ソードアート・オンライン ゼラニウムの兎   作:フローゼン

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本当はもう少し先まで書くつもりだったけど、力尽きたので短めです。


鍛冶…屋?

 結局、朝になって宿を出るまで一度もミトに会うことはなかった。彼女がまだ部屋にいるのか、それとも早朝に出ていったのかは分からない。まあ、メニューウィンドウのフレンド一覧を開けばどこにいるのかはわかる。しかし俺はそれをしなかった。

 

 

 

 

 朝目覚めたのは、寝ている時にはなかなかに騒々しいメッセージの着信音が鳴り響いたからだ。

 

『今から向かうからな!転移門の前で待っとけ。』

 

 どうやら、送り主はフィンのようだ。おそらく、昨晩話していた例の鍛冶屋を連れてくるのだろう。

 

 俺は了解の旨をメッセージで送ると、ようやく宿のベッドから立ち上がる。軽く伸びをすると、再びメニューを操作し、普段から着用している装備一式を選択する。すると、今着ているインナーシャツが光りだし、一瞬のうちに装備を身に纏う。

 

 この仮想世界では、顔を洗ったり、髪型を整えたりする必要も無いので、俺はそのまま部屋の扉を開け、1階のカフェに向かう。

 

 朝食で偽物の空腹感を満たすと、宿を出て主街区中心の転移門を目指す。

 

 宿から転移門までゆっくり歩いても数分しかかからないため、特に気を張る必要もないのだが、初対面のプレイヤーと会うため少し気を切り替えつつ歩く。

 

 転移門が見えてくるとその周りには少なからず人がたっていたが、俺はすぐに目的の人物を見つけた。

 

 そこに居たのは、昨日と特に様子の変わらないフィンと、フードを被った彼より瞳一つ分背の高いフードを被った華奢なプレイヤーだ。

 

 俯いてて顔を見ることは出来ないが、様子や骨格からしておそらく女性だ。

 

「やあ、おはよう。」

 

「…よう、来たか。」

 

 フィンの目の前にたつと、ボーッとしていたのか、少し間を空けてから返事が帰ってきた。

 

 そして、依然として鍛冶屋は下を俯き続けている。

 

「こいつはサク。昨日言った鍛冶屋だ。腕は俺が保証する。」

 

「よろしく、サク…さん。」

 

 フィンの様子を見て、鍛冶屋も同じく同年代かと予測したが、一応初対面の相手ではあるので敬称を付けることにした。

 

「…コクッ」

 

 少し待つと彼女小さくうなずいた。このほとんど男で構成されているような世界だ。警戒するのが当然の反応なのだろう。

 

「ごめんな。こいつ反応薄くて、俺もあんまちゃんと喋ったことない。」

 

 「それはどうなんだよ。」と咄嗟に言いたくなったが、心の中に秘めておくことにした。

 

「武器見してほしいんだろ?自分で言いな。」

 

 彼はサクの背中を軽く押す。すると、彼女は分かりやすく体をビクッとさせて驚き、バランスを崩した。そしてそのまま受け身もとれず、「プギャッ。」と奇妙な声を出しながら顔面から俺の足元にこける。

 

「だ、大丈夫?」

 

 痛みはないのだろうが、俺は心配して、腰を屈めて手を彼女に差し伸べた。転んだ勢いでフードがめくれ、茶髪を三つ編みにしたツインテールにした頭があらわになる。

 

「は、はい。…お兄ちゃん?」

 

「なにを…桜?!」

 

 

 俺の手を取ろうと顔を上げた彼女の姿はあまりにも見覚えがあり俺は唖然とする。というか、所々俺に似ている。

 

「お兄ちゃんって…。もしかしてお前ら兄弟?」

 

「いやまあ、一応。というか桜、君なんでここにいるの?」

 

 俺の記憶が正しければ、彼女は全くと言っていいほどゲームに興味はなかったし、そもそもこのソードアート・オンラインは抽選なので、気軽にプレイ出来るものでもない。

 

「お兄、ここではサクだから。」

 

「ああ、…そうだね。ごめんな、サク。」

 

 兄妹とはいえ、さすがにインターネットで本名を呼ぶのは許されない。それを俺は指摘され素直に謝罪する。

 

「…ほんとはね。別にこのゲームをする気はなかったんだ。でもね、私の友達のお父さんがアーガスの社員らしくて、その友達が私とやりたいってねだってたまたまもらっちゃったの。」

 

 今までの経緯を語りはじめたが、彼女の表情はどこか暗い。

 

「その友達は?」

 

 俺は単純な疑問を発した。するとさらに彼女の顔は俯き、黙り込む。

 

「…死んだのか。」

 

 妹は俺の言葉に大きく反応することはなかったが、その沈黙はあまりにも肯定を表しすぎていた。

 

「その子が朝起きたらいなくなってて、フレンドリスト見ても…どこにもいなくて。《生命の碑》を見に行ったら、…もう…もう名前は消されてて、それから私…どうしたらいいか分かんなくって…!」

 

 話し始めたときからずっと我慢していたのだろう。妹はだんだん声をしゃくりあげる。

 

 確かに妹は昔から気の強い方ではではなかった。体が弱くて入退院を繰り返していて、まともに学校に行けなかったのが大きいだろう。

 

 そんな妹と仲良くしてくれた友達が死んだんだ。妹の精神的ダメージは俺には計り知れない。

 

 しかしそれが分からなくても、兄として泣いている家族に対して何もしないというのはあまりにも無情すぎる。俺は俯く妹の顔を無理に見ようとはせず、ただ寄り添って頭に手を置いた。

 

 少し経つと、落ち着いたのか妹は頭から俺の手を退けた。

 

「でもね、結構頑張ったんだよ。圏外出てモンスター倒しに行ってみたり、まあそのせいで死にかけてフィンに助けてもらっちゃったんだけど、、、。だからそれからは鍛冶スキルとって、そのうち鍛冶屋とか開けるようになりたいなって。」

 

「そっか…。だけど、死にかけたってのは聞き逃せないな。もし死んだらきっと母さん泣き崩れるぞ。」

 

「いいじゃん今生きてるんだから。」

 

「よくねえって!君ほんと昔から考えなしだよね。ビビりのくせに。」

 

「はあ?!そっちだってビビりじゃん。いつまでも昔の事引きずったりするしさ!」

 

「それとビビりは関係ないだろ!」

 

「あははははははっ!」

 

「「??」」

 

 今まで何も声を発さなかったフィンが突然笑い始めるので、俺達は驚いて同時に彼を見る。

 

「いやっ、悪い悪い。でもリオンが慰めてると思ったらいきなり喧嘩し始めるし、お前ら面白すぎるだろって思ってよ。」

 

 完全に彼の事を忘れて妹と言い争いをしていたので、だんだん恥ずかしくなってくる。

 

「ええ…っと。ふ、普段はこんな喧嘩し、しない、からね?」

 

 先程まで元気に俺と言い争いしていた妹だが、フィンに話しかけると、急に静かになる。

 

「あれ?やっぱりいつも通りになっちった。」

 

「いつも通りって?」

 

「なんかこいつ、初めて会ったときからずっとこんなんなんだよ。モンスターに襲われて腰抜かしてたから、最初は声出ないんかなーって思ってたんだけど、何回かあっても変わんねえし。なんなら目も合わせてくれないから、今日初めてこんなちゃんと顔見た。」

 

「ああ。だってサク、男苦手だし。」

 

「は?」

 

「うん。」

 

「え?」

 

「うん。だから、サクは君に怯えてるだけだよ。」

 

 何をそんなに驚嘆しているかは分からないが、フィンは声を発した口のまま固まる。

 

「え、…ああ。…そういうこと。…はああ。」

 

 彼はどこか納得したように崩れ落ちてその場に座り込む。

 

「なるほどなあ。俺ずっと嫌われてんのかなーって心配してたんだ。でもよくメッセージ送ってきて素材集めに協力させられるしよ…。」

 

「…でも、ちょ、ちょっとだけ怖くなくなってきたよ。ほ、ほらちゃんと、会話、できてるでしょ?」

 

 俺と話をしていたときとは比べ物にならないほどはっきりしない回りくどい喋り方だが、一応話しかけることはできている。

 

「まあ…そうかもな。…いや、こういうのはちゃんと喜んだ方がいいよな。サク、俺嬉しいぞ!」

 

「うん。」

 

 途中の発言はおそらく心の中の声なのだろうが、サクは特に気にすることもなく返事をする。

 

「で、お前ら本題忘れてるだろ。」

 

「「あ、」」

 

 唐突の再開のインパクトが強すぎたがそもそも、俺は鍛冶屋としてのサクに会いに来たのだった。

 

「そうだった。…でもなんか今日は朝から色々あって疲れたしもう明日でいい?」

 

「よくない!俺今日武器が必要なんだって。」

 

「ええー…。わがままだなあ。誰に似たんだか。」

 

「俺達兄妹でしょうが…。ああ、…もう!!」

 

 妹ののらりくらりな態度に少し面倒臭さを感じる。

 

 再会できたのは嬉しいが、出来れば暇なときが良かった。




少しずつ文章を書いているのでたまに描写が矛盾しているとこがありますが、私も確認して直しているのでお許しを。
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