コズミックアーカイブ(仮面ライダーフォーゼ×ブルーアーカイブ)   作:炙り中トロ

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この調子で行くと第13話くらいで対策委員会編終了ですかね
それにしても、ブルアカらいぶの情報、今まで以上に盛り上がってましたね!私はチケットどっちも外れましたけどねあはは…

……………ところでセイアちゃんはどこですか?


第7話 相・互・信・頼

ヘルメット団を退けた翌日、弦太朗はアビドスに向かっていた。アヤネから分かりやすい地図を貰ったため、もう迷うことはないだろう。

そうして歩いていると、住宅街で知っている顔に会った。

 

「あっ。」

「うっ…な、何よ…」

 

セリカは何か悪いものでもみたような顔で弦太朗を見る。昨日ほどの怒気が感じられないのは、気まずさがあるからだろうか。

 

「よっ」

「何が『よっ』よ!馴れ馴れしくしないでくれる?」

「私、まだ先生のこと認めてないから!」

「まったく、朝っぱらからのんびりうろついちゃって、いいご身分だこと。」

 

セリカはなかなか表情豊かである。一言発する度に結構表情が変わる。

というか、昨日のことがあってか、弦太朗に対しての当たりが結構強くなっていた。

 

「んで、セリカはどこ行くんだ?学校か?」

「や、今日は自由登校日だし、バイト行くの。」

「バイト?」

「そう。私たちはあんたみたいにのんびりしてられないのよ。少しでも稼がないと。」

「ふーん。セリカは真面目で優しい奴なんだな。」

「はぁっ!?」

 

突然、弦太朗から褒められ、セリカは顔が赤くなる。

 

「急に何言って…!バッカじゃないの!?」

「とにかく急いでるから!またね、バイバイ!」

 

セリカはそう言い残し、砂埃を撒き散らす勢いで弦太朗の前から走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンです!」

 

柴関ラーメン。こんな状況のアビドスに残っている数少ない飲食店である。

どこか古臭くはあるが、品が良く、親しまれているということがわかる。そんな柴関ラーメンで、セリカはバイトの制服を着て働いていた。

セリカは対策委員会の会計である。だから、誰よりもお金のことや借金を気にかけ、自分から進んでバイトをしているのだ。

それも、柴関ラーメンだけではなく、様々なバイトを掛け持ちしている。

そんな中でも、この柴関ラーメンは昼時こそ忙しいが、客層が良く、大将との距離感も近い。故に、セリカにとっても居心地がいいのだ。

 

そんな柴関ラーメンに、新しい客が来たようだ。

 

「いらっしゃいませ!柴関ラーメンで…」

「って、わわっ!?」

「あの〜☆5人なんですけど〜!」

 

マニュアルに則り、明るく笑顔で出迎えるセリカの前に姿を現したのはノノミだった。いや、ノノミだけではない。後ろには弦太朗とホシノとシロコとアヤネもいる。アビドス全員集合だ。

セリカはあんぐりと口を開け、唖然とした顔でみんなを見ている。

 

「あ、あはは…。セリカちゃん、お疲れ。」

「お疲れ。」

「よっ。頑張ってんな。」

「み、みんなどうしてここを……!?」

「うへー、やっぱここだと思ったー。」

「ホシノ先輩かっ!ううっ……!!」

 

セリカが頭を抱えていると、店の奥から柴関ラーメンの大将が出てきた。

大将の容姿を一言で言い表すなら、「立っている犬」である。

弦太朗がいた世界じゃこんなのがいたら即捕獲されてニュースになって科学者の実験台にでもされそうなものだが、キヴォトスではこれが普通らしい。まぁ弦太朗がいた世界と比較したら、別に女子校でもないのに、学生が全員女の子な時点で色々違うのだが。

ともかく、そんな柴関ラーメンの大将が人懐っこい笑顔でみんなを出迎えた。

 

「おぉ、アビドスの生徒さんか。セリカちゃん、おしゃべりはそのくらいにして注文受けてくれな」

「あ、うう……それでは、こちらへどうぞ……。」

 

と、セリカは苦い顔をしながらも、業務は業務なので、みんなを席に案内した。

とまぁこんな感じで席に案内された。そして弦太朗はシロコの隣に座る。のだが…

 

「ふむ……。」

 

なんとシロコは椅子を動かし、弦太朗との距離を結構詰めてきた。蟻一匹通さないという意思すら見受けられるその距離感に、セリカは思わず糾弾してしまう。

 

「シロコ先輩、詰めすぎ!!そんなにくっついてたら先生が窮屈でしょ!もっとこっちに寄って!」

「いや、私は平気。ね、先生?」

 

「ね、先生?」という質問からは、シロコの謎の圧が感じられた。

その迫力にはさしもの弦太朗もビビる。

 

「何でそこで遠慮するの!?空いてる席たくさんあるじゃん!ちゃんと座ってよ!」

「わ、分かった…」

 

しかし、セリカがそれ以上の大声でシロコの圧を掻き消した。シロコは諦めて悔いが残るとでも言いたげに弦太朗から離れる。

 

「セリカちゃん、ユニフォームとってもかわいいです☆」

「ふぇっ!?」

「ホントホント。ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲け出来そうだねー。どう?一枚買わない、先生?」

「変な副業はやめてください……」

「あぁもういいでしょ!ご注文は!?」

「ご注文はお決まりですか、でしょー?セリカちゃーん、お客様には笑顔で親切にしなくちゃー?」

「……ご注文は、お決まりですか?」

 

セリカの身体は震えている。ペンを握っているが、その様子では禄に字も書けなさそうだ。

そんなセリカに、ノノミは期待に胸を膨らませたように注文を告げる。

 

「私はチャーシュー麺でおねがいします!」

「私は塩。」

「私はねー、特製味噌ラーメン!炙りチャーシューもつけてねー」

「えっと、じゃあ…私は醤油で。」

「俺は醤油を頼む。なんてったって、ラーメンは青春の醤油味だからな!」

「はぁー、何言ってんだか……」

 

セリカはそう言いながら、紙に注文をメモする。

 

「ところで支払いは?またノノミ先輩に奢ってもらうつもり?」

「はい、私はそれでも大丈夫ですよ☆このカードなら限度額まではまだ余裕ありますし。」

 

そう言いながら、ノノミは金色のカードを取り出して笑っている。

こう見えてもノノミは名家のお嬢様である。そのためか対策委員会の費用のほとんどは、彼女の自腹で運営している。といっても、ほとんどおやつ代だが。

その気になればアビドスの借金ですら一発で返せてしまう……らしいが、何故かそれはしないそう。

 

「いやいやー、またノノミちゃんにご馳走になるわけにはいかないよー。だーかーら、先生が奢ってくれるよね?」

 

と、ホシノは弦太朗の肩にポンと手を置くと、先程のシロコ以上の圧で彼を見る。普通であれば恐怖を感じてしまうかもしれないほどの剣幕がホシノにあったが、それよりも驚きが勝る。

 

「ちょっ!?ちょっと待て!?聞いてねぇぞ!?」 

「あはは、今聞いたからいいでしょ!」

「それに、先生としてはカワイイ生徒の空腹を満たせる絶好のチャンス……でしょ?」

 

急に何かを狙っていたかのように声を大きくしたホシノは弦太朗の懐に手を突っ込む。

その手に握られていたのは、1枚のカード。

 

「お、大人のカードあるじゃん。これは出番だねぇ。」

 

大人のカード…つまりクレジットカードである。まずい。大人のカードを取られたのはマズイ。なにせ、つい最近、お金の使い方でユウカから小言を頂いたばかりなのだから。

だが、ここまで生徒から期待の目を向けられ、何より、あんな宣言をした昨日の今日。漢、如月弦太朗は引き下がれないのだ。

 

「上等だ!お前らにシャーレの先生の財力ってやつを見せてやる!セリカァ!炙りチャーシュー全員分追加だ!!」

 

弦太朗はそう高らかに宣言した。周りから歓声が上がる。

とは言え、その代償は大きく、弦太朗の普段の昼飯代の約8倍の額が吹き飛んだのだった。そして数日後、ユウカから大目玉を食らったのは言うまでもないだろう。

 

「いやぁー!ゴチでしたー、先生!」

「ご馳走様でした。」

「うん、お陰様でお腹いっぱい。」

「お会計終わったからさっさと帰って!二度と来ないで!!少なくとも私がいる時は!!!」

 

この五人が来てから、ずっとホシノとシロコからからかわれ続けたセリカは口から泡を飛ばして五人を怒鳴りつける。

 

「じ、じゃあセリカちゃん、また明日ね。」

「もうヤダ!嫌い!みんな死んじゃえー!!」

 

今やセリカは普段から仲が良いアヤネの言葉にすら耳を傾けない。セリカの叫び声が柴関ラーメンの前でいつまでも木霊していた。

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れー!」

「気をつけて帰るんだぞー!」

 

数時間後、大将やバイト仲間に見送られ、セリカはバイトから上がって帰路についていた。この時間になるといつも腹は減り、1日の疲れを感じるのだが、今日はそれが特段大きかった。 

 

「はぁ…やっと終わった……いつもの2倍は疲れたし……」

 

本当に騒がしい一日だった。疲労という、仕事が終わったことを知らせる感覚に心地好さすら覚え、セリカは人気のない夜の街を歩いていく。

 

「人が働いてるのに、先生先生って、チヤホヤしちゃって。ホント迷惑、何なのアレ。」

「ホシノ先輩、昨日のことがあったからってわざと先生を連れて来たに違いないわ!ホントふざけないでよ……!そんなので私は折れないから。」

 

と、セリカは愚痴を吐きながら歩いている。こういうところは普通の女子高生のようだ。

そんなセリカを見る、怪しい影が後ろに2つ。

 

「……」

「あいつか?」

「…はい、そうです。アビドス対策委員会のメンバーです。」

「よし、次のブロックで捕獲するぞ。」

 

 

 

 

 

 

「…この辺も結構人がいなくなったなあ。前はここまでじゃなかったのに。」

「治安も悪くなったみたいだし……」

 

セリカはふと立ち止まってそう呟くと、何故ここ最近になって前にも増して人が減っているのか考えてみる。

やはり、連邦生徒会長がいなくなったからだろうか。これまで、学生どころか大人からも絶大な信頼を得ていた、アビドスにとって最後の頼り人だった連邦生徒会長がいなくなったから、絶望してどこかに行ってしまったのだろうか……

 

「…考えてても仕方ない。連邦生徒会長がいなくても頑張らないと。そして学校を立て直すんだ。」

 

と、セリカは決心を固める。口では辛辣なことを口走る彼女だが、実際は他のみんなに負けず劣らず、アビドスを想い、頑張っている。

また歩き出そうとするセリカ。そんなセリカを、「待て」と引き止める声が一つ。振り返ると、武装をしたヘルメット団が十人ほど立っていた。

その中には、先程セリカを見ていた二人もいる。

 

「……なによ、あんたたち。」

「黒見セリカ、だな?」

「そういうあんたらはカタカタヘルメット団?あんたたち、まだこの辺をうろついてんの?昨日私たちに負けたくせに。」

「だからこそ、だよ。」

「……なんでもいいわ。ちょうど虫の居所が悪かったの。二度とアビドスに足を踏み入れられないように……!」

 

と、セリカは鬱憤を晴らそうと言わんばかりに銃を取り出そうとする。

しかし、それより前に背後からの射撃がセリカを襲う。

 

「くっ、ううっ……!?」

(背後にも敵!?…こいつら、最初から私を狙って……!?)

「攻撃の手を止めるな。」

 

現在作戦を実行しているヘルメット団の小隊長のような人物がそう言うと同時に、セリカに向かって大量の爆弾が降り注いだ。

その威力は先程までの銃撃の比ではない。

 

(対空砲…?違う……この爆発音は、Flak41改………?)

(火力支援?どこから……?ち、違う、これは…まさか……!?)

(こ、こいつら、ハンパじゃない…ヤバい……)

(意識が…)

 

銃の連射とFlak41改の連続攻撃には、キヴォトス人の肉体といえど耐えられず、セリカは意識を失って倒れてしまう。

足音を一切させずにセリカに近づくヘルメット団たち。

 

「続けますか?」

「いや、生かさなければ意味がない。この程度でいいだろう。ランデブーポイントへ向かう。」

「……正面から戦っても先生とやらには勝ち目がなさそうだからな。こちらも頭を使わせてもらおう。」

 

セリカを見下ろしながらそう呟くヘルメットの奥の彼女の目は獰猛に輝いていた。

そのままセリカを車に乗せたヘルメット団たちはそのままどこかへと走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

異変を感じ取ったのは、時計の針が22時を回った時からだった。セリカが帰ってこない。

いつもセリカはバイト後にアビドス高校に寄って来るのだが、今日は来なければ連絡もない。遅れるにしても遅すぎる……。

もしかしたら疲れてそのまま家まで直行してねているのかと、アヤネがセリカの家まで行ってみたが、やはりいなかった。

シロコが大将に連絡を取って、既に定時で上がって帰路についていたことは分かっている。

なのに、どこにもセリカの姿は無い。ノノミが電話しても出ない。こんなことは初めてである。

まさかヘルメット団に?そんな疑問がアヤネの頭を過る。

 

(いや、先生がいる以上カタカタヘルメット団は下手に手を出せないはず……。)

 

どうにも正しい答えがでない。あとはホシノと弦太朗の連絡待ちなのだが……

 

「みんな、お待たせー。」

「待たせたな。」

 

噂をすればなんとやら、ちょうど弦太朗とホシノが調査から戻って来た。

 

「どうだった?」

「先生が持ってる権限を使って、連邦生徒会が管理してるセントラルネットワークにアクセスできた。」

「セントラルネットワークに……先生、そんな権限までお持ちなのですね……。」

「まぁ、権限っていうか…」

 

弦太朗はアロナに頼んでセントラルネットワークに無理やりアクセスしたのだ。本当はやってはいけないのだが……

 

「大切なダチのためだからな。」

「先生……」

 

なにか隠したような顔は隠しきれないが、毅然として友のためだと言う弦太朗。

アヤネは弦太朗がなにかルール違反をしたのでは?と思ったが、深く詮索するのはやめた。

 

「連絡が途絶える前のセリカちゃんの最後の位置、ここだよ。」

 

ホシノはそう言うと、地図の端っこを指差す。そこは、砂漠化が深刻なエリア。特に何の工夫もされていない、砂漠とだけ書かれた空白のエリア。

 

「ここは…砂漠化が進んでいる市街地の端の方ですね?」

「住民もいないし廃墟になったエリア…治安が維持できなくてチンピラが集まってる場所だね。」

「確かここはカタカタヘルメット団の存在を多数発見出来たエリアです。ということは、やはりカタカタヘルメット団の仕業……!」

「なるほどねー、帰宅中のセリカちゃんを拉致って、自分たちのアジトに連れて行ったってことかー。」

「正面からじゃ勝てないから人質を…ってとこかな。」

「考えていても仕方ありません!急いでセリカちゃんを助けにいきましょう!」

「うん。もちろん。」

「よっしゃー、そんじゃ行ってみよー!」

 

ホシノの声を合図に、アヤネはオペレーターとしての準備をし、弦太朗はフォーゼドライバーを、後の三人は銃の準備を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

トラックが揺れる音とその振動でセリカは目を覚ました。

まだ記憶が曖昧だが、音と振動が脳を刺激し、記憶が蘇ってくる。

 

「……!?ここどこ!?」

 

攫われた、と自覚したセリカはボロ布でできた壁の小さな隙間から外を覗く。

 

「……砂漠と線路ってことは……ま、まさかアビドスの郊外!?」

 

砂漠化が進んだこの場所は完全にアビドスの郊外。電波など通っておらず、連絡などできない。ましてや、脱出したとてここから変える方法も確立されていない。

セリカの気力は完全に抜け落ち、力なくその場に崩れ落ちてしまう。

 

「みんな、心配するだろうな……」

「このままどっかに埋められちゃうのかな…誰にも気付かれないところに……」

「連絡も途絶えて、私も、街を去ったと思われるのかな。」

「裏切ったって、思われちゃうのかな。」

「誤解されたまま、みんなに合えないまま死ぬなんて……。」

「そんなの、ヤダよ……。」

 

セリカがそう嘆いた時、トラックが停まった。

 

「……?」

 

バサッと、荷台を覆っていた幌が開かれる。そこからヘルメット団が顔を覗かせた。

 

「起きていたか……」

「……私に何する気?」

「なぁに、少し人質にね。」

「そんなこと……っ!?」

 

セリカは銃を振り回して対抗しようとするが、体に力が入らない。力を入れようとするとそれだけで疲労感が体全体に広がり、項垂れてしまう。

 

「我々の攻撃を受け、治療を施さずに放置……更に身体能力を下げる薬を注入させている。あと30分くらいは立つのもやっとだろうさ。」

 

ヘルメット団はそう言うと、セリカの足を掴む。

ここまで来て、初めてセリカの表情に恐怖と焦燥の色が浮かぶ。

ヘルメット団たちはそんなセリカを引きずりながら、アジトであろうテントの中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

それから数分後、弦太朗と対策委員会はアビドス砂漠まで来ていた。

 

『そこから先が、カタカタヘルメット団が独占しているエリアになります。みなさん、気をつけてください!』

「もう夜も遅いし、さっさと終わらせて帰ろうか。」

 

一同はカタカタヘルメット団のアジトに向かって走り出した。その勢いや凄まじく、見張り程度のヘルメット団では相手にすらならない。

 

「……!」

 

破竹の勢いで走り続けて数分後、五人の前に刺客が立ちはだかる。 

 

「あいつは……!」

「昨日のゾディアーツ……!」

『でも、スイッチはもう先生が消したはずじゃ…!?』

「スイッチはいくつもあるからな……」

 

それは、リンクスゾディアーツだった。「グルル…!」と獣のように喉を鳴らしながら、鉄をも切り裂く鉤爪をこちらに向けてくる。

 

「何?昨日のヘルメット団の団長?悪いけど、どいてくれない?」

「……ウガァッ!」

 

リンクスはいきなり攻撃を仕掛けてきた。みんなはどうにか攻撃を避ける。

衝撃で砂漠の砂が舞い上がり、一人ひとりの視認が厳しくなる。

 

「ん、問答無用らしい。」

「だったら仕方ねぇ。」

 

弦太朗は、しゃがんでリンクスの攻撃を躱し、蹴った後にフォーゼドライバーを装着する。

 

「変身!」

 

弦太朗はフォーゼに変身し、リンクスに掴み掛る。

 

「ここは俺に任せろ!みんなはセリカを!」

「!…おっけー!」

『すみません!任せます!』

 

対策委員会はフォーゼに任せ、アジトの方へ走り去っていった。

フォーゼはそれを見届けると、リンクスの間合いに踏み込んだ。

フォーゼはリンクスを蹴り飛ばすと、腕をリンクスに向ける。

 

「仮面ライダーフォーゼ!タイマン張らせてもらうぜ!」

 

フォーゼはリンクスの攻撃を受けながら走り、リンクスに向かって大きな拳を振りかざした。

 

 

 

 

 

 

一方で、対策委員会はアジトまで辿り着いていた。

 

「うへ、ここかな?」

「アヤネちゃん、ここで合っていますか?」

『はい。アジトの座標と一致しているので、間違っていないはずです。』

「ん、じゃあここを開けて……」

「待て。」

「!」

 

アジトの扉を開けようとする対策委員会の背後に、複数のヘルメット団が現れる。

 

「やっぱりヘルメット団の……!」

「……アヤネちゃん、数は?」

『…およそ30人です。』

「分かった。」

「あなたたちがセリカを拐った犯人?」

「そうだ。」

「一応聞きますけど、この中にセリカちゃんがいるんですよね?」

「我々に勝てたら教えてやろう。」

「ふーん、言ったね?」

 

ホシノはそう言いながら銃を構え、他のみんなも戦闘態勢に入る。

 

(バカめ…ここにはトラップや地雷が大量に設置してある我々のエリアだ。格の違いを思い知らせてやる。)

と、ヘルメット団たちは有利な条件に自信満々に意気込んだはいいものの……

 

「ぎゃっ!?」

「うぎゃあっ!?」

「ぐわあぁぁぁぁっ!?」

 

カタカタヘルメット団は蹂躙されていた。それもそのはず。いくら条件を整えても、結局はチンピラの集まり。昨日の攻撃に毛が生えた程度でしかない。そんな連中が過酷な環境で生き続け、学校を守り続けてきた対策委員会に勝てる道理などない。

気付けば、カタカタヘルメット団は全員地面に叩き伏せられていた。

 

「バ、バカな……」

「思い知った?格の違い。」

「ぐっ…!」

「さぁて、それじゃあセリカちゃんを助けて───」

「──────!シロコちゃん、アヤネちゃん、ホシノ先輩!」

 

後はセリカを奪還して戻るだけ……なのだが、突然、ノノミが叫び声を上げる。その顔は青ざめた顔は、ただではこの事態は終わらないという深刻さを物語っていた。

 

「ん?どしたのノノミちゃん?」

 

ホシノにそう聞かれ、ノノミは疑念と驚きが入り混じったように体を震わせながら答える。

 

「セリカちゃんが……どこにもいないんです……」

「!?」

『え!?』

「……」

 

ノノミの言葉にシロコとアヤネは驚愕し、ホシノはテントの中に入っていく。確かにどこにもセリカはいなかった。

 

「アヤネ、本当にここなんだよね?」

『は、はい。アジトの座標と完全に一致しているはずです……』

 

見落としも間違いはなかったはず。なのに肝心のセリカがいない。対策委員会は困惑していた。

その時、後ろで、ヘルメット団が大声で笑い出した。

 

「……っ!」

 

シロコは誰の目から見ても分かる憤怒と激情を纏わせながら、ヘルメット団の内の一人……昨日の者とはまた違うリーダー格の胸ぐらを掴む。

 

「セリカちゃんはどこ?」

「言わないなら、撃つ。」

 

後ろのみんなもシロコと同じ顔でヘルメット団を睨んでいる。どうやら気持ちは同じようだ。

失神してしまいそうなほどの怒気に突き刺されるヘルメット団のリーダーだったが、気絶するでもなく、恐怖の表情を浮かべるでもなく、静かに笑い出した。

 

「クククッ……おかしいと思わなかったのか?ゾディアーツなんて怪物、ガードマンとして使うならもっとアジトに近い場所に置くはずなのに、何故砂漠に入ってすぐ現れたのか……。」

「何を言って───!」

「今頃もう決着が付く頃かねぇ…そろそろシャーレとやらの先生がゾディアーツを倒す頃か?」

『……!?』

「まさか……!?」

「そういや、あいつには我々が持つあらゆる攻撃をぶつけ、更に身体能力を低下させてある……あんなのがゾディアーツになって、仮面ライダーの必殺技を喰らって倒されたら、どうなるのだろうか……」

 

ヘルメット団はそう言うと、勝ち誇った顔でニヤリと醜悪に笑いながら、侮辱的に、そして対策委員会の面々の感情を刺激するように言う。

 

「……なぁ、どうなると思う?」

「……っ!お前ぇっ!」

 

すべてを察したシロコは激情を開放させ、怒りに任せてヘルメット団のリーダーを撃った。

 

「無駄だ、もうお前たちの負けだ。」

 

それでも尚、ヘルメット団のリーダーは勝ち誇りながらそう言い残し、気を失った。

完全にやられた。このまま弦太朗がリンクスを倒してしまえば、試合に勝って勝負に負けた形になる。それも、負けなど許されない勝負に……

 

「絶対に許さない……!」

「……急ぐよ。」

「はい!」

(どうか…ご無事で……)

 

この場のヘルメット団はもう全員気絶させたし、武器も設備も壊してある。後は放っておけばヴァルキューレがどうにかしてくれるだろう。

対策委員会は事態の重大さを察知し、フォーゼとリンクスのもとに向かって全力で走り出した。

 

 

 

 

 

 

「おりゃっ!」

「うわっ!?」

 

フォーゼはリンクスをハンマーモジュールで殴り飛ばした。

リンクスは頭から砂に突っ込む。素早く起き上がり、砂を蹴ってフォーゼに迫るが、フォーゼはスパイクモジュールで手痛い反撃を喰らわせた。

 

「へへっ。お前、随分脆くなったんだな。」

 

昨日はベースステイツではリンクスに苦戦していたが、今日は不自然なほどに勝てている。

 

「こいつで行くぜ!」

 

フォーゼはチャンスとばかりにハンマーモジュールとスパイクモジュールを外すと、エレキスイッチをドライバーに挿して起動した。

 

『エレキオン』

 

エレキステイツになったフォーゼはビリーザロッドでリンクスを2度斬る。

 

「トドメだ。」

 

フォーゼはドライバーからエレキスイッチを引き抜き、ビリーザロッドに装填しようとする。リミットブレイクで一気に倒す気だ。

 

「───待って!」

「!」

 

そこに、対策委員会のみんなが割って入ってきた。

当然、フォーゼが浮かべるのは喜びなのだが…

 

「おぉ、お前ら!セリカは無事か!?」

「……」

『そ、それが……』

「……?」

 

おかしい。無傷でここに戻ってきてるってことはセリカを助けたってことじゃないのか?と、弦太朗の頭に疑問符が浮かぶ。

 

『そ、その……』

 

その答え合わせは、アヤネがモニター越しに、震えながらリンクスを指差した後の一言によって行われた。

 

『そのゾディアーツがセリカちゃんなんです……。』

「なに!?」

「私たち、嵌められたんだ。あいつら、最初から先生にセリカちゃんを倒させることが目的だったんだ。」

「だから、わざと最初からゾディアーツをけしかけて先生との戦いに持ち込んだんです。」

「本当なのか?」

「うん。ヘルメット団の奴らが吐いてたから間違いないよ。」

「ガァッ!」

「!」

 

話している間に、体制を立て直したリンクスがフォーゼに迫り、フォーゼを連続で攻撃する。

その荒々しさは昨日のリンクス以上である。

 

「だったら、リミットブレイクでゾディアーツの変身を……!」

「ダメ!」

「シロコ?」

「今のセリカの身体は限界……そんな状態で先生の攻撃を受けたら……」

「ぐっ……」

 

状況は最悪だ。攻撃して倒したら弦太朗は大切な生徒を殺めてしまうかもしれないし、かといって何もしないと自分もみんなも危ない。

だとすると防御に徹することしか出来ない。だが、リンクスのスピードを生かした攻撃はそう簡単には防げない。

フォーゼの身体に徐々に疲れが貯まる。

フォーゼは考えた。この状況を打破する方法を。物理的な攻撃はしてはいけない。目の前にはリンクスが迫っている。そんな状況で、出来る最善手は──────。

 

「うおおおおっ!」

 

フォーゼはビリーザロッドでリンクスの爪を受け止めた。そして、対策委員会のみんなに向かって叫ぶ。

 

「お前ら!セリカの心に響くことを思いっきり叫んでくれ!」

「え?」

「なんでもいい!セリカが思わず反応しちまうような、そんなことを言ってくれ!もうこれしか方法はねぇんだ!」

「俺が時間を稼ぐ!だから頼むぞ!」

 

フォーゼはそう言って、リンクスを押し込んでいった。

 

『セリカちゃんの…』

「心に響くこと……」

 

みんなは必死に考える。セリカが思わず反応するような言葉とは何か。セリカは褒められたり感謝されても、素直に受け取れない性格だ。故に難しい。ましてやこんな状況では、まともに頭が回らない。

フォーゼの時間稼ぎも時間の問題だろう。万事休すか、と、その時だった。

 

「あっ、そうだ!」

 

ホシノが何かをひらめいたようで、ポンッと手を鳴らした。

 

「ホシノ先輩?」

「何か思い付いたんですか?」

「うへへ、とびっきりのをねー。」

 

ホシノはそう言うと、リンクスに向かって叫ぶ。

 

「セリカちゃーん、実は今日の昼に柴関ラーメンでユニフォームセリカちゃんの写真、結構撮ってさー!」

「……」

「………………!?」

「今学校に飾ってあるんだー。50枚くらいあったかなー。」

「アッ…ガッ……!?」

 

ホシノのその言葉を聞いたリンクスは攻撃の手が止まり、頭を抱え始める。それは苦しみと言うより、恥じらいに近い。

 

「お?」

『は、反応してます!』

「ん、じゃあ私たちも。」

「了解です〜☆」

 

シロコとノノミとアヤネもホシノに続き、大きな声でリンクスに向かって叫びを上げる。

 

「ん、この前教室で、セリカのノート拾って、中を見たらそこにセリカの中学時代のっぽいポエムが……」

「ガッ…ちょっ……!」

「そういえば、この前セリカちゃんが泥棒対策の罠をしかけてましたけど、次の日学校に来たらセリカちゃんがその罠に引っかかってて…」

「それ、言わない…約束じゃ……」

『えっと、セリカちゃん、お正月に巫女のバイト入れてたと思うんですけど、その時に歌ってた歌が面白くって……。確か「巫女巫女ニャンニャン♪巫女巫女ニャンニャン♪」って。』

「アレッ……聞いて…たの……!?」

「まだまだあるよー。他にはねー。」

「あ、そういえばセリカが入学したばっかの時に……」

「あ、そういえばこの前…」

『セリカちゃんって実はピュアなところがあって……』

 

対策委員会はどんどんセリカの恥ずかしい話やビックリする話をしていく。

その度にリンクスの顔は真っ赤になり、何かの拍子にポンッと頭から煙が出る。

 

「チョッ……やめ……」

「────いい加減…やめなさいってのぉッ!」

 

そして遂に、リンクスの……いや、セリカの怒りと羞恥心が爆発した。

自分がゾディアーツになっていることなど忘れたかのように、対策委員会の面々に向けて怒鳴り散らす。

 

「本人を前にしてそれ言う!?ホントマジで!凄く恥ずかしいんだけど!?」

「……」

「やったー!セリカちゃんが目を覚ましました!」

「ん、作戦成功。」

『まぁ……やり方はちょっとアレですけどね……』 

 

一瞬の沈黙の後、歓声の声を上げる対策委員会の面々。しかし、セリカの赤面と怒りは止まらない。

 

「あぁもう信じらんない!ホント嫌い!」

 

そんなセリカに、ホシノは落ち着いた口調で話しながらゆっくりと歩くと、リンクスに向かって優しく手を伸ばす。

 

「そんなに怒っても、その姿じゃあんまし表情分かんないな〜。」

「……だからさ、戻っておいで。セリカちゃん。」

 

リンクスの前にいるホシノの目には、優しさが詰まっていた。普段、滅多に見せないホシノの優しい目。

 

「ホシノ…先輩……」

 

リンクスはホシノに向かって手を伸ばす。すると、指先から徐々に、リンクスの肉体が剥がれ、変化してゆき、セリカの姿に戻っていく。

やがてリンクスの身体とスイッチは消滅し、セリカの姿に戻った。

倒れかかったセリカの身体をホシノが支える。

 

「おかえり、セリカちゃん。」

「うん…ただいま……。」

 

ホシノに抱き支えられ、セリカはホシノの温もりを感じ、安堵の表情を浮かべながら、目を瞑る。そんなセリカの頬に、一粒の涙が伝っていたことは、周りはおろか、セリカ自身ですら気づかないのだった。

 

「みんな無事で良かった。安心したぜ。」

 

そこに、変身を解いた弦太朗が歩いてくる。弦太朗もまた、隠しきれない安堵の表情を浮かべている。

 

「先生もお疲れ様。」

「いや〜、先生が案を出してくれなかったらどうなってたか…お手柄だったよー。」

『はい。先生がいたからセリカちゃんを助けられました。』

「本当に、感謝してもしきれません。」

「ダチを守れたんだ、これ以上嬉しいことはねぇ。それに、今日のやつは俺一人じゃどうにもできなかった。みんなとセリカの宇宙よりデカイ友情があったから、みんな無事だったんだ。」

 

弦太朗のその言葉に、みんな自然と笑顔になる。ホシノももう、あの顔は弦太朗に向けていない。

 

「…それじゃあ、戻りましょうか。」

「だね。アヤネも待ってる。」

「さんせ〜い。んじゃあセリカちゃん、ママがおぶってあげるからねー。泣いちゃだめだよー。」

「もう…そこでふざけないでよ……まぁ、嫌じゃない、けど……」

「おっ!セリカちゃんがデレた!」

「前言撤回、やっぱ嫌だわ。」

『あはは…喧嘩はしないでくださいね…?』

 

弦太朗は仲良く会話をする対策委員会の後ろを歩いていた。

というのも、ここはまだカタカタヘルメット団の縄張り。いつどこに伏兵が潜んでいるか分からないのである。

結果としては、確かに襲われた。先程対策委員会が気絶させた連中が目を覚まし、クルセイダーやら戦闘ロボットやらを引っ張り出して襲撃してきたのである。

だが、対策委員会の敵ではなかった。その戦いはカタカタヘルメット団に何もさせずに対策委員会が勝利した。

対策委員会は、カタカタヘルメット団に完全勝利したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

その後、弦太朗と対策委員会一同は学校まで帰ってきた。

アヤネがドローンを使い、最後の戦闘で散らばった戦車の部品を確認したところ、どうやらキヴォトスでは仕様が禁止されている違法機種を使っていることが判明した。

当然、一介のチンピラ集団程度が手にできる代物ではない。

更に、あのゾディアーツスイッチ。一回は弦太朗が消したはず。つまり、同じスイッチがいくつもあるということだ。

そして、スイッチや部品の流通ルートが分かれば、ヘルメット団の裏にいる存在を探し出せる。

そして、時計の針は夜の1時を回り、みんなそれぞれの帰路についていった。だが、セリカは家まで歩く体力がもう残っていない。それどころか、歩けること自体が不思議なほど疲れていたらしく、倒れてしまい、学校の保健室で寝かされている。

 

「はあ…」 

 

セリカがベッドの上で溜息をついていると、そこに弦太朗が入ってくる。

 

「あ、れ…?先生!?ど、どうしたの?」

「見舞いに来た。身体は大丈夫かって思ってな。」

「あー、うん、私なら大丈夫。いつまでもこうしちゃいられないし。」

「アヤネちゃんや他のみんなも心配してるし、バイトにも行かなきゃだし。」

「だ、だから、お見舞いとかホントに大丈夫だから!ほら見て!元気だし!」

「そっか。元気なら良かった。」

 

弦太朗はそう言って、窓から外の景色を見る。

保健室は校舎の三階にある。故に見晴らしは良く、建物もよく見えるはずなのだが、アビドスはほぼ砂漠な上に住人もほぼいない状態である。シャーレから見る夜景とは違って、かなりの田舎から見る殺風景だった。

だから、大地ではなく空に星という光がある。そして弦太朗は、元いた世界で大切な仲間と青春の1ページを過ごした場所である、月を眺めていた。

 

「……俺、すげぇ悔しかったんだ。」

「え?」

「セリカも、対策委員会のみんなも俺の大切な生徒でダチだ。守るための…守れる力を持ってるのに、協力するって言ったのに、もうみんなを危険に晒しちまって、そんな自分が悔しいんだ。」

「……」

「でも、それだけじゃねぇ。」

 

弦太朗はそう言うと、窓の外の景色から目を離し、セリカの方を向く。

セリカは申し訳無さそうな顔をして、俯いている。

 

「それ以上に、セリカが無事で本当に良かった。」

「……!」

 

セリカは顔を上げて弦太朗を見る。その顔は、笑顔。と言っても、ヘラヘラした笑いではなく、本当に、心の底から喜んでいるような、そんな笑顔だった。

 

「セリカにはまだやることも、やりたいことだって沢山あるだろ?俺もお前と、みんなと一緒にやりたいことだってある。それだけじゃなくて、これまでみんなとやってきたものだってあるはずだ。先生だから、とかじゃなくて、俺は俺として、そいつを全部守りたい。」

「だから、もう絶対あんな目には合わせねぇ。約束する。」

 

弦太朗はニコッと笑って、セリカにそう宣言した。

 

「……」

 

セリカはしばらく黙っていたが、やがて口を開く。

 

「あ、あの!!」

「?」

「…え、ええとね……。」

「そういえば、先生にちゃんとお礼を言えてなかったなって、思って……。」

「あ、ありがとう……色々と。」

「……でもっ!この程度でアビドスの役に立てたなんて思わないでよね!この借りはいつか絶対返すんだから!」

 

セリカの朝と変わらないツンデレ気質な元気さに、弦太朗は虚勢でなくて本当に元気になったんだと分かり、笑いが溢れる。

 

「あぁ、楽しみにしてる。」

「な、何よ!?何笑ってんの!?」

 

セリカは「はぁ……」と溜息を吐く。

変化があったのはその後のこと。急にセリカの顔が赤くなる。

 

「えっと…それと……」

 

セリカは不意にベットから起き上がったかと思うと、突然弦太朗に手を出してきた。

 

「?どうした?」

「わざわざ言わせないでよ!」

「生徒だろうと友達…なんでしょ…?」

「あぁ。ったりめぇだ。」

 

恥ずかしそうながらも出しているセリカの手を、弦太朗はガッシリ掴む。そして、二人は友情のシルシを交わした。

 

「……」

 

少しの沈黙の後、セリカは机においてある学生カバンを手に取る。

 

「じゃあ、また明日ね!」

「……先生。」 

 

セリカは優しくそう言うと、保健室を出て家に帰っていった。

その顔にはもう弦太朗を糾弾するようなモノはなかった。表には出していないが、内心では弦太朗のことを少しは認めたのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

キヴォトスの某所で、ガタイの良い機械生命体がなにかの報告書を呆れたように眺めていた。

 

「……格下のチンピラ如きではあの程度が限界か。主力戦車や例のスイッチまで貸し出したというのに、このザマとは。」

 

体格は大きく、身体は機械のように冷たい。それだけではなく、先程の呟きから心まで冷たいことが分かる。その風防や発言からして、今回の騒動を裏で手引いているように見えるが……

 

「ふむ…となると、目には目を、生徒には生徒をだな。専門家に頼ってみるとしよう」

 

男は懐からスマホを取り出すと、どこかしらに連絡を入れる。

プルルルルという通話音がしばらく響いた後、彼が専門家、と呼んだ人物が電話に出る。

 

『はい、どんなことでも解決します。便利屋68です』

「仕事を頼みたい、便利屋。」

『……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アビドスに潜伏中のカタカタヘルメット団。ここはその第2基地だ。その中に、セリカを拐った小隊長もいる。命からがら逃げてきたのだろう。それに、まだまだ構成員はたくさんいる。またアビドスを襲撃するつもりだ。

だが、その必要はもうなくなる。 

 

「うわあああっ!?」

 

ヘルメット団たちの悲鳴が響く。しばらくは怒号と悲鳴で夜とは思えないほど騒がしかったが、それも小さくなっていき、やがて消えた。 

 

「あーあー、こっちは終わったよー」

「こっちも制圧完了だよ、ボス」

「お、終わりました、アル様……」

「う、うう…何者だ、貴様らは……」

「……ふふふ。」

 

小隊長はまだ意識を保っていたが、そこにピンク髪のコートを着た生徒にグリグリと踏みつけられた。

 

「うあああっ!ま、まさかアビドスの!?よくも我々を……」

「はぁ、こんな不潔で変な匂いがする場所がアジトだなんて、あなたたちも冴えないわね。しかもやられ際までやかましいだなんて、三流どころか四流の悪党じゃない。」

「……まぁいいわ。あなたたちを、労働から解放してあげる。」 

「なっ、なんだって!?」

「要するにクビってこと。現時刻をもって、アビドスは私たちが引き受けるわ。」

 

隊長は徐々に感情が高ぶっていくが、その生徒はただ淡々と言葉を放つ。そこからは、プロの雰囲気が出ていた。

 

「ふっ、ぶざけた真似を!貴様らは一体……!」

「最後までやかましいこと。」

「うわああっ!」

 

「何者だ!?」。それを言う前に、謎の生徒は鉛玉を打ち込み、ヘルメット団のリーダーを気絶させた。

 

「ボス、これくらいでいいでしょ。放っておけば、ヴァルキューレのスズメ共が勝手に回収しに来る。」

「ふふっ、まぁそれもそうね。」

 

赤髪の生徒は白黒の髪色の生徒にそう言われ、静かに笑う。そして、死屍累々とでも言わんばかりに打ちのめされて倒れているヘルメット団の方を冷ややかに見る。

 

「聞こえないでしょうけど、教えてあげる。私たちは、便利屋68。」

「金さえもらえれば、何でもする。」

「なんでも屋よ。」

 

ボス、と呼ばれた生徒がそう言うと同時に、月明かりが彼女らを照らす。

ヘルメット団などほんの序章に過ぎなかった。アビドスを襲う脅威はとの戦いはまだまだ続きそうだ。




今回の騒動、個人的なシチュエーションは夜だったんですけど、アニメでは思いっきり昼間でした。
しかし気にしたら負けです!!!!(クソデカボイス)
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