「ママってどうしてクラシックの一冠しか出なかったの?」
愛娘であるダイワスカーレットが不思議そうに尋ねる。
アグネスタキオンは言葉を詰まらせた。
アグネスタキオンは無敗で皐月賞に勝利し、その後電撃引退をした。
理由は公にはされなかったが、第二子であるダイワスカーレットが生まれたのがその引退から2年後であることから、知り合いは何があったのかは察している。
単純な話、人間はウマ娘に勝てないということである。そしてトレーナー君はあまりに無防備過ぎたということだ。
だが、まだ幼い娘にその話を聞かせるのは教育上よくないだろう。
「皐月賞の後トラブルがあってね」
「ママは悲運の名バなのね!!」
どこからそんな言葉を覚えてきたのか、ダイワスカーレットはどや顔をしてそんなことを言った。
当然そんなことは全くない。トレーナー君に我慢できずに襲い掛かり続けて、結局8人も子供を作ったのはタキオンが望んでやったことである。
アグネスタキオンの引退に、世間の目は厳しく……は別にならなかった。トレセン学園ではよくある話だからだ。すでに世間もこういった話題は食傷気味になって久しく、どれもこれもウマ娘が担当トレーナーや幼馴染を襲ったというだけでしかないためバリエーションにも乏しい。
これらはトレセン学園ではよくあり過ぎることのため、別にトレーナー業の廃業も求められなかった。というかトレーナーが足りていないのだ。こんなのでやめられたら困るというのが学園側の言い分だ。もうトレセン学園の風紀は無茶苦茶である。
ただ、他のウマ娘にトレーナー君がとられでもしたら大変だとタキオンが独占力を発揮したため、紆余曲折の上、トレーナー君はトレセン学園のトレーナーを辞めることになった。今はアグネスタキオンの共同研究者兼ウマ娘幼児向けのトレーナーとして働いている。
ちなみに、アグネス家の人々は皆婿を歓迎した。
なんせタキオンの母フローラも現役時代同じことをやっているし、祖母レディーはもう1年半は頑張ったが最後は似たり寄ったりである。家に所属しているウマ娘たちは早かれ遅かれ似たようなことをしている者ばかりで、タキオンの所業に文句を言えるウマ娘はいなかった。姉のフライトは多少文句を言っていたが、結局その翌年に自分も同じことをしているのでやはり姉妹である。
なお、アグネス家のヒト男性側は、新しく犠牲になったトレーナー君にやさしくしていた。ただの仲間意識であった。
当のトレーナー君本人は、襲われた側にもかかわらずひどく責任を感じてタキオンに許しを乞うていたが、それもまたトレーナー君のアグネス家での評価を上げていた。
つまり、いろいろありはしたが、二人は幸せに暮らしている、ということである。
「私はママよりすごくなって、ティアラ三冠を取るんだから!!」
愛娘のダイワスカーレットはふふんっ、といった感じでそう主張する。
確かに彼女は能力だけ見たらティアラ三冠もとれる実力だろう。タキオンは親バカながらそう思う。だが、彼女もまた愛の重い名家のウマ娘一族なのである。
そして、彼女が彼女だけのトレーナーを見つけたとき、その血の衝動にどこまで抵抗できるのか、それはその時になってみないとわからない話である。
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