愛され少年ハタカくんとキラキラの魔法   作:ヨイヤサ・リングマスター

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 殺意の波動なり何なりに目覚めたらハタカは邪神にもなれてしまう。
 ……が、そんなことはない。
 なぜならギャグ作品だから!

 


第8話:いあ!いあ!ハタカ

 遥か昔、巨大なドラゴンによって蹂躙された種族があった。

 

 “龍”――世間一般でも“ドラゴン”と同一視されているが、ドラゴンと違って魔法特化型の魔物である。

 

 だから、かもしれない。物理特化型のドラゴンたちが群れをなして襲ってきたことで龍の群れはあっけなく滅んだ……かに見えた。

 

 

「くそぅ、僕にもっと力があったら……。

 見ていろよドラゴンめ! いつの日か龍王の系譜たるこの僕が根絶やしにしてくれる!!」

 

 そう言って一匹の幼き龍は決意を胸に秘め、一族再興を誓った。

 

 それから数百年の時が流れ、ドラゴンたちが隕石落下と氷河期によってほとんどが滅んだ後のこと、人間が文明を発展させている。

 

 辺境に位置するアイバスの街は、そんな古代の龍の一族が住んでいたと言われる地なのだ。

 

 まぁ、そのお話は置いといて。今回のハタカのCランク昇級試験とは関係ないのでさっさと進めていこう。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

「――と、そんな感じでこの土地には魔力が溢れていて魔物も強いってわけ」

 

「なるほど、ジュリアさんは歴史にも深い見識があるのですね。

 僕もこっちの世界に来てからは、ジュリアさんの話を聞いていつも勉強になります!」

 

「気にしないでいいわ。

 だって私は、ハタカのためなら何でもしたくなっちゃうんだもの♪」

 

 

 微笑むジュリアはとても幸せそうである。それもさもありなん。彼女はハタカを愛しているのだから。

 

 そして現在の二人だが、遠足じみた格好だ。

 

 背中のリュックサックにおにぎりを詰めて、水筒を肩から掛けたイガグリ・ヘアーの少年ハタカは、まるでピクニックにでも行くかのような楽しげなオーラを放っている。

 

 それに連れ添って歩くジュリアも、今日はハタカの付き添いで戦闘には参加しないからか、Tシャツとジーンズ姿。

 胸には「ハタカ大好き♪」とプリントしてあるが、ハタカは「ありがとうございます」と返すだけで恋人同士へと関係のステップアップが出来なかったジュリアは密かに落胆していたのだった。

 

 背中にも一応、大剣を背負っているので違和感があるが、これは本当に念のためなので使われることはないだろう。

 

 普段着でピクニック気分ながら武器の携帯は違和感があるが、二人の気持ちが半分以上ピクニックなのでそれも仕方がないことだろう。

 

 魔法使いであるハタカは空間魔法で異空間にアイテム収納も出来るが、

 ピクニックは自分で荷物を持つのも醍醐味だと思っているのだから、二人の格好は何もおかしくはない。

 

 

「(ハタカと二人でお出かけって、これはもうデートでは!?)」

 

 妄想の中では自分よりも小さな少年であるハタカを裸にひん剥いてキャッキャウフフでムーチョムーチョだったりするジュリアだが、これも彼女の常のことなので気にしたら負けである。

 

 

「ところでジュリアさん。

 Cランク昇級試験の対象モンスターはどんな相手なのでしょう?」

 

「へ? あぁ、Cランク昇級試験の対象モンスターね。

 色々と異名があるけど、“初心者殺し”ってのが有名ね。

 正式名称は“触手獣”キャロッシェルよ」

 

 あまり良い思い出がないからか、顔をしかめながら説明を続けるジュリア。

 

「全身をヌメヌメとした触手で覆われた奇っ怪な四足歩行の獣よ。

 全身のヌメヌメに毒は無いし、こちらから攻撃しない限り襲ってこないけどかなり強いわ」

 

「……自分からは襲ってこないのですか」

 

 顎に手を当て、考え込むハタカ。これは彼の癖だ。

 

 ハタカは魔法の探求と自分の出来る範囲で人助けをすることが生き甲斐であるが、それと同じくらいに平和主義でもある。

 

 ターゲットとなるモンスターについて聞いたことが彼を思案させているのだろう。

 

 マルチタスクが可能な彼が、時間にして一分以上も思考に耽るのは実に珍しい。

 

 

「ちょっとちょっと、ハタカ。

 もしかしてモンスター相手に慈悲の心が通じるとか思ってるの?

 相手はモンスターなんだから殺さなくちゃ!」

 

「いえ、凶暴ならば冒険者として命を奪うのもやむ無しですが、聞く限りにおいては話し合いの余地が有ると思うのです。

 僕は動物相手ともある程度の意思疎通が出来ますから」

 

 

 ハタカの黄金の精神力とキラキラと輝く瞳はブラックホールめいて吸い込まれそうな魅力があふれている。

 人であろうと魔物であろうとハタカは意思疎通が出来る。それはまさに宇宙の真理を体現した瞳なのだから。

 

 勿論これは、相手側にこちらの話を聞くだけの心を持っている必要だが、ハタカは会話が出来る相手を無駄に殺すことはしたくはないのだ。

 

 

「……まっ、それがハタカの『らしさ』よね」

 

「理解してくれてありがとうございます。

 大好きですよ、ジュリアさん♪」

 

「ッ!?」

 

 ハタカの不意打ち愛の告白。効果は抜群であった。

 

 ジュリアは股間がジュンと濡れる感覚に思わずしゃがみこんでしまうが、ハタカが心配して寄ってきたため、バレないようにすぐさま真顔で立ち上がって平静を装う。

 

 素早くハンカチをジーンズの中に滑り込ませたために染みは出来ておらず、何も問題なく先に進むのだった。

 

 そして、目的となる“触手獣”キャロッシェルの生息区域へと足を踏み入れたのだが、……ここから二人は消息を絶ってしまった。

 

 街の人間の出入りを見張っている門番や、治安維持の保安部隊、冒険者ギルドから街の職人や商人全てから愛されたハタカとその仲間ジュリアは行方不明となってしまったのだった。

 

 




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