……先生…!!」

「あぁ、任せろ。曲がり過ぎた生徒を元に戻すのも先生だ!」

 

弦太朗はそう言ってフォーゼドライバーを装着し、スイッチを押して構えを取る。

 

『3・2・1』

「変身!」

「宇宙キターッ!」

「うわあぁぁぁぁぁっ!?」

「先生も姿が変わりました!?」

 

弦太朗はフォーゼに変身し、それを見たフウカとジュリはまた腰を抜かす。

 

「あれがさっきアカリが言ってた先生の奥の手ってやつ?」

「早くご飯食べたいし、さっさと終わらさせちゃおうか。」

「それじゃあ行きましょうか☆」

「ええ。私たち美食研究会を甘く見たこと、後悔させてやりましょう。」

「上等だ!四人纏めてタイマン張らせてもらうぜ!」

フォーゼは手を突き出し、美食研究会ゾディアーツに突撃した。

「四人纏めてって……タイマンって言わないような……」

「フウカさん、気にしちゃ負けですよ。先生はそういう人なので……」

 

そんな中、フウカはボソッとツッコミを入れるのだった。

 

 

 

 

 

「喰らえッ!」

「えいっ☆」

 

場所は外に移る。アルターはフォーゼに向かって炎を放ち、ユニコーンはフォーゼに剣で斬りかかる。

フォーゼはそれを転がって躱し、ガトリングスイッチを起動する。

 

「喰らえ!」

「うっ!?」

「おっと……」

 

フォーゼはガトリングを発射し、アルターとユニコーンを退ける。

だが、次の攻撃に移る前に今度は透明化したカメレオンの攻撃を受ける。

カメレオンゾディアーツには自身を透明にする力があるのだ。

 

「だったら……!」

 

フォーゼはカメレオンの力に対抗すべく、フラッシュスイッチを取り出し、セットして起動する。

 

『フラッシュオン』

「うわっ!?眩しっ!?」

「そこか!」

 

フォーゼはフラッシュモジュールで辺りを照らし、その眩しさに接近していたカメレオンは思わず声を上げる。

 

『クロー・チェーンソー・スパイクオン』

『クロー・チェーンソー・スパイク・フラッシュリミットブレイク!』

 

フォーゼはフラッシュモジュールを解除してクローとチェーンソーとスパイクモジュールを装備し、レバーを引く。

 

「!?」

「うおぉぉぉりゃあぁぁぁぁっ!」

 

視界が回復してきたカメレオンに、3つのモジュールを付けたフォーゼが回転しながら突撃してくる。

クロー、チェーンソー、スパイクによる連続打撃斬り裂き攻撃に、ゾディアーツの中では防御が低めのカメレオンでは耐えられず、爆発四散した。そして変身が解けたイズミが地面を転がる。

 

「イズミ!こんの……!」

 

アルターはフォーゼに向かって炎を放つ。

 

「火には水だ!」

 

フォーゼは走って炎を躱しながらスイッチをオフにし、ウォータースイッチを装填して起動する。

 

『ウォーターオン』

 

フォーゼはウォーターモジュールから水を出してアルターの火の玉を消す。

 

「!私の炎が……!?」

 

フォーゼは火を消した勢いそのまま水圧でアルターを押し流す。アルターは吹っ飛んで壁に激突した。

 

「いつつ……って冷たっ!?」

「うし!トドメ…… ?」

 

アルターに引導を渡そうとするフォーゼだったが、そこでレーダースイッチが鳴っていることに気付いた。

 

「なんだ?」

 

『レーダーオン』

 

『先生!』

「アロナ!?」

 

フォーゼがレーダースイッチを入れると、レーダーモジュールの画面にアロナが映る。

 

「現在シッテムの箱の権限を使って通信しています!」

「ロケットとドリルの力が戻りました!今転送しますね!」

 

サラッとフォーゼシステムにアクセスしてきたアロナは弦太朗にロケットスイッチとドリルスイッチを転送する。

普段は呑気だが、実はアロナって凄いのかも。弦太朗は心の中でそう思った。

 

「とにかく!こいつを喰らえ!」

 

『ロケット・ドリルオン』

 

フォーゼはロケットスイッチとドリルスイッチを装填し、起動する。 

 

『ロケット・ドリル リミットブレイク!』

 

「まだまだ!本番はこれから……!」

「ライダーロケットドリルキーック!」

「え!?嘘!?うわあぁぁぁぁっ!?」

 

アルターは立ち上がって反撃しようとした矢先にフォーゼのライダーロケットドリルキックを真正面から受けて爆発した。ジュンコが地面を転がる。

 

「す…すご……」

「先生、あんなに強かったんですね……」

 

怪人を立て続けに2体倒したフォーゼを見て、給食部の二人は感嘆する。

チナツもすぐに騒動が収まってくれそうだと感じ、ホッと息をつく。

しかし、快進撃は続かなかった。

突然地面からフォーゼの後ろにピスケスが現れたかと思うと、凄まじい力でフォーゼを殴り飛ばした。フォーゼは吹っ飛んで壁に激突する。その衝撃で壁が崩れ、更にフォーゼにダメージが入った。

 

「フフフッ…この力、素晴らしいですわ……ね!」

 

ピスケスはそう言いながらフォーゼにエネルギー弾を飛ばす。

 

「やべっ!?」

 

フォーゼはそれを躱した。そしてエネルギー弾はゲヘナ学園の外に向かって飛んでいき、近くの都市部のビルに命中したかと思うと、ビルが一瞬で倒壊した。

 

「ひぃっ!?」

「建物が一瞬で……!?」

「フンッ!ハァッ!」

 

ピスケスは物凄いパワーと地面を潜るを生かしてフォーゼを追い詰めていく。

 

「くっ……!」

『ランチャーオン』

「おりゃあっ!」

「!」

 

フォーゼは反撃にランチャーモジュールのミサイルを発射してピスケスを攻撃する。そして一度距離を取った。

 

「反撃はここからだぜ!」

 

フォーゼはそう言って次のスイッチをセットしようとする。

 

「ハァッ!」

「おわっ!?」

 

その時、先程フォーゼが吹っ飛ばしたユニコーンゾディアーツがフォーゼの身体を斬り付けた。

 

「私を忘れてますよ☆」

 

ユニコーンはそう言うとタウラスの隣に並ぶ。

 

「アカリさん、ジュンコさんとイズミさんがやられてしまいました。」

「うーん……まぁ良いんじゃないですか?二人だけでも倒せそうですし☆」

「ええ。お二人の仇を取りつつ、目にもの見せてやりましょうか。」

 

ピスケスはそう言って走り出す。フォーゼは構えるが、構えを取るとほぼ同時に、ピスケスに顔面を殴られていた。

フォーゼはそのまま給食室に吹っ飛んで行った。

ピスケスとユニコーンもそれを追って給食室に入って行った。

 

 

 

 

場所が変わっても戦況は変わらない。ピスケスとユニコーンは圧倒的な力でフォーゼを追い詰める。2人が攻撃する度に机や椅子がぐちゃぐちゃになり、調理器具や食材が滅茶苦茶になる。

そして三人が給食室に着く頃には、給食室はもうぐちゃぐちゃになっていた。

 

「そんな……」

「私たちのキッチンが……」

 

二人はそんな給食室を見て絶望する。自分たちが共に過ごしてきた思い出の部屋がズタボロなのだから。

 

「…おかしい……」

 

その時、後ろからチナツでもフウカでもジュリでもない声が響いた。

三人は後ろを向く。

 

「ジュンコとイズミ?」

「目が覚めたんですか!?」

「うん。先生がいい感じに加減してくれたから。」

「それで、おかしいとは?」

 

そこには先程フォーゼに倒されてゾディアーツから元に戻ったジュンコとイズミが立っていた。

チナツは先程のジュンコの言葉の意図を問う。

 

「……確かに、私たち美食研究会は色んなところに行くから騒動に巻き込まれることが多い。」

(いや、起こしてる側では……?)

「レストランを爆破したり、他の自治区に侵入したりもする。」

(やっぱ原因そっちじゃない!?)

「でも、食べ物に対する冒涜だけは絶対にしなかった。」

「……うん。美味しいものを食べたいのに、その材料を蔑ろにしたら美味しいものも不味くなるからね。」

「でも、今の二人は明らかにおかしいの。見て。」

 

ジュンコはそう言いながらフォーゼと戦っている二人を指差す。

その先では、ピスケスとユニコーンがフォーゼを倒すべく、備品を滅茶苦茶にし、床に落ちた食べ物を踏みつけ、下ごしらえしてある料理をぐちゃぐちゃにしながら攻撃している姿があった。

何なら目眩まし目的にフォーゼの複眼に味噌汁をぶっかけている。

その姿はジュンコが説明したハルナとアカリとは掛け離れている。

 

「いつもの2人ならあんな戦い方しないはずなのに……なんで………」

「………!」

 

ジュンコのその言葉を聞いて、チナツはとあることを思い出した。

それは、弦太朗が初めてシャーレに来たときに戦ったワカモの様子だ。

ワカモは力もあるが、更に面倒なのが驚異的なスピードとキレる頭だ。

ただの力の押し合いなら、ワカモに勝る者はキヴォトスに何人かいる。例えばゲヘナの風紀委員長、先日フォーゼと協力してカイテンジャーと戦った正義実現委員会の委員長、剣先ツルギ、それと互角だという噂のあるティーパーティーの聖園ミカ、ミレニアムの生徒がチラッと語っていたC&Cと呼ばれる組織のリーダーなど。

だが、ワカモは一人だけで状況を掻き乱せる頭脳とそれに対応するだけの身体能力を持っていたからこそ中々捕まえることが出来ずにいたのだ。

だが、フォーゼと戦った時のワカモはスピードを生かした戦法も、状況を掻き乱す様なこともしてこず、ただ力だけをぶつけてきた。

結果、フォーゼは多少スイッチを使い分けるだけで勝つことが出来た。

逆に言えば、ゾディアーツ化したワカモは自分の強みがほぼなくなった状態でもフォーゼを一時的に追い詰める程の力の持ち主なわけだが。

そして、ピスケスになっているハルナも、ユニコーンになっているアカリも、己の信念を忘れたかのようにフォーゼを攻撃している。つまり、この状況から導き出される答えは、ゾディアーツスイッチには使用者の心を蝕み、攻撃的に凶暴化させる副作用があるということだ。

 

「……皆さん。」

 

チナツは四人にその考えを話した。話を聞く度に、ジュンコとイズミの体と心が真っ青に染まっていき、ジュンコの男顔負けの威勢とイズミののほほんとした顔持ちが失われていく。

 

「そんな…ってことは……」

「このままじゃ、二人共……?」

「えぇ、おそらく……」

「……っ!」

「なっ!?」

「二人共!?」

 

チナツの話を聞いたジュンコとイズミは血相を変えてピスケスとユニコーンの方に走り、フォーゼとの間に割って入る。

 

「お前は美食研の……目が覚めたのか!?」

 

と、フォーゼは声をかけるが、2人には届いていない。

 

「会長!アカリ!目を覚まして!」

「私達がやりたいことは食べることでしょ!壊したいんじゃない!」

「そうだよ!皆でいつもみたいに美味しいもの食べようよ!それが出来ないなら、そんな力いらない!」

 

二人は涙ながらに訴える。2人にとって美食研究会は大切な居場所。

ゾディアーツの力を受け取ったのは自分たち。だから自分たちが悪いことなんて分かってる。それに、ゾディアーツの力があればキヴォトスでの活動範囲も広がるだろう。

だが、メンバーの変わり果てた姿を見たら、もうそんなことはどうでもいい。戻って欲しいのだ。

 

「分かっていませんわね。その美味しいものを食べるために、邪魔する者は排除するのではありませんか。」

「じゃあ今やってるのは何!?」

「会長言ってたよね!?例え食事が不味くても、食材に責任はないって!だから会長やアカリが食べ物を凄く大切にしてることはよう知ってる!でも!今の二人は、ご飯を踏んづけて、ぐちゃぐちゃにして……!そんなの美食研究会じゃないわよ!」

「アカリちゃん、私に食材って可能性の塊を放っておくのはもったいないって言ってたよね?その可能性を自分から潰してとうするの!」

「……」

 

2人の言葉を聞いたピスケスとユニコーンは顔を見合わせる。なにか意思疎通をしているようだが、声が小さすぎて分からない。

 

「なるほど、分かりました。」

「つまりお二人も私たちの美食を邪魔するんですね?」

「え……?」

「な…何を言って……」

「忘れましたか?美食を邪魔するのなら容赦はしないということを。昔は知りませんが、もう関係ありません。美食を邪魔する者は、全て破壊しなければ……」

「邪魔をするなら、同じ美食研究会だとしても処罰!ですね☆」

 

しかし、2人のゾディアーツ化は深刻に進んでいた。同じ仲間の話が通じず、自分に反対する者すべてを敵とみなすほどに……

ユニコーンは二人を排除しようと剣を振り上げた。

 

「……さよなら☆」

 

ユニコーンは無慈悲に剣を振り下ろす……

……だが、二人は無事だった。ガキィンと鉄と鉄がぶつかる音がする。見ると、ユニコーンの剣を、チナツとフウカとジュリが分厚い鉄板で抑えていた。

 

「怪我はないですか!?」

「私達も手伝うから!」

「ど、どうして……?」

「風紀委員として、例え美食研究会だとしても、我が校の生徒が不当に傷付くのは看過出来ませんので……!」

「別に、爆破したりするのをやめてほしいだけで、死んじゃったり、戻れないところまで行ってほしいわけじゃないから……!」

「そうなるくらいなら…あんたたちが死んだり、いつかずっと後悔することになるくらいなら……!いっそ襲撃される方が気が楽だわ!」

「美食研究会は苦手ですけど、こういうときは協力です!」

「みんな………」

「さて、お喋りは終わりましたか?」

 

決意をして二人を守るチナツと給食部。だが、ユニコーンの前では鉄板も少しの時間稼ぎにしかならない。鉄板は豆腐のようにスパッと真っ二つに割れ、床に落ちた。

 

「うわぁっ!?」

「鉄板が……!」

 

「よく頑張りましたが、とうとう終わりの時が来たようですね☆」

 

ユニコーンはそう言って剣でみんなを刺し……

 

「ライダーロケットパーンチ!」

「うあっ!?」

 

それより前に、ロケットモジュールですっ飛んできたフォーゼがユニコーンを殴り飛ばした。

 

「先生!」

「みんな、怪我はないか?」

「はい。どうにか……」

「なら良かった。」

 

フォーゼは安心すると、ピスケスとユニコーンを睨む。

 

「チナツ、フウカ、ジュリ、ジュンコ、イズミ。お前らの想いは俺が聞いた。」

「先生……」

「こっからは俺に任せろ!絶対に負けねぇ!あいつらを助けてやる!」

 

その瞬間、弦太朗、チナツ、フウカ、ジュリ、ジュンコ、イズミの助けたいという想いが重なり合った。

 

「!」

「あれは……!?」

 

その時、空に、雷雲が発生する。そして雷雲から大きな雷が給食室のフォーゼの手のひらに落ちた。

 

「これは……」

 

雷が落ちたフォーゼの手には、10番、エレキスイッチが握られていた。

 

「エレキスイッチ!?なんでいきなり……」

「まぁいいや!考えるのは後だ!」

 

フォーゼはロケットスイッチを引き抜いてエレキスイッチをドライバーにセットした。

 

「行くぜ!」

 

そしてフォーゼはエレキスイッチを起動する。

 

 

『エレキオン』

 

スイッチを入れると同時に、フォーゼの周りに無数の電気エネルギーが出現し、フォーゼに宿る。するとフォーゼの体は黄金に輝き、電気を纏ったエレキステイツへと変化した。 

 

「おお!」

「また姿が変わった!」

「エレキステイツ!力がバチバチ迸るぜ!」

 

フォーゼはエレキステイツの武器、ビリーザロッドを構える。 

 

「へぇ…ならその力がどれほどのものか見せてもらいますね☆」

 

ユニコーンは剣を振り回しながらフォーゼに突っ込んでくる。

一方のフォーゼはビリーザロッドに付いているソケットを左のコンセントに挿した。するとビリーザロッドに大きな電力が宿る。

 

「ハァッ!」

「ぐっ……!?」

 

フォーゼは頭をずらしてユニコーンの剣を避け、ビリーザロッドで一閃。ユニコーンの腹に一撃叩き込んだ。

更にフォーゼはエレキスイッチをビリーザロッドに挿入する。

 

『リミットブレイク!』

 

「……っ!?」

「ライダー100億ボルトブレーイク!」

 

リミットブレイクによる凄まじい電撃にユニコーンは耐えられず、地面に倒れて爆発した。そして爆炎の中から気絶したアカリが現れる。

 

「アカリ!」

「良かった……」

「すごい……」

「ゾディアーツを一撃で……!?」

「後はお前だ。」

 

フォーゼはビリーザロッドをピスケスに突きつける。帯電したビリーザロッドのエネルギーがピスケスを仕留めてやらんとばかりにバチバチと迸る。

 

「面白いですわね…存分に、優雅に楽しみましょうか!」

 

ピスケスはそう言うと、フォーゼに地面に潜って突撃してくる。フォーゼは即座にシールドモジュールを起動し、ピスケスの攻撃を受け止めた。が、力はピスケスの方が上。フォーゼはピスケスに押されて後退して行った。

そして二人は再び給食室の外に出る。

 

 

 

 

 

「オラァッ!」

 

フォーゼは帯電しているビリーザロッドをピスケスに打ち付ける。いくら黄道十二星座の上級ゾディアーツでもこの攻撃は効く。

 

「なら、喰らわないように立ち回りましょう。」

 

ピスケスはフォーゼから距離を取り、先程のエネルギー弾をフォーゼに放つ。

 

「だったら…!」

 

だが、エレキステイツはこの程度で苦戦するような形態ではない。フォーゼはソケットを真ん中のコンセントに差し替えた。そしてフォーゼはビリーザロッドを振る。すると、ビリーザロッドから電気の刃が放たれた。

それはピスケスのエネルギー弾とぶつかり合い、次々と相殺される。

フォーゼはソケットを右のコンセントに差し替えた。

 

「喰らえ!」

「!?これは!?」

 

フォーゼはビリーザロッドから無数の電気の輪を繰り出した。それはピスケスに巻き付き、動きを封じる。ピスケスは暴れるが、そう簡単に拘束は解けない。

フォーゼはその隙を突いてビリーザロッドで何度もピスケスを攻撃する。

 

「……フンッ!」 

 

このまま負けるかと、ピスケスは拘束を無理矢理振りほどいた。

 

「確かに凄まじい力ですわね…でしたら……!」

 

ピスケスは地面に無数の黒いエネルギーを出す。それは地面に落ちると人型を形成した。『ダスタード』と呼ばれるホロスコープスの分身体である。

 

「この数を覆せるか、試してみましょうか。」

 

ピスケスがそう言うと、ダスタードの大群はフォーゼに突進していく。

だが、フォーゼは動揺せず、次々とダスタードを倒していく。

 

「一気に倒してやるぜ!」

 

更にフォーゼは再びエレキスイッチをビリーザロッドに挿入する。

 

「ライダー100億ボルトバースト!」

 

フォーゼはビリーザロッドを地面に突き立てる。すると、地面に放たれた電流がダスタードを襲い、ダスタードは全滅した。

 

「先生強い!!」

「これなら行ける!行けますよ!!」

 

と、興奮する面々。だが、ピスケスにはあの恐ろしい力がある。 

 

「でしたら……!」

 

ピスケスは先程のように地面に潜った。ピスケスにとって、地面だろうが壁だろうが水と同じ。フォーゼの背後まで忍び寄り、手痛い反撃を与える。

姿が変わったとは言え、全ての能力が上昇したわけではない。エレキステイツの防御力はベースステイツと大差なく、フォーゼは吹っ飛ばされる。

更に、追撃がフォーゼを襲う───────その時だった。フォーゼの複眼が青く輝き、一瞬だけ、身体が輝いたように見えた。

 

「────!?!!??」

 

次の瞬間、ピスケスの攻撃はフォーゼではなく、地面を砕いていた。フォーゼはなんと、ピスケスから数十メートル離れた場所に立っていたのだ。

チナツたちには、フォーゼの身体が一瞬だけ稲妻に変化し、移動したように見えたが……

 

「え……!?」

 

もちろんそれにはピスケスも、戦いを見ている生徒たちも驚いたが、一番驚いたのはフォーゼ自身だ。なにせ、こんな力は元はないはずなのだから。

フォーゼは首を傾げ、ピスケスに向かって走ってみる。すると、再び身体を凄まじい電気エネルギーと加速感が包み、フォーゼは一瞬でピスケスの背後にまで移動した。そのままビリーザロッドで斬りつけるフォーゼ。

今のではっきりと分かった。フォーゼはこの一瞬の間、身体が稲妻と化しているのだ。

 

「ど、どうなってんだ……!?」

 

と、フォーゼは手足を見て、頭を触る。どこも欠損していない、五体満足だ。

ピスケスはその隙を突いて襲いかかるが、フォーゼは素早く反応すると、カウンターを打ち込んだ。

 

「よく分かんねぇけど、とにかく行くぜ!!」

 

エレキスイッチの出現に謎の能力……疑問符ばかりが浮かび、困惑まみれだ。ただ、今大切なのはこの騒ぎを収めることだ。

フォーゼは思い切り走り出す。するとまた、身体は稲妻となり、凄まじいスピードの連続攻撃でピスケスを打ちのめす。もはや、地面への潜水すら間に合わない。 

 

「これでトドメだ。」

 

『ドリルオン』

 

フォーゼはエレキスイッチをドライバーに戻すと、ドリルスイッチを起動する。 

 

『エレキ・ドリル リミットブレイク』

 

「おりゃっ!」

 

フォーゼはリミットブレイクを発動し、思いっきりジャンプする。同時に身体は稲妻となり、より高く跳躍した。

 

「ライダー電光ドリルキーック!」

 

フォーゼは全身に雷を纏い、強化されたドリルモジュールでキックを放ち、ピスケスを貫く。

凄まじいパワーを誇るライダー電光ドリルキックはピスケスでも耐えられず、ピスケスは爆発した。

 

「やった!」

「よし!」

 

ピスケスを倒したフォーゼは変身を解除し、皆がいる給食室に歩み寄る。

とほぼ同時に、アカリとハルナも目を覚ました。

 

「会長!」

「アカリちゃん!」

 

二人が目を覚ましたことを確認したジュンコとイズミは二人に駆け寄り、介抱する。

 

「二人共、大丈夫!?」

「歩ける?」

「えぇ、お体は大丈夫なのですが……」

「どうもさっきまでの記憶がないんです☆」

「え?」

「皆さんとスイッチを押して先生と戦っていたことまでは覚えているのですが……」

「戦っている途中からの記憶がないんですよね……」

「……もしかして、ゾディアーツとしての凶暴化が進んで記憶が曖昧になっているとか?」

「そうかも…私とイズミには記憶があるから……」

「……何があったか、説明してもらえますか?」

 

ハルナはぐちゃぐちゃになった給食室と食材を見ながらそう言った。周辺の様子から、自分が何をしてしまったかの想像は大体付いているようだった。

弦太朗は少し悩んだが、隠すのも良くない。包み隠さず全てを話した。

 

すべてを知ったハルナは酷く落ち込んでいた。なにせ、自分が絶対にやらないと決めていた食への冒涜をしてしまったのだから。

 

「ごめんなさい、私たちが不甲斐ないばかりに……」

 

あろうことか、ハルナはなんとフウカとジュリに頭を下げた。こんなことは初めてだ。フウカとジュリは困惑する。だが、答えは決まっていた。

 

「……から。」

「?」

「二人があのまま暴れ続けるよりはマシだから。」

「それに、給食室はまた立て直せば良い。」

「フウカさん……」

 

ハルナは最初こそ申し訳なさそうな顔をしていたし、実際反省もしているだろう。

だが、徐々に調子を取り戻してくる。ハルナはフッと笑って顔を上げた。

 

「流石ですわ、フウカさん。だからこそフウカさんは誘拐しがいがありますもの。」

「いやそれは辞めて欲しいんだけど……」

(え?私は……?)

(え?誘拐までしてんの?)

(罪状追加と……)

 

美食研究会ってどんだけ闇が深いんだ…と、弦太朗はちょっと心配になる。

そんな中、チナツはノートに何かを書き、ハルナ達を見た。

 

「……さて、美食研究会の皆さん。」

「?」

「先生が収めてはくれましたが、この被害を起こしたのは見過ごせません。あなた達を拘束します。」

「あっ!風紀委員いるの忘れてた!皆!逃げ……!」

「いいえ。」

 

逃げようとするジュンコをハルナは引き止める。それどころか、チナツの前に出た。

 

「良いでしょう。今回ばかりは仕方ありません。食を冒涜したのは私達ですから。」

「罪状はそれだけではありませんけどね……」

「まぁ、会長の判断なら私たちは従いますけどね☆」

「はぁ…仕方ないわねぇ!地獄まで着いていってやろうじゃないの!」

「外に出たら、皆で美味しいもの食べに行こうね!」

「風紀委員の待機室を地獄と呼ぶのも辞めてほし……まぁ仕方なくはありますが……」

 

美食研究会はチナツに連行されていく。その途中、ハルナは弦太朗に話し掛けた。

 

「先生、私たちは美食研究会としての活動をやめるつもりはありませんわ。なので、今後先生に邪魔をされたら、敵対するかもしれませんが、その時はよろしくお願いしますわね。」

 

ハルナの目は本気の本気だ。彼女が本気でやりたいことなのだろう。弦太朗はその目を見て、説得しても多分意味はないだろうと思った。

ただ、先生として、導く者として、道を外れすぎたら元に戻し、楽しむべきときには、共に楽しもうと決意するのだった。

 

「では先生、またどこかで。」

 

そう言い残し、チナツは美食研究会を連れて給食室を出ていった。

 

「……さて。」

 

ゾディアーツの脅威は去ったが、まだ終わりじゃない。やることが残っている。

 

「フウカ、ジュリ、給食室の掃除、手伝うから早く元に戻そうぜ!」

「えっ?手伝ってくれるんですか?」

「あぁ、二人も俺の大切なダチで生徒だからな。」

弦太朗はニコッと笑って二人に手を差し出す。

 

二人は弦太朗の人懐っこい笑顔に少しキュンときた。

 

「はい!」

「よろしくお願いしますね!」

 

二人と弦太朗は友情のシルシを交わす。これでまた、弦太朗の友達が増えた。

 

「よし!じゃあ早速片付けを始め……」

「あ、そうだ!先生!」

 

早速片付けを始めるとする弦太朗に、目を輝かせて話しかけるジュリ。

 

「もうお昼すぎですし、片付ける前にご飯食べません?」

「え?でも、さっきの戦いで食材はなくなっちゃったんじゃ…?」

「安心してください!」

 

ジュリはそう言うと、厨房の奥を指差す。そこには、傷一つついていないきれいな冷蔵庫があった。

 

「こんなこともあろうかと、奥の方の秘密の冷蔵庫に今朝作った料理を置いてるんです!」

「いつの間にそんな物作って……ってジュリが作った料理!?えっ!?ちょっと待っ……!」

「おおマジか!腹も減ったし、せっかくだし食わせてくれよ!」

「はい!今お持ちしますね!」

 

フウカはジュリが料理を運ぼうとするのを阻止しようと試みるが、抵抗虚しく弦太朗の目の前にジュリ製の冷やし中華が出てきた。

若干季節外れではあるが、見た目は普通で野菜や卵、チャーシューを使った至って普通の冷やし中華だ。

 

「おおっ!美味そう!いただきます!」

「あ…あぁ……」

 

その後、ゲヘナ学園に弦太朗の断末魔と吐く声が響いたのだが、それはまた別のお話……

 

 

 

 

 

 

「…あの先生の姿にあの力……」

「先生の中に眠る力と生徒の神秘が重なり合い、新たな力が宿ったといったところでしょうか……」

「やはり、先生とは敵対しないほうが良さそうです。」

 

美食研究会にゾディアーツスイッチを渡した黒服は基地のような場所の廊下を歩いていた。

黒服の脳内にはエレキステイツになったフォーゼの姿が浮かんでいる。彼が思考をし、口を開き考察を繰り返す度に、黒服の歪な頭はバチバチと迸り、彼の探求心は加速していく。

 

「黒服。」

「……うん?」

 

そんな黒服を呼び止める声が一つ。黒服が振り返ると、そこには帽子を被って後ろを向いている男の絵とステッキを持った顔がない男がいた。

 

「あぁ、ゴルコンダですか。何の用です?」

「突然我々の元に現れた宇宙の力を私がリメイクして作り上げた『神秘』でも『恐怖』でも、はたまた『崇高』でもないあの力を実験に使用した結果を聞きに来ただけですよ。」

 

ゴルコンダの声は絵とステッキを持っている巨漢からではなく、絵の中の男から発せられている。だが、巨漢…『デカルコマニー』にも自我はあるようで、「そういうこった!」と相槌を打っている。

 

「私が記号を解釈し、そのインテンティオを読み取って作り上げた作品……のつもりですが、いかがでしたか?」

「……改良の余地あり。だと私は思います。」

「…ほう?」

「ゾディアーツスイッチによる力は確かに素晴らしいものですが、あのスイッチには生物を凶悪化させる力があります。ただ力があるだけの怪物は我々の探求対象として相応しいとは言えません。なので、段階を踏み、着実に完璧な自我を保ったままゾディアーツになれるようにしていくべきかと。」

「更に言えば、今回投入したピスケスのスイッチですが、私の予測では本来あの力があった世界ではあのスイッチは更に強大な力があったと思われます。」

「故に、今の貴方のゾディアーツスイッチは残念ながら改悪であると言わざるを得ません。」

「そういうこったぁ!」

「まぁまぁデカルコマニー、落ち着いて。作品として未完成だったのは私の責任ですから。」 

 

黒服の酷評に、デカルコマニーは怒るが、ゴルコンダはそれを落ち着いて制した。

 

「クックック……まぁ、あなたの腕前には期待していますよ。」

「……あぁそうだ。もう一つ伝えておかねばならないことがありました。」

 

黒服は思い出したように、その場を去ろうとしているゴルコンダを呼び止める。 

 

「……ほう?」

「……キヴォトスに突然あらわれた不可解な存在、シャーレの如月弦太朗先生についてなのですが。」

「彼が持つあのドライバー……」

「──────あれは機械的なものではありません。」                                    

                          序章fin




メインストーリーだとゲヘナ生徒の出番があまりないので、こういうところで拾っていきたいです!
いきなり出てきた謎の能力ですが、これは『大人のカード』が関係しています。

それはそれとして、いよいよ今日からブルアカのアニメがスタートしますよねェ!朝はライダーと戦隊で夜はブルアカ……これは最高に眼福ではないですか!!

勢いそのまま、次回からいよいよ対策委員会編!
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