コズミックアーカイブ(仮面ライダーフォーゼ×ブルーアーカイブ)   作:炙り中トロ

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対策委員会編 第一章
第6話 救・援・依・頼


『ここ数日間でシャーレに関する噂はたくさん広まっているみたいですし、皆さんからの依頼がいっぱい届いてます!』

 

ゲヘナでの一件の翌日、一回りくらい大きくなった書類と向き合う弦太朗……。アロナは元気いっぱいだが、弦太朗の顔は引きつっている。

ミレニアム、ゲヘナ、トリニティというキヴォトスが誇るマンモス校で大きな問題を解決したことから、アロナの言う通り、シャーレの良い噂が広まったらしい。それによって、依頼が増えたのだが、正直この量はちょっと聞いてない。

朝整えたばかりのリーゼントが乱れる勢いで頭をかきむしる弦太朗。

 

『あ、ただ、ちょっと不穏な手紙がありまして……これは一度先生に読んでもらったほうがいいかなと。』

 

と言うアロナの目線の下には、確かに一通の手紙があった。筆記は丁寧だが、封筒は小汚く、砂のようなものがついている。

 

「分かった、ちょっと待っててな。」

 

弦太朗はおもむろに手紙を手に取り、封を開けて手紙を読み始めた。

 

──────────────────────────

連邦捜査部の先生へ

こんにちは。私はアビドス高等学校の奥空アヤネと申します。

今回どうしても先生にお願いしたいことがありまして、こうしてお手紙を書きました。

単刀直入に言いますと、今、私たちの学校は追い詰められています。それも、地域の暴力組織によってです。こうなってしまった事情はかなり複雑なのですが……。

どうやら、私たちの校舎が狙われているようです。今はどうにか食い止めていますが、そろそろ弾薬などの補給が底を尽いてしまいます……。

このままでは、暴力組織に学校を占拠されてしまいそうな状況です。それで、今回先生にお願いできればと思いました。

先生、どうか私たちの力になっていただけませんか?

──────────────────────────

 

『うーん…アビドス高等学校ですか……』

 

アビドスの名前をみた途端に表情を変え、「う~ん」と考えるアロナ。

 

『アビドスは昔はかなり大きい自治区でしたけど、気候の変化で街が厳しい状況になっているらしいです。』

『どれくらい広いかって、広すぎて自治区で遭難する……なんて噂もあるんですって!』

「遭難?んなバカな……」

『まぁ、なんにせよ、学校が暴力組織に攻撃されているなんて、ただ事ではなさそうですが……』

『連邦生徒会からの支援も得られてないようですし……』

 

と、推測に入るアロナ。その横で、弦太朗はアビドスの広さを聞いて苦笑いしていたときと違い、真剣な顔で荷造りをしている。

 

「こうしちゃいられねぇ!今すぐアビドスに行くぞ!」

 

原因は色々とありそうだが、これから友達になりたいと思っている皆が苦しんでいる……

それだけでも、弦太朗を動かすには充分だった。 

 

『おお!すぐに出発だなんて、流石は大人!』

「おっしゃあ!待ってろよアビドス!」

 

そして弦太朗は何故か数日前にシャーレの前に置かれていたマシンマッシグラーに乗ってアビドスへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

「もしかして、迷った……?」

 

意気揚々とアビドスへ赴いた弦太朗だったが、彼は見事なほどにアビドスの沼にハマってしまった。

数日もの間、肝心の学校が見つからないまま自治区をさまよい続けているのだ。

これまで飲まず食わず、寒空の下で野宿をしながら進んでいる弦太朗。

追い打ちとばかりにマシンマッシグラーのエネルギーが切れて、手で押すしかなくなっている。

しかも、昼間は暑いというオマケ付き。

 

「あ、もうダメだ……」

 

これまでなんとか耐えていた弦太朗だったが、遂に限界が来て、その場に倒れ込んでしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「……ん?」

「あの…大丈夫?」

 

ふと、声がした。ぼんやりと顔を上げると、同時にロードバイクに乗った少女が、倒れている弦太朗の顔を覗き込んだ。

 

「だ…大丈夫……じゃないかも………」

「あ、生きてた。こんなとこで倒れてたから死んでると思ったけど。」

「わ…悪いけど、なんか食えるもんないか…?」

「え?お腹が減って倒れてたってこと?ホームレス?えっと……」

 

謎の少女は、取り敢えず弦太朗に話を聞いてみることにした。弦太朗はこれまでの経緯を説明する。

はじめは少し警戒心があった少女だが、話を聞く内に、「あ~」と納得したように頷き始める。

 

「用事があってここに来たけど、数日彷徨った上にお店が一軒もなくて空腹と脱水で力尽きて倒れた、と…ただの遭難者だったんだね。まぁここは元々そういう場所だし、食べ物がある店なんかとっくになくなってるよ。市街地なんかに行けば店はあるけど、ここに来るのも初めてでしょ?」

 

少女は背負っているバックをおろして、中身をゴソゴソし始めた。取り出したのは、液体が入ったペットボトル。それを弦太朗に差し出した。

 

「はい、これ。エナジードリンク。ライディング用のそれしか持ってないけど、お腹の足しにはなると思う。」

 

少女はコップを探して再びバックの中を探す。

しかし、それどころではない弦太朗はエナジードリンクをそのまま飲んでしまった。

 

「あっ…」

「…?」

「いや、何でもない。気にしないで。」

 

「助かった!恩に着るぜ!」

「……うん。」

エナジードリンクを飲み干して元気を取り戻した弦太朗は謎の少女に熱くお礼を伝えた。

対して、謎の少女はあっさりした声で答える。

 

「ところで、名前は?」

「……砂狼シロコ」

「そうか!よろしくな!」

 

弦太朗はそう言いながらシロコに手を差し出す。彼の意図がわからずに首を傾げるシロコ。不思議そうに聞き返す。

 

「……なにこれ?」

「友情のシルシだ!今日からお前も、俺のダチだからな!」

「……別に良いけど。」

 

シロコは少し怪訝な顔をしながらも、手を差し出し、弦太朗とシロコは友情のシルシを交わした。

手を交わした瞬間に、シロコの心に、なにか熱いものが宿った気がした。

確証はないが、この大人は信用できるかもしれないと、そんな感覚が伝わってくる。

 

「ところでさ……」

 

だが、簡単には信じられない。なにせ、彼女からすれば、弦太朗は完全に部外者である。何より、来ている服……

 

「?どうした?」

「頭のリーゼント以外は見た感じ、連邦生徒会から来た大人の人っぽいけど、学校に用があって来たの?ここの学校だとうちしかないけど……もしかして、アビドスに行くの?」

 

アロナが言っていた通り、連邦生徒会はアビドスに一切の支援をしていない。むしろここまで無警戒なのが不自然なレベルだ。

シロコのその質問に、弦太朗は何気ない顔で頷く。

 

「……そっか。久しぶりのお客様だ。」

「私が案内してあげる。すぐそこだから。」

 

シロコはそう言って再びロードバイクに跨がろうとする。のだが……

 

「わ…悪りぃ……」

「?」

「腹が減って動けねぇんだ……」

「え?うーんどうしようか……」

「その自転車に乗せてくれねぇか?」

 

「これは一人用だから…どうしよっか…」

シロコは暫く考え込む。少し経つと、答えは出たようだ。シロコはロードバイクを道の脇に停めた。

 

「仕方ないか…」

 

そして座り込んでいる弦太朗に近づいたかと思うと、なんと、弦太朗を背負ったのだ。

 

「えっ!?」

「これが一番楽だから。少し汗臭いけど、我慢してね。」

 

シロコはそこまで言うと、弦太朗の言葉も聞かずに走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま。」

 

数分後、シロコはアビドス高等学校まで走り、一室のドアを開けて、中に入った。

すると、シロコの部活仲間である、黒見セリカ、十六夜ノノミ、奥空アヤネが彼女と弦太朗を出迎える。

 

「おかえり、シロコせんぱ…い?」

 

当然、いきなりどこの馬の骨とも知らない大人を背負ってきたら、まぁ良い印象はつかないだろう。いつもの感じで出迎えたセリカだったが、シロコが背負っている弦太朗を見た途端に目を丸くする。

 

「うわっ!?何っ!?そのおんぶしてるの誰!?」

「シロコちゃん、まさかその大人、拉致してきたんですか!?」

「もしかして死体!?シロコ先輩がついに犯罪に手を……!?」

「みんな落ち着いて!発覚する前に死体を隠す場所を探すわよ!体育倉庫にシャベルとツルハシがあるから、それを……!」

「……(汗)」

 

大騒ぎしているセリカたち。しかも、事情の説明やら、言い訳やらではなく、隠蔽してしまおうなどという女子高生あるまじき発言に、シロコは「はぁ…」とため息をついた。

 

「いや、普通に生きてる大人だから……うちの学校に用があるんだって。」

 

シロコはそう言いながら弦太朗を床に下ろす……というより落とした。弦太朗は「グエッ」と声を上げる。 

 

「えっ?死体じゃ、なかったんですか?」

「拉致したんじゃなくて、お客さん?」

「そうみたい。遭難して道のど真ん中で倒れてたから連れてきた。」

 

シロコはそう答えながら弦太朗を見る。すると、弦太朗は勢いよく起き上がった。

 

「よっ!」

「わぁ、びっくりしました。お客様がいらっしゃるなんて、とっても久しぶりですね。」

「そ、それもそうですね。でも、来客の予定なんてありましたっけ……?」

 

弦太朗の正体に疑問を抱くアヤネたちに対し、弦太朗は自己紹介をすることにした。

 

「俺は如月弦太朗!シャーレの顧問だ!よろしくな!」

 

シャーレの顧問……その言葉を聞いた瞬間、驚きと心配で半々だった一同の表情が変わる。

 

「え、ええっ!?まさか!?」

「連邦捜査部の…シャーレの先生!?」

「わぁ、支援要請が受理されたんですね!」

「はい!これで、弾薬や補給品の援助が受けられます。」

 

と、大喜びのアヤネは。そんな彼女は、ふと思い出したように口を開いた。

 

「あ、早くホシノ先輩に知らせてあげないと…あれ?ホシノ先輩は?」

「委員長は隣の部屋で寝てるよ。私、起こしてくる。」

 

と、セリカは部屋をでて、ホシノと呼ばれる人物がいる部屋まで向かっていった。

聞いた感じ、ホシノという人物はここの部活の委員長の様だ。

そうして、弦太朗がそのホシノという人物を待っていると、ダダダダダダダダダッと銃声が響いた。

 

「!?」

「じゅ、銃声!?」

「……!!」

 

突然銃声が鳴り響き、下の方で物が壊れる音がした。弦太朗たちが外を除くと、そこにはヘルメットを被った不良集団が学校を攻撃してきていた。

 

「わわっ!?武装集団が学校に接近しています!カタカタヘルメット団のようです!」

「あいつら……!!性懲りもなく!」

 

あまり感情を表に出さないシロコが明らかにキレている。何度も襲撃に来るカタカタヘルメット団にイライラしているのだろう。

その時、扉が開き、セリカとセリカに引っ張られて小柄なピンク髪の少女が入ってきた。彼女こそ小鳥遊ホシノ。先程セリカが言っていた委員長である。

 

「ホシノ先輩連れてきたよ!先輩!寝ぼけてないで起きて!」

「むにゃ…まだ起きる時間じゃないよー。」

「ホシノ先輩!ヘルメット団が再び襲撃を!こちらはシャーレの先生です。」

「ありゃ〜そりゃ大変だね…。あ、先生?よろしくー。」

 

ホシノはのほほんとしているが、弦太朗を見る時、一瞬だけ見定めるような、あるいは敵を見るような目をした。弦太朗はその視線に勘づき、こいつは只者ではないという風にホシノを見つめた。

しかし、他の者はそれに気づいていない。

 

「先輩、しっかりして!出動だよ!装備持って!学校を守らないと!」

「ふぁあー……?おちおち昼寝もできないじゃないかー。ヘルメット団めー。」

「すぐに出るよ。先生のおかげで弾薬と補給品は充分。」

「はーい。みんなで出動です☆」

「私がオペレーターをします!先生はこちらでサポートを!」 

 

かくして、アヤネと弦太朗は教室に残り、あとのみんなはヘルメット団を迎え撃ちに行った。

 

 

 

 

 

 

 

ホシノたちは校庭に出てきた。するとそこには、襲撃してきたヘルメット軍団が百人ほどいた。

 

「ノコノコ出てきやがったか!」

「てめぇらはもう補給品も弾薬もねぇ!それにこの数の差だ。さっさと学校を明け渡しな!」

「そう言われて、はいそうですかと渡すバカがいると思う?」

「そうそう。君たちのせいで昼寝もできないんだからさぁー。帰ってくれない?」

 

ホシノは欠伸をしながらそう言う。明らかに面倒くさそうだ。

その余裕がヘルメット団たちの怒りのボルテージを底上げさせる。

 

「あいつら舐めやがって!」

「てめぇら、やっちまえー!」

 

その団員の合図とともに、百人単位のヘルメット団員がホシノたちに襲いかかってきた。

対するホシノたちも銃の安全装置を解除し、相手に向けて焦点を合わせる。補給品も届いて、準備は万端だ。

 

「さて、弾薬も補給品も充分にあることだし。」

「お掃除の時間ですよ〜☆」

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘルメット団が今までアビドスに対して優勢に戦えていた理由は、人数差もあるが、アビドスの何より補給品や弾薬などの少なさを利用して何度も攻め入ったからだろう。

しかし、それがなくなった今、ヘルメット団がアビドスに敵うわけがなかった。

最初は百人近くいたヘルメット団員は、今や十人程度まで減ってしまっている。

 

「な…どういうことだ!?」

「何故こんなに大量の弾薬を奴らが持ってんだよ!?もうとっくにストックは尽きたはずなのに……」

「ま、こっちにも色々あったんだよー」

「さぁ、トドメ……」

 

シロコは、鞄の中に潜ませてある、切り札のドローンでヘルメット団を一気に全滅させようとする。

─────その時だった。

 

「どけ。」

「?」

 

ヘルメット団員の後ろから声が響いた。そして数秒後、ガタイの良いヘルメット団員が現れた。それだけでなく、服装にヘルメットの色……これまでの連中とは少し違う雰囲気を醸し出しており、対策委員会の面々は警戒態勢に入る。

 

「何、あいつ……?」

『カタカタヘルメット団のリーダー…でしょうか?』

「うーん、惜しい。私はこのヘルメット団の切り込み隊長。これから、私一人でお前らを蹴散らしてやるよ。」

「一人で私たちを?あんまり舐めないでくれる?」

 

セリカはそう言いながらトリガーを引き、切り込み隊長を名乗るヘルメット団に銃弾を放った。

銃弾が切り込み隊長の眼前まで迫るが、彼女は躱すどころか、怯んですらいない。

 

「お前らでこいつを実験してやる。」

 

そう言いながら、切り込み隊長はゾディアーツスイッチを取り出した。そのスイッチを押すと同時に、彼女の体を紫色のスモッグが包んだ。スモッグのエナジーがセリカの銃弾を弾き返す。

スモッグが晴れるとそこには、リンクスゾディアーツが立っていた。

 

「!?」

「怪物!?」

「あれが噂の……」

「………」

 

目の前の敵が変貌して現れたゾディアーツに、セリカ、ノノミ、シロコ、アヤネは戦慄し、ホシノはまた、弦太朗を見たときのあの目になる。

 

『か、怪物のスイッチ…まさかヘルメット団が所持していたなんて……』

『ゾディアーツ……!あいつらもスイッチ持ってたのか………!』

 

「こうなっちまったからには、もうてめぇらも終わりさ!」

「……あんまり舐めないでくれる?そんな見掛け倒しで、私たちに勝てるわけないでしょ!」

 

セリカは気炎とも虚勢とも取れるように叫びながら、リンクスゾディアーツに銃弾を連射する。

しかし、それはリンクスに効かないどころか、当たってすらいなかった。

 

「あ…あれ……?」

 

銃弾が躱されるという信じがたい光景を目の当たりにし、戸惑うセリカ。

リンクスの特性は、その俊敏なスピード。その速さは銃弾を凌駕する。

 

「きゃっ!?」

「!セリカちゃん!?」

 

加えて、リンクスにはコンクリートすら豆腐のように切ってしまう鋭い爪がある。

その鋭さはキヴォトス人といえど大きな傷を負う。リンクス爪ではセリカに攻撃し、セリカは突き刺すような痛みから、銃を落としてしまう。

リンクスは汚く笑いながら、他の者も戦えない状態にすべく、ホシノたちに向かって走って行った。

 

 

 

 

 

 

 

「ま…マズイです……!」

 

教室に残ってオペレーターをしていたアヤネはリンクスの強さに焦っていた。眼下では、ノノミ、シロコがセリカと同じようにやられている。だが、ホシノはリンクスの攻撃を冷静に見切り、攻撃を躱し続けている。

しかし、顔や言葉は相変わらず呑気である。

とはいえ、肝心の攻撃が当たらない。追い詰められるのも時間の問題だ。

 

「せっかく先生が色々持ってきてくれたのに……こんなところで……」

 

アヤネの顔は絶望にどんどん近づいている。

アヤネは先生にこんな状況になってしまったことを謝ろうと、後ろを向く。

 

「あれ?先生……?」

 

だが、そこに弦太朗はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、あとはてめぇだけだ……」

 

校庭では、まだ戦闘が続いていた。その場に立っているのはリンクスとホシノだけ。セリカは銃が持てず、腕の痛み膝をついており、ノノミとシロコは吹っ飛ばされて倒れていた。

 

「うっ……」

「ホシノ先輩……」

「お前を倒したら、あと残ってんのは貧弱な眼鏡だけ……さぁさっさと死にな!」

 

リンクスはそう言いながらホシノに襲いかかるが、ホシノは爪の攻撃を屈んで躱し、逆にリンクスの背中に蹴りを入れた。

その後、素早く距離を取るホシノ。

 

「学校を乗っ取られるのは困るなぁー。かわいい後輩を傷付けた罪も大きいし、おじさんちょっと本気出しちゃおっかなー」

 

そう言った瞬間、ホシノの目がまた変わる。

──────その少し前に。

 

「うおおっりゃぁっ!」

「ぐわっ!?」

 

弦太朗が不意にリンクスに体当たりをかまし、リンクスを吹っ飛ばした。

 

「!?」

「先生…!?」

「みんな、大丈夫か!?」

「は…はい……」

「平気だよ〜」

 

みんなの無事を確認した弦太朗は安心したようにため息を吐く。

その後、起き上がってきたリンクスに向き直った。

 

「先生……?」

『な…何を……?』

「こっからは俺に任せろ。」

「え?」

 

弦太朗とホシノ以外の全員が呆然と弦太朗を見守る中、弦太朗はフォーゼドライバーを装着し、スイッチを押していった。

 

『3・2・1』

「変身!」

 

カウントダウンが響き、弦太朗はレバーを引く。

そして弦太朗は仮面ライダーフォーゼに変身した。

 

「宇宙キターッ!」

「え、ええっ!?」

「姿が変わった……!?」

「もしかしてあれが今噂の……」

『仮面ライダー……!?あれって先生だったんですか!?』

「おう!だからここは、俺に任せろ!それと…」

『メディカルオン』

 

フォーゼはメディカルスイッチを使い、メディカルモジュールを起動する。

その中から薬品を取り出してセリカ、ノノミ、シロコに投げる。

 

「これは……?」

「めっちゃ効く薬だ。怪我はそいつで治してくれ。」

 

フォーゼはそう言うと、リンクスに向き直った。

 

「待たせたな。仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせてもらうぜ!」

 

フォーゼは手を前に突き出し、リンクスに向かって走って行った。

そんなフォーゼの姿を鋭い目つきで見るホシノ。

 

(さて、先生、お手並み拝見と行かせてもらうよ。)

 

 

 

 

 

 

「おりゃあっ!」

「ぐおっ!?」

 

フォーゼは正拳突きでリンクスを吹っ飛ばした。

 

「チッ…面倒な野郎が出てきたな…!」

「どんな事情があるか知らねぇけど、ダチの居場所を奪おうってなら、許さねぇぞ!」

「舐めんなぁっ!」

 

リンクスはそう吠えると、先程の猛スピードでフォーゼを攻撃し始めた。

これにはフォーゼといえど、なんの武装もなしでは翻弄されてしまう。

 

「相変わらずすげぇスピード……」

「だったらこれだ!」

 

そう言いながらフォーゼが取り出したのはビートスイッチ。フォーゼはランチャーからビートに変え、スイッチを入れた。

 

『ビートオン』

 

フォーゼの右足にビートモジュールが装着される。

 

「受けてみろ!」

 

そう言いながら、フォーゼはビートの重音を放った。

 

「ガッ!?ぐわ……!?」

 

その凄まじい重音に、リンクスは動きを止めて苦しむ。しかし、その影響は周囲にも……

 

「うわっ……!?」

「み…耳がヤバいです……」

「うへ〜……」

「あ、ムリだこれ……」

『シロコせんぱあぁーーーい!!!』

 

重音はホシノたちにも影響を与えていた。特に狼並の聴力を持つシロコにはダメージが大きかったらしく、気絶してしまった。

 

「!?ヤベッ!」

 

フォーゼはそれに気付き、慌ててスイッチを切った。

リンクスの攻撃をさばきながら謝るフォーゼ。

 

「わ…わりぃ!」

「わりぃじゃないわよ!シロコ先輩気絶しちゃったじゃない!」

 

フォーゼのあたふたしながらの謝罪に、セリカが真っ先にフォーゼを怒鳴る。

 

「だったらこれだ!」

 

と、次にフォーゼが取り出したのは、ウインチスイッチ。

レーダースイッチとウインチスイッチを入れ替える。

 

『ウインチオン』

 

そしてフォーゼはウインチスイッチを起動し、左腕にウインチモジュールを装着した。

 

「おりゃあっ!」

 

フォーゼはウインチモジュールで起き上がったリンクスを拘束した。

 

「な、なんだこれ!?離せ!」

 

リンクスは高速を解けずに藻掻く。しかしその程度で拘束から逃れることはできない。

 

『ランチャー・ガトリングオン』

 

「こいつでトドメだ!」 

 

フォーゼはそう言いながらレバーを引いた。リミットブレイクである。

 

『ランチャー・ガトリング・ウインチ リミットブレイク!』

 

「一斉掃射だぜ!」

 

フォーゼのミサイルとガトリングの一斉射撃を受け、リンクスゾディアーツは爆発した。

 

「ぐわっ!?」 

 

変身が解けた切り込み隊長が勢いのまま地面に叩きつけられた。 

 

「クソッ……!覚えてろ!」

 

彼女はそう言うと、隠し持っていた手榴弾を地面に投げる。

すると、地面が爆発し、爆炎が晴れると、そこに隊長の姿はなかった。

 

「!逃げたか……」

 

フォーゼはヘルメット隊長の逃亡を確認すると、変身を解く。

 

『皆さん!ヘルメット団の逃亡を確認しました!』

 

そのタイミングで、アヤネから、勝利を告げる通告が入った。

逃げられはしたが、勝利は勝利である。

 

「やった!」

「それじゃあ、一旦戻りましょうか〜」

 

そして、勝利を収めた弦太朗たちは教室へと足を運んで行った(因みにシロコは弦太朗が背負っている)。

 

 

 

 

 

 

その後、なんやかんやあってシロコが目を覚まし、皆の治療が行われていた。

 

「すごい…傷がすぐに治ってく……」

 

セリカはメディカルモジュールの性能の高さに感嘆している。

シロコは一足先に回復したノノミから耳掃除を受けていた。

 

「いやぁ〜まさか勝っちゃうなんてね。ヘルメット団もあんな怪物用意してかなり自信満々で攻めてきたみたいだったけど、まさかシャーレの先生がもっとすごいのになっちゃうからねー。」

「まさか勝っちゃうなんて、じゃありませんよぉ……勝たないと学校が不良のアジトになっちゃうじゃないですか……」

 

相変わらずマイペースでのんびりしているホシノに、アヤネはツッコミを入れる。いつもの光景である。

 

「……では仕切り直して、私たちは、アビドス高等学校の対策委員会です。」

 

治療もあらかた終わり、ホシノたちは弦太朗と向き合った。

彼女たちは、このアビドス高等学校の対策委員会と呼ばれる部活動の生徒たちだ。

まず、一年生の元気と黒髪ロングヘアーと猫耳が特徴の黒見セリカとオペレーター担当の眼鏡っ娘、空奥アヤネ。

 

「よろしくお願いします。」

「どうも。」

 

2年生の緩い雰囲気と黄色いロングヘアーが特徴の十六夜ノノミと口数が少なく、感情が読み取りづらい白髪と狼耳が特徴の砂狼シロコ。

 

「よろしくお願いします、先生〜。」

「さっき、道端で最初に会ったのが私。」

「…あ、別にマウント取ってるわけじゃない。」

 

ほぼ全員の自己紹介が終わり、最後の一人、一瞬だけ弦太朗を細く冷たい目で見たあの生徒を残すのみとなった。

 

「そしてこちらは委員長の、3年のホシノ先輩です。」

「いやぁ〜よろしく、先生〜。」

 

小鳥遊ホシノ。先程のリンクスゾディアーツとの戦いにおいて、フォーゼを除いて唯一リンクスの俊敏なスピードに対応できた存在。何ならあのまま上手くやれば勝つことだって出来たかもしれない。

目が合う弦太朗ホシノ。今はあの時の目はしていなかった。

 

「ご覧になった通り、我が校は現在危機にさらされています……そのため、シャーレに支援を要請し、先生がいらしてくれたことで、その危機を乗り越えることができました。」 

「先生がいなかったら、さっきの人たちに学校を乗っ取られていたかもしれませんし、感謝してもしきれません。」

「気にすんなって。俺にとっちゃ生徒だろうがダチだ。先生が生徒を助けるのも、ダチを助けるのも当たり前のことだ。」 

 

弦太朗は話の内容を大方理解していたが、一つだけ疑問に残ることがあった。

 

「なぁ、対策委員会ってなんなんだ?」

 

それはもっともな疑問だろう。今まで弦太朗が赴いたゲヘナ、トリニティ、ミレニアムのどれにもそんな委員会はなかったのだから。

アヤネは分からないのも仕方がないと思い、説明を始める。

 

「対策委員会は、このアビドスの廃校を阻止して、再び蘇らせるための部活です。」

「全校生徒で構成される、校内唯一の部活なのです!」

「全校生徒と言っても私たち5人だけなんだけどねー。」

「他の生徒は転校したり、学校を退学して町を出て行った。」

「学校がこの有り様だから学園都市の住民もほとんどいなくなって、カタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラ集団に学校を襲われてる始末なの。」

「現状、私たちだけじゃ学校を守り切るのが難しい……」

 

3人の言葉を聞いた弦太朗は、アビドス自治区そのものに何かが甚大な被害をもたらしたのだとなんとなくではあるが理解した。

そして、世の中にはそんな苦しみを利用して悪巧みをする奴もいる。弦太朗はそんな曲がってる人間が一番嫌いなのだ。

だからこそ、弦太朗は今ここに来てよかったと思っている。

 

「もしシャーレからの支援がなかったら、今度こそ万事休すってところでしたね。」

「だねー。補給品も底をついてたし、流石に覚悟したね。なかなかいいタイミングに現れてくれたよ、先生。」

「……それでさ、こっちからも一つ聞いときたいんだけど。」

 

ホシノがそう言うと、あの時とまでは行かずとも、少し彼女の目が鋭くなる。

その目線の先にあるものは、フォーゼドライバーである。

 

「先生が変身したアレってなに?あと、あの怪物についても知ってたら教えてほしいな〜」

 

ホシノはフォーゼに対して疑問と心配を抱いているのだ。そりゃそうだ。突然現れた大人がいきなりすごい力を秘めた存在に変わって怪物を討伐したのだから。

他のメンバーも気持ちは同じようで、弦太朗の方を見てくる。

弦太朗は数日前にシャーレの前で話したように、対策委員会の面々にフォーゼについて語っていく。

 

「へぇ〜意外とすんなり話してくれるんだね〜」

「まぁ、隠すようなことでもないしな。」

「それにしても、コズミックエナジーとか宇宙の力とかゾディアーツとか…」

「にわかには信じ難い話ですね……」

「まぁ最初の方はそうなるよな。」

「でも、これだけは絶対言える。」

「?」

「俺はお前らの味方だ。だから、この力は皆を守るために使う。」

「それがきっと、俺がシャーレ先生に選ばれた理由なんだろうな。」

「………」

 

最初は少し疑っていた。シャーレの先生は本当に味方なのか。連邦生徒会長のように突然消えたりしてしまわないのか。と。けど、さっき自分たちを守ってくれたこと、なにより、弦太朗の純粋な目を見たら、なんとなくだが彼を信用してみたい、と感じた。

 

「………」

 

ただ、一人を除いて。

 

「何はともあれ、先生は私たちを助けてくれた。」

「うんうん!もうヘルメット団なんてへっちゃらですね。大人の力ってすごいです☆」

「かといって、攻撃を止めるような奴らじゃないけど。」

「確かに。しつこいもんね、あいつら。」

「こんな消耗戦をいつまで続けなきゃいけないんでしょうか…ヘルメット団以外にもたくさん問題を抱えているのに………」

 

そう。弦太朗が撃退したからといって、今後ヘルメット団がずっと来ないわけではない。

これからも何度も来るだろうし、もしかしたら弦太朗がいないタイミングを狙うかもしれない。

それに何故かヘルメット団は一介のチンピラとは思えないほどの量の武器を保有している。結局このままではジリ貧なのだ。

 

「そういうわけで、ちょっと計画を練ってみたんだー。」

「えっ!ホシノ先輩が!?」

「うそっ…!?」

 

ホシノが作戦を練った、という事実だけで、対策委員会の皆は驚く。

ホシノはいつものんびりしていて、テキトーにやってるように見える故に、作戦を練るというだけでも驚きの対象になるのだ。

 

「いやぁ〜その反応はいくら私でも、ちょーっと傷ついちゃうかなー。おじさんだってたまにはちゃんとやるのさー。」

「…で、どんな内容?」

「ヘルメット団は、数日もすればまた攻撃してくるはず。ここんとこずっとそういうサイクルが続いてるからねー。」

「だから、このタイミングでこっちから仕掛けて、奴らの前哨基地を襲撃しちゃおうかなって。先生があのゾディアーツ?ってのをを倒してくれたお陰で今こそ奴らが一番消耗してるだろうからさー。」

 

ホシノの提案はなかなかに大胆だ。なんせ今すぐヘルメット団ともう一度戦いに行くことになる。

 

「!?今ですか!?」

「そう。今なら先生もいるし、補給とか面倒なことも解決できるし。」

「なるほど。ヘルメット団の前哨基地はここから30kmくらいだし、今から出発しよっか。」

「良いと思います。あちらも、まさか今から反撃されるなんて夢にも思っていないでしょうし。」

「そ、それはそうですが……先生はいかがですか?」

 

問題解決は当然したいが、自分たちから攻め入るのもいかがなものか…迷ったアヤネは弦太朗に委ねることにした。

 

「やられっぱなしじゃいられねぇ!やってやろうじゃねぇか!」

 

弦太朗は意外と乗り気だった。

 

「よっしゃ。先生のお墨付きももらったことだし、この勢いでいっちょやっちゃいますかー。」

「善は急げ、ってことだね。」

「はい〜それでは、しゅっぱーつ!」

 

とまぁ、なんやかんやで、弦太朗と対策委員会一行はヘルメット団のアジト付近を襲撃することになるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「クソがッ……!」

 

先程フォーゼに敗れた切り込み隊長の彼女は怒りに任せて机を叩く。とある男からあのスイッチを手に入れた時から、キヴォトスで一番強いのは自分だと思っていた。ヘルメット団同士の抗争じゃまず負けなかったし、それに留まらず、カタカタヘルメット団のアジトは物凄く大きくなっていった。

この力なら、難攻不落のゲヘナやミレニアムやトリニティだって落とせる……。少なくとも今狙っているアビドスなら確実に落とせるだろう。と、自負していた。そんな思い上がっていた中での圧倒的敗北。突然現れた大人が訳の分からない力で自分を叩き潰した。

自分は最強だ、という気持ちはいとも簡単に砕かれた。

彼女はそんな事実が許せなかった。

 

…憎い。アビドスが、いや、あの大人が憎い。

 

彼女の戦う理由は、いつの間にかアビドスを手に入れることではなく、如月弦太朗を、仮面ライダーフォーゼを倒すことに変わっていた。

 

「力を……!もっと力を寄越せっ!」

 

今求めるのは力。アビドスを、あの大人を叩き潰せる力。

 

『ラストワン』 

 

「!」

 

その願いに共鳴するかのように、ゾディアーツスイッチがこれまでより強い力を発揮する。

ゾディアーツスイッチはラストワン状態になった。

それを見た切り込み隊長はニヤリと笑う。

 

「へぇ…まだ先があったのか。」

 

ラストワンとなったスイッチを見る彼女の目はギラギラと炎のように燃えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、弦太朗と対策委員会はヘルメット団の前哨基地の近くまで来ていた。

 

『カタカタヘルメット団のアジトがあるとされるエリアに入りました。』

『半径15km圏内に、敵のシグナルを多数検知。』

 

アヤネはオペレーターとして、アビドスの教室に残って皆をサポートしている。

そんなアヤネの指示を受け、皆は前哨基地に近付いて行った。

 

『おそらく敵もこちらが来たことに気付いているでしょう。ここからは実力行使です!』

「ん、とっとと終わらせる。」

「散々やられた分、今度はこっちがやり返してやるんだから!」

 

五人の前には、基地のテントやら仮設の建物やらから出てきたヘルメット団の大群がいる。

数はおおよそ160。5VS160というのは一見するとただの蹂躙に見える。少し大きな水溜りと池の大きさを比べているようなものだ。だが、それは数だけを比べた場合。質は桁違いだ。

 

「あ、そうだ。先生は下がってて。」

「え?」

 

ホシノはフォーゼドライバーを取り出そうとする弦太朗を止める。それに弦太朗は驚いた。

 

「さっきは助けられちゃったからねー。このままじゃアビドスとしてメンツが潰れちゃうし、私たちだけでもどうにかなるって先生にもヘルメット団にも教えてやらなきゃ。」

「…分かった。」

 

ホシノの言葉を聞いた弦太朗は素直に引き下がった。アビドスは自分たちの母校であるからこそ、自分たちで守りたいという想いが強いのだろう。それに、弦太朗はアビドスの皆の戦いを見ていた。あれだけ強いならゾディアーツでも出てこない限り負けることはないだろう。

 

「それじゃ、やっちゃおっかー。」

「うんうん!お掃除開始です!」

 

対策委員会はそれぞれの武器を構え、ヘルメット団に突撃して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よいしょ〜。」

 

真っ先に先陣を切ったのはホシノだ。ホシノはアビドスで……いや、キヴォトスの中でも屈指の実力を誇る。その実力はワカモやツルギと比べても劣らないだろう。

 

「ぶっぱなせぇ!」

 

そんなホシノに、大砲の砲撃が迫る。だが、ホシノにとってそんなものは問題ではない。

 

「なっ!?」

 

ホシノは盾を展開し、砲撃を完璧に防いだ。

防いだ衝撃で爆発が起こるが、それでも盾は無傷である。

 

「ぐっ!あの盾をぶっ飛ばせーー!」

「あれー?私だけに集中してて良いのかなー?」

 

ホシノがそう言った瞬間だった。

 

「ドローン、作動開始。」

 

ホシノの後ろにいたシロコがドローンを起動し、空に飛ばす。

そのドローンから小型ミサイルがいくつも放たれ、ヘルメット団の列をぐちゃぐちゃにする。

 

「セリカ、ノノミ、やっちゃって。」

「任せて!」

「ノノミ、行きまーす!」

 

更に、ホシノの盾からノノミとセリカが飛び出す。そしてノノミはガトリング型の武器を振り回し、銃弾を連射して自分の正面にいる相手全てに命中させる。まさしく一斉掃射だ。

 

「ハァッ!」

 

だが、まだ攻撃は終わらない。セリカは身体から青色のオーラを放つ。

同時にセリカはパワーアップし、ノノミの銃弾の嵐から逃れたヘルメット団に飛び掛かる。そして銃で撃ち、時々殴りや蹴りも使ってヘルメット団を次々と倒す。

 

『救援物資、まもなく到着します!』

 

更に更に、アヤネがアビドスから支援物資が入ったドローンを飛ばしてくる。皆は救援物資を使って体力を回復させる。

 

「元気が出てきました☆」

「これでまだまだ戦える!」

「いやぁーアヤネちゃん、助かるよー。ありがとねー。」

『いえいえ、私に出来るのはこれくらいなので……。』

 

と、お礼を言うホシノと謙遜するアヤネ。それを見てニコッとする3人。

だが、ヘルメット団の増援が来ると目の色が変わり、あっという間にヘルメット団を倒していく。

 

「すげぇ……」

 

その様子を見て、弦太朗は驚き、同時に感心していた。元々アビドスの皆は強いと思っていたが、まさかここまでとは。

一人一人の力も然ることながら、チームワークやコンビネーションも抜群。まるで互いが互いのやることを理解しているかのようである。

これは、アビドスという人数が少ない学校だからこそ、なし得ることだ。 

 

「さて、そろそろ全部倒した?」

 

そこから数分後、対策委員会一同の周りには、気絶したヘルメット団がそこら中に転がっていた。

皆は残党はいないかと、周りを警戒する。

このまますんなり終わってくれれば御の字だったが、現実はそう上手くいかないようだ。

 

「アビドスゥ……!」

 

対策委員会の前に、ヘルメット団の切り込み隊長が現れた。

 

「!あいつはさっきの!」

「…またあの怪物になる気?」

「あぁそうだよ。今度はもう負ける気がしねぇ。」

 

そう言うと、切り込み隊長はラストワン状態のスイッチを取り出した。

 

「!ラストワン!?」

 

ラストワン状態のスイッチを見た弦太朗は焦り、皆のところまで駆け寄る。

 

「やめろ!今度それを押したら、人間に戻れなくなるぞ!」

「はっ!お前を倒すためなら、人間なんて捨ててやらァ!」

 

切り込み隊長はそう言い、ゾディアーツスイッチを押した。

すると、闇のコズミックエナジーの中からリンクスゾディアーツが出現すると同時に、彼女の身体が繭状でハウンドから排出される。

 

「うわっ!?」

『な、何がどうなって……!?』 

 

今の切り込み隊長の肉体はもう抜け殻同然だ。今の彼女の精神は、リンクスゾディアーツに宿った状態になっている。こうなると自力では元の人間に戻れない。が、その代わりに戦闘力は桁違いに上がる。

 

「この力で…お前を叩き潰す!」

 

リンクスはそう言って、弦太朗を指さした。

 

「…俺を指名してるみたいだな。」

「さしずめリベンジってところかなー。」

「まぁ、ここからは先生に任せるよー。」

「おう。任せろ。」

 

弦太朗はそう言ってフォーゼドライバーを取り出す。

弦太朗はドライバーを装着し、スイッチを入れる。

 

『3・2・1』

 

「変身!」

「宇宙キターッ!」

「それ毎回言うんだ……」

「おう、宇宙のエナジーがグーッと来て気合が入るからな。」

 

変身したフォーゼに思わずツッコむセリカ。フォーゼは軽く返事を返すと、リンクスに向かって手を突き出す。

 

「仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせてもらうぜ!」

 

フォーゼはリンクスに殴りかかる。だが、ラストワンで強化されたリンクスは先程までとは違う。

 

「!?」

 

リンクスがより強化されたのはその俊敏さだ。リンクスはフォーゼの視界から消えたかと思うと、次の瞬間にはもうダメージが入っている。

 

「オラァ!」

 

更にパワーも上がっており、リンクスの攻撃でフォーゼは上空に打ち上げられる。

リンクスは周辺の物体を利用して空中を飛び回り、フォーゼを連続で攻撃する。

 

「ッラァッ!」

 

更にフォーゼが落下してくるタイミングを見て爪から斬撃を放つ。

フォーゼは慌てて背中のジェット噴射で躱すが、リンクスはそれを読んでいたかの如く飛び上がり、フォーゼを爪で切り裂いた。フォーゼは地面に落下する。

 

「先生!」

「こ、これってマズいんじゃ……」

 

本来、ラストワンだとしてもリンクスにはここまでの力は備わっていない。だが、彼女のフォーゼに対する憎しみがリンクスをここまで強くしているのだ。

 

「先生、大丈夫ですか!?」

『あまり無茶しちゃ……』

「いや、大丈夫だ。」

 

劣勢のフォーゼを皆は心配するが、フォーゼは余裕綽々だ。なんせ、フォーゼにはまだ手札がある。

 

「こいつだ!」

 

フォーゼはエレキスイッチを取り出した。

 

『エレキオン』

 

フォーゼはエレキスイッチをドライバーに装填して起動させる。そして電気エネルギーを纏い、エレキステイツになった。

 

「!」

「また変わった!?」

「なに!?」

「この電撃を見せてやるぜ!」

「チッ…ほざいてろ!」

 

リンクスは先程の凄まじいスピードでフォーゼに接近してくる。

 

「ハッ!」

「!?」

 

だが、フォーゼはそれ以上のスピードでリンクスに接近した。

先日ゲヘナで得た、雷と同等のスピードで動くことが出来る謎の力。使ってみれば便利なものである。

リンクスに接近したフォーゼはビリーザロッドをリンクスに打ち付ける。

リンクスは凄まじい電撃に痺れ、吹っ飛ぶ。 

 

「ふざけんな!こんなんで終わってたまるか!」

 

リンクスは叫び、再び高速移動でフォーゼに迫る。

打ち上げてしまえばこっちのもの……!その一点張りでリンクスはフォーゼを狙う。

だが、同じ楔を2度踏むフォーゼではない。

 

『シールドオン』

 

フォーゼはシールドモジュールでリンクスの攻撃をガッチリ防いだ。 

 

『ネットオン』

「捕まえてやるぜ!」

 

更にフォーゼはネットモジュールを装着し、リンクスを捕らえた。

 

「ぐっ!?またこういうのかよ!」

「トドメだ!」

 

フォーゼはドライバーからエレキスイッチを引き抜き、ビリーザロッドに装着した。

 

『リミットブレイク!』

「ライダー100億ボルトブレーイク!」

 

エレキステイツのリミットブレイクが、リンクスに直撃する──────!

 

「ち…ちくしょぉぉおぉっ!」

 

ラストワンといえど、フォーゼのライダー100億ボルトブレイクには耐えられず、リンクスの肉体は爆発した。

 

「もう逃さねぇぞ。」

 

そしてフォーゼは爆炎の中から飛んできたゾディアーツスイッチを掴み、スイッチを押す。すると、スイッチは跡形もなく消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

『敵の退却を確認!』

『並びにカタカタヘルメット団ノノミと補給所、アジト、弾薬庫の破壊を確認。』

 

その後、対策委員会は残っていた僅かなヘルメット団を完全鎮圧。それから更に数分後、アヤネからヘルメット団がアビドスから逃げていったと報告が入った。

アヤネの顔はこれまでどこか曇っていて、弦太朗と話している時も作り笑いな感じがしたが、今は満面の笑顔だ。

 

「これでしばらくはおとなしくなるはず。」

「よーし、作戦終了。みんな、先生、お疲れー。」

「それじゃ、学校に戻ろっかー。」

 

かくして、弦太朗と対策委員会はヘルメット団を倒し、アビドスの平和を守ったのだった。

 

 

 

 

 

 

ヘルメット団に勝利した弦太朗と対策委員会はアビドスの教室まで戻ってきていた。

教室に入ると同時にアヤネがみんなを迎える。

 

「お帰りなさい。皆さん、お疲れ様でした。」

「ただいま〜。」

「アヤネちゃんもオペレーターお疲れ。」

「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです。」

「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる。」

「うん!先生のおかげだね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!」

「ありがとう、先生!この恩は一生忘れないから!」

(……ん?)

 

アビドスが抱える問題の一つが消えたことを嬉しく思っていた弦太朗だったが、今のセリカの言葉に疑問符を浮かべる。 

 

───────借金。

 

普通ならあまり聞かない言葉だが………

 

「…なぁ、今言ってた借金ってなんなんだ?」

「!?…あ、わわっ!」

 

思わず口を滑らせたセリカは慌てるが、否定することも出来ず、だんまりする。

 

「そ、それは…。」

「ま、待って!!アヤネちゃん、それ以上は!」

 

アヤネは事情を話そうとするが、セリカはそれを遮る。

その慌てようから見るに、よほど言いたくない問題なのだろうか?

そんなセリカに、ホシノが近づく。

 

「いいんじゃない、セリカちゃん、隠すようなことじゃあるまいし。」

「か、かといって、わざわざ話すようなことでもないでしょ!」

「別に罪を犯したとかじゃないでしょー?それに先生は私たちを助けてくれた大人でしょー?」

「ホシノ先輩の言う通りだよ。セリカ、先生は信頼していいと思う。」

「そ、そりゃそうだけど、先生だって結局部外者だし!」

「確かに先生がパパっと解決してくれるような問題じゃないかもしれないけどさ。でも、この問題に耳を傾けてくれるような大人は、先生くらいしかいないじゃーん?」

「悩みを打ち明けてみたら、何か解決法が見つかるかもよー?それとも何か他にいい方法があるのかなー、セリカちゃん?」

「う、うう…」

「でっ、でも、さっき来たばっかりの大人でしょ!今まで大人たちが、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてあった!?」

「この学校の問題は、ずっと私たちだけでどうにかしてきたじゃん!なのに今更、大人が首を突っ込んでくるなんて……。」

「私は認めない!!」

 

ホシノとの言い合いの後、セリカはそう吐き捨てて教室から走って出て行ってしまった。

 

「セリカちゃん!?」

「私、様子を見て来ます!」

 

ノノミはそんなセリカを追いかけ、教室から出て行った。

しばらくの間、静寂が続いていたが、ホシノがそれを打ち破った。

 

「…えーと、簡単に説明すると、この学校、借金があるんだー。まあ、ありふれた話だけどさ。」

「でも問題はその金額で………9億円ぐらいあるんだよねー。」

「……その総額は9億6235万円、です。」

「アビドス……いえ、私たち『対策委員会』が返済しなくてはならない金額です。」

「これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります。」

「ですが、実際に完済できる確率は0%に近く……。ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて、去ってしまいました……。」

「そして私たちだけが残った。」

「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、実はすべてこの借金のせいです。」

 

アヤネは物悲しそうな目をしながらそう語る。借金というだけでも、アビドスにはミレニアムやトリニティやゲヘナにはない事情があることは察せたが、アヤネのその目はより悲壮感を加速させていた。

そして何より、弦太朗は思う。

その一つは、何があったか、だ。

 

「この学校に何があったんだ?」

「借金ができた理由ですか?それは……」

 

そう言って、アヤネは事情を話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

数十年前、アビドスで大規模な砂嵐が起こった。その規模は頻繁に砂嵐が起こるアビドスでも類を見ないほど大きく、アビドス自治区のほとんどが砂で埋もれてしまった。アビドスはこの問題を解決すべく、活動を開始したが、こんな田舎の学校に支援目的で融資してくれる銀行そのものが見つからず、結局悪徳金融業者に頼ったらしい。

といっても、当時のアビドスはそこそこの資金はあった。故に最初のうちはこれくらいなら返せるとなっていたのだろう。

だが、砂嵐は毎年のようにアビドスを襲い、どうしようもない程に悪化していってしまった。

そうして残ったのが、半分以上砂漠化したアビドスと、膨れ上がった借金。先程アヤネが言ったように、大半の生徒はこの状況に絶望し、学校を、街を去ってしまった。残ったホシノ、シロコ、ノノミ、セリカ、アヤネはアビドスを復活させるべく、対策委員会を立ち上げるが、利息の返済だけでも精一杯。

────────誰も助けてくれなかった。連邦生徒会は愚か、この街に住む大人でさえも。

 

「……今の私達は、毎月の利子を返すことで精一杯です……」

「……だからセリカもあそこまで神経質になってるんだと思う。」

「……ま、そんなつまらない話だよ。」

「で、先生のおかげでヘルメット団っていう厄介な問題が解決したから、これからは借金返済に全力投球できるようになったってわけー。」

「もしこの委員会の顧問になってくれるとしても、借金のことは気にしなくていいからねー。話を聞いてくれただけでもありがたいし。」

「そうだね。先生はもう十分力になってくれた。これ以上迷惑はかけられない。」

「……」 

 

9億という借金があり、生徒は利子を返すだけで精一杯で勉強にすら精を出せていない……

一見すると詐欺のような話で、真実だとしても面倒だ。大人たちが取り合わないのはそういう心情だろう。

そして今の対策委員会の3人……誰の目から見ても分かる。気を遣ってくれているのだ。

確かに弦太朗は他の大人と違って頼れるかもしれない。でも、だとしても、突然やって来た大人に自分たちの事情を全てぶつけていいのだろうか?そんな葛藤があるのだろう。

だが、弦太朗はそれだけでは引き下がれない。

高校生の頃の弦太朗は友達に囲まれ、青春を謳歌していた。ゾディアーツと戦いながらの高校生活というのは、決して平和ではなかったが、少なくとも高校生らしく修学旅行や文化祭を楽しんだり、みんなで遊んだりするという楽しみがまったくなかったわけではない。だから、アビドスのみんなには平和な高校生活を送って欲しいと思っている。

それに、弦太朗は大事な生徒を守るために先生になる決意を固めたのだから。

 

「……なぁ。」

「?」

「3人はどうしたいんだ?」

「ふぇ?」

「確かに話を聞く限りじゃ俺たち大人を信じられねぇってのも分かる。だから自分たちだけで問題と向き合ってきたんだもんな。」

「だからこそ聞きたいんだ。」

「お前らはどうしたい?」

 

弦太朗は眼の前の3人をまっすぐ見ながらそう問うた。

 

「…私は……」

 

その後の沈黙を破ったのは、シロコだ。

 

「私は借金を返して、アビドスを復活させたい。借金なんかない、平和な学校生活をしてみたい。」

「私は……はい、シロコ先輩と同じです。だから、助けてほしいと思っています。メールを送ったのも私ですから。……でも先生に迷惑をかけたくない、とも思っています。」

「……ま、私も大体同じかなー。」

「……分かった。」

 

弦太朗は3人の想いを聞き届けた。そして同時に、新たな決意が固まった。

緊迫し、静まり返った教室の中で、弦太朗は宣言した。

 

「なら、俺も力になる。」

「え?」

「確かにこの問題は俺でもすぐにどうにかしてやることはできねぇ。けど、こんな状況になってる生徒を、ダチを見捨てる奴なんてどこにもいねぇ。俺も精一杯頑張る。だから、いくらでも俺を頼ってくれ。」

「そ、それって……」

「あ、はいっ!よろしくおねがいします!」

「本当に、ありがとうございます……。」

 

初めて自分たちの問題に真摯に向き合ってくれる大人を前に、アヤネは少し泣きそうになっていた。

 

「へぇ…先生も変わり者だねー。こんな面倒なことに自分から首を突っ込もうだなんて。」

「それが俺だからな。ダチのためならなんだってする。」

 

弦太朗は真っ直ぐな目でホシノにそう言う。その輝きに、ホシノは思わず眩しいと思った。

 

「うへ〜。ま、友達かどうかは一旦置いとくけどねー。」

「良かった…シャーレが力になってくれんなんて。これで私たちも、希望を持っていいんですよね?」

「……うん。まだ何も変わってないけど。希望が見えてきたね。」

 

アヤネとシロコの目は輝いていた。もしかしたらどうにかなるかもしれない。そんな希望が湧いてきたのだ。

 

 

 

 

「……」

「……ちぇっ。」

 

そんな会話を、ノノミの目を避けて隠れていたセリカはドアの前で聞いていた。

セリカは何を思ったか、苦虫を噛み潰したような顔をしながら舌打ちだけして帰っていった。

 

 

 

 

 

「セリカちゃん…どこに……。」

 

ノノミはあのあと、セリカを探し続けていたが、結局見つけられなかった。

   

 

 

 

 

こうして、仮面ライダーフォーゼこと如月弦太朗と、アビドス対策委員会との物語が本格的に始まるのだった。




いよいよ対策委員会編が始まります!やっぱり戦闘シーン入れたいので、ストーリーのどこで区切るかは結構考えました。

こうやってると、冬映画的な何かも書いてみたいなぁ…とか思っちゃいます。気が向いたらやるかもしれないですね。
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