アブノマの記録やストーリーが大好きなので今回使わさせていただきました。
『』が記録です。
今回、というかずっと自己解釈が含まれています。それでも良い方はどうぞ。
『これはある1人の騎士のお話であり、信頼と裏切りに背中を繰り返し刺され、黒い涙が唯一の感情となった絶望のアブノーマリティのお話です。
彼女は正義のために守護者の役割をした英雄でした。一生をかけて王や国や都市を、そして彼女を必要とする人々を護っていました。
騎士は神の掟を守り、勇気、騎士道、正義を追求しなければなりませんでした。しかし、長い紛争の歴史の後、どれも真に支持されていなかったことに気付きました。
真実が人々を変えてしまったのです』
──私は絶望した。長い紛争の後には平和が待っていると思っていた。正義は最後に勝つと信じていた。私は騎士であり、信念を貫かなければならない。
···そんな私は死んだ。
どこにも悪がない。
確かに平和は訪れた。
しかし、私が悪だと思っていたものは、誰かの正義だった。純然たる悪はどこにも存在していなかった。
そして、純然たる正義も存在していなかった。
──それに気づくのはあまりにも遅すぎた。
『正義の為に戦った者は、悪がないという事実に気が付くと自分自身が
彼らのように、かつて心が純粋であると考えていた多くの人々は、暗黒に堕ちて消えていきました』
──私はなんのために戦っていたのだろう。守りたい人がいたはずだ。守りたかった人がいたはずだ。そのために私は···戦っていた。
···そんな人たちはもう私が信じていたあの人たちではなくなっていた。
じゃあ騎士としての信念のためであったんだろうか。
──いや、騎士の信念はもう私には残っていない。あるのは···
『騎士が泣いたことはない、そう言ったのは誰ですか?
あなたは悲しみではなく絶望から流れる涙を見たことがありますか?
とめどなく流れる悲しみが眼窩を抜け殻に変えました。黒いダイヤモンドは灰のように零れ落ちました。
あたかも未だ守る意志が残っているかのように、今も保護することに夢中になっています』
残ったのは
···ただの虚しい誇りだけ。
『過去を捨てることのできない英雄を見る人々は哀れみでいっぱいです。
正義があなたに背を向けた時、数十もの刃が目的なしに残るでしょう。
彼女
他者を救うことによって自分を取り戻したい騎士は今、護っていた人々の心から忘れ去られ絶望の騎士と呼ばれています』
──私はただ昔の自分を取り戻したい。人を守り、救えていたあの頃の自分を。
正義があり、悪がいなくなれば平和になると思っていたあの頃に。
「あーその祝福、今日は貰えねぇ。結構色々やることあるんだよな。なにより俺は死なねぇし、お前といっしょで守る側なんだよ。だからお前の力借りなくてもいい。俺以外のヤツにつけてくれ」
···だから、いや、だけど、そんな光で私を照らさないで···
貴方の
彼女の涙はいつか止むのでしょうか。
──────────
「あーその祝福、今日は貰えねぇ。結構色々やることあるんだよな。なにより俺は死なねぇし、お前といっしょで守る側なんだよ。だからお前の力借りなくてもいい。俺以外のヤツにつけてくれ」
無理だと思いながらもそう言うと、絶望の騎士はどこか羨ましそうに俺を見つめていた。
···なんだ?何がコイツをこんな感情にさせたんだ。
普段のコイツは絶望で涙を流し、止まらない悲しみに苛まれているほど心が死んでいる。
なのに今のコイツの表情はなんだ?
「──お前のそれはどういう感情なんだ?」
作業終わってもなお、俺はコイツに問いかけた。
今は星の音*1だし、蒼星とは比べものにならないほどの精神汚染度のため精神には余裕がある。
だから、長い間コイツの相手をしていても大丈夫だと思った。
「······?······?!」
──なんでコイツは自分の顔に手を当てて驚いてるんだ?
びっくりしたような表情+身振り手振りを見て、結構
──ほんとになんだコイツ?
管理室のドアに手をかけた瞬間に一気に距離をつめ、俺の腕を掴んできた。
アブノマ相手ではあるが、暴走していないコイツはただのZAYINレベルだ。
恐れることはない。···ただ違和感でしかない。
「また後で来るし、後に···って、は?」
先ほどまでの祝福するような祈りではなく、俺の顔に手を近づけてきた。
···ほんとにコイツなんなんだよ···
少し死を覚悟しながらも、目はコイツに合わせ行動が終わるのを待った。
──一瞬、頬に冷たい感触があった。
「冷たっ···なに──あーそういうことか。ありがとな」
頬に何かされたんならコイツのギフトだろう。ありがたく貰うが、祝福は貰わねぇぞ?
訝しんだが、コイツも祝福を与える気がなさそうでそれ以外は何もせず一瞬で元の位置へと戻った。
「──じゃあまた」
軽く手を振るとあっちも返してきた。
···ほんとに人間に対し友好的なんだな。
有能かつ人類の味方枠がこっちの世界でもその通りで安心した。
少し気分が良くなりながら管理室から出た。
「管理人、適当に育てなくていいヤツ入れといてくれ」
「それほど脅威には映らなかったのか?」
その職員が死ななければ、どのアブノーマリティよりも脅威にはならない。
今日も長く作業するんだ。死ななそうで育てなくてもいいやつに持たせるのが1番だ。
「祝福系だ。アブノマ自身からの悪意は感じなかったが、俺は祝福や加護は嫌いなんだよ。作業は愛着でいいと思うし、まあ頼むわ」
どちらにせよ、絶望ちゃんの武器•防具は優秀だし、特に防具は全耐性0.8というALEPHに匹敵する優秀さだ。
今日取り切りたいし、一回アンバーのところ行っとくのが正解だろう。
絶望の騎士の装備を取り切るんなら作業時間早い俺が行くのがいいだろうし。
「分かった。それで、レイはどこを担当するんだ?」
「アンバーだろ」
「やっぱりか···あーそれと君に作業が下手と言ったのは訂正しよう。まさか一発で取るとはね」
「星の音が異常なだけで他は早ぇよ。アンバーと絶望の騎士に関しては1、2回だしな」
「魔法少女に好かれる素質があるのかもね。それとも···いやなんでもない。適切な職員を彼女にあてがうよ。今日の業務も長いだろうし、少しゆっくりしてきたらどうだい?」
「業務を長くしてるのはお前だろ。が、長くする気概があるのはいいことだな──まあ行ってくるわ」
────────
アンバーが欲望を暴走させたときも、蒼星に精神を削られまくったときも、ここまでの悪寒はなかった。
空気が重い。
テーブルに向かい合って座っているが、何一つ動きがない。ただただ空気が死んでいる。
「······」
「──アンバー、それどういう顔だよ。っていうかなんか喋ってくれよ」
俺の顔を見るやいなや、嬉しそうだった顔が一転した。
俺の顔を冷たく睨みつけている。アンジェラさんと冷たさが似てて、より怖い。
「·········」
「そんなに睨まれるようなことはしてねぇはずだろ?──まあ話し合おうぜ?」
気を抜くと声が震えそうなほどの悪寒がある。死の予感がある。最近は味方として接していたから忘れていたが、コイツもWAW。
絶望ちゃんと同じ危険度のくせに、貪欲の王自体の厄介さは普通にWAWだ。
今の彼女は落ち着いていて脱走することはないが、それでも死を感じるほどのプレッシャーがある。
──蒼星に吸い込まれかけたとき、首を一瞬で飛ばしてくれたようにアンバーには俺を瞬殺できるほどの力がある。
そんな相手の機嫌が悪いなんて怖すぎる。
「············」
いつもなら「まあ別に死んでもいいか」となるが、絶望ちゃんからギフトを貰ってるし、そう易々と死ねな···い···
昨日と今日での違いといえばこのギフトだけだ。ということは多分そういうことなんだろう。
「──あー、このギフトか?」
「やっと気がついたのね。···彼女も来てることに対してだけは嬉しいわ。けどね──」
アンバーも絶望ちゃんも同じ魔法少女ということもあり生前から親交があったのか、はたまたこの会社のループ中に何かあったのか。
何はともあれ一度態度が軟化した彼女だったが、
「お前ら魔法少女っていう表記だったしやっぱ親交あるんだな。よかったよかった。じゃあそういうことで」
管理なんてどうでもいい。ただ今は
椅子から立ち、帰ろうとしたとき、
蒼星と対峙した以上の濃い死の感覚がした。
「あっ···ぶねぇ···おい、アンバー。ガチで──殺す気かよ」
何も考えず体を引くことしかできなかった。躱しきった後の体勢なんて考えられる余裕はなく、躱せたはいいものの倒れてしまった。
急いで起きあがろうとはしたが、倒れた体の上に冷たい空気を纏っているアンバーがのしかかり無理だった。
···黄金狂に匹敵する威力の拳が俺の首筋に添えていなければ少しは嬉しかったかもしれないが、今は死が隣にいる感覚しかない。
「ええ。今死ねばその涙は取れるのでしょう?···こんなに早く私ではない女のものが付くのは気分が悪いわ」
その死がこんな嫉妬で行われるのはなんとしてでも避けたい。
「···どういう嫉妬なんだよ···」
「嫉妬?レイは勘違いしてるわ。これは独占
「···ごめん」
「あら、何に対しての謝罪なの?」
「──最近構えてなくてごめん。今日はできる限りいっしょにいてくれないか?」
最近何かと色々あり、少しの時間しか構えていなかった。こんな独占欲を爆発させるアンバー相手だ。もっとちゃんと見てあげないといけなかった。
「まあ及第点といったところかしら?そうね···顔背けないでこっちに顔向けて」
「ああ」
さっきまでの死が霧散し、いつも通りの彼女に戻っていた。
···なんとか耐え···ないみたいだ。
「頬そんなに強く持つなよ。普通に痛ぇし、そんなにしても左の涙は取れねぇって」
アブノマのバカ強い力で頬を、特に
「···そんなに力を込めた感覚はなかったけど無意識かしら。──じゃあこれで許して」
は···?
軽く唇に触れるだけの感触があった。
「──あ、あんばー?···はっ···顔真っ赤にして可愛いところあるな」
「貴方も顔真っ赤よ?···いつも飄々としている貴方がそうなっているのはいい気味ね」
どうやらお互い赤くなっているらしい。恥ずかしいが、まあこれで機嫌が直ったみたいでよかった?
···それで、いつどいてくれんの?
「──アンバー?早く上からどいてくれよ」
「?──まだ終わってないわよ?今のは力を込めてたことへのお詫び。お仕置きは···そうね、このくらいでいいかしら」
「なにを···っ···!ぃって······!おいこら、絶対跡になってんだろ」
「ふふ、ええ。くっきりとこれ以上に見えやすく残ってるわ。すごい気分がいいわ」
首を思いっきり強く吸われた。
それと引き換えに満足したのか、さっきよりも頬を赤らめて嬉しそうにしている。
「···そっ、アンバーが満足ならよかった」
「ええ、大満足よ。こんなに満足できるのなら、レイもする?」
「は?」
そう言って自身の首筋が見えやすいように目の前に持ってきた。
褐色の艶のある肌が俺の視界を覆い尽くす。
──綺麗だ。今なら吸血鬼の気持ちも分かるかもしれない。
なにか惹かれるように口をアンバーの首に持っていき噛も「あー···僕らも見てるしその辺にしといてくれ。それ以上のことは2人っきりのときに頼むよ」
俺らは2人とも顔を真っ赤にさせ勢いよく離れた。
──────────
『しかし、そんな幻想体となった彼女には一つの誤算がありました。
それは、目の前に1つ輝いている
その光は彼女を暖かく包み込み、やがて涙は止まるでしょう。
止まない雨はないと言いますが、それと同じように永遠に続くと思われていた絶望の涙もいつか止まります。
正義を正義だと思っていない
戻った彼女は、元の彼女と同じかは誰にも分かりません。
彼女が護った人の心から彼女は忘れられています。
──彼女が元の彼女であると誰が証明できるのですか。幻想体となった彼女の価値観は人間と同じなのですか。
それは誰にも分かりません。
しかし、彼女が今絶望から解き放たれようとしているのは誰もが分かります。
──そんな彼女が再び絶望を取り戻したら、果たしてどうなるのでしょうか』
アリスちゃんといい、アンバーちゃんといい湿度が高くなります。
そういう女性が好きかと言われればそうでもないのですが、なぜかそうなります。趣味なんでしょうね。
絶望ちゃんはそうならなければいいですね。
誤字報告など待ってます。
モチベーションにめっちゃ関わるので、評価とお気に入り、感想よろしくお願いします!
感想はいつも読まさせていただいてますが、返すのは次回を書いた後にするようにしてるのでラグがあります。申し訳ありません。
ストックは一切持たない(持てない)ので遅くなるかもしれませんが、よろしくお願いします。