モルモット君ではないアグネスタキオントレーナー   作:雅媛

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6-1 夏合宿 Sideトレーナー

 メイクデビューも無事勝利に終わり、夏合宿に行くことになった。

 夏休みの長期間、夏合宿をするのは現役のウマ娘では通常の事である。

 だが、どこで何をするか、はウマ娘ごとに違った。

 

 多数派は学園の施設を使って合宿を行っている。

 費用が掛からないし併走相手を見つけることも難しくない。

 ただ、学園の施設は老朽化していて質自体はあまりよくないという欠点があった。

 

 強豪のチームだとチーム予算でホテルを借りる、なんてことをしたりもする。

 とはいえこれをしてしまうとメンバーが固定してしまうため、結局学園の施設の近くのホテルを借りるところもあるのだとか。

 

 そして今回タキオンと俺は、アグネス家の別荘を使わせてもらうことになった。

 タキオンのお母さまがメイクデビュー勝利のお祝いも兼ねて貸してくれる、と提案してくれたからである。

 プライベートビーチにトレーニングルーム、さらにメイドさんまでついており至れり尽くせりの状況であった。

 もっとも問題もあり……

 

「やっぱりタキオンと相部屋はおかしいでしょう」

「部屋数が足りないからしょうがないじゃないか」

 

 ベッドルームが、タキオンと俺の相部屋が一部屋、メイドさんの部屋一部屋という二部屋しか存在していない。しかもベッドは大きいが一つしかない。

 

「ほら、タキオンとメイドさんが一緒に寝て、俺はメイドさんの部屋で寝るから」

「申し訳ありませんが、従僕たるものお嬢様と一緒に寝てはいけないのですし、トレーナー様に下働きの部屋で眠らせるわけにいかないのです」

「いやお嬢様と俺が一緒の部屋の方がまずいでしょ!? 俺がお嬢様に変な事したらとか考えないんですか!?」

「しないんですか?」

「しないですよ!?」

「してもいいんだよ?」

「タキオン!!」

 

 のらりくらりとメイドさんにかわされてしまうし、タキオンのお母さまに連絡を取っても「婿殿がタキオンのことを嫌でなければ」とおかしなことを言われてしまう。

 婿殿ってなんやねん!! お母さまも冗談がきつい!!

 結局タキオンが何も気にしていないのもあり、同じ部屋の同じベッドになってしまった。

 まあ、子供に手を出すつもりもないし、メイドさんもいるからあとで問題にはならないと信じたい。

 

 

 

 ということで夏合宿が始まったが、やらなければならないことはあまり多くない。

 トレーニングもやり過ぎはよくないので、いつも通りのトレーニングぐらいしかやらないから、かなりの時間が余る。

 なのであれやこれやと実験と研究をするのだが……

 

「トレーナー君、光ってるよ」

「タキオンも光ってるけど」

 

 ウマ娘に存在するウマムスコンドリア仮説に基づき、ウマムスコンドリアを刺激する物質を飲んだらなぜかタキオンだけでなく俺も光り始めた。

 ウマ娘であるタキオンだけでなく俺まで飲んだのは比較実験であり、性別も違いウマ娘でもない俺にウマムスコンドリアはないだろう、という予想のもと同じものを飲んだのだが…… なんで俺まで光るんですかね……

 

「人間のミトコンドリアとウマ娘のウマムスコンドリアってそんなに差がないのかね」

「それだとなぜウマ娘が人間よりも身体能力が高いのかがわからないが」

「ウマムスコンドリア以外の別の理由じゃない?」

 

 光りながらああでもないこうでもないと議論したりしていたらメイドさんにはドン引きされた。

 

 他にも人間でもウマ娘と同じ身体能力を発揮できる薬を作って飲んでみたら、翌日から3日間筋肉痛で動くのが死ぬほどつらかったり、逆にウマ娘の力を人間並みにする薬を使ったらタキオンが寝たまま動かなくなったり、体力回復の飲み物を作ったらクソまずかったり、実験の方は非常にはかどった。

 メイドさんはドン引きしていた。

 

 これらの実験により、ある程度ウマ娘の力がどうやって発揮されているかがわかり、その知識を利用すればタキオンの体質改善にもかなり役立ちそうであった。

 タキオンの体が弱いわけではない。普通程度には丈夫だが、その才能あふれる体から発揮されるスピードには普通程度の丈夫さでは耐えられないのだ。母親であるフローラさんも、屈腱炎でトゥインクルシリーズ引退をしてしまったし、特に筋肉や腱への負担が大きい。

 今までの慎重なケアにより、状況は悪化していないが、さらにタキオンの能力が成長すれば不十分な可能性もあった。だからこそ体を丈夫にする方法を模索していたのだ。

 

 まだタキオン強化計画は完成はしていないが、タキオンの体の限界は今の時点でもさらに遠ざかったはずだ。後はめんどくさがるタキオンの体のケアをトレーナーとしてするだけ、である。

 

「でもさ、全身マッサージはやり過ぎじゃないかと思うんだ」

「私は気にしないよ?」

「俺が気にするんだよ!!」

 

 下着一枚でマッサージ台に寝転がるタキオンの全身を揉む、というのは確かに効果的なのだが、かといっていいのかとも思う。

 普通に大殿筋のマッサージとか大胸筋のマッサージもあるのだ。

 駄目だろうと思うのだが、タキオンが他人に体を許さないので結局自分がやるしかないのが問題だった。メイドさんとかアグネスの家の関係者でもダメっていうのだから筋金入りである。

 正直タキオンの体のことはタキオン以上に知っているのではないかと思い始めていた。

 他にも全身に日焼け止めを塗ったり塗られたり、なかなかお外にばれたら大変なことをされたりさせられたりしている。いやメイドさんにはばれてるし、タキオンのお母さまにもばれていると思うのだが、お母さまの方からは好きにしてくださいとしか言われなくて逆に怖くてしょうがない。

 

 もちろんトレーニングと実験ばかりではなく遊ぶこともあった。

 ちょこちょこトレーニングとは別にプライベートビーチで泳いだのだが、タキオンはあまり泳ぎがうまくなかった。こちらが元水泳部で泳ぎ慣れているとはいえ、地力が違いすぎるから競泳すれば負けると思っていたのだが、大体俺の方が速かった。

 水着のせいかと思い、タキオンは速そうな競泳水着を買ってきてそれで泳いだのだが、それでも俺の方が速かったので、多分タキオンは泳ぐのがあまりうまくないのだろう。

 他にも二人で夏祭りに行ったり、そうかと思えば適当にクーラーの利いた部屋でボケーっと寝転がっていたり、結局メイドさんはいたとはいえ、ほぼ二人きりで一月を過ごしてしまった。

 

 なんにしろ、トレーニング、実験、そしてバカンスと十分堪能できた夏合宿であった。

 メイクデビューの2000mで、上り3ハロン33秒台というとてつもない末脚ををたたき出していたタキオンであったがそれよりもさらに一回り成長できたことを実感する。

 これなら次の目標、年末のホープフルステークスも十分勝てるだろう。

 もちろん同期には強敵がそろっているので油断はできない。ジャングルポケットやクロフネといった強豪はすでに頭角を現し始めているし、カフェちゃんだってまだ成長途中だがかなりの強敵になるだろう。

 だがそれでも、うちのタキオンが一番強い、と言いたくなるのはトレーナーバカだろうか。

 

 そんな俺の内心を知ってか知らずか、タキオンはどや顔をしていた。




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