コズミックアーカイブ(仮面ライダーフォーゼ×ブルーアーカイブ)   作:炙り中トロ

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戦闘シーン意外が原作の展開そのまますぎて四苦八苦気味な炙り中トロです…
次回はブラックマーケットに行くので、何かしら原作にないアレンジを加えたいですね。


第8話 対・便・対・決

セリカの一件の翌日、弦太朗と対策委員会一同は対策委員会の教室に集合していた。

 

「……それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます。」

 

その目的はそう、対策委員会の定例会議である。定例会議では、借金返済に充てるお金の補充方法やヘルメット団などの脅威への対抗策などを議論するのだ。

 

「本日は先生にもお越しいただいたので、いつもより真面目な議論ができると思うのですが……。」

「いつもは不真面目みたいじゃない……」

「うへ、よろしくねー、先生。」

 

だが、一つ問題がある。それは、このアビドス対策委員会のみんなは、一人一人の個性が非常に強いのである。

みんな違ってみんな良い、で済めばいいのだが、そんな簡単に纏まってくれるのだろう……

まぁ、どうなるにしても弦太朗がやることは変わらない。全力で生徒に寄り添うだけだ。

 

「おう、よろしくな。」

「早速本題に入ります。本日は私たちにとって重要な問題、「学校の負債をどう返済するか」について、具体的な方法を議論します。」

「ご意見のある方は、挙手をお願いします!」

 

と、アヤネは簡単に概要を話してから意見を募る。弦太朗はそれを見ながら、

 

(アヤネはみんなを纏めるのが上手いんだな。)

 

と感心していた。

 

「はい!はい!」

 

と、セリカが勢いよく手を挙げる。昨日のこともあって、何か体に異変が起きていたりしてないか、みんな心配だったが、この様子なら大丈夫そうだ。

 

「はい、1年の黒見さん、お願いします。」

「……あのさ、まず名字呼ぶのやめない?ぎこちないんだけど。」

「せ、セリカちゃん……でも、せっかく会議だし……。」

 

アヤネは真面目な会議ということもあり、いつものフランクな感じではなく、真面目な苗字呼びでいきたいらしい。

だが、セリカは対策委員会らしくゆる〜く名前呼びでいきたいらしい。

やっぱり個性が出てくる。そんな二人の間に、先輩三人組が割って入る。

 

「いいじゃーん。おカタ〜イ感じで。それに今日は珍しく先生もいるんだし。」

 

「珍しくというより、初めて。対策委員会に顧問の先生なんていなかったし、元いた先生もみんな出てっちゃったから。」

「まぁそもそも、キヴォトスじゃ先生って概念自体珍しいからねー。」

 

「まぁでも、苗字呼びの方が委員会らしくてイイと思いま〜す☆」

 

「はぁ…ま、先輩たちがそう言うならいいけど…。」

 

セリカは結構簡単に引き下がった。意外と日和見主義なのだろうか?

雑談も程々に、本題の会議が始まる。

 

「……とにかく!対策委員会の会計としては、現在我が校財政状況は破産の寸前としか言いようがないわっ!」

「このままじゃ廃校だよ!みんな、わかってるよね?」

「うん、まあねー。」

 

セリカは捲し立てるが、ホシノは結構のほほんと答えた。その緩さに、(本当にわかってるよね…?)と、セリカはちょっと不安になる。

だが、今大事なのは返済の方法だ。

 

「今月の返済額は、利息だけで788万円!私たちも頑張って稼いではいるけど、正直利息の返済も追いつかない。」

「これまで通り、指名手配犯を捕まえたり、苦情を解決したり、ボランティアするだけじゃ限界があるわ。」

「つまりこのままじゃ、埒が明かないってこと!だからなんかこう、でっかく一発狙わないと!」

「でっかく……というと?」

 

アヤネのその質問に、セリカはニヤッとする。よほどいいものでも見つけてきたのだろうか?

そしてセリカはその質問、待ってました!とでも言わんばかりの勢いでスクールバッグから1枚のチラシを取り出した。

 

「これこれ!町で配ってたチラシ!」

「これは……!?」

「どれどれ……。」

 

アヤネとホシノはセリカが取り出したチラシに顔を近づける。

 

「『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金』…ねえ……?」

 

ホシノがそれを読み上げた瞬間、アヤネと後ろにいるシロコとノノミは何かを察して苦笑いをする。

そんなことなどつゆ知らず、セリカはドヤ顔で主張を続ける。

 

「そうっ!これでガッポガッポ稼ごうよ!」

「……(汗)」

「この間、街で声をかけられて、説明会に連れていってもらったの。運気を上げるゲルマニウムブレスレットっていうのを売ってるんだって!」

「……」

「身に着けるだけで運気が上がるんだって!で、これを周りの3人に売れば……」

 

と、そこまで言ったタイミングで、ようやくセリカは他のメンバーどころか事情を察した弦太朗からも生暖かい目で見られていることに気付いた。

戸惑いながら視線の意図を問うセリカ。

 

「……え?みんな、どうしたの?」

「却下。」

「へっ!?何で!?どうして!」

 

まだ察せない察しが悪いセリカに、ホシノは容赦なく却下判定を下す。セリカは意味が分からず、混乱して困惑した。そんなセリカに、アヤネはなるべく優しめの口調で理由を言う。

 

「セリカちゃん…それ、マルチ商法だから……。」

「へっ?そっ、そうなの?私、2個も買っちゃったんだけど!?」

「セリカちゃん、騙されちゃいましたね。可愛いです☆」

「……!!」

「まったく、セリカちゃんは世間知らずだねー。気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよー?」

「……!」

 

その瞬間を、弦太朗は見逃さなかった。ホシノの今の言葉。それは、先程の「本当に」のほほんとしていたホシノではない。今の言葉には大きな重みが感じられた。ホシノはそれをうまい言い回しで誤魔化している。

実を言うと、弦太朗はずっと気になっていたのだ。セリカは救出したし、ヘルメット団も片付けた。だが、ホシノが初めて弦太朗を見たときのあの目。アレの真意が、未だに分からない。かと言って、問い詰めるわけにもいかないし、したところで話してくれないだろう。

 

(もしかして、昔大人となんかあったのか?)

 

弦太朗はそう思ったが、今言っても話してくれないだろうし、会議の妨げになってしまう。弦太朗は一旦黙っておくことにした。

一方のセリカはほぼ半泣きである。

 

「そ、そんなあ…そんな風には見えなかったのに……せっかくお昼抜いて貯めたお金で買ったのにぃ……。」

「大丈夫ですよセリカちゃん。お昼、一緒に食べましょう?私がご馳走しますから。」

「ぐすっ…ノノミせんぱぁい……。」

 

セリカは半泣きのままノノミに抱きつく。ノノミはそんなセリカをよしよしと撫でた。まるで母と子どものようだ。

 

「えっと…それでは、黒見さんからの意見はこの辺で……他にご意見ある方……。」

 

初っ端から転んでしまい、もしかしたらいつも通り進展ないまま終わるのでは?と、アヤネは少し冷や汗を垂らしながら次の意見を募る。

 

「はい!はい!」

 

次に手を挙げたのはホシノ。呑気な顔から出される無邪気な声が教室に響く。

 

「えっと…はい、3年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが……。」

「うむうむ、えっへん!」

「我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよねー。」

「生徒の数イコール学校の力。トリニティやゲヘナみたいに、生徒数を桁違いに増やせば、毎月のお金だけでも結構な金額になるはずー。」

「え…そ、そうなんですか?」

「そういうことー!だからまずは生徒数を増やさないとねー。まずはそこからかなー。」

「そうすれば、議員も輩出できるし、連邦生徒会での発言権も与えられるしね。」

 

ホシノらしからぬ珍しくかなりまともな意見。先程の詐欺話とはひと味もふた味も違う。だが、疑問が消えたわけではない。

 

「鋭いご指摘ですが、でもどうやって…?。」

「簡単だよー。他校のスクールバスを拉致ればオッケー!」

「はい!?」

 

と、ここに来てまさかの爆弾発言炸裂!アヤネは驚愕し、その拍子にメガネがずれる。

アヤネだけではなく、シロコとホシノ以外の全員が目を丸くしていた。

それに構わず、話を進めるホシノ。

 

「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入書類にハンコを押さないとバスから降りられないようにするのー。」

「うへ〜、これで生徒数がグンと増えること間違いなーし!」

「それ、興味深いね。」 

「ターゲットはトリニティ?それともゲヘナ?ミレニアム?」

「狙いをどこに定めるかによって、戦略を変える必要があるかも。」

 

しかもシロコが話に乗ってきた。このままではバスジャックルートに突入してしまう。

ホシノはほんの冗談のつもりで言ったのだが、予想以上に食いついてくるシロコに少し焦る。

 

「お?えーっと…うーん……そうだなあ、トリニティ?いや、ゲヘナにしよーっと!」

 

だが、よりにも寄ってホシノは悪ノリしてしまった。そこにアヤネがストップをかける。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!そんな方法で転校とかありなんですか!?」

「それに、他校の風紀委員が黙ってませんよ……。」

 

問題はそこである。ゲヘナだと風紀委員会、トリニティだと正義実現委員会、ミレニアムだとC&Cのように、各学園にはエージェント的な組織と、ホシノにも引けを取らない圧倒的な力を持つリーダーがいるのだ。それに、学校を襲撃するなんて計画に、弦太朗は力を貸さないだろう。寧ろ全力で止めにかかってくるはず。

かといって、対策委員会だけでゲヘナやトリニティやミレニアムの生徒を誘拐するのは流石に厳しい。というか無理だ。

 

「うへ〜やっぱそうだよねー?」

 

元々冗談半分だったこともあり、ホシノはあっさり引き下がるのだった。

 

「やっぱそうだよねー、じゃありませんよホシノ先輩……。もっと真面目に会議に臨んでいただかないと………。」

 

悪い意味で予想以上の案とシロコとホシノの悪ノリに疲弊したアヤネは思わず苗字呼びを忘れて、普段通り話してしまう。

ホシノの案もダメそうだ。

 

「いい考えがある。」

 

少しの間のあと、次に意気揚々と意見を出したのはシロコだ。

実を言うと、この女、先程まで会話にほとんど参加せずに、何やら一心不乱に何かを見ていたのである。

そして満を持して意見を出してきたということは、遂にその準備が終わったということだろうか。

 

「…はい、2年生の砂狼シロコさん…。」

 

アヤネは恐る恐るシロコの名を呼ぶ。そして次の瞬間のシロコ発言は、場をとんでもない空気にすることになる。

 

「─────────銀行を襲うの。」

 

その場にいるシロコ以外の人物全員の脳が一瞬ストップした。

みんな、突然宇宙に放り出されたかのような感覚になっている。そして、シロコが何を言ってるか分かったときの衝撃はさぞかし大きい。

 

「はいっ!?」

「確実かつ簡単な方法。ターゲットも選定済み。市街地にある第一中央銀行。」

「金庫の位置、警備員の導線、現金輸送車の走行ルートは事前に把握しておいたから。」

「さっきから一生懸命見てたのは、それですか!?」

「5分で1億は稼げる。はい、覆面も準備しておいた。」

 

シロコはそう言うと、カバンから5人分の覆面を取り出す。しかも律儀に番号まで振ってある。そしてシロコは自分の覆面を装備して目を輝かせている。

 

「いつの間にこんなものまで……。」

 

そのあまりの準備の良さに、アヤネは引いてしまっている。

 

「うわー、これ、シロコちゃんの手作りー?」

「わあ、見てください!レスラーみたいです!」

 

と、ホシノは興味津津、ノノミに至ってはシロコのように覆面を装備している。

 

「……(汗)」

「いやー、いいねぇ。人生は一発でキメないと。ねえ、セリカちゃん?先生?」

「そんなわけあるか!!却下却下ー!!」

「あぁ。そんなんじゃヘルメット団と同じだしな。」

「そっ、そうですっ!犯罪はいけませんっ!」

 

と、先輩三人組はノリノリだったが、常識のある弦太朗と1年二人組に止められて計画は断念するのだった。

 

「…………」

 

シロコは黙って覆面を外すと、アヤネをじっと見る。よく見るとふくれっ面だ。

 

「そんなふくれっ面をしてもダメなものはダメです。シロコ先輩っ!」

「はいはい、先輩はこっち。」

 

シロコはなにか言いたげだったが、それを言う前にセリカに引き摺られていった。

 

「はあ…みなさん、もうちょっとまともな提案をしていただかないと……。」

「はい!次は私が!」

 

と、次に手を挙げたのはノノミ。と言っても、さっきシロコの銀行強盗にノリ気だった辺り、不安が残るが……。

 

「はい…2年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでご意見お願いします。」

「アイドルです!スクールアイドル!」

 

やっぱりまともな提案なんてなかった、とアヤネは頭を抱える。

これではまるで対策委員会が、まともの対義語になっているようだ。

 

「アニメで観たんですけど、学校を復興する定番の方法はアイドルです!私たち全員がアイドルとしてデビューすれば……!」

「却下。」

 

と、これまためちゃめちゃな意見だったが、驚くべきなのはそれを否定したのは弦太朗でもアヤネでもセリカでもない、あのホシノだったということだ。

 

「あら…これも駄目なんですか?」

「なんで?ホシノ先輩なら、特定のマニアに大受けしそうなのに。」

「うへーこんな貧弱な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない。」

 

仕返しとばかりにホシノをからかおうとするセリカに、ホシノは特に困った様子もなくそう返した。

 

「決めポーズも考えてたのに……」

 

そう言うと、みんなの前に立ってくるりと回ると、ノノミは「ピカリ!」とポーズを取る。

 

「水着少女団のクリスティーナで〜す♧」

「どういうことよ……。」

「何が「で~す♧」よ!それに「水着少女団」って!だっさい!」

 

作戦が失敗したセリカの鬱憤の矛先は無情にもノノミに向けられるのだった。

 

「えー、徹夜で考えたのに……。」

「何に本気になってんのよ…」

「あのう…議論がなかなか進まないんですけど、そろそろ結論を……。」

 

マルチ商法、誘拐、銀行強盗、スクールアイドルと、とんでもない意見が出ては否定されるの繰り返しを重く見て、アヤネはどうにかして話を進めようとする。

そんなアヤネの気持ちを知ったのか、ホシノは助け舟を出した。その助け舟とは、誰もが納得しそうだし、ホシノ自身の目的にも使える一言。

それは……

 

「こうなったら先生に全部任せちゃおうー。先生、これまでの意見で、やるならどれがいい?」

 

弦太朗に全てをぶん投げるというものだった。

 

「え!?俺!?」

「えっ!?これまでの意見の中から選ぶんですか!?も、もう少しまともな意見を出してからの方がいいのでは!?」

「大丈夫だよー。先生が選んだものなら間違いないって。」

「ちょ、ちょっと待ってください!何でそう言い切れるんですか!?」

 

アヤネは困り顔でみんなを見るが、他のメンバーももうこれしか方法がないと結論付けたようで…

 

「まさかアイドルをやれなんて言わないよね?」

「アイドルで☆お願いします☆」

「………」

 

全員、弦太朗を見てくる。しかも全員なんか圧がすごいし、シロコに至ってはあの覆面をまた着けている。

弦太朗は悩んだ。こう言っちゃ何だが、どれも目くそ鼻くそなのだ。

だが、朱に交われば赤くなる、郷に入っては郷に従え、だ。普段から銃でドンパチやってるこの世界だと、これくらいが普通なのかもしれない。とはいえ、先生としての立場もあるし、マルチ商法や銀行強盗が犯罪だというのは、キヴォトスでも同じようだ。

となると、この選択肢の中で一番マシなのは…… 

 

「仕方ねぇ!アイドルだ!プロデュースは俺に任せろ!」

「ええっ!?本気ですか!?」

「あはははー!よし、決まりー!それじゃあ出発だー!」

「きゃあ〜☆楽しそうです!」

「ほ、ホントに?これでいいの?」

「うへ~まぁいいんじゃなーい?」

「やるからには全力だ!完璧で究極のアイドルにしてやるぜ!」

 

アヤネはまた驚いた。なんせ、弦太朗なら「いや、どれもダメだ!」と一刀両断してくれると思っていたのだが、弦太朗はきちんと答えを出してきたのだから。

しかも、セリカ以外が結構ノリ気なのも酷い。

アヤネの堪忍袋はもう憤りという名の空気のせいで破裂寸前だ。

 

「計画は大胆なほどいい。でしょ、アヤネ?」

 

この先輩…私にまで同意を求める気か……!と、アヤネは限界を迎えた。アヤネはプルプルと震えている。これはマズいやつだ

「…い……」

「い……?」

「いいわけないじゃないですかぁ!!」

 

ガッシャーン!と、大きな音を立てて机がひっくり返る。怒ったアヤネがちゃぶ台返しの如く机をひっくり返したようだ。アヤネの顔は若干赤くなっている。

 

「出たー!アヤネちゃんのちゃぶ台返しー!」

「……(汗)」

「きゃあ!アヤネちゃんが怒りました!非常事態です!」

「うへ~キレのある返しができる子に育ってくれたねえ。ママは嬉しいよーん。」

 

ブチギレたアヤネを前に、さっきまで茶化していたシロコとノノミは流石に冷や汗をかく。ホシノはこれでもまだのほほんとしており、それがアヤネの怒りを加速させる。

 

「誰がママですかっ!もうっ、ちゃんと真面目にやってください!」

「いつもふざけてばっかり!銀行強盗とかマルチ商法とかそんなことばかり言って!」

 

アヤネに睨みつけられ、セリカとシロコは焦って目を逸らす。それがまたアヤネの怒りを駆り立てたのか、目線が弦太朗に移る。

「先生も先生で、あんな選択肢の中から選ばないでくださいよ!」

「えっ、あっ、いや、その……」

 

もうみんな最初の苗字呼び何ぞ忘れている。そうして、アヤネによる説教2時間コースの幕が開くのだった。

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、柴関ラーメン。説教が終わる頃にはお昼時になっていたので、一同昼飯を食べに来たのだ。

それとアヤネの機嫌を取らないといけない。

 

「いやぁー、悪かったってば、アヤネちゃーん。ラーメン奢ってあげるからさ、怒らないで、ねっ?」

「さっきのは俺らが悪かったから…機嫌直してくれよ。」

「怒ってません……。」

 

アヤネはそう言うが、まぁ怒っているだろう。なんせふくれっ面だし、みんなと目を合わせてくれない。

 

「ナレーションの人も余計なこと言わないでください。」

……怒られた。

「うへ~メタいねー。」

「はい、お口拭いて。はい、よくできましたねー☆」

「赤ちゃんじゃありませんからっ!」

 

これではまるで、ノノミがアヤネを宥めているようだ。

 

「……なんでもいいんだけどさ。なんでまたウチに来たの?」

 

と、柴関ラーメンのユニフォームを着たセリカが水を注ぎながらそう問う。セリカはバイトだから数時間後の賄まで昼飯が食べられない。少し羨ましそうにみんなを見ていた。

 

「アヤネ、チャーシューもっと食べる?」

「ふぁい。」

 

アヤネはチャーシューを口に入れたまま返事をする。どうにか機嫌を戻そうとしてはいるが、やっぱり顔は淀んだままだ。

そんな中で、ガララッとドアが開く。お客さんが来たようだ。

 

「…あ、あのう……」

 

その客はやけにおどおどしく、少し震えている。そんな客をセリカが出迎える。

 

「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

「……こ、ここで一番安いメニューっておいくらですか?」 

 

と、セリカの質問とは何も関係ないことを質問した。

彼女の名は伊草ハルカ。昨日ヘルメット団を壊滅に追い込んだ、便利屋68のメンバーの一人である。だが、弦太朗たちがそれに気付くことは当然ない。 

 

「えーっと…一番安いのは……」

「580円の柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」

「あ、ありがとうございます!」

 

ハルカは値段を確認すると、扉から外に出ていった。どうやら何かの報告をしたらしく、ハルカに続いて生徒が3人ほど入ってきた。

一人はハルカ。その後ろにいる小柄な白髪ロングの少女は浅黄ムツキ、その更に後ろにいる強面の白と黒の髪が特徴の少女は鬼方カヨコ。そして最後に入ってきたピンクの髪と角を生やした少女は陸八魔アル。全員がヘルメット団を蹂躙した便利屋68のメンバーである。

 

「えへへっ、やっと見つかった、600円以下のメニュー!」

「ふふふ。ほら、何事にも解決策はあるのよ。全部想定内だわ。」

「そ、そうでしたか、さすが社長、なんでもご存知ですね……。」

「はあ……。」

 

カヨコは調子に乗っているアルを見て溜息を吐く。昨日の華麗な登場と今の彼女を見比べると、温度差で風邪を引いてしまいそうだ。

そんな賑やかな集団に、セリカは話しかける。

 

「4名様ですか?席にご案内しますね」

「いやいや、どうせ1杯しか頼まないしテイクアウトで大丈夫だよー。」

 

セリカは一杯だけという言葉に疑問を浮かべる。なんせ客は4人なのだから。

見た感じ、そこまで貧相という感じもしない。

 

「1杯だけ……?でも、どうせならお席でごゆっくりされては?今は暇な時間なので、空いてる席も多いですし。」

「おー、親切な店員さんだね!ありがとう、それじゃあお言葉に甘えて。」

「あ、わがままついでに、箸は4膳でよろしく。優しいバイトちゃん。」

「えっ?4膳ですか?ま、まさか一杯を4人で分け合うつもり?」 

 

こんな客は久々……いや、初めてだ。初めての経験に、セリカは思わずいつもホシノやシロコにツッコむ感覚で喋ってしまう。

本人は無意識なのだろうが、その顔は貧乏人に対して憤りを感じている店員に見えたのだろう。

 

「ご、ご、ごめんなさいっ。貧乏ですみません!!お金がなくてすみません!!」

 

ついいつもの口調でツッコんでしまったセリカはハッとしてハルカに謝る。

だが、こうなったハルカは止まらない。

 

「お金がないなんて首がないのも同じ!生きる資格なんてないんですよね…。虫けらにも劣る存在なのです・・・虫けら以下ですみません……!」

「はあ…ちょっと声デカいよ、ハルカ。周りに迷惑……。」

 

カヨコはまた溜息を吐きながらハルカに注意する。

これを見るに、カヨコは苦労人のような立場なのだろうか?

ハルカの自己嫌悪は止まらない。

 

「そんな!お金が無いのは罪じゃないよ!胸張って!」

 

と、そんなハルカの肩にセリカが勢いよく手を置く。

 

「へ?…はい!?」

「お金は天下の回りもの、ってね。そもそもまだ学生だし!それでも、小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょ?そういうのが大事なんだよ!」

「もう少し待っててね。すぐ持ってくるから。」

 

セリカはそう言って店の奥に駆け足で去っていった。借金を抱えているアビドスの生徒の会計なだけあって、昼ごはんのラーメンすら4人で分けないといけない彼女たちに対して何か思うことがあるようだ。

 

「……何か妙な勘違いをされてるみたいだけど?」

 

まぁ、それを本人たちがどう思っているかは別なのだが……。

 

「まあ、私たちもいつもはそんなに貧乏ってわけじゃないんだけどね。しいて言えば、金遣いの荒いアルちゃんのせいだし。」

「『アルちゃん』じゃなくて社長でしょ?ムツキ室長、肩書はちゃんと付けてよ。」

 

と、反論するアル。どうやらそういう雰囲気を重視しているようだ。

 

「ん?だってもう仕事終わった後じゃん?ところで、社長のクセに社員にラーメン一杯奢れないなんて大丈夫?」

「ウグッ……」

「今日の襲撃任務に投入する人員を野党ために、ほぼ全財産使っちゃったし……。」

「で、でもほら、結果としてラーメンにはありつけたじゃない!想定通りよ!」

「たったの一杯じゃん。せめて4杯分のお金は確保しておこうよ……。」

「ぶっちゃけ忘れたんでしょ?ねえ、アルちゃん。夕飯代取っておくの、忘れたんでしょ?」

「ぐぬぬ……」

 

カヨコとムツキの正論と言葉に反論できないアルは苦虫を噛み潰したような顔をし、後ろではハルカがあわあわしている。

 

「はあ。ま、リスクは減らせたほうがいいし。今回のターゲットは、ヘルメット団みたいなザコみたいには扱えないってことには同意する。」

「でも全財産をはたいて人を雇わなきゃいけないほどアビドスは危険な連中なの?」

「え?そ、それは……」

「アルちゃんもよくわかってないと思うよ。だからビビっていっぱい雇ってるんじゃなーい?」

「誰がビビってるって!?全部私の想定内!失敗は許されない。あらゆるリソースを総動員して仕事に臨むわ。それが便利屋68のモットーよ!」

「初耳だね、そんなモットー……(汗)」

「今思いついたに決まってるよ。」

「うるさい!じゃあ今回の依頼を成功させて報酬が手に入ったら、今夜はすき焼きにするわ!だから気合を入れなさい、みんな!」

 

と、ムツキには煽られ、カヨコには呆れられたアルは痺れを切らし、飲み会で酔った勢いで言う感じでそんな事を言ってしまった。

 

「すっ…すき焼きとはっ……!?それは一体!?」

「大人の食べ物だね、すごく高価な。」

「う、うわあ…私なんかが食べていいものなんでしょうか?食べた後はハラキリですか…?」

「ふふふ。うちみたいなすごい会社の社員なら、それくらいの贅沢はしないとね。」

「へぇ〜やる気満々じゃん、アルちゃん。」

 

すき焼きの一言で、心なしかメンバーの士気が上がっている様子になっている。

狙ったのか偶然かは分からないが、意外にもアルには人を纏めるカリスマがあるのかもしれない。

 

「『アルちゃん』じゃなくて、社・長!!」

 

まぁ、その陸八魔アルはアルちゃん呼びにご立腹のようだが。

 

「はい、お待たせいたしました!お熱いのでお気をつけて!」

 

と、なかなかにコメディチックな会話をしていると、セリカが一杯のラーメンを持って出てきた。

だが、何かがおかしい。対策委員会のみんなや他の客が食べているラーメンと比べて明らかにおかしい。

 

「ひえっ、何これ!?超特大盛じゃん!」

 

そう。ラーメンの量がアホみたいに多いのだ。並の人間じゃ食べられないし、そんじょそこらのフードファイターでも食い切れるか怪しいだろう。

その山のようなラーメンが便利屋68の4人の前に置かれているのだ。

もっとも、弦太朗の知る生徒の中にはそれの何倍も食べるとんでもない胃袋の持ち主もいるのだが、それはまた別のお話。

 

「ざっと10人前はあるね……(汗)」

「こ、これはオーダーミスなのでは?こんなの食べるお金、ありませんよう……。」

「いやいや、これで合ってますって。580円の柴関ラーメン並!ですよね、大将?」

「ああ、ちょっと手元が狂って量が増えちまったんだ。気にしないでくれ。」

「大将もああ言ってるんだから、遠慮しないで!それじゃ、ごゆっくりどうぞー!」

 

そう言って、セリカと大将は店の奥に引っ込んで行った。ミスであると二人は言っているが、これが二人からの厚意であることは誰の目から見ても明らかだろう。

ハルカはラーメンを見て目を輝かせる。その横でムツキが「ラッキー!」と、アルが思いも寄らない厚意に喜ぶ中、カヨコは少し申し訳ない気持ちでいるのだった。

そして、4人はラーメンを口に入れる…と…

 

「!!」

「お、おいしいっ!」

「なかなかイケるじゃん?こんな辺鄙な場所なのに、このクオリティって。」

 

柴関ラーメンは絶品だ。なんせ、客が少ないからこそ、味の工夫や調理方法を練る時間が多くあるのだから。その看板メニューともなれば美味しいことは言うまでもないだろう。

 

「でしょう、でしょう?美味しいでしょう?」 

 

柴関ラーメンを頬張る便利屋のメンバーに、ノノミが笑顔で話しかける。普段客が自分たちくらいしかいないこともあって、同い年くらいの生徒たちが行きつけの店を絶賛してくれているのが嬉しかったのだろう。

 

「あれ…?隣の席の……」

 

ムツキはそう言いながらノノミをまじまじと見つめる。 

 

(あの制服って……)

「うんうん、ここのラーメンは本当に最高なんです。遠くからわざわざ来るお客さんもいるんですよ。」

「ええ、わかるわ。色んな所で色んなものを食べてきたけど、このレベルのラーメンはなかやかなかなかお目にかかれないもの。」

 

ムツキはノノミや他のメンバーを見てなにかに気付いたようだが、社長であるはずのアルは何も気づいていない。ニッコニコで話している。

 

「ラーメン好きに悪い奴はいねぇ!今日からお前も俺のダチだ!」

「えへへ…私たち、ここの常連なんです。他の学校のみなさんに食べていただけるなんて、なんか嬉しいです。」

「私こういうの見たことがあります。一杯のラーメン、でしたっけ?」

「うへ~、それは一杯のかけそばじゃなかったっけ?」

 

いつの間にかアヤネも機嫌を直している。柴関ラーメンが褒められたことが嬉しかったのだろうか。

仲睦まじそうに話すアルと対策委員の面々をカヨコは鋭い目で見ている。

 

(…あの制服の連中……)

(あれ?カヨコちゃんも気付いた?)

(ま、アルちゃんは気付いてないみたいだけど。)

(……言うべき?)

(うーん……面白いから放っておこ。)

 

ムツキはそう言って笑い、カヨコはすっかり気が合って友達になった気でいる相手が、これから戦うターゲットであるとも知らずに仕事のあれこれや借金について話しているアルを見て、ため息を吐くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、気を付けてね!」

「お仕事、上手くいきますように!」

 

数十分後、お互いラーメンを食べ終え、セリカに見送られる形で店から出てきた。

 

「あははっ!了解!あなたたちも学校の復興、頑張ってね!私も応援してるから!」

「じゃあね!」

 

結局気付くことはないまま、便利屋と対策委員たちな別々の方向に歩きだし、セリカは店に戻って行った。

 

「ふう…いい人たちだったわね。」

 

とても満足げにそう言うアルをカヨコとムツキは見つめる。そして遂には痺れを切らしてカヨコが口を開いた。

 

「社長。…あの子たちの制服、気付いた?」

「えっ?制服?何が?」

「アビドスだよ、あいつら。」

「……」

 

ムツキのその言葉はアルの思考を一瞬停止させた。そしてアルの脳が再び動き出し、アルは真実を理解する。そんなアルから出た言葉は……

 

「なななな、なっ、何ですってーーーーーー!!!???」 

 

驚愕だった。しかも反応だけに飽き足らず、目は白目だし、顔は真っ青だ。

 

「アハハハ!その反応受けるー。」

「予想はしてたけど、本当に気付いてなかったのか……。」

「えっ?そ、それって私たちのターゲットってことですよね?わ、私が始末してきましょうかっ!?」

 

アルと同じく、対策委員会の正体に気付いていなかったハルカは素っ頓狂な声を出して、銃を構える。

しかし、後ろにはもう誰もいない。

 

「あははは、遅い、遅い。どうせもうちょっとしたら攻撃仕掛けるんだし、その時暴れよっ、ハルカちゃん。」

「う、うそでしょ……あの子たちが?アビドスだなんて……う、うう……なんという運命のいたずら………」

 

仲良くなった友達を裏切るような形で攻撃を仕掛けるということに、アルはショックを受けて固まっている。

というか、今のアルがショックを受けている内容自体は結構なアウトローなのだが……

 

「何してんの、アルちゃん。仕事するよ?」

「バイトのみんなが、指示を待ってる。」

「本当に…?私、今から、あの子たちを……。」

「あはは、心優しいアルちゃんに、この状況はちょっとキツいねー。」

「でもさー、『情け無用』『お金さえもらえればなんでもやります』がうちのモットーでしょ?今更何を悩んでるの?せっかく依頼主からそんないいものまでもらったのにさー。」

 

ムツキは笑いながらアルの腰にかけてあるモノを指差す。

 

「そ、そうだけど……」

(これ、完全に参ってるね……)

 

混乱しているアルは表情がコロコロ変わる。それを知っているカヨコは表情がコロコロ変わるアルを見て、また溜息を吐いた。

 

「こ、このままじゃダメよ、アル!一企業の長として、このままじゃ!」

 

と、ずっと悩んでいたアルだったが、自分に喝をして決心を固める。と同時に表情も変わらなくなった。

 

「行くわよ!バイトを集めて!」

 

 

 

 

 

 

アビドス高校からかなり離れた場所に、便利屋が雇ったバイトが集まっていた。

便利屋の予算を使い果たしたこともあり、人数は数百人規模。しかもヘルメット団みたいなチンピラではなくプロの傭兵だ。

そんな傭兵部隊の前に、雇い主たちは現れた。

 

「何だよ、遅かったじゃん。」

「少し野暮用よ。準備はできてるわね?」

「もちろん。なんでもいいけど残業はナシでね。時給も値切られてるし。」

「細かいことは置いておいて!さあ!行きましょう!アビドスを襲撃するわよ!」

「出動〜!」

「はあ…」

「アル様!わっ、私、頑張りますから!」

「一人残らず、ぶっ潰しちゃいます!」

 

かくして、傭兵バイトを引き連れた便利屋はアビドスに向かうのだった。

だが、アビドスがそれに気付かないわけもなく…

 

 

 

 

 

 

「校舎より15km地点付近で大規模な兵力を確認!」

「まさか、ヘルメット団が?」

「い、いえ、ヘルメット団ではありません!」

「あれは…傭兵部隊です!おそらく日雇いの!」

 

しっかりと察知されているのだった。アヤネの連絡を聞き、眠そうなホシノとバイトが終わって疲れ顔のセリカと相変わらずニコニコしているノノミが近寄ってくる。

 

「傭兵かぁ…結構高いはずなんだけどな〜」

「あぁもう、バイト終わりで疲れてるってのに……!」

「それにしても、傭兵部隊だなんて、ヘルメット団じゃないなら、一体誰がなんの目的で……?」

「ともかく、これ以上接近されるのは危険です!先生、ご指示を!」

「おし!出動だー!」

 

 

 

 

 

と、そんなこんなで対策委員会一同は傭兵部隊と対峙したわけなのだが……

 

「前衛に傭兵部隊を率いている集団を確認!」

「あれ?あの人たちってラーメン屋さんの……?」

 

案の定、対策委員と便利屋は遭遇することになる。さっき友達になったこともあり、アルは気まずそうに歯ぎしりする。

 

「こんなの引き連れてきて、誰かと思ったらさっきの便利屋!無料でラーメン特盛にしてあげたのに、この恩知らず!」

 

と、怒るセリカ。だが、対する便利屋メンバーはアルを除いて顔を崩すことはない。

 

「あははっ!それについてはありがとー!でも、それはそれ、これはこれ。」

「公私の区別はしっかり付けないと。これでも仕事だから。」

「なるほど。その仕事が便利屋ってわけだ。」

「もう!仕事なら、もっと健全なアルバイトだとかあるでしょう?それなのに便利屋だなんて!」

 

プンスコと怒るノノミ。その顔はまるで子供を叱りつけるお母さんである。

 

「ちょっ、アルバイトじゃないわよ!これはれっきとしたビジネス!ちゃんと肩書だってあるんたから!」

「私が社長!」

 

アルはそう言いながら走り出し、順番に便利屋の面子の肩書を言いながら指を指す。

 

「こっちが課長!」

「こっちが室長!」

「こっちが平社員!」

 

と、このようにはしゃぐアルの姿はまるで子供だ。

 

「うへ~、その子だけ平社員〜?もうちょっとなんかあったっしょー?」

「まぁもっと、部長とか係長とか店長とか、色々あるよな……。」

『店長はちょっと違う気がしますけど…』

「はあ…社長、ここでそういう風に言っちゃうと余計適当さが際立つ………っていうか多分バカにされてる……」

 

はしゃぐアルと平常運転の対策委員一同に挟まれ、カヨコは一段と大きな溜息を吐くのだった。

 

「誰の差し金?まぁ、答えるわけないか……」

「えぇ、もちろん。企業秘密よ。」

「なら、力ずくで口を割らせる。」

 

シロコはそう言いながら、アルに銃口を向ける。だが、先程とは打って変わって、アルは余裕の表情だ。

 

「ふふふ、やれるものならやってみなさい?」

 

アルはそう言うと、コートの中からあるモノを取り出す。

それは、対策委員会にとっても弦太朗にとっても見覚えのあるもの。

 

「あれって……」

「ゾディアーツに変身するスイッチ!」

「あら、これを知ってるの?まぁいいわ。クライアントから貰ったせっかくの贈り物なんだし、遠慮なく使わせてもらうわ!」

 

アルはそう言って、ゾディアーツスイッチを押す。するとアルの体は暗黒のコズミックエナジーに包まれて肉体が変化し、ペガサスゾディアーツへと変貌した。

 

「!」

「おぉ~。」

「うふふ、どう?かっこいいでしょ?」

「はい!アル様、最高にかっこいいです!」

『新しいゾディアーツです!』

「うへ~、あれは先生に任せよっかー。」

「うし!任せろ!」

 

弦太朗は便利屋の前に立ち、フォーゼドライバーを装着する。

 

「……うん?」

「社長、あの大人、何かするつもりだよ。」

「?」

 

カヨコは弦太朗が取り出したフォーゼドライバーの存在に気付き、ペガサスに知らせる。

 

『3・2・1』

 

だが、その頃にはもうカウントダウンは終わっていた。

 

「変身!」

 

弦太朗はコズミックエナジーに身を包み、仮面ライダーフォーゼに変身した。

 

「宇宙キターッ!」

「仮面ライダーフォーゼ!登場です〜☆」

「仮面ライダーフォーゼ……」

 

カヨコは仮面ライダーフォーゼというワードに聞き覚えがあった。そして記憶の中を探っていく。

 

(!思い出した...!この前ゲヘナに現れた怪物を倒して、美食研究会を鎮めたっていう…)

 

とあるルートでフォーゼの噂を少し聞いていたカヨコは眼の前にいる存在がとてつもない脅威だと認識し、ペガサスに話しかける。

 

「社長、気を付けて。アレは多分、噂のシャーレの先生。侮ってたら酷い目に遭う。」

「ふふっ、それくらいのほうが面白いわ。」

 

だが、ペガサスは前の敵がシャーレの先生だと知っても、余裕綽々だ。

 

「強敵を前にしても一切怯まないアル様…素敵です!憧れちゃいます!」

「ふふっ、まぁ、お話もこれくらいにして始めましょうか。」

「くふふ…楽しい時間が始まるね〜!」

 

ペガサスは、便利屋メンバーと傭兵たちに向かって叫ぶ。

 

「総員、攻撃開始!」

「こっちも行くぞ!」

「おっけー。」

「ん。」

「任せて!」

「は~い☆」

『後方支援は任せてください!』

 

2つの勢力は同時に走り出し、真昼なのに人気の一切ない異様な街、アビドスでの戦闘が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「行ってみよ〜」

 

またもや先陣を切ったホシノ。何十人もの傭兵がホシノに襲いかかる。一人一人の実力はヘルメット団員の何倍も上。だが、ホシノの相手ではない。

ホシノは傭兵の頭や腹を銃で的確に撃ち、次々と戦闘不能にしていく。

接近してきた相手には足に銃弾を撃ち込んだり、盾でぶん殴ったりと、その場での対応もよく考えられている。

囲まれていることもあり、時々体に銃が撃ち込まれるが、その程度ではダメージにもならない。

更に、後ろからシロコ、ノノミ、セリカが走ってきており、もうすぐ連携も取れるようになるだろう。

だが、相手もプロの傭兵部隊と便利屋だ。そう上手く動いてくれるはずもない。

 

「じゃあ、始めるよ。」

 

突如、戦場の真ん中に煙幕弾が放り込まれた。

『み、みなさん……?』

 

ドローンでモニタリングしていたアヤネは煙幕のせいで、後方支援を阻まれる。

 

 

 

(これは……)

 

シロコは周囲を見回す。視界は煙幕と傭兵に囲まれており、他の対策委員会メンバーの姿は見えない。

連携を絶たれ、孤立無援となったのだ。

 

「アビドスは人数が少ない分、連携やコンビネーションが抜群。そのことは事前に調べてある。」

「だから、煙幕でその連携を絶つ。一人でこの数を相手にするのは辛いでしょ?」

 

傭兵たちの中から歩いてきたカヨコはそう言って、シロコに銃口を向ける。その目はまるで獲物を狩る鷹のようだ。

対するシロコは頬から冷や汗が傳う。アビドスの生徒五人は砂漠の厳しい環境で生きていることもあり、一人一人がそこら辺のチンピラや傭兵とは比べ物にならないくらい強い。だが、カヨコの言う通り、10人以上ある数の差を一人で覆すことは流石に難しい。しかも、今シロコの前にいる鬼方カヨコとその他便利屋メンバーは、ホシノ以外の対策委員会メンバーと比べても引けを取らないくらいには強いだろう。

 

「……だからこそ、アビドスの副生徒会長は最後に全員で潰しにかかる。今はバイトの皆に足止めしてもらってるけど。」

 

カヨコはそう言いながら、銃の引き金を引いた。銃弾がシロコの耳を掠める。

 

「くっ…!」

 

このまま何もせずやられるわけにもいかない。

 

(まずは一番強いのを倒す…!)

 

シロコは銃を構え、カヨコを狙って走り出した。

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

セリカは体からオーラを出して力を上げ、傭兵を撃って殴って蹴って背負投げ。次々と蹴散らす。

昨日やられっぱなしで終わったことと、バイト終わりの戦いでイライラしていたこともあり、傭兵たちはセリカのストレス発散道具になっていく。

 

「分断されたのは面倒くさいけど、煙が晴れるのを待てば…」

「くふふ…そんなに上手くいくかな〜?」

 

だが、便利屋が仕掛けてこないわけがない。どこからか飛んできた爆弾がセリカを襲う。セリカはダメージを受けた上に、爆煙で周囲がまた包まれてしまった。

 

「いったた…誰!?」

「わ・た・し・だよ〜♪」

「うっ……!?」

 

転んだセリカの喉元に、ムツキの銃口が突きつけられる。

 

「にしても大変だねー。バイトちゃん。働いたあとにこんなんなるなんてさー。」

「あんたたちが仕掛けてきたんでしょうがぁーっ!」

 

セリカはそう叫んで、ムツキを蹴ろうとし、ムツキは「おっと…」と、跳び下がって蹴りを躱す。

 

「元気いっぱいだね〜!面白そ〜!」

「面白くないわよっ!!」

「くふふ…じゃあ始めよっか!!」

 

ムツキの目が獰猛な動物の目に変わる。だが、セリカも負けていない。

 

「上等じゃない…!すぐに終わらせてやる!」

 

ムツキとセリカは同時に走り出し、爆発音とオーラの音が響き、傭兵たちがそれに持ち上げられて吹っ飛んだ。

 

 

 

 

「お仕置きの時間ですよ〜☆」

 

一方、ノノミはガトリングガンを連射し、向かってくる傭兵をドミノのように次々と倒す。

ガトリングの雨を掻い潜って接近してきた相手は自慢の力でぶん殴って気絶させていた。

 

「……!?」

 

そんな中、突然ノノミの背筋に悪寒が走った。ノノミは周りを見て、その悪寒の正体を探す。

 

「……さい。」

「死んでください!」

「!?」

 

不意にハルカが背後からノノミの頭に銃弾を放つ。ノノミはガトリングガンを盾にギリギリ防ぐ。

 

「死んでください死んでください死んでください……!うわあぁぁぁぁっ!!!」

 

だが、ハルカの猛攻は止まらない。ひたすらブツブツ言いながら、反撃の隙を与えず、銃を乱射する。

パワー系のノノミは一度相手のペースに嵌まると中々抜け出せない。要するにピンチだ。

 

「はい!」

「うわっ!?」

 

だが、伊達に対策委員会はやっていない。ガトリングガンを振り回し、ハルカを怯ませる。

 

「まだまだ、ファイトですよ〜☆」

 

ノノミは体勢を立て直し、勝負を再開した。

 

 

 

 

 

「うへ〜。みんな大丈夫かな~?」

 

煙幕の中、ホシノはそう呟く。そんなホシノの周りには、ざっと30人もの傭兵が倒れていた。

ホシノはこの数の傭兵をすぐに蹴散らしてしまったのである。 

 

「うーん…とりあえずみんなと合流しよっかなー。」

 

ホシノはそう言って、懐から爆弾を取り出す。ホシノはその爆弾を地面に向かって投げた。

すると、爆弾から風が出てきた。これはただの爆弾ではなく、旋風や突風が出るようになっている風爆弾だったのだ。しかも、ホシノお手製。尤も、所々錆びたそれは作られたのは2年ほど前に見えるが……。

ともかく、風は煙幕を一気に晴らしていく。

 

「これは……!?」

 

そして煙が晴れ、ホシノの目には追い詰められたシロコとセリカ、ハルカとバチバチにやり合っているノノミが映った。

 

「今だよアヤネちゃん!」

『え?あっ!はいっ!』

 

ホシノに指示され、アヤネはドローンの回復物資を3人に与える。

 

「ん、これでまだやれる。」

「もう思う通りにはさせないんだから!」

 

対策委員会は一箇所に集まり、再び構える。分断させていればいざ知らず、五人集まった時の対策委員会は強力だ。

 

「あーあ、集まられちゃった。」

「小鳥遊ホシノ…噂には聞いてたけど、ここまでだなんて……」

「わ、私が早く仕留められなかったからですよね……?死にましょうか?死んでよろしいですか?」

「まーまー、落ち着いて。それでどうするの?」

「…仕方ない。正面からやり合うよ。幸いまだバイトは200人はいる。数で押すしかない。」

 

カヨコは長い戦いになりそうだと言わんばかりにため息を吐き、ムツキは獲物を見る目で五人を見つめ、ハルカはソワソワしながら銃を構える。裏の傭兵たちも改めて戦闘準備をし、更に複数の戦車まで引っ張り出してきた。

 

「さぁ!もう分断なんて卑怯な真似はなしでやり合おうじゃないの!」

 

セリカのその言葉を合図に、第2ラウンドが開始された。

 

 

 

 

 

一方、ホシノたちが戦っている場所から少し離れたところで、フォーゼとペガサスが取っ組み合っていた。

 

「あなたが噂のシャーレの先生ね?名前を聞いてもいいかしら?」

「如月弦太朗、仮面ライダーフォーゼだ!」

「如月弦太朗先生ね。私は便利屋68の社長、陸八魔アル、よろしくお願いするわ。」

「こっちからも聞かせてくれ。なんで便利屋なんてやってんだ?」

「……理由は単純。私たちはアウトローだから。それだけよッ!」

 

ペガサスはフォーゼをハイキックで蹴り飛ばした。ペガサスゾディアーツは馬の力が備わっていることもあり、馬力や蹴る力は凄まじいのだ。

そのパワーでフォーゼは吹っ飛んだ。

 

「へぇ…これは蹴る力がすごいのね。」

「なら、遠慮なく使わせてもらうわ!」

 

ペガサスはリーチの長い蹴りでフォーゼを防戦一方に追い込んでいく。フォーゼは反撃を試みるが、ペガサスの力の前に並の攻撃ではカウンターされてしまう。

 

「ならこいつだ!」

『スパイクオン』

「……ぐっ!?」

 

次のペガサスの蹴りは、攻撃すると同時に自分がダメージを受けていた。

 

「へへっ、トゲトゲの足だ!」

 

それは、フォーゼの左足に装着されたスパイクモジュールのせいである。

 

「なるほど、蹴り技の対策ってことね…面白いわ!」

 

だが、まだペガサスはやる気だ。もちろんそれはフォーゼも同じ。二人は同時に走り出し、攻撃を仕掛ける。

その後はやったりやられたり。勝負がつかないまま何時間も戦いが続き……………

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン…

もう日も暮れかけている頃、街に夕方を知らせるチャイムが響いた。

それと同時に、傭兵たちの手が止まる。傭兵たちは対策委員会になど目もくれずに時計を見た。

 

「あ、あれ?」

「急にどうしたんでしょうか?」

「はぁ…はぁ……お?」

「はぁ…はぁ……えっ!?ちょっ、ちょっと?どうしたのよ?」

 

その光景に、対策委員会も便利屋も困惑する。特にアルはフォーゼと蹴り合ってお互い疲弊しているとは思えない程に慌てていた。

 

「はあ…そういうことか……」

 

そんな中で、カヨコだけが状況を理解していた。

 

「定時だね。」

「貰った手当だと、ここまでだね。後はよろしくー。」

その傭兵二人の声を合図に、便利屋が雇った傭兵たちはどんどん引き上げていく。

「は、はあ!?ちょ、ちょっと待ってよ!」

「定時だってさ〜。」

「帰り、蕎麦屋にでも寄ってく?」

「こらー!!ちょっ、ちょっとー!?とういうことよ!?帰っちゃダメ!」

 

ペガサスはフォーゼとの戦闘をやめ、変身を解除して傭兵を止めようとするが、みんなどんどん帰っていく。

ガクガクを口を開閉し、呆然とするアルの前に便利屋のメンバーたちが集まってくる。

 

「……(汗)」

「あ、あわわ……」

「これはヤバイね、まさかこの時間まで決着がつかないなんて……」

「アルちゃんどうする?正直、勝てる気がしないし、逃げる?」

「う、うぅ……」

 

アルの表情がコロコロ変わる。どうやら結構悩んでいるようだ。

その顔にフォーゼと戦っていたときの威厳は一ミリもない。

そしてどうやら、考えが定まったようで……

 

「こ、これで終わったと思わないことね!アビドス!!」

「あっはは、アルちゃんそれ、完全に三流悪役の捨て台詞じゃーん。」

「う、うるさい!逃げ……じゃなくて退却するわよ!覚えてなさい!」

 

アルはそう吐き捨て、他のメンバーと何やら騒ぎながら撤退していった。

 

「待って…って、逃げられましたね……」

「うへ〜、あの子たち逃げ足速いね〜。もしかして、普段から何かから逃げてるとか?」

 

対策委員は逃げていく便利屋を見ていた。

 

『えっと、よく分かりませんが、敵全体の退勤……いえ、退却を確認。』

「あ〜疲れた〜!」

 

アヤネが敵の撤退を完全確認すると、セリカは伸びをし、フォーゼは変身を解く。

 

「とりあえず、守りきったな。」

『それにしても困りましたね……チンピラだけじゃなくて、妙な便利屋にまで狙われるなんて、一体何が起こっているんでしょうか……?』

「ま、地道に調べてこう。まずは社長?のアルって子の足から洗っていったらなんか見つかるよきっと。」

 

と、ホシノは今後の対策委員会の筋道を立てた。ヘルメット団の次は便利屋と、対策委員会の忙しい日々は中々終わらないのだ。

 

「ま、今日は解散でいいんじゃない?みんな疲れてるだろうし。」

 

ホシノはそう言って、皆の顔を伺う。弦太朗もセリカもノノミもシロコもモニター越しのアヤネもみんな汗をかき、息を切らせている。セリカに至ってはバイト後ということもあり、今にもぶっ倒れそうだ。

 

「だな。みんな、今日は帰ってゆっくり休んでくれ。」

 

ホシノと弦太朗の提案もあり、今日の対策委員会は少し早いがここで解散となった。そして、それぞれが明日から始まる新たな戦いに心を決めるのだった。

 

 

 

 

 

 

便利屋68の事務所。それは、情け無用、お金さえ貰えば何でもするがモットーのアウトロー組織、便利屋68が集う場である。そんな事務所で、社長である陸八魔アルは………

 

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い!)

 

右足を抑えてのたうち回っていた。

 

(なにこれすごく痛い!?いやあんなトゲトゲを何回も蹴ったんだから当たり前か…!なんで私、正面からあれと蹴り合おうとしたの!?もっと、脇腹辺り狙うとか色々あったじゃない!で、でも、あんな動きされたら蹴り返さなきゃって思うし……!)

(っていうか、先生強すぎない!?あのスイッチがあれば大抵のキヴォトス人には勝てるって聞いたのに!先生って確か、銃弾一発くらいでも大怪我するんでしょ!?あの時は勢いに任せて結構強く蹴っちゃったけど、全然大丈夫なのなんなの!?あぁもうなんでこうなるのよーー!?)

 

理由は単純。見て分かる通り、フォーゼのスパイクモジュールによる蹴りが結構痛かったのである。しかもそれを連続で、同じ場所で受け続けたのだから、かなりの痛みになっているのだろう。

そして、アルは弦太朗が規格外に強かったことに混乱している。

本当のアウトローなら、こういうときこそ冷静に立ち回るものだが、今のアルはその欠片もない。つまるところ、ハーフボイルドである。

そう。これがアルの本性。アウトローやハードボイルドを気取っているが、実際にはかなりのポンコツなのである。

分かりやすい詐欺にまんまと騙されたり、なにもないところで転んだりすることもしばしば……。

床でのたうち回るアルを見て、ムツキはクスクスと笑い、カヨコはため息を吐き、ハルカはあわあわする。

これが便利屋68の日常である。そして、そんな便利屋68も、これから始まる物語に入っていくのだ。

 

「絶対に……アウトローになってやるんだからーーーーー!!!」




【お知らせ】
6話を投稿した時に「やろうかなぁ」と考えていると書いた冬映画的なお話の製作を決め込みました!それに伴い、私が「この仮面ライダーでやりたい!」と思った二人の仮面ライダーを選んできたので、ぜひ投票のほど、よろしくお願いします!

これは余談なんですけど、「ギーツやりたいな!」とも思ったんですけど、本編、夏映画、冬映画、Vシネ含めて終わり方が綺麗すぎてこれ以上の拡張が困難だと思って候補から外しちゃいました…

追記:アンケートの締め切りは対策委員会編の2章が終わるまでを予定しております。
また、コメントの返信についてですが、これまでは期間を開けていましたが、これからは返せる時にしっかり返すことにします。

冬映画的な番外編でクロスオーバーしてほしい仮面ライダーはどちら?

  • 仮面ライダーディケイド
  • 仮面ライダーオーズ
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