にわか管理人が職員に転生した   作:パッチワーカー

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 明日ロボトミーコーポレーションの説明とキャラの紹介が上がります。
 それも併せて見ていただけると嬉しいです。


選択肢なんてものはない

 

 

 脱走を知らせるサイレンが断続的に鳴り響く。普段なら耳を流してしまう音だが、今回は違った──死を告げる鐘のように胸に響いた。

 

 新しいアブノーマリティの管理に入ったクリスが、イカれた(死んだ)。先輩は顔面蒼白のまま運ばれていき、貪欲は先輩の看病に付きっきり。

 ──主要な戦力が私以外に戦闘不能。私たちの指揮系統は私以外機能しなくなった、ほぼ壊滅したに等しい。

 

 ···それでも···

 

「管理人、私たちはまだ戦える?」

「···戦わないのか?」

「アンタが指示を出せば戦えるよ」

 

 ──いや、戦わない選択肢など、私たちには最初からない。

 

「メアリー。君ならあのアブノーマリティとどう戦う? 戦力を集めて一気に叩くか、少数精鋭で挑むか」

「物量で押し潰す。先輩がギリギリで、クリスじゃ扱えない相手に少数で挑んでも勝てるはずがない」

「そうか。──なら全職員を集めて潰そう」

 

 スピーカー越しの管理人の声は、どこか諦めを含んでいた。クリスほどの古参職員が死ぬことはなかったし、先輩がこういう戦闘に出られない状況も想定外だ。だが、そんな理屈は今は意味を持たない。私たちに残されたのは、戦うことだけだ。

 ──それが生き延びる唯一の術だから。

 

「アンタ、最低限気持ち隠してくれない?私たちの士気が下がる」

「──すまない、()()気をつける」

 

 今後なんてものがあるかどうか、私は知らない。あったとしてもクリスはいない。これからがあるのは先輩だけだ。あの人が回復したら、戦線に戻ってくるはずだ。

 

「今後なんてものがあるのは先輩だけでしょ」

「────あー、そうかもしれない」

「?妙に歯切れが悪いね」

 

 初めて、諦め以外の感情が彼の声から滲んだ。困惑と戸惑いに似た、それでも脆い何か。別にどうという話でもないが、確かに違和感があった。

 

「まあいい。先輩が起きたら伝えといて。私たちはやるべきことはやった。あとは好きにして」

「分かった。伝えておく。──全職員に鎮圧指示を出した。あとは頼んだ」

 

 ブツッ──スピーカーの電源が落ちる音が、冷たく廊下に残った。

 

「──アンタがもっと慎重にやってたらこんなことにはなってないんだけど」

 

 聞こえていることは百も承知で恨み節を呟いた。コイツがちゃんとしていれば、クリスは死んでいない。先輩の回復を待って先輩が専任として管理すれば防げたはずだ。

 

「まあ、先輩に任せっきりだった私たちも悪いんだけど」

 

 もっと早くから先輩と同じように鍛えていれば良かった。そう思うにはもう遅い。もう···全て終わったことだ。

 

 ウィンと扉の開く音が聞こえた。

 

「···メアリー先輩、クリス先輩とレイ先輩以外全員揃いました」

「そう。──自分の命を最優先にしてアブノマを殲滅するよ」

 

 自分らしくない出来そうにないことを言う。けど、士気を下げないためにはそう言うしかない。

 

「···勝てると思いますか?」

「勝てるとかそういう話じゃないよ。──勝たないと死ぬんだし」

 

 そんなに難しい話ではない。···全員これで理解したはずだ。

ああ···なんて、この世界は終わってるんだろう···って

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 ある職員のお話。

 

 

 

 アレを、──いやアレ()を見た職員が狂った。──狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って狂って──

 

 あれ?──なんで俺は大丈夫なんだ···?

 ああ···いや大丈夫っていうわけではないのか。ほぼ死んでいるから冷静なんだ、もう流れる血の温かみも感じられないし、もう俺は近いうちに死ぬ。

 ···人として死にたい。だから、もうさ死なせてくれ。お前らになるのは嫌だ。嫌だ。嫌だ──────

 

 

 

 

 ──────

 

 

 

 

 

 

「──薄情というかなんて言うんだろうね」

「人の心がないってはっきり言えば?お前も後少しすればそうなるけどな」

「···君ほど冷徹にはなれないよ」

 

 響き渡る悲鳴、狂った声、泣け叫ぶ声──この施設が終わる音が聞こえる。

 

「冷徹って言っても、俺が加勢しに行って精神を壊してもいいのか?」

「君でも精神が壊れるのかい?」

「ああ。一体ならなんとかなるが、眷属が増えた()()は無理。諦めて巻き戻るのが正解」

「私に眷属倒せると思う?」

「···あーどうだろ、倒せそうではあるが、まあこの状況になった時点でその話は意味ねぇ」

 

 そもそもクリスが死んだ時点で終わりなんだ。そこからの話をする意味がない。

 

「それより、アイツをどう管理するのが良いか考えたか?」

「君を酷使することくらいしか考えてないよ。──いや、メアリーの精神力ならなんとかなりそうかも?」

「クリスはああ見えてそこまで精神力が高いわけではないしな。けど、メアリーでも無理だな。そもそも星の音でギリなんだ。他の防具着てするのは無理だ···アイツの武器を取るまで俺1人でやるわ」

「そうするしかないんだね」

 

規制済み。管理室に入った時点で精神を半分以上持っていかれ、その後も精神にダメージを入れるBLACKダメージを与えて発狂に導くアブノーマリティ。今現在の装備では、俺がギリギリ行けるかなくらいの難易度だ。

 

「それが分かったんなら早く巻き戻せ」

「うん、まあそうだね」

 

 地獄でしかないこの世界から、時計の音が聞こえる。

 

 

 

 

 

 

 

 作業前に戻り、俺1人で規制済みの作業をした。メアリーが気持ち悪がっている目をしているが、気にせず休む。規制済みが来ると分かっていたら精神の回復をケチることはないし、覚悟ができているからいける。

 

「···アンタ時々奇妙なほど冷静で怖いよ」

「そうか?」

「あんなバケモノの初めての管理が終わった後で、私のこと気にしてるのは気持ち悪い」

「人の心配を気持ち悪いって言うな」

 

 どこまでも変わらない後輩との会話をしながら、今日も作業を進める。何も起こらなければ、このあたりの日は突破できる。

 あとは最低限武器と防具を集め、上層のセフィラのコマを抑制すれば前に進める。

 

 

 

 

 

 

 ──結局、E.G.Oの武器と防具はそこまで集まらず、上層のセフィラコア抑制が終わったのは21〜25日の3周目を終えるときだった。

 

 

 





 逆行週を書いていたらキリがないと思い、恐らくカットします。面白いことが起こりそうなシチュエーションが思いついたら書くかもです。
 次回はゲブラーさんとの会話から始まりそうです。
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