にわか管理人が職員に転生した   作:パッチワーカー

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 「Lobotomy Corporation」とは?
 バケモノを収容し、そいつらの相手をして未知なエネルギーを集めてる会社の管理人になってみよう!というシミュレーション型ゲーム。
 バケモノは「アブノーマリティ」という名称で呼ばれ、
 ZAYIN、TETH、HE、WAW、ALEPH という順番でリスクレベルが高い。
 WAWから先は対処法ミスると簡単に会社が滅びるので注意しよう!!

 セフィラ 部門毎のリーダー的な人型のAIで上司にあたる。
 アンジェラ 完璧なAIらしい。管理人のサポート兼監視役。
 マルクト セフィラ。おっちょこちょい。よく目からハイライトが消える。




15日目
管理人と「元」管理人


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今思うと、その職員は始めからおかしかった。

 僕の命令を無視し、勝手に鎮圧の指揮を取り、職員を全力で生かそうとし、そのくせオフィサーが死ぬのを平然な顔で見る。

 ──それ以上に奇妙なのは職員が1人死ねば、周りの職員のこともどうでも良さげになるところだろうか。

 

 本当に色々おかしいし狂っていると思う。

 

 それでも、彼はずっと正しい行動しかしなかった。

 

 アブノーマリティが好む作業をし、職員が死なないように気を配りながら指揮をしていた。ときには「シールドよこせっ!!」って僕に言ってきたこともあった。そんなシステムはないのにも関わらず本当に変だ。

 

 彼のことをアンジェラに聞いても、素知らぬ顔をされた。

 ──おそらく彼女ですら分かっていなそうだった。

 僕の命令が間違っていたのにも関わらず、彼が指揮して無犠牲で切り抜けたときがあった。そのとき少し目が怖くなったのを鮮明に覚えている。

 完璧なAIを自負している彼女の想定の上をいく彼は、何者なんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 疑問が重なっていき、始業前に僕はアンジェラに内緒で彼に質問しに行った。彼との会話という会話が初めてだったから少し緊張した。が、それ以上に面白かった。

 

「好きなものですか?」

 

 彼は気怠げな目をしてるものの、容姿として整っている。少し可愛げがある男性だ。

 そんな容姿からはイメージできないほど、汚い言葉を使うときが多いのに、僕に対して敬語を使う判断をしたのは面白おかしかった。

 

「ああ、参考程度に···な。あと、僕に対しては敬語じゃなくて大丈夫だ。鎮圧中の君の荒さとか僕への暴言とか、その他色々知ってるからな」

 

「あっそ···俺は雪だな。あと天秤」

 

 いつも通り対応早いなって、そのチョイスはなんだい?雪···はまだ分かるにしろ天秤?

 ──何かの宗教関係なんだろうか?

 

「雪はまだ分かるにしても、天秤が好きな理由は?」

 

 そう言うと少し顔を顰めたあと、すぐ真顔に戻った。隠せてるつもりかもしれないが、僕はアンジェラの仏頂面な顔で鍛えられている。

 彼女に比べたら、感情の起伏が分かりやすい。

 

「──さぁ?特に理由はないさ。ただただ好きなだけだ。雪とか天秤とか見たいから、よろしく頼むわ」

 

 よろしく頼む?···あーそういうことか。アブノーマリティの話だね。未来を見ているかのような行動をする君だ。なら、多分そういうことなんだろう。

 君のその情報はどこから入っているのか、本当に教えて欲しいな。

 

「···分かった。僕の出来る限りのことはするよ」

 

「妙に物分かりがいいな。ならあと、  とか植物とか乗り物関係が嫌いなんだ。殺したくなる、注意してくれ···桜でお前も思い知っただろ?」

 

「墓穴の桜」

 下から2番目の危険度Tethなのにも関わらず、複数魅了+君さえも防げない魅了の強さは危険度詐欺にも程がある。

 ああいうのが植物にいるのかと、少し気分が下がった。が、こういう情報を得られたのは収穫だ。

 しかも、君からの願いを聞く代わりに対価を要求できる···できるよね?

 

 植物と乗り物関係の他に()()言っていた気がするが、それ以上に彼のことが気になった。

 

「ああ、肝に銘じておく。代わりに君の願いを聞く代わりに1つ答えてくれないか?」

 

「ああ、いいぞ」

 

 アンジェラですら分からない、君は一体何者なんだ?

 

「君は、一体なにm「管理人」···次のときに聞く。また話そう」

 

 氷のように暗く冷たく鋭い声だった。

 ──やはり、アンジェラの彼への対応が他の職員と比べあからさまに異なる。

 とりあえず今は頼りになる戦力であり、相談できる友達ということにしておこう。

 

 アンジェラの声を聞いてか、僕の反応を見てかは分からないが、彼はニヤッとしてこう言った。

 

「俺が生きてたらな」

 

 君含め、職員が死んだら大抵時を巻き戻すから大丈夫だし、そもそも死なないため次の機会ができたと捉えていよう。

 ···ただ本当に君は死なないでくれ。

 この組織そのものが揺らいでしまう。それほど君の存在は大きいことを君自身は理解しているのか、時々不安になる。

 ただ、君が死ぬことはないんだろな、と僕でさえ何の根拠もなく信じてしまっている。

 ──本当に君が職員にいてくれてよかった。

 

 願わくば、彼に管理人をやってもらいたいがアンジェラが許す訳がないよな···

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日もいつも通りペスト医師(危険度詐欺)が来ませんように、と祈りながら作業の準備をしていたときだ。

 いつも画面越しから見ている、管理人(初心者)が来た。

 

「レイ、少しいいか?」

 

「はい」

 

 

 お前がもうちょい良い命令出せば俺の負担が軽くなるというのに、この世界の管理人はロボトミ初心者だ。

 管理職としての手腕はある気がするが、「Lobotomy Corporation」の管理人はそれではダメだ。

 

 世話や相手をすれば、エネルギーを生み出すアブノーマリティのことをコイツは何も知らない。

 

 ──母なる蜘蛛に「洞察」は終わってるだろ。虫とか動物とかには、まず「本能」だろうが。

 俺が普通の職員だったら、3日目で死んでるぞ?

 命令無視って、「本能」作業である餌やりをして事なきをえたが···

 その他にも、美女と野獣相手に抑圧2回連続しようとしたり···

 

 まあ、愚痴はいっぱい出てくるが、アブノーマリティに慣れてないだけでそれ以外のことについては不満がない。

 不安定なセフィラの相手をこなし、クリアできるミッションを完遂させていっている。

 まだ中層段階ではあるが、初回にしてはよくやっていると言わざるを得ない。

 

 それにまだまだやり直した回数も少ない。

 

 だがチェックポイント戻りや、過度な残業、職員の育成、アブノマの選別などを怠っているからこの周回でのクリアはなさそうだ。

 ──願わくば3回以内で突破していただきたい。

 まあ、途中で心が折れなければなんでもいいが···

 

 

 この世界、「Lobotomy Corporation」の管理人はその心配をするほど難しい。

 少なくとも、俺が知っているゲームの世界ならばそうだ。

 そのゲームは、巨大企業ロボトミーコーポレーションが運営する施設の管理者になって、そこに収容されているアブノーマリティと、セフィラ(不安定なヤツら)に携わり仕事をしているエージェントを管理・運営していく内容となっている。

 

 そして、この会社は未知の存在「アブノーマリティ」から、未知の物質「エンケファリン」を抽出・精製することで莫大なエネルギーを生み出している一種のエネルギー会社という設定だ。

 

「アブノーマリティ」や「セフィラ」たちの設定の奥深さ、その姿自体の魅力、そして熟練の管理人でさえ簡単に壊滅するほどの激高難易度。

 なにより、荒廃しているディストピアの感じが人気の要因だろう。

 

 ···まぁそんな世界はゲームやアニメといった創作の世界ならば魅力的だが、自分の住む世界なら本当に勘弁して欲しい。

 

 俺が前世の記憶を取り戻したのは、マルクトを見た時だ。

 前世の記憶を取り戻した瞬間に、機械であるマルクトの顔が目の前にあったときは死を覚悟した。

 この世界での記憶は無くなってしまったし、業務内容の説明なんか頭に入ってこなかった。

 

 

 だが、罪善さんの顔を見て小さい安心と、大きな絶望がきた。

 安心は、これが1日目であること。

 絶望は、この世界が本当にロボトミであるということ。

 

 

 命が軽すぎるこの世界で生きていく絶望を噛み締めながら作業を行った。

 意外と慣れるのは早かった。

 

 だが、人の死は早くからは慣れなかった。

 

 オフィサー(利敵)の死ですら、結構くるものがあった。

 ゲームでは早めに死んでくれた方が楽だったし、処刑弾で「魔法少女」などの対策のため殺してたこともあった。

 それほど軽い命だと理解はしてるが、心が追いつかない。···さすがに十数日と勤務してるんだ。慣れる。

 

 同僚の死は逆にスッと受け入れられた。

()()()()。T社とかいう会社が作り上げた?システムで時間を戻せる···らしい。それほど設定を深く読み込んでなかったから間違っているかもしれないが、確かそんな感じだった。

 だから、雇用され始めの職員ですら死んだら戻るという確信があるから、気が楽だ。

 

 ──認知フィルターがなければ、多分もっとやばかったが、これに限ってはアンジェラに感謝だな。

 話したことはないが。

 

 

「···eイ···レイ」

 

「──あーすいません。少し寝ぼけてました」

 

 目の前の初心者と世界に対しての愚痴を考えてたら、思考の渦にのまれていたらしい。

 少し謝りをいれ、改めて管理人を見る。

 

 俺が死んだらコイツに時間を巻き戻してもらい、コイツの精神も死んだらアンジェラにリセットされる。

 まぁ似たもの同士だな、と思いながら言葉を待った。

 

「しっかりしてくれ···君が死ねばこの会社は崩壊するから気をつけてくれよ?」

 

 それはお前が残業しないのが悪い。俺くらいしかランクV職員がいないのは致命的だ。もうすでに13日は経っている。

 とすれば、アイツらが抽選される可能性があるはずだ。

 ゴミかクソ有能なのか、二極化してるWAWが。

 リスクレベルが上から2番目なだけあってリスクは高いが、リターンが大きい。

 だが、まだここの職員たちは育ちきってないからまだ待って欲しいが···

 

「気をつけますよ···で、何の用ですか?珍しいですよね、管理人が職員に話しかけるの──僕の処分でも決まりましたか?」

 

 ゲームのイベントで、そういうのはなかったし俺らへの連絡はセフィラを通してや放送越しだけだったはずだ。

 ···さすがに、命令違反しすぎたか?

 まあ、命令に従ってたら無様に死ぬだけだし、命令に背いたら殺されるし、どちらでも変わらんかったな。

 死んでも仕方ないと思いながら、管理人の顔を見ると不思議そうな顔をしていた。

 あ、違うのか。

 

「処分?──あー、そういうのではない。少なくとも僕は君のことが気に入ってるからな。悪口は控えてもらいたいが」

 

 ···いつも、「クソ管理人!」とか「忘れてやがったな···このポンコツ!」とか普通に言うからな。

 悪口は控えておこう。コイツは時間遡行の記憶持ってるし。ってか、なんで俺も時間遡行の記憶あるんだろうな?職員は持てないはずなのに···

 

「自分の意思で悪口を言おうとはしていません。ただ出ているだけなので意識では治りそうにないですね。···まあ少なくする努力はします」

 

「期待してる···まぁ、今までの悪口を許す代わりに少し質問に答えてくれないか?」

 

 まじ?許してくれるのか、さすが管理人。大人だな。

 

「いいですよ···で、質問は?」

 

「君の好きなものは何だ?」

 

「好きなものですか?」

 

 ···どういう質問だ···俺の何を知りたい?

 普通に「お前は何者だ」とか「アブノーマリティについて何を知ってる?」とかだと思ったが···

 

「ああ、参考程度に···な。あと、僕に対しては敬語じゃなくて大丈夫だ。鎮圧中の君の荒さとか僕への暴言とか、その他色々知ってるからな」

 

 今更繕っても遅いか···

 ──好きなもの、この世界で好きなものって言ったらコイツらだろ。

 

「あっそ···俺は雪だな。あと天秤」

 

「雪の女王」とか「審判鳥」とか有能アブノーマリティが1番好きだ。

 星とか、皮とかも武器や防具の観点で好きだし、天使も好きだ。···医者の段階は害悪だが···

 あと「騎士」なんかもいいか。

 

 俺がそう言うと、少し考え込む表情を見せながら口を開いた。

 ···さすがに天秤は意味不明すぎたか?

 

「雪はまだ分かるにしても、天秤が好きな理由は?」

 

 Pale耐性の防具、そしてPale属性の多段ヒット型の武器が取れるからです。

 red black white pale この4つの属性の内、死を司るpaleだけは飛び抜けて強い。

 割合ダメージを与えられるし、環境ティアトップだ。

 まじで欲しい。そこらへんの敵は簡単に片付けられるようになる。

 ···なんて言えないから、適当に言うしかない。

 

 

「──さぁ?特に理由はないさ。ただただ好きなだけだ。雪とか天秤とか見たいから、よろしく頼むわ」

 

 管理人ならこのくらいで伝わるだろ。

 人の気持ちを汲み取るのは上手いし。

 

「···分かった。僕の出来る限りのことはするよ」

 

 多分伝わったな。こういう面の有能さをアブノーマリティ相手にも活かしてくれ。

 最近は少しずつ減ってきていても、初見のアイツらへの対処は後手に回る方が多い。

 まあ、今後の成長に期待だな。リセットされてしまえば、全て無になるが。

 

 ──あと、これも言っとくか。コイツと話す機会なんて滅多になさそうだし。

 

「妙に物分かりがいいな。ならあと、医者とか植物とか乗り物関係が嫌いなんだ。殺したくなる。注意してくれ···桜でお前も思い知っただろ?」

 

「墓穴の桜」や人を魅了する顔面糞樹、産廃のツール型たち。

 まともなのは、快楽を振り撒く陽気な花だけ。

 あまりにもハズレが多いし、植物関係は勘弁して欲しい。

 あと、列車に関してはコイツ絶対忘れる。

 汽笛の音とともに思い出すから地獄絵図が簡単に想像できる。本当に列車はやめてくれ。

 

 医者は言うまでもなく、この職場では害悪でしかない。

 せめてあと10日は欲しい。

 

「ああ、肝に銘じておく。代わりに君の願いを聞く代わりに1つ答えてくれないか?」

 

「ああ、いいぞ」

 

 コイツ対価好きだな。まあ一方的じゃないだけマシか。

 ──後ろにアンジェラいるが大丈夫か?

 

「君は、一体なにm「管理人」···次のときに聞く。また話そう」

 

 怖ぇーマジでラスボスなんよな。さすがに今の声色はエグい。さすがアンジェラさん、最高のAIですね。

 管理人に見られない角度から俺をしっかり睨んでますし···俺は君のこと嫌いじゃないんだけどなぁ···

 

 ──君の作る図書館は結構好きだから、しっかり真エンドまで持っていく。

 その隙に逃げさせてもらうがな。

 

 

 

 さて、今日のアブノマは何だ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






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