メイクデビューに出走し、無事勝利を飾った。
レース展開、着差、タイム、すべてが完璧なレースだったと自負している。
いくら強さに自信があってもレースに絶対はない。それなりに緊張してはいたが、トレーナー君は「タキオンなら勝てる」と何度も言い続けてくれた。
トレーナー君に無事、初勝利を届けられて安心したところである。
そうしてメイクデビューが終わった後は夏合宿に入った。
重賞に出るローテーションもあり得たが、この時期に行われる重賞は長くても1600mのレースだ。適性から考えて少し短く、次のローテーションは年末のホープフルステークスにすることにしたので日程にかなり余裕があったためである。
そして夏合宿となればまず場所が問題となる。
「無人島で二人っきりになれる別荘もあるわよ!」とトレーナー君をひどく気に入った母が言ってきたが、普通のプライベートビーチ付きの別荘を使わせてもらうことにして、メイドも一人派遣してもらうことにした。
家事などを一緒にやるウマ娘ならば二人きりでも甲斐甲斐しいところを見せられるのだろうが、残念ながらそんなことができるわけもないし単にトレーナー君の時間を取られるだけでしかない。完全な二人きりよりもトレーナー君の手間をなくすべきであろう。
どことなく不満そうな母は放置して、タキオンは一つの別荘を用意したのだった。
このあまり大きくない別荘をタキオンが選んだのは理由があった。
ベッドルームの数が少ないのだ。
主用のベッドルームが一つと使用人用のベッドルームが一つしかない。
当然タキオンとトレーナー君が同室になるしかないのだ。
トレーナー君は
「やっぱりタキオンと相部屋はおかしいでしょう」
とか
「ほら、タキオンとメイドさんが一緒に寝て、俺はメイドさんの部屋で寝るから」
とか悪あがきしていたが、母の命を受けているメイドがトレーナー君を使用人の部屋で眠らせるのを良しとするわけがない。
問題なのは部屋の質、という意味ではない。使用人用のベッドルームはトレーナー君のトレーナー寮の部屋と比べてもそう劣るわけではないし、なんなら家具はいいものがあるから住みよい可能性まである。だが、客で母曰く「婿殿」に、使用人の部屋を使わせるわけにはいかないのだ。最低でも母は気にするし、母に仕えるメイドも気にする。
昔はこういったメンツといったものがひどく面倒に感じていたが、最近は上手く使う方法をタキオンも覚えていた。
これが、トレーナー君が自分の貞操とか身を守るために別の部屋を要望していたら、タキオンも無理強いはしなかっただろう。いやなことをしても無理やりすれば好きになってもらえるはずがないというのはカフェに散々釘を刺されているし、そもそもトレーナー君が嫌なことをしたいわけではない。
ただ、トレーナー君はひどく保身が下手で、自分のことを気にしているわけでは全くないのだ。むしろ、トレーナー君がタキオンを襲ったりするみたいなことを想定しているらしい。
人間がウマ娘に勝てるわけがないのに、なぜそう思うのかはタキオンにもわからない。トレーナー君は頭がいいのに時々ひどく世間知らずになるのだ。
たんにタキオンを気にしてくれているだけなら何も問題ないので押し通すだけである。というか、襲ってくれるなら、とタキオンも少し期待をしていた。まあそんなことないだろうな、とタキオンもわかっていたし、結局そんなことは一切なかったのだが、時間はまだまだあるから焦ることではないだろう。
「してもいいんだよ?」
と口に出してみたら
「タキオン!!」
と真っ赤になるトレーナー君はかわいらしかった。
合宿中のトレーニングは特筆することはなかった。
トレーニングは日々の積み重ねである、というのがトレーナー君の持論であり、夏合宿になっても特に厳しくもならず、減りもせず、いつも通り淡々とトレーニングを繰り返すだけだ。
一方で実験は非常にはかどった。
ウマ娘がどうして人間より強いのか、丈夫なのか、それを探求すれば怪我の防止につながるのではないかと考えたのだ。
結果はまあ大変だった。トレーナー君が光ったり、トレーナー君にウマ耳が生えてみたり、いろいろ愉快なことが発生したりした。
もちろん変なことが起きたのはトレーナー君だけではない。トレーナー君にとんでもないことが起きるのは比較実験のためであり、すべてタキオンも同じことをしている。光ったりするのはタキオンも同じように起こっていた。
ある程度実験の結果をまとめた結果、クラシック三冠程度は走れそうなぐらいの結果は出せそうである。何となく、クラシック一冠の皐月賞までかな、と本能的に思っていたところがあったが、どうにかこうにか越えられそうである。
もっともそれには入念なケアが大事なのでトレーナー君にいろいろしてもらった。
まず、尻尾と髪のケアを丹念にしてくれる。尻尾も耳も、ウマ娘にとってはかなり敏感な場所で、他人には触らせたくない場所なのだが、トレーナー君は宝物でも扱うかのように丁寧に扱ってくれるので非常に気持ちいいし気分も良い。おかげで今では艶々である。癖があるので残念ながらボサボサした感じは多少残ってしまったが、それでも見違えただろう。
後は週三回の全身マッサージは正直非常に楽しかった。オイルを塗って滑りをよくしてからマッサージされるのだが、当然ながらオイルがつくので全裸である。一応うつ伏せの姿勢だしバスタオルも使って大事なところは見えないようにはするし、そもそもトレーナー君ならどこを見られても困らないのだが、トレーナー君が非常に照れるのだ。
女尊男卑の傾向がある現代社会では、女性の裸を見るのを恥ずかしいと思う男性は一定数いて、トレーナー君が肌を見て嫌悪を感じるなら凹んだだろう。だが、トレーナー君は明らかにチラチラ見ているし、タキオンに興味があるのは明らかだった。
トレーナー君のマッサージ技術も明らかに上がっており、マッサージ自体が気持ちいいのと、トレーナー君の反応が楽しいのでタキオンは大変楽しんでいた。
あと特筆するべきことはトレーナー君の水着姿だろうか。
元水泳部と言っていたが、脱ぐと確かに結構すごい、というのもあるが、それ以上に水着の選択がヤバかった。競泳用のブーメラン水着である。大事なところ以外何も隠してない水着で堂々とするトレーナー君の姿はタキオンにとって劇薬だった。ここがプライベートビーチでよかったと何度も思ったものである。
あまりにトレーナー君を見過ぎて何度か溺れかかったタキオンである。
ちなみにトレーナー君はトレーナー君でタキオンの水着姿が好きなようで、何度か一緒に買い物に行ってお互いいくつか水着を買ったりしていた。
タキオンは毎回露骨に露出が多い競泳用のパンツをトレーナーに選び、さすがに露骨すぎるか、と考えていたがトレーナー君は特に気にした様子がなかった。やっぱりトレーナー君、ちょっとおおらか過ぎないか、とタキオンは心配になった。
ちなみにトレーナー君がタキオンに着せて喜んでいたのはビキニや露出の多い水着でなく競泳用の水着である。
理由を聞くと速そうだから、といわれた。多分トレーナー君は脚フェチなのだろう。ハイレグで脚を強調するスタイルだったからそれを気に入ったのかもしれない、とタキオンは思った。
そんな感じで毎日一緒のベッドで寝てくっつき、それ以外も基本一緒に過ごしていたが、特に問題なく一月が終わった。
正直楽しい時間だったとタキオンは思った。一緒に居て楽な相手というとトレーナー君はカフェやデジタル以上であった。
タキオンは決意した。逃がさないと。
ひとまずはやはり重賞をいくつもとって、将来の生活費とトレーナー君の名誉を稼がないといけないな、とタキオンは決意する。
まずはホープフルステークスである。ライバルは決して弱くないが、それでもタキオンは負ける気がしなかった。
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