「遺物?」
「ええ、」
デスゲーム開始からおよそ2ヶ月。先日第四層のボスが攻略組により撃破され、俺とミトは第五層主街区のカルルインに滞在しているところであった。
「遺物拾い、ベータテストでやったことない?」
「あー、あれね。思い出した。でもあんまりお金にならないよね、確か。」
「でも、あなた飽きてるよね?」
「…バレた?」
「まあ、付き合わせてる私も悪いし、…五層にしかないイベントなんだからせっかくだしやってみない?」
第五層のテーマは遺跡であり、至るところに遺物が落ちている。そしてそれは銅貨から金貨や宝石など様々であり、高く換金出来るものは当然ながらなかなか見つからない。
「いいよ、じゃあやってみるか。」
意見が合致すると、ミトは微笑んで主街区の中心方向へ向かい始めた。
しかしベータのときは確か道に遺物はあまり落ちていなかったはずだ。
俺はミトの向かう先に疑問を持ち尋ねた。
「あれ、どこに行くの?遺物ならあっちのほうが見つかるんじゃない?」
俺の質問にミトが振り返る。
「…ん?あなた知らないの?」
心底驚いた顔をしているが、俺はその意味もわからず頭に疑問符を浮かべ続けた。
「ま、とにかくついてきて。」
そう言うと、彼女はまたスタスタと歩き始めたので、俺もそれを追うように小走りで彼女のほうへ向かった。
2分ほど歩いて着いた場所はレストランであった。
「ふーん。ブリンクアンドブリンク。…聞いたことないな。」
「ベータのときからあるわ。brinkは崖っぷちって意味ね。」
「ああ、だから…。」
建物の中に入ると、いや、正確には扉を開けてくぐると、目の前にはテラスが広がっていた。
驚くべきはテラスから見渡せる絶景だ。このレストランは第五層の外周に隣接しており、テラスの下をてすりを握りながら覗き込むと見えるのは地上が全く見えないほどの雲海であった。
「うわ…。飛び降りたらって考えると足がすくむね。」
「試してみる?」
ミトは冗談っぽく俺になげかける。
「死ぬわ。」
せっかくのいい景色を見られるので、テラス席に座ることにした。
ミトはメニューも確認せず、店員を呼んだ。
「ブルーブルーベリータルトを2つ。」
彼女がよどみなく商品名を言い終えると、店員は注文を復唱し、すぐにレストランの奥へと立ち去った。
「へえ、そのタルトになんか秘密があるの?」
「そう、面白いバフがつくんだけど…まあ、来るまでのお楽しみ。──というか、ここのレストラン、知らなかったんだ。」
「うん、全く。そもそもベータ時代遺物拾いにあんまり興味持ってなかったからね。少し自力で探したらすぐ次の街に行っちゃったよ。」
「ふーん…。」
「まあでも、そのときは1人だったけど、君と一緒だから少し楽しみかも。」
「!!」
俺の発言に驚いてか、ミトが口をあんぐりと開けた。そして自分の発言を振り返る。
「あ、いや…やっぱなんでもない。」
正直恥ずかしさ以前に自分の発言に驚きと、困惑があった。
「…そうね。」
彼女はかろうじて返答をしぼりだしたようだが、普段でもあまり見られないほどの無表情で俺は少したじろいだ。
「す、少し来るの遅いね。」
「…」
必死に話題転換に努めたが、彼女の反応は1ミリたりともなく沈黙が続く。
「お待たせしました。」
店員が注文を届けてきたことが沈黙の終わりを告げた。
「食べてみて。」
「うん。」
俺はさっそくフォークを使用し、タルトを口に運んだ。味は普通のブルーベリータルトである。
しかし、視界の左上、自分のHPバーの下に見たことの無いマークが現れた。
「へえ、始めてみるバフだな。」
「それで辺りを見回してみて。」
「ん…なんか光ってるね。」
周りの地面を見渡すと、所々で光っている。俺は原因を突き止めるべく、光のある場所へ移動し、間近でその存在を確認する。
「なるほど。遺物が光ってるんだ。」
「そういうこと。一時間しか効果は続かないし、1日先着30名だから長時間やろうと思ったらあまり意味は無いけど。」
「じゃあ早く食べて行こ!これなら頑張れば結構集めれそうだし。」
「そうね。」
――――――――――
「じゃあ俺はあっち探すから、ミトはそっちの建物の周り探して。」
「わかったわ。」
さっそく圏外に出ると、俺たちは手分けして遺物を探し出すことにした。
俺が分担を指示すると、ミトはそそくさと持ち場へと向かった。
俺はミトがいなくなるのを確認し終え、同じく持ち場へと向かう。
目的地までの道にも多少光が散らばっており、一つづつ拾い上げる。しかし集まったものは銅貨や銀貨など換金しても少しのコルにしかならないものばかりだ。
崩れかかった石造りのアーチをくぐると、中心は噴水があったであろう様子である。周りにぐるりと石が並べられてあり、俺は座りやすそうなそれらの1つをえりすぐるとゆっくりと腰掛ける。
「はあ…。」
座った状態で前かがみになると、膝に顔を埋め、頭を抱える。
「うぅ…。…もう!」
──ほんとどうしたんだろ。いつもだったらあんなこと言わないのに。
いつになく表情を保っていられない。
──友達、なのかな。…ずっと前から、いや、中学に入ってからもずっとだ。楽しくなかったんだ。周りの同い年の子と遊んでも。それはきっと彼らが悪いんじゃない。俺のせいだ。
顔を上げると、少しの間目の前を見渡しため息をつく。そしてゆっくり目を閉じる。
──このSAOのベータテストに当選する前もゲームは好きで、ネットで知らない人とプレイするのも楽しかった。でもきっとそれが楽しかったのは相手を知ろうと思わないし、知られる心配もなかったからだ。
この層から見える空も、一帯が太陽に覆われ、赤く色づき始める。
──もしあれが本心なら。多分、デスゲームが始まってからずっとリオンとして生きていると思った。現実の自分じゃきっとここでも臆病だから。…でも、でもそれが違ったなら、
「ねえ、どうしてこんなところで座ってるの?」
「!!」
瞑っていた目を開くと、目の前には瞳が赤い鎌使いが立っていた。
「どのくらい集まったか気になって様子を見に来たけど、まだ全然集めてなさそうね。」
「ミト…。いや、ごめん。ちょっと休憩してた。」
「疲れたの?そろそろ宿に戻る?」
「ううん。大丈夫。」
──俺は変わったのかな。
俺はゆっくりと立ち上がる。
「…じゃあ行こうか。」
──勘違いだって…思いたくない、気づきたくないな。
結局、俺の担当はミトにも手伝ってもらうことになってしまった。
俺も今までの時間を取り戻すかのように遺物拾いに励んだ。
しかしやはりあまりレアな物は見つからない。
だんだんと落ちている遺物の数も少なくなっているので、俺もミトもそれにつれて焦り始める。
だが、そんな中少し立ち止まって周りを見渡そうとした時に、1度足元を見ると、また光源があることに気づいたので、しゃがんで拾う。
すると拾ったものは金貨であった。この世界の一般通貨であるコルの金貨と違い、不思議な紋様が刻まれている。
おそらくこのイベント専用のアイテムなので、換金しなければならないが価値はコル金貨より何倍も高い。
「ミト!!いいのが見つかった…よ?」
「はあ!?これは私のもの!!」
俺がミトのいる方向に振り返りながら、例の金貨を見せるように掲げると、彼女は俺の方を──見ていなかった。
いや、正確には他人を険しい顔で睨みつけていた。
「ちょっと待って待って、どうしたの?!」
俺は咄嗟に駆け出して、両者の間に割ってはいる。しかし彼女らは全く気づかない。
ミトが怒鳴っている方向を見ると、1人の少年が同じく険しい顔をしていた。おそらく俺たちとは同年代であるが、一回り小さい、白髪の少しやんちゃそうな顔をした少年だ。
「いやだね!だって俺が先に見つけたんだからな!!いくらなんでも譲れねえよ!」
彼女らの視線の先にあるのは、1つの王冠、それもほかの遺物とは比べ物にならないほど光り輝いている。
「だからちょっと待ってって!!」
俺は少々無理矢理彼女らの間に入って手でこれから出てくるであろう言葉を遮った。
「リオン…!」
「…?」
やはりこちらの制止が全く聞こえていなかったようで、ミトは驚いた顔で俺を見つめ、少年は俺が介入したことで混乱しているようだ。
「はあ…。それで、何があったの?」
1度、会話を遮ったことで両者も少し冷静になったようで、少し間を開けて疑問をなげかける。
「実はさっきこの王冠を見つけたの。それですごく高く売れそうだったから急いで拾おうと思ったら、彼もこれを狙っていたみたいで…。」
「ああ…なるほど。それで、どうするつもりなの?」
「どうするつもりって…。」
「…デュエルしようぜ。」
先程まで静かに俺たちの話を聞いていた少年が急な提案をする。
「デュエル?」
「ああ、さっきは俺も熱くなりすぎたけど、別にお前らと争いたいわけじゃないからな。かと言って、俺も簡単に譲りたくはない。」
つまり少年が言いたい事はこういうことだ。──デュエルで勝利したほうが先程の遺物を手に入れる。
「…それ、いいわね。」
ミトが静かに同意した。どうやら、彼女の心中はまだ落ち着いていないようだ。
「じゃあリオン頑張って。」
「…は?なんで俺?!」
「なんでって、あなた攻略組でしょ?」
「ミトと俺ほとんど実力同じでしょ…。」
彼女はなるべく面倒を避けたいのか、俺に責任を押しつける。
「…まあいいや。やるよ。」
無理やりデュエルをさせられようとしているのに、俺が意外と乗り気だったのは、この少年を知らないからだ。ボス攻略で一度も見た事ないのに最前線にいるのは少し興味がある。
「…じゃあお前でいいや。申請送るぞ。」
少年が自身のメニューを操作すると、俺の目の前にメッセージが表示される。
【フィンから1VS1のデュエルが申し込まれました。受諾しますか?】
俺はもちろん下にあるYESのボタンをタップした。
すると、メッセージの表示で六十秒のカウントダウンが開始される。
「へえ、リオンって言うのか、よろしくな。」
「うん、よろしく。フィン。」
軽くフィンという少年と挨拶を交わすと、相手の格好から戦闘スタイルを予測することにした。
背中に携えているのは両手斧。おそらくステータスはSTRに極振りしているであろう。しかし、攻略組にいる斧使い、エギルのような目立った防具は装備していない。
しかしこれは矛盾している。なぜならSTR型は身のこなしも遅くなるので攻撃が避けにくい。なら、少しは金属防具を身につけているのがセオリーだ。
そこから読み取れるのはSTR型ではあるがAGIにも多少は振ってあるであろうことだ。となるとかなりバランスのいいステータスをしている可能性がある。
しかしMMORPGに置いてそれは邪道である。武器には武器に合ったステータスの振り方が存在する。多少個人差はあれど、全くセオリーに反したステータス配分はあまり強くなるとは言えないからだ。
だが、仮にも最前線にいるプレイヤーだ。おそらく何か秘密がある。
カウントが10秒を切ると、互いに武器を構える。
俺は短剣を逆手で持ち、腕を真っ直ぐ相手に向ける。
フィンは斧をやや下段気味に構える。おそらく速攻で勝負を決めようとしているのだろう。
フェイントという可能性もある。しかし初動はカウンターを狙う形が最善だろう。
カウントが0になった瞬間、二人の間にDUELの文字が弾ける。
先手は予想通りフィンだ。下段で斧を構えたまま、姿勢を限界まで低くし、突進する。
予想外だったのは、突進の速さだ。俺やアスナのような軽い武器を使用するプレイヤーには及ばないが、確実にキリトやミトのようなバランスがいいプレイヤーより素早い。
「!!!」
予想が外れたことで俺は当初の狙いであったカウンターをやめ、回避の準備をする。
フィンは俺の下に潜り込むほど接近すると、下段で構えていた武器を振り上げる。
俺は上半身を反らしつつ、倒れ込むように下半身の力を抜き、攻撃をギリギリのところで回避すると、バク転し、そのまま相手の間合いから逃れるように後ろに下がる。
俺はこのデスゲームでは決して出ることのない冷や汗が頬を伝っているように感じた。
そして彼は心底納得のいかない顔をする。
「あっれ?絶対今ので決まると思ったんだけどな。」
どうやら不意打ちを兼ねた渾身の一撃であったようだ。
「警戒してなかったら危なかったや。」
思わず本音を口に出す。しかし、彼の初撃を見切ったので、次は俺の番である。
俺は彼の間合いのギリギリに立ち、その周りを彼に視線を向け続けながら、ゆっくりと歩く。
だが、中々つけ込める隙が見当たらない。
相手もじっと俺を観察し、行動を起こさない。さっきの回避を見た事で少し警戒心が増しているようだ。先程は、確実に追撃を避けるために行わなかったが、バク転の体勢からカウンターすることもできたからだ。
俺はその隙にメニューウィンドウを開き、ショートカットと表示されているボタンを叩いた。すると瞬時に握られていた短剣が、両手剣に置き換わった。
《クイックチェンジ》というスキルである。このスキルはあらかじめ設定しておいた武器を今装備しているものと交換できるというものだ。大体のプレイヤーは1つの武器を使用し続けることが多いので、あまり意味がないスキルであるが、俺の場合ふたつのソードスキルを使うので、クイックチェンジはかなり相性がいいのだ。
斧使いは俺の行動を見てから、間合いを警戒して数歩下がった。
俺は武器を変更すると、相手を追うように急激に彼との距離を詰めた。
彼は斧を前に出し、防御態勢に入るが俺は構わず彼の武器を狙って上段切りを入れた。辺りにけたたましい金属音が響く。
力は拮抗し、互いに動かない。
「ちょっと焦ったけど、無駄だね。」
彼は状況は変わらないと踏んで、俺に自分の余裕さをアピールする。
刹那、俺は急に力を緩め、両手剣を手放した。
「!!」
相手はずっと上方向に力を加えていたので、支えるものがなくなった瞬間、体勢を崩した。
そして、俺は空いた相手の胴体に目掛けて、体術スキル《閃打》を繰り出した。
決まった、確実にそう思える攻撃だ。
しかし決まらなかった。
彼は避けたのだ。しかも完璧に。彼は、斧を上に振った遠心力をそのままに、武器の先を支点にしてバク転したのだ。
「んなっ…!!」
思わず声が漏れる。
「やっばいな!今のは危なかった。」
お互いに驚愕する。俺は平静を保って、一旦彼との間に距離をとった。
少し相手の様子を確認すると、相手も攻撃を仕掛けようとはしてこないので、俺は急いでもう一度短剣を装備した。
「素手でソードスキル…。エクストラスキルか?」
「そうだよ。取りたかったら今度教えるけど?」
どうやら彼は初見で体術スキルを回避したらしい。
おそらく生半可な攻撃じゃ相手にかすることすら出来ない。
相手は再度先程と同じ構えを取ると返答もなしに俺に攻撃をしかける。
フィンは今度は単純に斜め上段から切りかかる。
俺はバックステップで軽く避けるが、相手の攻撃はまだ終わらない。
俺はときに短剣で振り下ろさせる斧を受け流しながら避け続ける。しかしこのままじゃいつか集中が切れて避けきれなくなるだろう。
俺はそう考え、相手が水平に攻撃を繰り出した瞬間。しゃがみこんで、相手の間合いに入ったまま攻撃を回避する。
そのまま相手の足に斬りかかるが、少年は軽々とタイミングを合わせ、ジャンプをして避ける。そのまま相手の姿勢はモモンガのように地面と平行となる。
しかし、俺は斬りかかった短剣を無理やり停止し、直角に刃の向きを変えて振り上げる。
刹那である。俺の頭上を通過した斧が急にライトエフェクトを帯びた。おそらくソードスキルである。
しかし、俺は明らかな違和感を持つ。なぜなら、ソードスキルを発動させるためには特定の構えをとる必要がある。
相手は空中に跳んでいる。そこから必要最低限の構えをとるのはあまりにも無理がある。空中姿勢を変えているからだ。
驚いている暇はない。まだ勝ち筋はある。こちらのほうが早く下段からの斬りあげをくらわすことができれば、ギリギリの差で勝てる。
同様に俺のソードスキルが発動する。
「「うおぉぉぉぉ!!!」」
互いの雄叫びが重なる。相手は俺の首を、俺はフィンの腹を目掛ける。
俺の視界の真横に光る斧の刃が見える。
だが俺は一切動じることはない。
──俺の方が速い。
ガキンッ!!
俺の刃は届かなかった。しかし、俺の首に衝撃は来なかった。
いや、そもそもなぜ剣戟のような音が響き渡る。俺が狙ったのは、相手の無防備な腹だ。防具すら纏っていない。
直後、俺の体全身に後ろ方向への衝撃が響き渡る。HPはまるで減っていない。
そのまま俺は地面に沿って転がり込む。そして状況を把握するために、急いで姿勢を直し、周りを見渡した。
前方では俺と同じように地面にへたり込んだ少年と、こちらにスタスタと歩いてくるミトの姿があった。
「…今どうなったの?」
「はあ…。バカじゃないの?」
彼女は俺の投げかけた質問は無視し、呆れたような、少し心配したような様子で罵倒する。
「あのままじゃどちらか死んでたわ。あんな勢いでクリティカルの出やすい部位を狙ったらそうなることくらい想像できるでしょう…。」
俺は自分の身におきた事を理解した。おそらく彼女は俺たちの攻撃がお互いに当たる前に制止に入ったのだ。俺の武器を弾き、2人の距離をとるために突き飛ばしたのだ。
「…ごめん。」
「まあ…大事にならなくて良かった。」
「お前面白いな!!」
「?」
突如彼女の後ろから人影が現れる。さっきまでミトに突き飛ばされて尻もちをついていたフィンは、俺にキラキラとした眼差しを向けながら歩いてきたのだ。
「初見じゃ絶対取れないと思ってた攻撃も軽々避けるし、まさかデュエル中に自分の武器手放すとは思わなかったぜ!!」
「…ありがと。」
直球で彼は俺のことを賞賛するので少しうろたえる。
「というか君、一体何者?少なくとも今までフロアボス攻略のときは見かけたことないんだけど。」
先程から抱え込んでいた疑問をようやく投げかける。
「そりゃそうだ。だって俺、ようやく今日最前線に追いついたんだからな。」
「ああ…なるほど。」
見たことの無い彼がここまでの実力を有していることに納得がいく。
「そうだ。お前、その口ぶりだと攻略組なんだろ?次のボス戦、俺も参加したいからな。紹介してくれよ、俺のこと。」
「うん、いいよ。君の実力だったら十分戦力になれる。」
「…楽しく話してるところ悪いんだけど、まだデュエル終わってないよ。」
俺たちの長話に痺れを切らしたのか、ミトは呆れた顔で、俺たちの置かれている状況を伝える。
「そうだったな!アイ・リザイン。」
彼が英語で降参の意を表明すると、俺の頭上に《WINNER》という文字が現れる。
「え?!…それでいいの?」
「もういいや、デュエル楽しかったし、さっきの王冠はお前らにやるよ。」
「フィン…。」
彼はすんなりミトに王冠を手渡すが、俺は少し申し訳なさを感じる。
まあ、ミトは小さくガッツポーズをしているので、関係なく喜んでいるようだが。
「その代わり、俺もお前らのとこに混ぜてくれよ。お前らと一緒にいた方が面白いことも多そうだ。」
「…まあ、俺は構わないよ。ミトは?」
少し間を開けて返答する。
「…リオンに任せるわ。」
(一人増えても変わらないしね…。)
「じゃあ、…これからよろしく、フィン。」
「ああ。」
フィンが勢いよく拳を手前に突き出したので、俺とミトはそれに呼応してお互いに拳を打ち付けあった。