「「「「「「あざした!!師匠!」」」」」」
「師匠はやめて。…いやまじで。」
キリトと別れ1週間。俺はクラインとその仲間たちと行動を共にしていた。
1週間、俺が決めた期限だ。今日を目標として俺はクラインたちにこのゲームの立ち回りを手取り足取り教えた。この期間では無理があると思っていたが意外とそんなことはなかった。
なぜならモンスターへの対処はクラインたちが別ゲームをやっていたことからも応用がきいたようで覚えが早かったし、第一層だけなら情報量もさほど多くなかったからだ。
確かにこれからの事を考えると、もっと先の層のことも教えなければならなかったが、ベータテストと同じく、このデスゲームでも情報屋がいることを確認できた。
情報屋とはアルゴという名前の風貌は小学生程度の身長の女プレイヤーだ。しかし、ここで俺と再会し、俺の容姿を見ると自分のことを「オネーサン」と呼び始めたことからもおそらく年上だろう。
「まあ、俺は行っちゃうけど、困ったらアルゴを頼った方がいいよ。俺よりよっぽど使える。」
「そんなことねえよ。十分助けてもらったしよ。」
クライン達は俺に敬意を払ったあともお辞儀を続けており、そのまま話し始めたので、俺はむず痒くて仕方がなくなった。
「いつまで頭下げてんの。上げてよ恥ずいから。」
クライン達は顔を上げると、イタズラ顔で俺を見つめた。
「へへ。…よしっ、じゃあ頑張れよ。応援してっから。困ったらいつでも言え。オレらじゃなんの助けにもならねえかもしれねえけどな。」
「…安心して、困ったらこき使ってやるからさ。」
「うげっ…。ほどほどにお願いしやすよ師匠。」
クラインが懲りもせずまた師匠などと呼ぶので右拳を食らわしてやろうと思ったが理性がそれを抑えた。
──まあいい気持ちもしない訳では無いし。
自分でも不思議と少し嬉しかった。
「じゃあ」
「おう」
「「「「「「「またな!!」」」」」」」
俺は去り際に拳を突き出して、それぞれのこぶしと打ち付けあった。
――――――――――
さらに1週間後、俺は迷宮区の最寄りの街である《トールバーナ》に到着した。
ここまで来てわかったことは、俺は出遅れていない、ということだ。まあ、はじまりの街周辺のフィールドにもほとんどプレイヤーがいなかったことから、だいたい予想はできていた。ここトールバーナに近づくにつれて、プレイヤーとすれ違う機会はどんどんと減少していたこともある。
しかしそれはかなり深刻なようで、もう日が暮れてほとんどのプレイヤーがこの街に帰ってきているはずだが、いちばん広くNPCの店も並んでいるこの広場にいる者は片手に収まるほどしか居ない。
俺は出遅れていないことの安心感よりも、このゲームをクリアできるのかという不安と焦りを強く感じた。
このSAOというゲームはプレイヤー同士の協力が前提のゲームだ。フロアボスどころかフィールドボスでさえも1人じゃ対応がままならない。
俺はゲームクリアを決意したとき、誰かしらとパーティを組むことを考えていた。真っ先に思いついたのはキリトだ。もともと正式サービス開始時には、基本はソロだと決めていたが、この異常事態ならいたし方ない、俺はそう自分を納得させた。
そうと決まれば早めにメッセージを送らなくてはいけない。思い立つと同時に俺はメニューを開いた。
「リオン。」
「わあ!!」
突然後ろから肩をつかまれ、俺は反射的に飛び退いてふみとどまれず顔面からコケた。
「わ、悪い。そんな驚くと思わなくて。」
「…いや大丈夫。」
この世界で痛みは感じないはずだが、俺は顔面を手で覆いながら正面を指の隙間から覗き込んだ。
どうやら、わざわざメッセージを送る必要はなかったようだ。目の前にいるのは目的の人物、キリトだった。
「キリト。久しぶり。」
「ああ。」
キリトは返答をしながら、俺に手を差し伸べた。俺は抵抗せずにその手に掴まり腰をあげる。
「思ったより早いな。」
「出遅れるのが怖くて道中のクエストとか全部スルーしてきたし。…まあ心配する必要はなかったみたいだけど。」
キリトは俺が1週間でここにたどり着いたことに驚いた様子のようだ。普通に攻略していけば、レベリングやリターンの大きいクエストなどで時間を要する。
だから俺のレベルは現状においてかなり低く、安心できるレベル帯からは程遠い。
「俺もここに来てから10人程度しかすれ違ってないな。想像以上に攻略が滞ってる。」
キリトは深刻そうな顔で辺りを見渡す。
俺はそんな暗い雰囲気をどうにかしようと無理やり話題を変えることにした。
「それより、一時的でいいからさ、パーティ組まない?そっちの方が迷宮区の探索とか進むと思うし。」
「ああ、いいぜ。」
そういうと俺は早速メニューからパーティ申請をキリトに送った。直後キリトの目の前にウィンドウが現れた。ウィンドウには丸とバツが表示されている。キリトが丸をタップすると、パーティが結成されたようで、俺の視界の左端に俺以外のもう1つのHPバーが映った。
「じゃあこれからよろしく。」
「おう!」
そう言うと俺たちはお互いに手を差し出し、握った。