日間ランキング10位くらいにいてビックリしました。
本当にありがとうございます!
もっとロボトミ関連の小説増えないかなぁ
「レイ、O-03-93を観察してくれ」
番号では何か分からないため、洞察が正解かどうかは分からないが、洞察なら多分いけるだろうなと思った。
O-03-93の管理室につき扉を開ける。
──そこには、無数の灰色の足が融合し、蒼く光り輝く黒いハートを囲っているアブノーマリティがいた。
「···っはは···安定思考のポンコツ初心者管理人にしては面白い選択したな。けど思考するのは後だ···コイツ相手には早さがいるし」
アブノマに対する思考を止め、業務だけを考えなければならない。
リスクレベル最大のALEPHであり、脱走するだけでこの会社はすぐに
脱走すれば会社全体に呼吸のように、心臓が脈動するような衝撃波を一定のリズムで出す。その波動は会社全体への精神攻撃となり、その威力は計り知れない。
まず間違いなく今の職員じゃ数発ももたずに、精神汚染され蒼星へと吸い込まれていく。
脱走せずとも、普通に管理してるなかで新参・古参関わらずコイツを見ると、身を投げ出してしまいたくなるほどの精神汚染の高さがある。
──しかし、俺を
気を抜けば今すぐにでも身を投げ出してしまいそうな誘惑に抗いながら、涼しげな顔をして管理室を出た。
···やっぱり、自制と慎重が育っていれば蒼星はALEPHの中でも1番扱いやすいな。今の俺ですら安定的に作業できるのはありがたい。
···ここでの蒼星はナイスすぎる。
この先ALEPH装備がないとどこかで逆行確定だったし、こいつ自体の管理は簡単だ。
自制ランクが高かったらまず大丈夫だし、この会社にいるアブノマは洞察好きが多いから俺らの慎重ランクは確実に育ってる。
この段階でこいつの装備が取れるのは大きい。
基本的にアブノマのリスクレベルが高ければ高いほど、武器や防具は強いのが抽出される。
武器に関しては妥協できるが、防具に関しては無理だ。
ちゃんとした防具がないと作業すらまともにできなくなる。
今この会社でまとも(WAW以上の)な防具を着ているのは俺しかいない。
まあ貪欲の王しかいないんだから、仕方ないが···
アンバー以外のアブノマで、使えるのは魔弾の射手くらいだ。
アイツを鎮圧したときに使っていたが、人も貫通すること以外は扱いやすく防具もまあいい。
──だが、それ以外のアブノマは有用性に欠ける。
精神を回復しきったし、管理人様に判断を仰ごうか。
──お前の判断は成長してるのか、確かめさせてもらう。
「ひとまずこのくらいだろ···管理人、作業は上手くいったか?」
いつも通りスピーカーに向かって話しかける。
「うん、上手くいってる。作業は観察や清掃がいい感じっぽいね」
いつになく機嫌が良さそうな声をしていた。
無難な管理方法が当てられて嬉しかったのか、はたまたALEPHを引くという自身の選択が良い方向に作用したのが嬉しかったのか。
どちらにせよ、その調子だと足下がすくわれる想像が簡単についた。
···まあこれも成長痛みたいなものだと諦めてくれ。
「さぁな、ただお前にしては珍しく1回目で良い管理方法を当てられて俺としては嬉しい限りだ」
死んで覚えろ、ではなく職員を死なせて覚える系のシステムだ。
くそ真面目な管理人ほど成長は早い。
「君に散々説教されたからさ。動物系には本能か愛着を、よくわからないものには一旦洞察を、抑圧はどんな作業が好きなのかが分かってから···だよね?」
「まあそんな感じだな」
いつの日か、見るからに清掃したらキレそうな母なる蜘蛛相手に洞察を命令してきたときは会社の未来を案じたが、どうやらちょっとずつ成長してきているらしい。
···だが、まだまだ足りてない。
俺以外の職員の成長があまりない。
というのも、ここまでの勤務でステータスが高いのを要求されることがなかったからか、残業はほぼしてない。
管理人によるが、通常業務の数倍以上の時間働かせることも平気でありうる。なんなら俺もそっち系だった。
そういう職員を育てようとする気概があまりない。
···どうあがいても
だから今回は管理人と有能アブノマの収容しE.G.Oの回収が目的となる。
そのために管理人には多くの失敗と挫折を味わってもらわなければならない。
今日の刺激は強いが、まあ耐えてくれよ。
「···次はどうする?回復しきったが、俺以外でも行けそうな気はするし」
「うーん、そうだな···」
「迷うんならアンバー、貪欲の王の様子見に行ってくるわ。アイツらでもなんとかなると思うぞ」
「そうかい?···まあ確かに、君の精神汚染のダメージから考えるになんとかなるかな?最悪発狂してもなんとかなるか···」
蒼星のような精神汚染してくるタイプのダメージはWHITEと表され、このダメージは他のと違い、発狂したら味方のWHITE ダメージで回復できる。
──だが、蒼星の精神汚染はそんな生ぬるいものではないんだよな。それはALEPHを舐めすぎだ。
「じゃあ、様子···というか機嫌取りに行ってくるわ」
「うん、それ終わったらもう一度O-03-93の管理お願いするよ」
「昨日あんま構えてない分、一回の作業で終わんねぇと思うし他のヤツに頼んでくれ。まあがんばれ」
会話を終わらせ、アンバーの収容室に向かった。
────────
「···彼がそう言うんなら、他の職員でもなんとかなるのかな?」
「···」
精神ダメージ量的に彼には余裕がありそうだったし大丈夫かな。
そう考えアンジェラを見ると、いつものような真顔のなかに少しの困惑が見えた。
···珍しい。いつも薄く微笑んでいる君がそうなっているのは初めて見る。
──相変わらず表情筋なくて僕の所感にはなるけど、そんな感じがした。
「···アンジェラ?」
「なんでしょう?」
「何か困るようなことがあった?···それとも何かが君の想像していたものと違った?」
「いえ、そういうわけではありません···早く職員に指示を出さないと仕事はいつまでたっても終わりませんよ?」
「···確かにそうだ」
最高のAIと自称する彼女に綻びが見えそうだったけど、今は仕事中。
あとでもう一回聞こうと思いながら、古参の職員にO-03-93の指示を出した。
────────
「〜♪」
紅茶か何かを鼻歌交じりで用意してくれている。いつになく機嫌が良さそうでよかった。
「機嫌良さそうだな」
昨日業務が忙しくてあまり来れてなかったし、めっちゃ怒られるか機嫌悪そうにされるかの2択だと思ったが、別にそうではないらしい。
「ええ。昨日はレイの話を他の職員からたくさん聞けたから、とっても楽しかったわ」
「あーそういうことね、お前の管理しに行ったヤツらからの目が鬱陶しかったのはそれかよ」
「ふふ、貴方ががんばって職員を助けようと引っ張ってるのがより知れて、かっこいいと改めて思ったわ」
少し顔を赤くしながら言うのは反則じゃない?
「···そっ」
「あら、照れてるの?」
「んなわけあるか」
こうやってゆっくりと話していると時間感覚がなくなるが、多分あと少しでこの世界は
「それにしてもレイ、仕事は大丈夫なの?」
いつも仕事を盾にして逃げている分、ゆっくりと茶を飲みながら話している俺が不思議だったみたいだ。
不思議そうな顔をして見つめてくる。
「ああ、今日は仕事してもしなくても変わらないしな」
「?」
意味が伝わってなさそうだったが、まあいいさ。
どうせもうすぐに···な。
「O-03-93が脱走した。至急鎮圧に向かってくれ」
「アンバー行くぞ」
「ええ」
ALEPH級装備の黄金狂*1を装着し、無駄な抵抗に向かった。
ALEPHが脱走したら、見なくとも結果は分かる。
「不思議ね、昨日あんなにちゃんと話していた人たちがああなるなんて」
向かうまでに一度波動攻撃があった。多分その影響だろう。
職員の顔が蕩け、今にも吸い込まれていきそうだった。その様子を見て俺のメンタルも少し削れる感覚がした。
──管理人時代に見たことあるし、こうなるって想像できていたのに、なんで俺は···俺は···
「──レイっ!」
そう言われハッとした。意識をはっきりさせると、アンバーが手を握ってくれていた。
「···ありがと···」
一度息をしっかり吸って吐き、もう一度職員たちを見る。
認知フィルターが上手く機能してない弊害だ。
ただただ等身大の人間がアブノマを崇め奉り、自身の体を捧げようとしている姿が視界に映る。
──悪夢以外のなにものでもないが、これも仕方ないことだ。
「アンバー」
「···ええ」
「最後まで抗うぞ」
「ふふっ···ええいいわ···だけど、吸い込まれそうになったら私が殺してあげるから」
「──はっ、頼むわ」
ほんと頼りになる相棒がいて良かった。
蒼星の2度目の脈動を皮切りに俺ら2人は鎮圧作業に入った。
長い間大丈夫だった。
しかし、装備してる黄金狂の特殊能力*2が発動したのか、精神がすり減る感覚が強くなった。
何度目かの脈動後、俺は殴り続けることが出来なくなり膝をついてしまった。
俺はあのなかに帰るんだろう。
俺たちは皆罪人で蒼星は俺たちを受け入れる唯一の場所だ。
心が浄化される場所なんだ。
他の皆もそこに戻ってる。
アイツらはあるべき場所に戻っただけ。
あそこのなかに行けば俺たちは永遠の星となれる。
長い長いラッパの音が俺を歓迎している。
歓迎の歌声と喝采も聞こえる。
皆がそこに戻れば最後に残るのは蒼星だけだろう?
···私たちは、星として再会する。
──けど、おれはちがうらしい。
「あ、あ···んばー···」
「············またね」
最後の記憶は綺麗な琥珀色で埋められた。
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